河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

東アジア国際関係論

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ちょっと意外であったが、安倍首相が19日の国際法曹協会の年次総会に出席し、「孟子は『天下が乱れれば力のある大国が支配する』と言っている。孟子のいう天下無道の時代に戻ることは許されない」と、古代中国の思想家を引き合いに出して、中国を批判した。
尖閣問題での対立を念頭に置いたものであるが、公の席で中国批判を再開したのは、来月の北京APECでの日中首脳会談が無理と諦め、予防線を張ったのであろう。

それはともかく、私が少々驚いたのは反中の急先鋒である安倍首相が孟子を引用したことである。
ゴーストライターがいるとはいえ、首相の意向なくしてあり得ない。

これが意味するところは、日本、中国、さらに韓国・朝鮮も含めた東アジアは、漢字、儒教、小乗仏教を共有する文化圏であるが、それぞれの国民意識には固有性がある。そして、不幸にもその違いが文化の衝突を引き起こしていることである。
最近、ある地方から講演を頼まれ、あれやこれや考えを巡らせているうちに、この根本的な問題意識に思いが至った。

文化の共通性が接着剤の役割を果たした時期もあった。
しかし、昨今は、違いばかりが過度に強調され、「反日」「反韓」「反中」が激しくぶつかっている。孟子の解釈も国次第である。

よく考えると、これは国際的な潮流であり、私の見立では、2001年の米同時多発テロが端緒である。
それを口実にブッシュが極端な愛国主義路線を打ち出し、米国の国益を全面に出した一国行動主義でアフガン、イラク侵略に突っ走り、今日のような世界秩序の破壊をもたらした。

私はブッシュ政権の理不尽な行動がどこから起きるのか、想像は出来ても、実感することが出来なかった。
しかし、朝日新聞の論壇時評(9月25日付)で高橋源一郎氏が紹介した米国の作家、スーザン・ソンタグの受難を知って、なるほどと思えた。

それによると、ソンタグは同時多発テロ直後、「まず、共に悲しもう。だが、みんなで一緒に愚か者になる必要はない。現実を隠蔽する物言いは、成熟した民主国家の名を汚す」と、米国民に冷静な対応を求めた。

ところが、米国中から「売国奴」扱いされ、04年、バッシングと闘う最中に死亡した。
その後の展開はソンタグの指摘が正しかったことを示しているが、世界大戦直後のマッカーシー旋風が再燃したような熱狂に包まれた米国は、それを理解する寛容性や知性を失ってしまった。その後遺症に今も苦しんでいる。

翻って昨今の東アジア。
一周期遅れの愛国熱が米国から伝染し、70年地域の平和を維持してきた戦後秩序が根底から揺らいでいる。
エボラ熱の拡散に勝るとも劣らない深刻な事態である。「愛国」「売国奴」で他人や他国を攻撃する悪性ウイルスが急速に政治を劣化させており、根本的な対策が必要ではないか。
黄炳瑞北朝鮮軍総政治局長ら大物3人の電撃訪韓に衝撃を受けているのが、安倍政権である。
拉致問題でもたついている合間に韓国に先を越されてしまい、日朝協議先行で韓国、中国を揺さぶる思惑が狂ってしまったからである。

私が1ヶ月半前の南北関係エントリーで読んだ通り北朝鮮は変則的に第二回南北高官級協議に応じてきたが、朴槿恵政権は突然飛び込んできた北からの賓客で外交の幅がグッと広がり、中国との関係を損なってまで対日交渉を急ぐ必要がなくなった。
中国はと言えば、「中韓はドアを閉めていない。安倍政権の対応次第だ」(邱国洪・新駐韓大使9月17日)と、歴史認識で韓国と共闘する立場を鮮明にしている。
韓国の一部には中国に先を越されるのではとの不安があったが、杞憂となった。

