河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

迷走する米国

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全米に、そして、全世界に、大きな衝撃が徐々に広がりつつある。
「民主社会主義者」を自認するバーニー・サンダース上院議員が9日、ニューハンプシャー州の民主党大統領候補予備選で60%の得票で38%のヒラリー・クリントン前国務長官に圧勝したのである。

出馬当初は泡沫候補扱いであったが、初戦のオハイオ州党員集会で本命視されていたクリントン候補に0・1%の僅差まで迫り、全米を驚かせた。
その直後のニューハンプシャーで見事に雪辱を果たし、勢いが本物であることを如実に示した。30歳未満の83%、無党派層の72%(CNN出口調査)もの支持を獲得し、民主党大統領候補に選ばれる可能性も浮上してきた。
全米の支持率ではまだクリントン候補に及ばないが、有力紙ワシントン・ポストは「鍵となる黒人とヒスパニック票の争奪戦が始まった」と、大逆転もあり得ると伝えている。

サンダースの台頭に危機感を募らせているのが、民主党指導部のestablishment(既得権益層)である。
DNC(民主党全国委員会)はサンダース候補が逆転したと一部で報じられたオハイオ州党員集会の最終集計を明らかにしなかったばかりか、08年の大統領選挙でオバマ候補が公約したワシントンのロビイストらの献金禁止を凍結した。
その一方、Priorities USA Actionが500万ドル寄付を急遽発表するなど、大企業がなりふり構わずクリントン候補への資金援助を強化している。

米国では大口献金者の政治献金を無制限に受け入れるスーパーPACなる独特の資金団体制度があり、資金力があるものが勝つ金権選挙の温床となっている。
トランプ候補ら共和党のお家芸である金権選挙に頼らざるをえないところまで、民主党のestablishmentが追い詰められていると言えよう。

しかし、そうした露骨なテコ入れは逆に反発を高め、サンダース候補に弾みをつけるとの指摘も説得力を帯びている。
サンダース候補はクリントン候補とウオール街との癒着をかねてから批判し、支持率を伸ばしてきただけに、今後の展開がますます注目される。

サンダース候補を押し上げているのは、1%の富裕層に富が集中し、政治まで牛耳られている米国の現実である。
それを打破する「政治革命」を訴え、富裕層への累進課税強化による格差是正、公立大の授業料無料化、最低賃金引き上げ、国民皆保険化を公約に掲げる。非現実的との批判も浴びるが、行き詰まっている現実への斬新な処方箋として広く人々の心をとらえている。

サンダース旋風の背景には、一昨年来、米国でベストセラーとなったピケテイーの『21世紀の資本』の影響もあろう。
同書でピケテイーは「格差拡大で資本主義は成長が止まって行き詰まり、革命が起きる」と喝破した。サンダース候補の「政治革命」はその脈絡から発せられたものであり、没落する中間層、特に知識人や青年が共感を覚えて27ドルの小口献金やボランテイア活動など熱狂的な投票行動に出ている。今後も拡大していくだろう。

サンダース上院議員の「政治革命」は唐突に出されたものではなく、以前から同様な主張を述べていた。いわば、筋金入りの左派である。
学生時代からベトナム反戦運動に参加し、キング牧師の人種差別反対運動にも熱心であった。政治家を志し、バーモントン州の地方市長から無所属の下院議員、上院議員となり、民主党と同一会派を組んだ。

共産主義や左派を弾圧した1950年代のマッカーシー旋風以後、労働運動が盛んでメーデーの発祥地でもあった米国で社会主義が異端視されるようになったが、憲法で禁止しているわけではない。
サンダース候補は討論会で「社会主義者なのか?」と訊ねられ、「民主社会主義者だ」と悠然と答えている。
74歳とやや高齢だが、経験豊富であり、現実主義的な理想主義者と言うべきであろう。アウトサイダーの双璧に挙げられる共和党のトランプ候補よりはるかに経綸の才豊かであり、クリントン候補にも決してひけをとらない。

後付けの結果論ではなく、サンダース現象は『二人のプリンスと中国共産党』で予測したことである。
中国の習近平主席の腐敗撲滅運動(思想純化路線)と共にG2に現れた現代世界の必然であり、官僚主義と経済失政で破綻したスターリン式社会主義や、今や限界を露呈しつつある資本主義に代わる社会再生の試みであると書いた。
勢いを増すサンダース現象は、その予測を検証する格好の場ともなった。

