河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日韓公安政局比較考 小沢vs検察

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 小沢氏無罪の可能性が高くなってきた。
 私は1年以上も前、大手メディアがこぞって小沢バッシングに熱を挙げていた最中、「小沢無罪なら誰が責任をとるのか」と指摘したが、いよいよそれが問われる。

 前掲コラムでは以下のように指摘した。
 「東京第5検察審査会が小沢元民主党代表に対して起訴相当と議決し、物議を醸しているが、重大なことが看過されている。客観的には小沢氏は無罪になる確率が高いが、その場合、誰が責任を取るのか。
 小沢氏を有罪視し、議員辞職を迫っている新聞、テレビは、無罪判決が出たら謝罪声明を出し、責任者を処分する覚悟をもって報じているのだろうか。
 ・・・ 
 大阪地検特捜部検事による押収資料改竄によりその神話は根底から揺らいでいる。・・・しかるに、東京第5検察審査会の起訴議決はその理由として、何と供述を挙げている。・・・そもそも供述偏重が問題になっているのに、検審みずから同じ過ちを犯そうとしているのはいかがなものか。」
 http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/42079269.html

 以上の指摘は全て現実化しつつあるが、問題は、冷静に事態を分析すれば容易に分かる事が無視され、小沢断罪論が一人歩きした社会のシステムにある。
 これを正さない限り、同じことが今後も繰り返されるだろう。

 小沢問題の本質は、政権交代の意義を失わせ、今日の政治の液状化を招いたことにある。
 民主党が腰砕けになったのは、政権交代の原動力である小沢氏が不当に社会的なバッシングを受け、政治力を削がれたことに始まる。そこから民主党の内紛が表面化し、迷走の挙句に第二の自民党と言われるところにまで堕した。
 結果的に、政権交代を司法の力を悪用して潰したのであるが、当初から仕組まれたものではなかったか、徹底的に検証する段階に来た。
 
 事は具体的だ。小沢氏を検察審査会に告発した「市民団体」では元産経記者が中心的な役割を果たし、産経新聞が告発キャンペーンを張ってきたことは知られている。
 最近、検察審査会委員リストが事前に漏れていた疑惑が浮上しているが、地検特捜部と、内部情報をしきりにリークして世論を煽った産経との謀議があったのかなかったのか、明白にする必要がある。

 産経だけでなく、メディアが小沢追求の急先鋒となり、政治に無用な混乱を招いた責任は極めて重大だ。小沢問題を“政治とカネ”と強引に結び付けるのは、問題の本質を曖昧にする。
 言いっぱなしは許されない。民主主義の健全な発展のために責任ある検証が必要である。

 鳩山首相は昨日初めて普天間問題の「腹案」を持って沖縄を訪れたが、案の定、「公約違反」と罵声まで浴び、桟橋案が受け入れられる可能性はほとんどない。
 強行すれば「自民党より悪い」と沖縄の怒りに油を注ぎ、支持率は限りなくゼロに近づき、政権はもたないだろう。皮肉にも、現実的には県外・国外移設よりも困難である。
 
 問題は、鳩山首相にそうした空気を読める政治的なセンスがあるかだが、自分で自分の首を絞めていく独り相撲の癖は直るまい。適度なところで自発的な辞任の形で決着しなければならないが、それが出来る実力者は小沢幹事長しか見当たらない。
 小沢幹事長も「カネの問題」を抱えているが、これは過去の問題であり、鳩山首相は現在進行形の問題である。民主党は二者択一の苦しい選択を迫られているが、大衆を扇動する検察主導の公安政局的な小沢降ろしに揺さぶられるのではなく、主体的に選択するしかあるまい。
 
 鳩山首相はブレにブレたが、官僚や防衛オタクに取り込まれてしまったのではないか。
 「海兵隊は抑止力として沖縄に存在する理由にならないと思っていたが、学ぶにつけ、駐留米軍全体の中で抑止力として維持されるという考えに至った。『(認識が)浅かった』と言われれば、あるいはその通りかもしれない」と述べたが、この程度の認識能力では日本の安保に責任をもつことは難しい、というよりも、危うすぎる。
 
 北朝鮮情勢が緊迫していると語る脳内を解析すると、「金正日体制が崩壊したら、海兵隊が乗り込んで核を確保しなければならない」といったところだろうが、一種の賭博的な情勢観である。
 軍縮の中で生き残り策を弄する海兵隊総司令官の最近の発言に影響されたようだが、かつて沖縄の海兵隊司令官が「ビンの蓋」を述べて物議を醸したことなど知らないらしい。
 
 金総書記の訪中で「金正日体制は崩壊させない」が中国の立場であることがはっきりしたが、米国務省のクロリー報道担当次官補も記者会見で「中国が北朝鮮の6か国協議復帰を強調することを望む」と基本的に歓迎する立場を明らかにした。
 気分主義的な鳩山首相と経験不足の取り巻き連に、そうした冷徹な国際力学への理解を求めるのはないものねだりである。
 
