河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

東アジア国際関係論

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全く便利な世になったものである。世界のキーパーソンの生の声をSNSでリアルタイムで聞くことが出来るのだ。断片的であるが、広い見識と分析力があればこれほど重宝な事はない。
今年の世界情勢を左右するキーパーソンはトランプ次期米大統領であることに大方異論はないが、楽天的な人物とみられ、今日のツイッターでも「Happy New Year」と呑気に呟いている。

しかし、世界が注目した2日前(12月30日)には「プーチンが遅らせたのはgreatな行為だ。私は彼が非常にsmartであると常日頃思っている」と書き込んでいる。
米大統領選挙にプーチン大統領がサイバー攻撃で介入したとしてオバマ大統領が米国内のロシア外交官ら35人の国外追放を発表し(29日)、反発したロシア外務省が翌日、対抗措置として同数の米外交官国外退去を発表した。だが、プーチン大統領は同日、対抗措置は当分見送らせるとの声明を発表した。

トランプ次期大統領の前記ツイッター書き込みは、それを評価したものである。示し合わせたかのような阿吽の呼吸である。
トランプ、プーチン両氏がオバマ大統領の任期が1月20日に切れるのを見越して動いているとみるのが順当なところであろう。
『二人のプリンスと中国共産党』でオバマ大統領の対外政策は中東にしろウクライナにしろ東アジアにしろいずれも場当たり的で戦略性に欠け、ユーラシア大陸を視野に入れた経済的連携をベースに同盟関係を強める中ロに押しきられていくと予測したが、いよいよそれが具体的に現れつつあると読める。

オバマ大統領は理想主義的であったが、現実をしばしば見誤った。ウクライナでは極右勢力のクーデターを容認して親ロ派の反発を引き起こし、クリミア半島分離独立→ロシア併合となった。ロシアに制裁を科したが、米ロ関係は第二次世界大戦後最悪となり、核軍拡再開の兆しにプラハの核廃絶宣言が評価されて授与されたノーベル平和賞もすっかり色褪せてしまった。
中東では反政府勢力を無差別支援して混乱を助長し、シリアでアサド政権を支援するロシアの現実路線に押し切られた。シリアでは米国抜きにロシアとトルコ主導で和平が成立したが、今後、中東全域から米国の影響力を排除する動きが加速しよう。

世界経済のセンターとなっている東アジアでも米国の後退は顕著であり、対中戦略で全く一貫性に欠けたのは致命的である。
すなわち、一度は「新型大国関係構築」で合意しておきながら、AIIB設立で中国の経済的影響力が高まるのを警戒して反対に回り、TPPを立ち上げて対抗しようとした。しかし、拙速に過ぎて国内の反発を招き、反対派のトランプ政権誕生に道を開いた。TPP批准の可能性はほぼ消滅し、自分で自分の首を絞める結果となっている。

そうした劣勢を挽回しようと日本を巻き込んでリバランス政策に舵を切ったが、これも明確な展望があってのことではなく、トランプ次期政権に継承されるかは心もとない。
そこで米日首脳の広島、真珠湾相互訪問を演出し、米日同盟関係の強化を既成事実化してトランプ新政権に引き継がせようと画策したが、トランプ次期大統領に見透かされ、実現しそうもない。

トランプ次期大統領はオバマ政権の内外政策上の失敗を是正することを公言しており、実際、その方向に舵を切るだろう。
プーチン大統領との阿吽の呼吸はその第一歩と解釈する事が出来る。
米国の株価が上昇しているのは、オバマ政権の理想主義的だが非現実的な政策から転換することへの期待感の現れと見ることが出来る。
国連による対北朝鮮制裁についていまだに効果がないとか、逆に北朝鮮の反発を強めて核開発強化に追いやっているとの意見が日韓のマスコミに散見されるが、事態の本質がよく見えていないと指摘せざるを得ない。
東ドイツ崩壊を誘引した要因は、国民が自国を捨てて逃げ出し、国境を開放したハンガリーへと殺到したことにあった。全く同じことが今、北朝鮮で進行している。

金正恩政権は徹底した恐怖政治と国境警備強化で脱北抑え込みに成功するかに見えたが、その数は今年に入って8月までに894人、前年同期比15%増と再び増加に転じている。
その多くは高級幹部、大使館員、レストラン従業員をはじめとする海外派遣労働者などエリート層であり、脱北防止策は限界に近付きつつある。

