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中ロを説得できず、G8、G20で北朝鮮包囲網構築に失敗したオバマ政権が北朝鮮へのテロ支援国家再指定を断念し、他方で北朝鮮に対話を呼びかけ、軌道修正を図り始めた。
韓国内では“天安優先外交原則”に総力を挙げていた李明博大統領への非難の声が澎湃と高まっており、与党ハンナラ党の内紛激化とあいまって李政権のレームダック化が加速化していくものと読める。
訪米中の李大統領には横っ面を叩かれたような衝撃であったろうが、米国務省のクローリー報道担当次官補は28日、「北朝鮮が広く非難されている天安艦沈没は国際法違反行為ではなく、北朝鮮をテロ支援国家リストに入れることを正当化できない(The sinking of a South Korean warship widely blamed on North Korea was not an act of international terrorism and does not justify putting Pyongyang back on a U.S. blacklist」(Reuters)と述べ、テロ支援国家再指定を断念したことを明らかにした。
G8、G20直前の発言「国際社会が共同で北朝鮮の挑発行為に対して強力かつ断固とした対応をすることが重要だ」(22日定例ブリーフィング)から大幅にトーンダウンしており、事実上の軌道修正である。
前回、前々回指摘したように中国、ロシアの説得に失敗し、圧迫・対決路線の限界を悟ったのであろう。
「北朝鮮の魚雷攻撃」と断定した軍民合同調査団の「調査報告」を鵜呑みにした日本のメディアはいまだに事実を直視することを避けているが、米国は同報告の信憑性を疑い始めたようだ。
クローリー次官補は「天安艦挑発は相手国の軍への攻撃行為であり、国際的なテロと定義することができない」と苦しい言い訳をしているが、天安艦沈没が北の魚雷攻撃によるものなら明白なテロ行為である。北朝鮮の犯行と断定できなくなったというのが本音だろう。
これは私の推測だが、オバマ大統領はメドベージョフ大統領との会談で来月発表されるロシア調査団の調査報告を聞かされたのではないか。
注目されるのは、クローリー次官補が「天安艦沈没は明らかな停戦協定違反行為であり、この問題を議論するために北朝鮮との協議を模索しているが、北朝鮮側が応じていない。非武装地帯で停戦協定違反の問題を協議することは停戦協定で規定された手続きだ。北朝鮮が近隣諸国との関係を改善し、朝鮮半島の非核化のための積極的措置を講じることを望む。このような行動は停戦状態を解決し、半島の平和と安定を構築する環境を作る」と述べ、米朝接触に言及したことである。
最近影の薄いクリントン国務長官は「天安艦問題を解決せずに北朝鮮とは交渉しない」と述べていたが、それとは明らかにスタンスが異なる。
今月中に予定された米韓軍事演習を来月中旬以降へと延期したこととあわせ、停戦協定を平和協定に替えることを主張している北朝鮮に半歩歩み寄ったとも解釈できる。
テロ支援国家再指定を強く望んでいた李大統領には、“天安外交敗北”と言っても過言ではない打撃となる。
クローリー次官補は「北朝鮮の挑発行為に対処するために、韓国との防衛協力を引き続き強化する。先週末、韓米両国首脳は(韓国軍に対する在韓米軍司令官の)戦時作戦統制権(返還延期)の決定をした」と述べたが、李政権への打撃を少しでも和らげようとの配慮とみられる。
しかし、韓国世論は厳しい目を向けている。
「米国がテロ支援国家再指定断念」との記事は各メディアが大きく報じているが、ヘッドラインニュースで取り上げたヤフーコリアの記事には「李明博がいくら米国に忠誠を捧げても、答えはこれだ。ほっぺたを叩かれた」「バブルジェットがなく、蛍光灯も窓ガラスも割れず、水しぶきを浴びた兵士も血を流した兵士もいないのに、何が魚雷攻撃だ」「ふふふ、毅然たる外交の結果がこれか」「北の直接攻撃でない以上、韓国は北に銃一発撃つにも米国の許可を得なければならない。自主国家ではなく、米国の従属国家だ」と、李大統領を嘲笑、批判する書き込みが殺到し、どれも10対1の比率の圧倒的な支持を得ている。
軍民合同調査団の調査結果の嘘はネット上で事細かく暴かれてきたが、これで信用は完全に地に落ちたと言えよう。
