河信基の深読み

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 国連人種差別撤廃委員会は高校無償化で朝鮮高校を除外することを「差別」と明確に批判したが、産経新聞は社説や各記事でそれに反し、人種差別と対立を煽る記事を引き続き流している。
 同紙については「産経新聞に良識は残っているか?」「拉致に絡め民族教育抹殺を狙う」と批判したことがある。しかるに、その後も全く反省することなく、マイクロソフトの配信を悪用しながら国連や日本国憲法の人権保障規約に背を向けた民族排外主義的なプロパガンダ記事を流している。
 
 産経は健全な保守系紙の枠をはみ出し、極右のプロパガンダ紙と化したのではないかと思わせるのが、今朝の「総連、朝鮮学校無償化へ攻勢 『日本人になりすませ』 文科省への電話指示、ノルマも」なる記事である。
  要旨は以下の通り。
 
 朝鮮総連が生徒の父母らに文部科学省に電話攻勢をかけるようノルマを課していたことが12日、内部文書から分かった。複数の日本人になりすまして電話回数を稼ぐよう指示。朝鮮総連関係者から入手した内部文書によると、指示は5月7日に総連傘下の女性団体などに出された。
 文書では「『高校無償化』がわれわれの学校に適用されるまで全組織、全同胞を立ち上がらせ闘争し続ける」とげきを飛ばし、無償化適用を求める署名を「1人当たり100人」集めるよう指示。
 文科省が開設した無償化の相談窓口「高校就学支援ホットライン」を通じて無償化即時実施を求める要請活動を展開するようにも命じた。関係者によると、この文書が出された際、総連幹部は「一般の日本人になりすまして複数回電話するように」命じたという。関係者は「日本人も適用に賛成していると見せた方が効果がある」と説明する。ホットラインには「一日も早く適用してほしい」との意見が実際に寄せられ、「正確な数は集計していないが、少なくない」(文科省担当者)という。なりすましについて、担当者は総連による動員については「コメントしかねる」としている。
 http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100613/kor1006130120000-n1.htm
 
 安明進・元北朝鮮工作員のデタラメ“証言”を垂れ流した産経の癖は、少しも直っていない。
 産経が協力者から入手したという“内部文書”は署名活動など組織活動の強化を指示しているが、それが事実としても、憲法が規定する人権保障や請願権の正当な行使であり、法律上、何ら問題はない。
 それを問題視する産経の憲法観が歪んでいるだけのことである。戦前憲法への改憲を主張する時代錯誤的なこの新聞らしいともいえる。
 
 一般紙にあるまじき謀略性がうかがわれるのが、「関係者によると・・・日本人になりすまし」云々の部分である。
 産経の狙いは、謀略的な未確認情報を既成事実のように流し、民族的な敵愾心と対立を煽るところにある。そうして、高校無償化からの朝鮮高校除外を固定化しようということであろう。
 これまでも同紙が「関係者」なる正体不明のソースで世論を誘導する風説的な記事を流してきた前科は数限りない。安元工作員をはじめとする北朝鮮情報はほとんどがその種の捏造まがいのものであった。
 
 産経特有の差別記事の対象は在日朝鮮人に限らず、韓国人、中国人ら外国人、さらに、部落、沖縄、アイヌ、女性、貧困層など広範にわたる。
 外国人参政権や夫婦別姓、少子化対策、子供手当てなどに反対する根は同じである。
 
 同記事は「総連の無償化運動がモラルを著しく逸脱し・・・」とするが、モラルのない新聞が云々するモラルとはいかなるものか。
 国連機関が「差別」と非難することを公然と社説や記事で煽る新聞の存在は、一体何を物語るか。
 菅直人新首相は人権擁護を政策理念に掲げたが、「言論の自由」を口実に新聞という公器に差別や民族対立を助長する偏向記事が公然と流れる悪しき現状への是正措置が求められる。

 産経新聞は「小沢一郎容疑者」と、小沢民主党幹事長を監獄を連想させる格子入りの写真で報じ顰蹙を買った。また、市民団体を装った小沢氏への告発人には元産経新聞記者が二人含まれていた。
 つまり、自作自演で公党の幹事長を「容疑者」扱いし、検察リークを垂れ流しながら追い詰め、政権交代を葬り去ろうとしたわけである。

 そうした謀略的な目的が先にありきで偏向報道をする癖がこの新聞にはあるが、朝鮮学校の授業料無償化問題でも全く同じ構図を繰り返している。
 先月27日の『主張』「高校無償化 朝鮮学校の説明は不十分」では「朝鮮学校の無償化問題は、拉致問題と無関係ではあり得ない」と主張したことに私は「国連の人種差別撤廃委員会でも差別、人権保護に反すると批判された無分別な言い分であり、この新聞独特の世論誘導のイメージ捏造戦術」と厳しく批判した。

 だが、産経の民族差別的体質はなかなか変わらないようである。
 今日の主張「朝鮮学校 “北崇拝”に税金出せるか」でも、「各教室に故金日成主席・金正日総書記父子の肖像画が掲げられている。拉致された日本人のことを考えると、国家テロを主導する独裁者を神聖視する教育は国民感情として受け入れられない」と、国連での批判をよそに引き続き拉致と絡めている。

 民族教育憎さの感情に基づく糞味噌の暴論というべきである。
 再販制度など政府から特別の優遇措置を受けている公器たる新聞が、このような偏った差別感情や拉致問題に絡める政治的な思惑から朝鮮学校を誹謗中傷することが許されるのか。
 産経の社会的な役割、言論の自由、さらには民主主義の根幹に関わる問題を提起しているように思える。

 詭弁が混じっていることも無視できない。
 産経自身、学校における国旗掲揚、国歌斉唱、天皇崇拝愛国教育の重要性を主張してきたことは周知のことであり、朝鮮学校に対してその排除を求めるのは身勝手な屁理屈ではないのか。
 アメリカンスクールでも国家元首に対して朝鮮学校と同様の位置づけをしているが、それには目をつむり、朝鮮学校に対してだけ文句をつけるのは強きに媚び、弱きに傲慢な卑屈な態度に見える。
 岡田外相が明言しているように「外交や拉致とは教育は無関係」との初歩的な認識、分別をわきまえるように産経新聞には重ねて求めたい。

 朝鮮学校かは東大、京大、早慶などに多数進学し、崔洋一監督ら有能な人材を多数輩出し、日本社会の発展に寄与している。
 産経がカリキュラムがどうのと因縁をつけるのは、ためにする議論でしかない。 

 また、「無償化が適用されれば、朝鮮学校に生徒1人当たり年額12万円の就学支援金が支払われることになる。それにふさわしい学校だろうか」と難癖をつけているが、在日は税金を負担しており、日本人高校生と差別するほうがおかしい。
 要するに、産経の理屈は反対のための駄々っ子的な屁理屈でしかない。

 大阪府の橋下徹知事が「拉致問題を切り離して考えることはできない」と述べたことを鬼の首でもとったように喧伝しているが、これは産経新聞記者がインタビューで巧みに引き出した言辞であり、自作自演の「小沢一郎容疑者」と同じ発想である。
 情報の質も疑問符が付く。いわゆる拉致問題でも覚醒剤密輸・使用の安明進・元工作員のデタラメ情報を垂れ流したことに謝罪もなく、検察リークを垂れ流した小沢報道でも謝罪無しである。

 誤った差別を正すのではなく、歪んだ民族差別を社会に広めようとする産経は、真に新聞の名に値するのか、根本的に考える時に来ているように思われる。
 

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