|
年金をめちゃくちゃにした元凶の一人である元厚労省事務次官が宮内庁長官をしていることも不思議だが、その羽毛田宮内庁長官が「天皇を政治的に利用する懸念がある」と告発し、鳩山政権を揺さぶっている。
宮内庁長官も内閣の一員であるから、内部告発をしたということになるが、普天間移転問題などで内外情勢が微妙な時期だけにその狙いが注目される。
事の発端は岡田外相が11日の記者会見で、習近平・中国国家副主席が天皇陛下と会見することを明らかにした直後、羽毛田長官は急遽報道陣への経緯説明の場を設けたことにある。
「一ヶ月ルールを尊重してほしい。現憲法下の天皇のお務めのあり方や役割といった基本的なことがらにかかわる」と述べ、天皇の政治的利用につながりかねないとの懸念を持っているのかとの質問に「大きく言えばそういうことでしょう。陛下の役割について非常に懸念することになる。今後二度とあってほしくない」と異例の「訴え」を展開した。
この発言について不見識な一部マスコミ言論はああでもないこうでもないとかまびすしいが、その本質は、「天皇を政治的に利用した」、つまり、憲法違反だと鳩山政権を批判していることにある。
内部告発は決して悪いことではない。ただ、指揮命令に服すべき内閣をここまで批判すれば、信念に殉じ、職を辞する覚悟があってしかるべきなのだが、それもない。
言いたいことを言っておきながらポストにしがみつくところに、潔さとは対極の元厚生官僚の胡散臭さがある。
羽毛田発言の是非はともかく、それ自体が政治的な発言である。
憲法学上、小沢幹事長が「天皇陛下の国事行為は内閣の助言と承認で行われるのが日本国憲法の理念だ」と述べたのは正論であり、「一ヶ月ルール」は宮内庁の官僚が決めた内規であり、内閣の上にあるものではないことは言うまでない。
それに疑義を呈する少数意見もあるが、いずれにしても一官僚が「政治的に利用した」と外部に向かって発言したことは権限逸脱であり、個人的な政治信条を述べたものであるから、責任を取るのが筋である。
官僚トップの羽毛田長官が、その程度のことが分からないはずがない。
承知の上での政治的な発言と見られても仕方がなかろう。
見方を変えれば、羽毛田長官が天皇を利用して鳩山政権に揺さぶりをかけた、とも取れる。
保守的な宮内庁官僚はこれまでも開かれた皇室を目指す天皇家を牽制してきたと伝えられる。
女系天皇問題に消極的で、皇太子一家に冷たいとの指摘もある。天皇の訪韓に反対してきたことも知られている。
厚労省からの天下り組で宮内庁官僚トップの羽毛田長官が、官僚の天下りやムダ根絶を掲げる鳩山政権を良く思っていないことは十分に想像できることであるが、普天間基地移転問題や日中友好ムードに警戒心を強め、鳩山政権に対して蜂の一刺しを試みた可能性もある。
羽毛田発言を待っていたかのように、自民党が批判の声を上げ、自民党寄りの一部マスコミ言論が声を張り上げ、普天間基地問題などで不満を抱く親米派の外務省官僚までが唱和し始めたのは偶然ではなかろう。
小沢幹事長が「天皇のお気持ちが重要だ」と述べたのは、傾聴に値する。
宮内庁官僚は天皇が率直に発言することにその都度反対し、網を被せてきた。羽毛田長官の言うことが天皇の気持ちでないことだけは確かである。
|