公約の四大河川整理事業、世宗新都市建設事業で党内が割れ、大統領の脱党、分党論まで噴出している与党ハンナラは逆風に浮き足立っている。
天安外交の失敗が重なり、6・2統一地方選挙に続き7月下旬の国会議員補選でも惨敗するようだと、李大統領は任期を2年以上残して半身麻痺の状態に陥ることにもなりかねない。
米国への目も険しくなっている。
昨日も朝鮮戦争中に米軍が旧王宮の徳寿宮から持ち去った大量の文化財が米国で発見され、物議を醸している。16強進出、8強挫折のエネルギーがはけ口を求めており、李政権を背後で操っていると疑われつつあるオバマ政権も安閑としてはいられまい。
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天安艦沈没事件検証
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トロントでの20か国・地域首脳会議(G20サミット)が27日(日本時間28日未明)閉幕し、首脳宣言と議長声明を出したが、天安艦問題には触れなかった。
共同議長国として北朝鮮非難を盛り込もうとした李明博大統領の目論見は外れ、“天安外交”は頓挫を免れなくなってきた。
次回11月のソウルG20を開催する李大統領は、G8,G20で北朝鮮非難の流れを作り、国連安保理非難決議へのシナリオを描いていた。米国も「国際社会が共同で北朝鮮の挑発行為に対して強力かつ断固とした対応をすることが重要だ」(クローリー米国務省次官補22日定例ブリーフィング)と全面的な側面支援を約束していた。
だが、G8ではロシアの反対で北朝鮮への名指し非難が流れ、G20では本題の財政赤字削減や景気回復に集中し、天安問題は議題にも上らなかった。
G20で存在感を高めている中国が反対したからである。
KBSなどによると、李大統領は胡錦涛主席との会談で「国際社会の責任ある国家として天安問題に関わる対北公助で役割を果たす」ことを繰り返し求めたが、中国は態度を変えることはなかった。
オバマ大統領も胡主席との会談で同様のことを求めたとみられるが、説得に失敗したとみられ、どのメディアも一切報じていない。
中国外務省の馬朝旭報道局長は26日の記者会見で「今回のG20では朝鮮半島問題は議題でない。沈没事件に対する中国の立場は明確で一貫している。論評せず、議論に加わらない」と述べており、胡主席にオバマ大統領も李大統領も押し切られたということである。
オバマ大統領はG20閉幕後の記者会見で、「我々の関心は、国連安保理が北朝鮮に敵対行為に関与した点を明確に認めることにある」と強がり、「見て見ぬふりをする」として中国を間接的に牽制したが、G20の公式文書に対北非難を反映できなかったダメージは小さくない。
韓国外交筋からは、北朝鮮を間接非難したG8宣言を国連安保理の議長声明などに活用する案が浮上しているが、ロシア、中国の反対姿勢が浮き彫りになり、ブラジルなどが同調しており、可能性は高くない。
李政権は国連安保理の声明などで最小限、北朝鮮の関与認定、糾弾、謝罪・賠償、再発防止、責任者処罰が含まれることを求めているが、その前提となる軍民合同調査団の「調査結果」の科学性が崩れているだけに前途多難である。
http://news.kbs.co.kr/world/2010/06/28/2119421.html 李大統領は天安問題で米国の協力を得るために、かなり無理な譲歩を重ねている。
韓国内では野党を中心に、オバマ大統領との会談で、韓国軍の作戦統制権返還を延期した「軍事主権放棄」、牛肉輸入全面解禁の「経済主権放棄」を約束したのではないかと、「売国外交」を非難する声が高まっている。
鳩山前首相が普天間基地問題での迷走から米国への迎合外交に陥った構図と似ている。
他方の北朝鮮は、朝米将官級会談の北朝鮮側団長が27日、天安沈没事件に関連した通知文を送り、「米軍はこれ以上、国連軍司令部の名義で南北問題に介入すべきではない」とした上で、独自の調査団を派遣し、南北高位級軍事会談を開くことを再提起した。
これについて「天安艦事件を南北間問題として矮小化する狙いがある」との見方もあるが、それ以前に、「北朝鮮の魚雷攻撃が原因」と断定した韓国の調査結果を争う姿勢を明らかにした点に注目すべきである。
中国、ロシアが「科学的で客観的な検証」を求め、北朝鮮を支持する理由もそこにある。