同じ格差拡大問題を抱える日本の参院選にも少なからぬ影響を及ぼすだろう。

 オバマ米大統領は17日、オーストラリア議会での演説で、安全保障政策でアジア太平洋地域を「最優先」に位置づけ、地域の秩序作りを主導する新アジア太平洋戦略を発表した。
 唐突な新戦略にはオバマ政権の焦りが垣間見える。「米国は太平洋国家であり、ここにとどまる」と強調したが、留まらなくてはならない事情があるということである。

 一部メディアは台頭する中国を軍事面で牽制とか、北朝鮮情勢に対応と伝えるが、逆立ちしている。
 膨大な対外債務を抱え、失業増大と格差拡大で国内対立が深刻化し、経済問題が最大の安保に浮上している中、債務危機に火が付いた欧州は当てにならず、世界の成長センターのアジアに踏みとどまって経済的権益を最大限追求しようというのが真の狙いである。

 中国牽制、北朝鮮云々はそのための後付の理屈である。
 韓国の李明博政権や日本の野田政権はそれを読めずに右往左往し、米中の間で股裂き状態に成りつつある。
 余談だが、西岡力・荒木和博グループと産経など従米右派メディアが「米国が本腰を入れ始めた。金正日政権崩壊は近い」とはしゃいでいるのは軽薄の極みと言うべきである。

 オバマ政権はアフガニスタンとイラクからの米軍撤退を加速化させている。それ自体は歓迎すべきとしても、動機が身勝手で、良くない。
 財政難で国防費の大幅削減を迫られる中での背に腹は変えられない措置であり、明確な世界戦略に基づくものではない。地域を不安定化させ、力に余るから出て行くという無責任さは否めない。
 同じようなことをアジアで繰り返す危険性がないとは言えない。

 アジアが米国経済の浮沈を握るとの認識は米国でも普遍化しつつある。
 アフガニスタン、イラク撤退で幾分余裕が出てきた軍事力をアジアに振り向け、最大限の経済的な譲歩を勝ち取ろうという作戦であろう。
 インド洋から南シナ海に至るシーレーン(海上交通路)、一部ASEAN諸国と中国が海洋権益を巡って対立する南シナ海、日中が領有権を争う尖閣(魚釣)、北朝鮮核問題や朝鮮南北対立は格好の材料であり、漁夫の利を得ようと関係国を揺さぶってくることは明らかである。
 乗せられるほうが馬鹿、と言ってしまえばそれまでだが、利権は国境を超えており、複雑化している。

 当面はASEANが主舞台に成る。17日のASEAN首脳会議はASEANに日中韓など6カ国が加わる「広域自由貿易圏」の構想で合意し、米国の参加には慎重である。
 その一方で、「広域自由貿易圏」加盟国をASEAN側が自主的に決めるとし、中国の温家宝首相からも同意を取り付け、フリーハンドを確保した。

 18日からインドネシア・バリ島で中米首脳会議が持たれるなど多数派を形成する入り乱れた外交戦が展開されている。
 軍事偏重の硬直した安保観念に捕らわれ、柔軟性を喪失した国が脱落していくであろう。

 ニューヨークで青年学生たちが格差是正、失業対策などを求めてデモを行い、インターネットを通して全米各地に拡散している。
 米国民の1%が富の20%を独占する極端な格差社会の米国はもはやモデル社会ではない。

 少し前にイギリスでやはり青年たちの大規模反政府暴動が起きた。
 今後ともこの種のデモや暴動が英米など先進資本主義国で頻発しよう。国家の累積財政赤字が限度に達し、効果的な財政出動が困難になり、有効需要喚起による景気浮揚策が打てなくなった。
 成長幻想を捨て、今ある富の公正な分配からはじめるしか、先進資本主義国の未来はない。

 原論的には現在進行している事態はマルクスの資本論の最終章なのだが、その先が不透明なのが最大の問題だろう。
 失敗したレーニン型社会主義を超える新しい社会主義像を描けるか、それが課題だ。

 今朝の朝日新聞のコラム「ブッシュ氏のエリートパニック」はいわゆる反テロ戦争なるものの愚かな本質を当のブッシュ前大統領らの著書(大半は代筆)に表れた9・11当時の行動を通して浮かび上がらせ、秀逸のできであった。
 一言で言えば、反テロ戦争なるものは小心者ブッシュの妄想の産物ではなかったか。

 9・11当日についてブッシュ回顧録は「ショックに陥ってはいけないと冷静だった」とするが、明らかに事実に反する。
 小学校視察中にテロ発生を伝えられた直後の記者会見で、放心し、恐怖に怯えた模様がカメラにはっきりと撮られている。