おりしも、茂山など中国国境に近い東北部は水害で7万人が家を失い、数十万の住民が厳冬を迎え、危機的な状況にある。金正恩政権は「200日戦闘の東北部最前線」と位置付け、国家的な支援に乗り出しているが、期待した国際的支援はなく、十分な成果を収めていない。
大量の住民が中国へと雪崩をうって脱北する事態になれば、金正恩政権は最後の東独政権のような重大な窮地に陥るであろう。

朴槿恵大統領が今月1日、「いつでも韓国の自由な地に来ることを望んでいる」と北朝鮮住民に呼び掛けたのは、そうした事態を意識したものであったろう。
これに対して金正恩政権は言葉を極めて反発しているが、逆に言えば、それだけ痛いところを突かれ、追い詰められているということになる。

朴大統領が強気なのは、相次いで脱北した幹部クラスの証言から金正恩政権の内情をつまびらかに掴み、ターゲットを効果的に絞り込んでいるとの自信があるからに他ならない。
外交経験が浅く、情報も限られている韓国の野党はこの点がよく見えていないようだ。「北危機よそに、政争続き」(産経)と外国から笑われているが、外交・安保と内政を峻別し、協力すべきは協力する新しい政治文化が必要だ。李朝以来の党派主義的な悪しき伝統に終止符を打つときである。

北朝鮮に残った家族・親族保護の理由から韓国政府は脱北者の公表には当然のごとく慎重であるが、先月下旬にも北京代表部の幹部が韓国大使館に亡命手続きを申請した。既に家族と共にソウル入りしたとの情報もあるが、ピョンヤン烽火診療所、南山病院を管轄する労働党保健1局幹部で、北京で医療機器や薬品調達をしていた。過剰肥満などトップシークレットである金正恩の健康状態が全て筒抜けになり、常用する薬も把握できる。その薬の入手経路を遮断すればどうなるか、命綱を握ったようなものである。
一事が万事で、電力不足と設備老朽化で基幹産業が壊滅状態の北朝鮮の核、ミサイルは、基本的に外国の部品や資材を組み立てている。それをつきとめ、輸入ルートと資金を断ってしまえば万事休すである。

そこに焦点を絞ったのが、中国当局による鴻祥実業集団に対する「重大な経済犯罪容疑」に基づく捜査と言えよう。馬暁紅会長はもともと張成沢国防副委員長に近かったが、張粛清後は船を乗り換え、金正恩政権中枢に食い込み、闇で軍需物資を供給してきた。
いわば国連安保理決議2270の抜け穴であるが、それを塞ぎに掛かっている中国の本気度がうかがわれる。

しからば、北朝鮮の第5回核実験から1ヶ月以上経つのに未だに国連安保理決議が採択されていないのは何故か?
「中国は暴走抑止よりも、THAADの配備反対に重点を置いている。米国の捜査への全面的な協力こそが、安保理常任理事国の責務である」(読売社説10月5日)との声も聞こえるが、果たしてそうであろうか。

中国に北朝鮮制裁強化を求める外交カードとしてのTHAAD配備問題の本質が見えていないようである。朴槿恵大統領がG20での習近平主席との会談で「THAADは北核問題が解決すれば必要ない」と明確に伝えている。金正恩政権が核・ミサイル開発を放棄せざるを得なくなるまで制裁を強化して欲しいと理解を求めたのであるが、鴻祥実業集団らへの捜査は習主席が前向きに受け止めた事を物語る。
2270号は北朝鮮の第4回核実験から採択まで2ヵ月掛かったが、新決議もそろそろであろう。今日の連合ニュースが国連安保理で米中が2270号で除外した民生品の範囲を狭める方向で合意したと報じている。

実は、中国が慎重になっているのは、米主導で事が進み、南シナ海や尖閣諸島問題という火種を抱える東アジア地域で米国の発言権が強まることを警戒しているためである。
THAADは北朝鮮核問題が解決すれば撤去、解決となるが、尖閣問題は日中双方が領有権を主張し、出口が見えない。この差が朴槿恵外交に弾みをつけ、反対に安倍外交を縛っている。
丹東鴻祥実業発展と馬会長らトップ4人を刑事訴追した直後の9月27日、中国外務省副報道局長が「自国の国内法に基づいて中国の企業、個人に管轄権を及ぼすことには反対だ」と米国を牽制したのも、尖閣問題を睨んでのことであろう。