「金正日・胡錦涛の「重大合意」履行を中国強調」で指摘したように、①北朝鮮は金正日総書記が訪中を控えた時期に事件を起こす動機がない、②5月20日の軍民合同調査団の調査結果はどこからでも持ってこれる二次的な証拠ばかりで、矛盾が多く、天安艦の断面、ソナーの記録、天安と海軍司令部との通信記録など肝心の一次的な証拠は全て隠匿されていた。事実、その後、調査結果の嘘が続々と明らかになっている。
最近、CIA長官が「天安事件は後継者問題と関連している」とインテリジェンス活動を強化しているが、話が飛躍している。
なお、菅首相は27日午前(日本時間同日夜)に胡錦濤主席と会談し、「北朝鮮の行為は地域の平和と安全を脅かす行為で,許し難い。安保理においても中国に前向きな対応をお願いしたい」と要請し,胡主席から「朝鮮半島,北東アジアの平和の維持のため、大局的な見地から冷静に対処したい」と一蹴されたという。
外務官僚に取り込まれたのか、大局的でない、冷静でないと忠告されているのが理解できていないようだ。
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日本の大手紙は「G8、北朝鮮を事実上非難」などと苦しく伝えているが、ロシアが北朝鮮魚雷攻撃説を認めず、北朝鮮非難に反対したことは伝えていない。
メドベージェフ大統領はオバマ大統領との会談でも天安艦問題には触れず、G8でも、韓国調査団の結果を受け入れることはできず、北朝鮮を非難することはできないとの立場にブレはなかった。
トロント近郊のムスコカで開かれた主要国首脳会議(G8サミット)は26日(現地時間)、天安艦沈没に言及した首脳宣言を採択したが、北朝鮮への直接的な名指し批判を避けた。
李明博政権は「北朝鮮の魚雷攻撃による」として米国などの協力を得ながらG8での北朝鮮への名指し非難を求めてきたが、国連安全保障理事会に続き今回も失敗したことになる。
首脳宣言の天安艦関連部分は43にわたる膨大な合意項目の34番目で、要旨以下の通り。
「46人もの命が犠牲になった天安艦沈没をもたらした3月26日の攻撃を嘆く。(韓国の軍民合同調査団の調査報告に言及しながら)この脈絡で我々は天安艦沈没を起こした攻撃を非難する。朝鮮民主主義人民共和国に対して韓国への攻撃や敵対的な行為を慎むように求める。また、事件の責任所在究明のための韓国政府の努力を支持する」
外交文書によくあることだが、様々な立場・思惑を秘めた妥協の産物というべき曖昧な文言であり、その解釈は解釈するもののスタンスや思惑で異なってくる。
先月20日の軍民合同調査団の調査結果を鵜呑みし北朝鮮非難の社説を掲載した日本の大手紙は引っ込みがつかなくなり、「G8、北朝鮮を事実上非難」と一面トップで伝えた朝日をはじめ、「G8北朝鮮を非難」(毎日)、「韓国哨戒艦沈没で北朝鮮を非難」(読売)と報じるが、「国連安保理での名指しの非難を後押しすることになり、慎重姿勢を保つ中国への圧力にもなる」(朝日)などと、強引な解釈が目に付き、歯切れが悪い。
読売記事は「韓国哨戒艦沈没事件で北朝鮮を名指しで非難し」とあるが、明らかな誤報であり、訂正すべきであろう。 議長国のカナダ政府当局者は26日の記者会見で、「カナダとしては(北朝鮮の)攻撃は強く非難されるべきだとの立場だ。北朝鮮にこのような攻撃を二度としてはならないと言わねばならない」と強硬姿勢を示していた。
宣言に名指し非難が盛り込まれなかったことは逆に、ロシアの反対がそれだけ強かったことを意味する。
韓国の聨合ニュースは「北朝鮮への直接的な非難を避けたのはロシアの反対のためだ。ロシア代表団関係者は『調査団結果は最終的なものとは見なされておらず、北朝鮮を非難することは否定的な結果につながる』と語った」と伝えている。
それは「天安艦事件検証(24)オバマがテロ支援国再指定を見送る理由(下)」で「調査結果を疑っている中国、ロシアの説得には成功しないだろう」と指摘したように、十分に予測されたことであった。
ロシアのメドベージェフ大統領はG8直前のオバマ大統領との会談でも報道を見るかぎり天安艦問題には一切触れていない。オバマ大統領は説得に努めたが、功を奏しなかったとみられる。
G8宣言をよく読むと、間接的に調査結果に触れながらも北朝鮮関与は断定せず、今後の真相解明に余地を残している。