安倍首相は3日の衆院予算委で「日本が国ぐるみで性奴隷にしたとのいわれなき中傷が世界で行われている」と従軍慰安婦に関する河野談話を否定する答弁をした。
韓国外務省は「深刻な懸念」を表明し、具体的な行動を見守ると批判しており、拙速に動くことはないだろう。

安倍首相が日韓首脳会談開催に焦るのは、日韓米連携を重視する米国からの圧力があるからであるが、従軍慰安婦など歴史認識問題で屈したとの印象を与えると保守層の支持を失う。
そうしたジレンマから、最近、安保問題で韓国を揺さぶろうとしている。

「朝鮮有事に在日米軍基地から米軍機が出動するのは、日本政府の了解を得なければならない」(安倍首相答弁。参議院予算委9月中旬)というのがそれで、「在日米軍基地は国連軍司令部の後方基地であり、日本政府が介入する根拠がない」とする韓国側と対立している。
米国の伝統的立場は韓国と同じであるが、建前論として安倍首相の主張も無視できない。

しかし、東アジアのホットラインは朝鮮半島の38度線から東シナ海の尖閣(釣魚)諸島に移りつつある。
米国が最も憂慮するのも、日中衝突である。
東アジアの対立軸が根本的に変化しつつあることを見逃してはならない。

歴史認識問題は安倍首相のアキレス腱である。
頑なな態度を取り続けると、韓国、中国だけでなく、米国の不信をも強める。日本の孤立は決定的になろう。
安倍政権周辺からは11月の北京APEC首脳会合を機に韓国、中国との首脳会談開催の期待値が上がっているが、難しいだろう。
水をさしたのが、萩生田・安倍自民党総裁特別補佐官がブルームバーグとのインタビューで述べた「11月以降、安倍首相は靖国神社を参拝するだろう」との発言である。昨年暮の安倍靖国参拝をお膳立てした側近の発言であり、安倍首相の本音を代弁しているとみて間違いない。

朴槿恵大統領、習近平主席が安倍首相との会談に応じた直後に安倍首相が靖国に参拝ということにでもなれば、両首脳の面子は潰れ、外交的なダメージも小さくない。
それ故に両国とも安倍首相との首脳会談に慎重であったが、萩生田発言でリスクが高まったことになり、より慎重にならざるをえない。

韓国外務省報道官は萩生田発言を批判し、日韓の懸案事項である旧日本軍慰安婦問題などで「誠実な対応が必要だ」と釘を刺した。
朴槿恵大統領は韓国修交50周年の来年を「韓日関係改善元年にしたい」と述べており、首脳会談を先送りし、安倍政権の対応を見極めることになろう。

旧日本軍慰安婦問題に関する朝日新聞の一部誤報訂正を機に、安倍政権周辺では「慰安婦の強制連行の事実は否定され、性的虐待も否定された」(自民党国際情報検討委員会決議9月19日)といった浮わついた議論が沸き上がり、河野談話に代わる新談話を公然と求める声も出されている。
しかし、私が『“産経のドン”は慰安所設置業務に携わった主計将校だった』http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/45832558.htmlで明解に指摘したように、中国駐屯日本軍内で頻発する強姦事件対策のために慰安所を設置し、鹿内信隆・元産経新聞社長兼フジサンケイグループ会議議長が主計将校として設置運営に関わった確たる証拠がある。慰安婦に対する強制性も性的奴隷状態にあったことも否定できない。
そうした客観的な証拠を故意に無視し、安倍政権周辺は根拠薄弱な政治キャンペーンで国内世論を誘導し、極端に排外的なナショナリズムを盛り上げようとしている。
靖国神社参拝、旧日本軍慰安婦問題、さらに中国との南京大虐殺事件、731部隊生体実験問題などの歴史認識問題は外交問題であると同時に、日本右傾化に利用されている。
韓国、中国が安倍政権に安易に妥協できない理由がそこにある。