中国が「北朝鮮核問題は中国の責任ではない」と間接的に米国を非難するのも無理からぬ面がある。
クリントン大統領が政権末期に訪朝の意向を表明しながら、時間切れに終わったのは記憶に新しい。
それが実現してたら北朝鮮核問題は違った展開をしていたであろうが、ブッシュ新大統領がそれを反故にし、北朝鮮をイラン、イラクと並ぶ「悪の枢軸」と攻撃的な姿勢に転じ、事態を複雑にしてしまった経緯がある。
中国が中東を無法地帯に変えてしまった米一国主義を嫌い、「中国は安保理決議を誠実に履行しており、国際的な義務を果たしている」(前述中国外務省副報道局長)と国連中心主義を強調するのは確かに一理ある。

幸いにして、国連の権威復活の兆しが顕著である。国連での核兵器禁止条約の実効性を期す議論がいつになく活発化している。地球温暖化対策の新しいルールとなる歴史的なパリ協定は潘基文国連事務総長が見守るEU欧州議会で4日に締結承認を決議し、11月初めの国連機構変動会議で発効する事が確実になった。
北朝鮮核問題も国連の役割強化の流れの中で解決に向かっていることに、現実性と歴史的な意義がある。
米国のアフガン、イラク侵攻以降、米国を中心とする有志連合の陰に隠れてしまった国連の存在感がとみに高まっている。
各国首脳が顔を揃えた9月の国連総会ではシリア問題で米ロ外相が激しい論戦を繰り広げ、国連外交華やかな旧冷戦時代を彷彿させた。さらに、国連安保理が23日に包括的核実験禁止条約(CTBT)発効と核実験の自制を求める決議を史上初めて決議した。その前の杭州G20では、地球温暖化防止の画期的取り決めとされる先のパリ協定を米中が批准し、潘基文国連事務総長に批准書を提出した。
こうした事実は混沌とした世界を律する新秩序が姿を現しつつあることを如実に物語る。すなわち、世界的な経済不況、地域紛争や対テロ問題などどれ1つとってももはや米国の力だけでは対応できなくなっている。米中が協調しながら、国連を通して諸問題を解決していく構図がハッキリと浮上してきたのである。

その陰の主役は、他でもない北朝鮮である。
さる1月の第4回核実験を受けて3月に国連安保理で北朝鮮との交易を制限する制裁決議2270が採択されたが、金正恩政権は9月初めに第5回核実験を強行し、あわせて20数回のミサイル実験を繰り返し、核ミサイル保有と韓米日への核攻撃を公然と表明している。
現実的な脅威が迫っていると判断した韓米日がその除去に乗り出し、国連安保理で実効性ある新たな制裁決議の採択を急いでいる。鍵は金正恩政権の核ミサイル開発の資金、資材供給源を断つ上で不可欠の中国の協力であるが、いよいよ動き出した。
その証が前述の国連安保理核決議であるが、水面下ではより具体的な措置が加速化している。

8月初めに米司法省担当官が北京を極秘に訪れ、北朝鮮との貿易に携わる中国の企業集団「遼寧省鴻祥実業集団」などが国連安保理決議2270に反する取引を行っているとして中国当局に取り締まりを求めた。北朝鮮の弾道ミサイル実験の破片を回収し、分析していた韓国では部品や素材を割り出し、入手先もほぼ特定していた。その情報を基に朝中間の闇の取引を遮断しようとしたのである。
中国側は金正恩政権を追いつめすぎて地域が不安定化することを警戒し、あまり乗り気でなかったが、9月9日の第5回核実験で堪忍袋の緒を切る。
同月20日、中国外務省は鴻祥実業集団の馬暁紅会長を「重大な経済犯罪」で逮捕と明らかにした。馬代表は遼寧省人代委員の資格も剥奪された。
それを受ける形で米財務省も26日、鴻祥実業集団のグループ中核会社の丹東鴻祥実業発展と馬会長を北朝鮮の核開発資金となるマネーロンダリングに関わっていたとして米国内資産凍結と米国の銀行、企業との取引を禁止した。