ロシアは韓国に派遣した調査団の報告を来月発表するとしている。それによってロシアの態度はより明らかになろう。
なお、日経によると、菅首相はG8でカナダ首相から冒頭発言を求められ、「非難すべきは非難すべき」と主張したという。
その通りだが、非難は責任あるものになされなければならない。北朝鮮による魚雷攻撃を断定した「調査結果」の嘘が次々と暴かれ、韓国国内でも信用を失っている。
思い込みで突っ込むと、第二の普天間問題となりかねない。
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米国の最大のジレンマは、韓国国会で対北朝鮮非難決議案が野党の反対で採択されていないことである。
北朝鮮の犯行と断定した「調査結果」は事実上、李明博政権という一政権の判断であり、韓国民の総意ではない。国連安保理決議も見通しが立たず、正当性に欠ける「調査報告」でのめり込みすぎると、内政干渉との反発を招きかねないのである。
そこから、対イスラエル問題でもよくみせる米国一流のダブルスタンダードが出て来る。
オバマ大統領以上に焦っているのが李大統領である。
与党ハンナラ党のキム・ムソン院内代表は22日の院内対策会議で「対北非難決議案を明日の国防委と28日の本会議で必ず採択する」と声を張り上げ、翌日午前、国防委全体会議で「北韓の天安艦に対する軍事的挑発糾弾および対応措置要求決議案」を可決させたが、民主党議員が反発する中、表決手続きなしに与党国防委員長が押し切る強引なものであった。
決議案は天安艦沈没原因を北朝鮮の魚雷攻撃によるものとした軍民合同調査団の「調査結果」を受け入れ、北の謝罪・責任者処罰・賠償・再発防止約束要求と同時に、政府に軍事的、非軍事的対応措置を取ることを求める。
同決議に対しては、国防委民主党幹事のシン・ハクヨン議員らが「調査結果」に矛盾が多いことを指摘し、「27日に終了する天安艦真相調査特別委員会が結論も出していないのに乱暴な行為だ」として決議無効を主張した。
同決議は、今週末からカナダで開かれる主要8か国首脳会議や李大統領も参加する主要20か国・地域首脳会議を意識したものであろう。
事実、クローリー米国務省次官補は22日の定例ブリーフィングでG8やG20で天安艦対応策が話し合われるとし、「国際社会が共同で北朝鮮の挑発行為に対して強力かつ断固とした対応をすることが重要だ」と述べた。
なお、中国が黄海で計画されている米韓軍事演習について懸念の意を表明していることについてはコメントを避けた。
http://kr.news.yahoo.com/service/news/shellview.htm?linkid=4&newssetid=1352&articleid=2010062305433793001 オバマ大統領と李大統領は韓国国会での対北朝鮮決議を韓国の総意とみなして議論をリードする作戦とみられるが、6・2選挙で大勝した民主党など野党がボイコットしており、相当に無理がある。「調査結果」を疑っている中国、ロシアの説得には成功しないだろう。
一度は支持を表明した国連非常任理事国のブラジルも、カヒルリョ・ピョンヤン駐在ブラジル大使が19日、北朝鮮との交易拡大と食糧支援を準備中であるとして、対話の必要性と追加制裁反対の立場を表明しており、G8やG20が一致して対北朝鮮非難声明を出す可能性は高くない。南米の大国・ブラジルは今や中国に次ぐ北朝鮮の二大貿易国である。
無策を批判したアフガン駐留米司令官を更迭して辛うじて面目を保ったオバマ大統領と言えども、状況が全く読めないほどお人よしではなかろう。
北朝鮮のテロ支援国家再指定を見送ったのは、交渉の窓口を塞ぐことを避けたからであった。
また、北朝鮮への大規模な軍事的な示威として横須賀基地から原子力空母のジョージワシントンを派遣して黄海で実施すると伝えられた米韓軍事演習についても、「まだ正式に決めたわけではない」として最終結論を先延ばし、含みを持たせた。
事態はそれほど複雑化している。
「天安艦事件検証⑯天安艦対応で米中が舌戦、対立」でも指摘したように、クリントン国務長官の性急さが災いして、中国は米国が天安艦事件を利用して地域の軍事プレゼンスを高めようとしていると警戒し、中米対立の局面まで現れている。
それ以上に米国が内心恐れるのは、李政権の強引な手法に対する韓国野党や国民の反発が米国に向けられることである。