 『代議士の自決』で書いたように、東大理系同窓の新井将敬と鳩山氏は懇意にし、理念や理想で通じ合うものがあった。 
 だが、這い上がりの新井に比べ、恵まれた環境で育った坊ちゃんの鳩山氏の政治は友愛趣味の域を超えていないように見える。
 現在の日本は、半世紀にわたる利権政治で財政赤字を膨らませた自民党というシロアリに柱を食い荒らされた倒壊寸前の家のようなものである。狭い日本の各都道府県に額賀空港(茨城)もどきをつくられ、食い潰されたJALはミニ日本である。
 IMF予測によると、2009年と2015年の日米英政府財務残高の対GDP比予想は、英国68%→91%、米83%→110%、日本218%→249%に急拡大する。日本は2015年以前に破綻するとの見方も有力になっている。
 
 この危機を脱するには、何にもましてまず積年の政・官・業の腐敗・癒着構造を大掃除しなければならず、政権交代は最後のチャンスであった。
 その意味で、米誌タイム(29日)が恒例の「世界で最も影響力のある100人」のリーダー部門に「ある種の革命の指導者となった。事実上の一党支配から機能する民主主義に変える手助けをした。それだけで称賛するに十分」として鳩山首相を選んだのは、妥当であろう。
 
 だが、残念なことに、鳩山由紀夫氏は首相としての資質に大きな疑問符が付く。
 政治的な課題解決と方程式の解探しを混同しているのか、政治にはプロセスが大事ということが理解できず、学者時代さながらに思いつきでしゃべり、無用な反発と混乱を引き起こして民主党の足を引っ張っている。
 
 普天間移設問題では自ら期限を切っておきながら、迷走に迷走を重ね、土壇場になって公約違反の桟橋案を「腹案」として、元自民党議員の重病患者に仲介を求める醜態を晒している。高校無償化でも朝鮮高校を差別する愚行を行った。
 「普天間問題は5月までに決着」は自ら言い出したことであり、出来なければ鳩山氏の言葉は全く信憑性を失い、混乱を拡大させるだけである。総辞職か、百歩譲って、論功行賞ではなく実力派を配した内閣の大幅改造が求められよう。
 
 しかし、小沢幹事長の場合は、次元が異なる。ふらふらする鳩山内閣を支え、予算案成立で指導力を発揮した。寄せ集めの党内をまとめる要でもある。
 守旧勢力が検察官僚を動かしながら執拗に小沢氏に攻撃の的を絞るのも、民主党を瓦解させる上で最も効果的と考えているからと思われる。
 そのような企みに乗せられてしまうと、政権交代は雲散霧消し、日本の政治は液状化に陥り、冒頭の危機は加速しよう。
 
 無論、小沢氏のカネの問題はグレーゾーンであり、しかるべき説明と透明化が求められる。
 だが、それは自民党政治家の宿業であり、同じ問題を突きつけたら、俎上に乗らない自民党政治家はいないだろう。豪邸を構える自民党の歴代首相や派閥領袖のカネの出所が利権に姿を変えた税金であることは公然の秘密である。
 自民党が小沢氏のカネを追求するのは天に唾する行為でしかない。自民党の支持率が落ち込むのは、それを有権者に読まれているからである。
 
 『代議士の自決ー新井将敬の真実』(第十一章小沢流改革の虚と実 遅れてきた改革派)でもすでに指摘したことだが、自民党幹事長を務めた小沢氏の蓄財も本質的には旧自民党利権政治の産物であった。
 その小沢氏が民主党のリーダーとして政権交代の主役となったところに、日本政治の歪んだ現実がある。
 
 だが、それを承知で民主党に投票し、政権交代を果たしたのであるから、毒を喰らえば皿まで、の覚悟と責任がこの国の有権者には求められる。長年の自民党腐敗政治を許したのは、他ならぬ自分らなのである。
 いまさら守旧勢力の紐付きとみられる「特定集団」に煽られ、旧悪がどうのこうのと熱に浮かれている場合ではなかろう。
 検察審査会が小沢・民主党幹事長に対する検察の不起訴処分に対して「起訴相当」と議決した。新たな証拠があったわけでも無いのに、11人全員一致というから驚きだ。
 しかも、「絶対的権力者」と主観的、扇情的な表現で小沢氏を糾弾しており、中国文革時の人民裁判さながらである。
 
 以前から指摘しているように、小沢氏へのいわゆる政治資金規正法違反容疑騒動は、市民団体を装った「特定集団」の告発→検察捜査情報漏洩→マスコミ世論形成というプロセスを辿って政治問題化した。
 そして、一時は小沢民主党代表辞任となり政権交代を危うくしたが、腐敗した自民党長期政権への批判は止められなかった。
 第二弾が、政権交代後の今回の「起訴相当」議決だが、検察審査会に訴えたのは同じ「特定集団」である。
 つまり、事実上、その「特定集団」が世論を操作して日本の政治を動かしていることになる。
 