 その直後、10時間あまり姿を現さなかったが、ネブラスカ州に退避したとチェィニー副大統領は『我が時代』で明かしている。
 ブッシュ本人の希望で退避、つまり、逃げたのだろう。

 女房の『真心からの言葉』は、首都に戻ったブッシュは深夜、敵機襲来の声に起こされ、「大統領は私にコンタクトをつける間も与えず、寝間着のまま二人で階段を駆けおりた」という。
 ニューヨーク支局長のコラム氏は「テロ初日、ブッシュ氏は朝から晩まで逃げていた」と書くが、同感である。

 ブッシュは自分の身可愛さに右往左往した小心者で、とうていリーダーの器ではない。
 反テロ戦争はそうしたブッシュ個人の恐怖感、報復心理によって始められたと言っても過言ではない。容疑者への令状なき拘束、拷問は常軌を逸したブッシュの性格によるところが大きい。実際、退任後、「重要案件はしばしば勘で決断した」「最後は自分の直感を信じた」と述べている。十字軍気取りの宗教戦争の気分だったのであろう。

 大量破壊兵器があると思い込んでイラク攻撃に踏み切るが、本人は「兵器が見つからずに世界でもっともショックを受けたのは私だ」とぬけぬけと書いている。
 それによって数万、数十万のイラク市民が犠牲になったが、ブッシュの罪が問われるのはこれからである。

 このコラムを読んで改めて、ソ連末期の優柔不断なゴルバチョフとアル中の保守派のクーデターを思い出した。
 国家の終末期には成ってはならない人物がリーダーになり、墓堀人役を演じる。
 ブッシュのような人物が大統領として二期勤めた間に米国の衰退が顕著になってきたが、旧ソ連と同じ道を辿るのであろうか。

 最後に欲を言えば、コラム氏は反テロ戦争の最中にそうした記事を書くべきでなかったか。
 日本のマスコミはいつも反応が遅い。

 オバマ大統領は1日夜(日本時間2日)、ホワイトハウスでの緊急演説で、オサマ・ビンラディンを米軍がパキスタン国内で殺害し、遺体を確保したと発表し、「最大の成果」と自賛した。
 だが、ビンラディンの遺体は米軍艦船でアラビア海北方に運び、水葬したという。遺体の受け入れ国を探すのが困難なことが理由というが、矛盾した行動には報復への怯えが見える。

 ビンラデイン一人始末するのに米国は膨大な死傷者と時間、カネを使った。敵も多くつくった。米国流経営学で言えば明らかなコスト倒れであり、もう立ち直ることはできないだろう。
 過大な軍事費負担が悪化させた累積財政赤字は5月中旬に債務上限法上限の14兆3000億ドル(1200兆円)に達する見通しだ。国内対立も激しくなり、野党共和党が上限引き上げに反対すれば新規国債発行ができなくなり、ギリシャのようなデフォルトもありうる。

 それ以上に、米国の知的道徳的衰退はもはや覆い隠せない段階に来ている。
 米国がビンラディンの亡霊に怯えるのは、自身に道徳的な確信がないからにほかならない。
 
 ビンラディンはイスラマバード近くの民家に潜んでいたが、米軍特殊部隊がヘリで攻撃して殺害したと言う。国家による個人の暗殺であり、国際法上は違法の疑いが濃い。
 そこに10年に及ぶ米国の反テロ戦争の本質が垣間見える。
 
 ビンラディンの無差別テロは決して許されないが、それを招いたのは米国である側面を無視できない。
 ビンラディンは旧ソ連のアフガン侵攻に対抗し、米国が支援するイスラム・ゲリラに参加したが、米国が91年の湾岸戦争でイラクを攻撃し、サウジが米軍駐留を認めたことに反発して反米闘争を開始した。
 イスラム圏が裏切り者はどちらかと怒るのは一理ある。

 ブッシュ前大統領は、イスラム圏の反発をテロと決め付け反テロ戦争を前面に押し出して、イスラム圏全体を敵にしてしまった。
 そこには狂信的なキリスト教福音派のブッシュ前大統領の資質と共に、ソ連崩壊に伴うポスト冷戦時代の覇権確立を狙い、米国の国益を前面に出した国家エゴが潜む。

 米国の正義は、米国が世界に広めた国家エゴ=ナショナリズムとともに根底から揺らいでいる。
 それは人類社会を蝕み、怒りと憎悪で分裂させている。
 「ビンラディンの死で終わるわけではない」とクリントン国務長官は述べたが、米国自身が変わらなければ世界の混乱は今後とも深まりこそすれ、収まることはないだろう。

 

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