と言うのも、天安艦と対潜合同軍事演習をしていた米軍の関与が早い時期から疑われていたからである。天安沈没から間もない4月7日にKBSが9時の「ニュース9」特集「謎の第3ブイ なぜ?」で、米軍ヘリコプターが米兵らしき遺体を運び去る映像、潜水艦のような物体Xが沈没していたとの潜水隊員の証言を報じ、米原潜との衝突説が拡散した。韓国国防部が「誤報」として名誉毀損で告訴し、ビデオは現在も押収されたままである。
米国が李政権に過度に肩入れすると、その疑惑があらぬ方向に噴出しかねない。
歴史の悪戯であろうか。2002年6月に女子中学生2名が米第2歩兵師団装甲車に轢かれた事件を契機に韓国全土で燃え上がった反米闘争は、日韓共催のワールドカップ終了直後であった。韓国は4強に入り、ナショナリズムが高揚し、そのエネルギーが一挙に米国に向けられた。
南アでの今回競技で16強に入った韓国では、当時に似た状況が醸し出されつつある。
そのためか、米国は李政権と微妙に距離を置きはじめた。国連と協力して1億7千万ドルの対北支援を検討し、ピョンヤン駐在国連職員を募集しているとFOX Newsが6月2日に報じ、米国務省ホームページでも紹介されている。
米国務省が6か国協議再開に言及し始めたこととあわせ、局面がどう転換しても対応できるようにとの狡知が働いていると考えるのは穿ち過ぎであろうか。
いずれにしても、制裁一辺倒の日本にない選択肢を残していることは間違いない。
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オバマ政権は天安艦沈没事件を理由に北朝鮮をテロ支援国に再指定する動きを見せていたが、「見送る方針を決めた」と読売新聞が伝えた。
ずばり言えば、軍民合同調査団の調査結果に確信をもてなくなったからである。6か国協議再開を口にしだしたのも偶然ではない。
23日付の読売が「複数の米政権関係者」の話として、「現状では再指定の要件を満たすのが困難な上、北朝鮮を過度に刺激し、3度目の核実験実施など危機的状態にエスカレートすることを避けたいため」と伝えた。
米政府は大韓航空機爆破事件翌年の1988年に北朝鮮をテロ支援国に指定し、6か国協議進行中の2008年に指定を解除した。しかし、天安艦沈没を北朝鮮の魚雷によると断定した「調査結果」が発表された5月20日直後から米日が国連安保理対北追加制裁決議採択や独自の制裁強化で口裏を合わせ、クローリー国務次官補(広報担当)は政権内で再指定を検討していることを明らかにした。
それを断念したのは、ロシア調査団からも「調査結果」の矛盾や嘘が暴かれ、北朝鮮犯行説に自信が持てなくなったからに他ならない。
国防総省からはすでに事故説が漏れ出ている。
「北朝鮮を過度に刺激し・・・」云々は逃げ口上でしかない。申善虎(シン・ソンホ)北朝鮮国連大使が「国連安保理が北朝鮮を非難する文書を出せば、軍が対応措置を取る」(記者会見15日)と述べたのは、表現は極端だが、濡れ衣を着せられた側として怒るのは当然のことであろう。
その意味で、無用に緊張を高めているのは、北朝鮮ではなく、米側なのである。
オバマ政権の腰が引け始めた背景には、中ロが北魚雷説否定の姿勢をあらわにしていることに加え、韓国内の対米視線が厳しくなっていることがある。
米国が北朝鮮への軍事的示威として計画している韓米軍事演習についても、「地域での覇権的思惑から、意図的に緊張を利用しているのでは・・・」と疑いの目が向けられ、米国が恐れる反米感情を再燃しかねない状況が生まれている。
2002年6月に京畿道楊州市で女子中学生2名が米第2歩兵師団装甲車に轢かれて死亡した事件では、ソウルの米大使館や全国の米軍基地にデモ隊がなだれ込み、韓米地位協定 (SOFA)是正、ソウル中心部の米軍基地返還などの在韓米軍基地縮小再編へとつながった。
米軍に占領されて骨抜きにされ、普天間基地一つ満足に解決できない日本と異なり、韓国では民主化運動たけなわの時代から独裁政権を擁護してきた米国への批判的な視点が伏流水として流れている。
オバマ政権としては、日本とともにアジアの拠点と頼む韓国でその伏流水が噴出する悪夢だけは避けねばならないのである。
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