他方の安倍政権は、韓中が歴史認識問題で共闘することを何よりも恐れ、韓国に対して「対中経済依存深化」、「韓国の対中傾斜は米国も懸念している」・・・とやっかみ半分のジャブで揺さぶり、分断策を講じているが、言わずもがなの本音を出してしまい、苦しくなった。
オバマ大統領も「考えが浅すぎる」と苦虫を噛んでいることであろう。
北朝鮮は昨日、軍事境界線から北側に数百メートルしか離れていない江原道高城郡からロケット弾100発を東海上のNLL南側海域に近い海域に発射した。前日には開城工団近くからやはり東海に発射するなど、6月末から頻繁にミサイル・ロケット発射を繰り返している。
同時期、労働新聞は頻繁に金正恩第1書記が各地軍部隊を現地指導し、ロケット発射訓練などを視察する様子を写真入りで報じており、一連の軍事行動は金第1書記の直接的な指示によるものであることは間違いない。

7月3、4日の習近平訪韓を強烈に意識している。
胆力や奇抜な発想が北朝鮮国内では称賛されているが、衝動的で、戦略性に欠ける弱点がある。
今回の一連の行動も練られたものではなく、成算があっての事でもないが、韓中首脳会談への深刻な危機感は見てとれる。

第1の特徴は、並進路線が事実上、否定されたことが国内、特に軍に及ぼす影響を極力抑え、強い姿勢を誇示することで引き締めを図ろうとしていることにある。
だが、核搭載の航空母艦ジョージ・ワシントンなどが16日から韓国軍との合同訓練に入るなど、先端兵器を動員した圧倒的な物量作戦による北朝鮮への軍事的圧迫は強まるばかりである。
「戦争が始まればアメリカも無事では済まされない」と労働新聞論評には強気の言葉が踊るが、虚勢となり、動揺は隠せない。「我々だけでなく、周辺国も狙っている」と中国との共闘を呼び掛けるが、今となっては虚しい。

第2は、中国の韓国寄りが明確になり、外交の選択肢が狭まって苦慮している。
国防委員会や政府声明は並進路線の堅持を繰り返し強調する一方で、韓国政府に対して対話を呼び掛けている。硬軟織り混ぜた常套作戦であるが、5・24制裁解除を強く求めるなど、韓国に頼らざるを得ない切羽詰まった状況がうかがえる。
仁川アジア大会への選手団、応援団派遣を表明しながら、恥を忍んで滞在費用の負担を要請するのは、外貨が枯渇し、国家財政がにっちもさっちも行かないほど逼迫しているからにほかならない。
干害と水害に交互に襲われて農業が大打撃を受けており、食糧支援を頼みたいのが本音であろう。

前回述べたように、北朝鮮頭越しの韓中首脳会談は北朝鮮の外交的敗北であり、事実上、金第1書記の並進路線への死亡宣告である。
それに拘るほど、金正恩政権は窮地に追い込まれる。

韓中首脳会談で習主席は、朴槿恵大統領のドレスデン宣言など統一政策を基本的に支持した。
何処まで踏み込んで話し合われたかは知るよしもないが、中国は半島の安定と平和を重視している。また、安保政策の基本を米軍の地域でのプレゼンスへの対応に置いている。この二つが満足されれば、韓国主導の統一もやむを得ないということであろう。
朴槿恵大統領は昨日、5・24措置以降初めて民間団体の農業、畜産、保健医療分野の対北支援に南北交流基金から30億ウオン支出する事を認めた。ドレスデン宣言に自信を深め、北朝鮮の内からの変革に力を入れていくということであろう。

金正恩政権が生き残る道は、核ではなく、核放棄と改革開放による自力更生しかない。そうして国力を高め、同時に中国との同盟関係復活に力を入れることである。
米国との交渉で正面突破を図る事はもはや不可能であり、核隠しの対話攻勢や恐喝まがいの核・ミサイル外交は、自分の首を絞めるだけである。