これまでに明らかになったところによると、対北朝鮮交易最大手の同集団は表向きは産業用機械・部品を扱うが、丹東、大連、青島の税関職員を買収し、2270で禁止された軍需物資を北朝鮮に輸出して暴利を貪ってきた。それにはミサイルに用いる電子部品やウラン濃縮用の遠心分離機の原料となる酸化アルミニウムなどが含まれている。
また、北朝鮮の光鮮銀行丹東代表部のダミー会社として貿易代金決済や送金も担っていた。北と合弁で遼寧省内でホテルやレストランを経営し、北朝鮮労働者の手配にも絡んでいるが、それらの収益を送っていたとみられる。
朝中貿易は丹東経由が7割を占めるが、そこに中国当局の大々的な捜査の手が入ったことで金正恩政権が統治資金確保や核・ミサイル開発で受ける打撃は決して小さくない。

他にも10社ほどが捜査対象に挙がっており、中国当局は対北朝鮮貿易の全面的な洗い直しと制裁強化に着手したことはもはや疑う余地がない。
事態が一挙に動き出したのは、国連総会に出席した李克強首相が19日にオバマ大統領と会談した直後からである。「申し合わせた」との報道もあるが、対北朝制裁強化で米中が一定の合意をみたことは間違いあるまい。
ラッセル国務省次官補は23日、「国連安保理でのより強い制裁決議を確信している」(ロイター26日)と述べている。「THAADは米韓2国間で決定」と意味深長な発言もしているが、その意味については後述する。

任期が来年1月に終わるオバマ政権は、北朝鮮核問題の早期解決に総力を挙げていると読める。オバマ大統領自身は核先制不使用宣言をレガシーとしたい考えであったが、政権内からは非現実的と反対意見が続出し、カーター国防長官は27日、「ペンタゴンには核先制不使用政策を推進する計画はない」と明確に否定した。
北朝鮮の核が現実の脅威になりつつとあるの危機意識は米国民の中で急速に高まり、クリントン、トランプ次期大統領候補のテレビ討論でも争点となり、制裁強化に加え、軍事的対応措置を求める声が強まっている。オバマ政権としては国連安保理を通して中国の協力を求め、早期解決に全力を挙げる構えである。

金正恩委員長は「核抑止力強化」で米国を交渉の場に引き出そうとの正面突破戦術に突き進んでいるが、全く逆の結果が出ている。李容浩外相が国連総会で訴えても耳を傾ける国は皆無で、国際社会の孤児となってしまった。
十分に予想されたことであり、北朝鮮の最大の悲劇は、経験不足の若い指導者に諫言するブレーン一人いないことである。

北朝鮮核問題はいよいよ正念場である。
中国がどこまで対北朝鮮制裁に踏み込むかが焦点であるが、これは転換期にある東アジア情勢全般、南シナ海問題やTHAAD問題で鋭く対立する米中の戦略的利害や思惑に密接に関わる。
米中間の意見調整は国連安保理の舞台しかあり得ない。アフガン、イラクで破綻した有志連合スタイルはもはや通じないのである。
それだけに従来の対立の枠を超え、米中首脳と個人的信頼関係を築いている朴槿恵大統領の役割と外交手腕が一段と注目される。
韓国のユン・ビョンセ外相が13日、中国に王毅外相と電話会談し、韓国外交通商省によると王外相は「国連の安保理制裁決議を採択し、さらに厳格な措置をとることで北朝鮮の核開発を阻止することに同意する」と応じたという。
9日に金正恩政権が第5回核実験を強行してから4日経ち、国連安保理がモタモタしている印象を与えていた最中、ようやくしかるべき方向へと動き出したようだ。

5日の朴槿恵・習近平首脳会談で再稼働した韓中チャンネルが効果を現しつつある。
THAAD問題でギクシャクしたが、それも基本的にクリアしたようだ。共産党が国家を指導する中国は外務省の地位が低く、外務相以下のレベルでいくら議論を重ねても自ずと限界がある。朴槿恵大統領が習主席に直接、「THAADは北の核の脅威に備えるものであり、それがなくなれば必要ない」と伝え、制裁強化を求めた事が一定の理解を得たと読める。

以上は前回の「杭州G20とTHAAD問題」で予測した通りの展開であるが、日本のマスコミに「中国は追加制裁には応じない」との観測記事が頻繁に出るほどもたついている印象を与えているのは何故であろうか?