 これは極めて危険な兆候であり、日本の民主主義の自殺行為につながりかねない。
 『代議士の自決』でも指摘したが、新井将敬が愛読したスペインの思想家・オルテガは『大衆の反逆』で、衆愚的なポピュリズムが政治を「熱狂的で、我を忘れた政治」に堕さしめ、社会を大衆ファッシズムが蔓延る「原始的な野蛮状態」に落とすと喝破した。今の日本の状況はまさにそれである。
 
 小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法虚偽記載違反容疑は一年にわたり東京地検特捜部が捜査し、陸山会が世田谷区の土地購入代金の原資4億円を収入として政治資金収支報告書に記載しなかったなどとして石川・衆院議員ら小沢氏の元秘書3人を規正法違反罪で起訴したが、小沢氏については「公判で共犯として有罪判決を得るだけの証拠はない」として嫌疑不十分で不起訴処分にした。
 これに対し、市民団体を自称する産経新聞元記者、「在特会」関係者ら「特定集団」が「検察庁の判断は国民目線に立っておらず、不起訴は納得できない」として検審に審査を申し立てた。
 
 それに対して有権者の中からくじで選ばれた11人の審査員で構成された第五検察審査会は冒述のような議決をしたが、11人中全員が「起訴相当」で一致したのがまず異常である。
 7、8割の世論は小沢氏への疑念を持っているとのアンケート調査があるから、国民目線なら単純計算して7、8人賛成となろう。全員賛成は一部強硬派に扇動された結果とみられる。
 挙げている根拠と言えば、「秘書たちが取引を報告しており、小沢氏が知らなかったはずがない」と憶測に過ぎず、しかも小沢氏を「絶対権力者」などと週刊誌の中吊り広告に影響されたような不適切な表現を用いており、冷静な判断とはほど遠い。
 
 このような判断が一政治資金規正法違反事件にとどまらず、日本の政治に影響を与えるとしたら、民主主義を根底から揺るがす重大事態と言わねばならない。
 だが、現実には、民主党のイメージを大きく損ない、7月の参院選を左右しようとしている。
 今回の議決を受けて検察は3カ月以内に結論を出すが、それに対して審査会が再審査を行い、再び起訴相当の議決が出ると強制的に起訴される仕組みであり、場合によっては民主党は壊滅的な打撃を被り、日本の政治は大混乱状態に陥ろう。
 
 昨年5月の改正法施行後、明石市の歩道道事故で明石署元副署長が、尼崎市のJR脱線事故で歴代3社長が検審の2度の議決をへて強制起訴され、国民の喝采を浴びているが、それとは問題が根本的に異なるのである。
 国民の多くがそれに気付かず、今回の起訴相当議決に喝采を送っていることが、衆愚的なポピュリズムの恐ろしさを物語る。
 
 内には破綻寸前の財政赤字と格差拡大・生活破壊、外には中国、韓国の台頭で、日本は今、重大な歴史的な転換期に直面している。
 政治が舵を失うようでは、日本丸はこのまま沈没しかねない。

 東京地検特捜部は先月18日開会の国会前に小沢幹事長への事情聴取に失敗した時点で、敗北である。
 事情聴取から逮捕のシナリオを描いていたようだが、それを察知した小沢氏が応じず、国会開会まで粘った。会期中は不逮捕特権があるから、事実上、逮捕は出来ない。石川議員逮捕はその腹いせだろう。

 そもそも検察の捜査は何が問題なのか、検察リークを基にしたとみられる新聞、テレビ報道は読めば読むほど、聴けば聴くほど要領を得ない。
 法的には、政治資金規正法違反嫌疑は形式犯であり、あまりに大袈裟すぎる。ゼネコンからの献金容疑で収賄罪に持ち込もうとしても、野党であった小沢氏には職務権限がないから無理がある。斡旋収賄、斡旋利益供与なども証明は難しい。
 要するに、法的には該当する構成要件が不明で、仮に起訴しても勝訴はおぼつかない。現在の特捜部長は最高裁で無罪判決が出た長銀粉飾事件の担当検事だったようだが、長銀事件よりも勝訴の可能性が低いのである。

 客観的に見ていると、検察の狙いは道義的な責任を暴いて世論に訴え、小沢氏の政治的な影響力を削ぐことにあるとしか思えない。
 しかし、それは検察の権限外、というよりも踏み込んでならない政治的な領域である。戦前のような公安政治に道を開き民主主義の根幹を脅かすから、当然、指揮権発動の対象となる。

 衆院で絶対多数を占める民主党・社民党・国民新党連立政権の権力は、検察の比ではない。
 韓国の例などから今後の展開を推し量ると、捜査情報リークを厳罰にする刑訴法改正、曖昧な政治資金規正法改正、さらに、検事総長の民間人登用などの人事権、予算などで検察の暴走に対する報復を始めるだろう。
 検察に肩を入れすぎた一部マスコミにも逆風が吹くとみられる。
  

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