最後に、3日の韓中首脳会談では、「日本の防衛、安保政策には透明性が必要」との認識で一致したことが明らかになっている。
日朝協議やその2日前の安倍政権の集団的自衛権容認閣議決定を指してのことであるが、北朝鮮も同様の不信感を持っているとみられる。

金第1書記はそれでも拉致問題解決による日本からの経済支援に賭けるが、日朝協議は韓中接近に弾かれた者同士の戦略性のない野合でしかない。
韓国、中国を牽制する点で一致しても、所詮は同床異夢、早晩核・ミサイルで対立するのは必定である。
どこに行っても何をしても、結局は核の壁にぶつかる。その壁を自ら壊すしか生きる道はない。
習近平中国主席の異例の国賓訪韓(3、4日)は、朝鮮半島と東アジアの国際関係における地殻変動を予兆せしめるものとなった。
朴槿恵大統領との単独、拡大会談は通算5回目となるが、区切りとなる重大な総括が成されたとみられる。
非公開首脳会談の全てが公開されたわけではないが、習主席の2日間の言動を辿るとある程度の事が読める。

外交的な焦点は北朝鮮問題と対日問題であるが、前者では、金正恩第1書記が昨年3月に採択した核開発と経済建設を並進する路線が明確に否定された。
3日の韓中首脳会談後に発表された共同声明では「朝鮮半島の非核化」、「6カ国協議再開」と抽象的な表現となっているが、北朝鮮に対する外交的な配慮である。
北朝鮮国防委員会は前日発表した特別提案などで「並進路線を論じないようにすべきだ」と求めていた。金正恩書記の面子をある程度立て、交渉の余地を残したのである。

しかし、習主席は翌日のソウル大特別講演で「朝鮮半島の核開発は許さない」と明確に述べ、核開発を進める金正恩第1書記を強く牽制し、事実上、並進路線を否定している。
首脳会談ではより具体的に、北朝鮮非核化に向けた制裁の強化や方策について意見交換がされたことであろう。
対北交渉の根底には常に核問題が置かれ、核放棄の進展なくしては一切の経済協力はあり得ないという共通認識の確認である。

北朝鮮は反発し、昨日の政府声明で並進路線堅持を再表明したが、その声は独善的で弱々しく、哀れをもよおす。
「外勢」の干渉と間接的に中国を批判し、朴槿恵政権に対して「我が民族同士」と同族の誼で支援を求める内容となっている。そして、韓国による大々的な対北経済支援を定めた6・15宣言履行を強く求めるが、南北非核化宣言を自ら破った以上、全く説得力に乏しい。
せいぜい仁川アジア大会への参加表明が受けいられる程度である。

金正恩政権がいかに危機感を募らせているか、想像に難くない。
石油、食糧などの戦略的な物資と外貨収入を依存する中国と韓国が手を握り、じわじわと締め上げてきたら、慢性的な食糧危機に喘ぐ北朝鮮経済は早晩、完全に破綻する。
韓中首脳会談ではそうした立ち入った議論が交わされたであろう。
ただ、韓中首脳は北朝鮮崩壊は地域を不安定化すると、まだ自制的である。金正恩第1書記に並進路線を放棄させ、改革開放に導くのが当面の戦略である。

韓国、日本、中国など近隣諸国との緊張の要因となっている北朝鮮核開発は北朝鮮経済の発展を妨げている要因でもあるが、金第1書記がそれにこだわるのは、自己の権威失墜を恐れるからである。
また、南北統一で主導権を握る最後の手段と考えていることもある。しかし、経済・外交でここまで差をつけられた以上、それはもはや妄想でしかない。
逆に、中国の後ろ楯を失った北朝鮮が米国の核先制攻撃を受けかねない安全保障上の危険要因となっている。

金正恩政権はまだ政治基盤は強固であり、統治能力を失っていない。しかし、硬直した岩盤は、亀裂が入ると一瞬にして瓦解する。
核放棄で韓国の信頼を回復することが、再生への大きな第一歩となる。

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