習主席が警戒しているのは、これも日本のマスコミが枕詞のように用いる「日米韓主導の制裁決議」に乗せられることである。
韓国はともかく、南シナ海や尖閣諸島(釣魚島)問題で対立する日本、その背後の米国主導で北朝鮮問題が動くのは中国としては受け入れがたい。人民日報(14日付)が「米国に中国を非難する資格はなく、米国に責任がある」と牽制しているのは、そのことを意味する。

それを裏付けるように、11日に中国海警巡視船4隻が日本が主張する尖閣領海を90分にわたって航行し、翌日の12日から8日間の予定で南シナ海で中ロ合同軍事演習を行っている。
表向きは定例の軍事演習であるが、南シナ海では初のことであり、しかも、常設仲裁裁判所の判決受け入れで米日と対立している最中のことであり、ロシアを味方に引き入れて米国と対抗する中国の戦略的意思がそのまま反映されていると見るべきであろう。
すなわち、中国としては、韓米合同演習で黄海に米空母が展開し、今またB1Bなどの戦略爆撃機が韓国に入るなど、北朝鮮の脅威を名分になし崩し的に地域の米軍事力が強化され、結果的に中国包囲網が形成される事態は防がねばならないのである。

米主導を警戒しながら対北朝鮮制裁強化に応じるのが習政権の基本的なスタンスであろうが、一理ある。
15年前の9・11後に米国は国連を無視してアフガン、イラク侵攻に踏み切り、中東の現在の混乱を招いた。北朝鮮が第2のアフガン、イラク、シリアにならないように、国連主導で安保理での決議を通して事態を解決しようとする姿勢は基本的に正しい。

問題は実効性ある制裁決議が出来るか、どうかにある。
一部に制裁の効果を疑う見方があるが、効果があるから激しく反発するのである。制裁が北朝鮮の反発を強め、核開発に追いやっているとの見方もあるが、本末転倒の議論と言うべきである。
金正恩が核開発に夢中になるのは独裁政権維持のためであり、あわよくば対米直接交渉に持ち込んで米軍を韓国から撤退させ、北主導の統一を実現せんとする果たせぬ夢、妄想の為であることは、彼自身が「最高尊厳死守」、「統一聖戦」といった別の言葉で語っている。
自国の北東部が14万以上が被災する史上最悪の洪水被害に見舞われ、国際社会の支援を求めながら、核開発に執着する極度に矛盾した行為は、金正恩政権が最後の段階に直面していることを端的に物語る。ある日突然、暴動、内戦で崩壊する可能性も否定できない。

さる1月の核実験後に採択された国連安保理制裁決議は、航空燃料の輸出や北朝鮮からの鉱物資源の輸入禁止が含まれていたが、人道や生活上の必要が例外規定に含まれ、結果的に抜け穴となって今回の事態を招いた。
その抜け穴が塞がれれば北朝鮮経済は崩壊し、金正恩政権は核開発の経済的な余力を失なう。暴発する可能性も十分にある。
今回の制裁はそうした事態をも想定した内容になるしかない。国連憲章41条以外の軍事的対応も視野に入るであろう。

中国には北朝鮮の体制崩壊が地域の不安定化を招くことを憂慮する声がある。望ましいのは、北朝鮮が進んで核を放棄し、民生再建を中心にした改革開放へと舵を切ることである。そのためには金正恩が核放棄せざるを得なくさせるまで追い詰める事であり、政権交代も選択肢に入ろう。
事態はすでに各論に入っており、習主席としては「戦略的なパートナーシップ」を約した朴槿恵大統領との個人的な信頼関係をベースに危機管理の道を探るしかあるまい。

しかし、北朝鮮核問題解決をずるずると先延ばしにすると、地域はより深刻な事態に直面することになる。
北朝鮮の核の脅威に対抗することを名分にした韓国、日本の核武装である。韓国では与党から公然とそうした意見が出ているが、朴正煕政権時代に核開発完成直前で廃棄した経緯があり、その気になれば北朝鮮より遥かに強力な核ミサイルを保有するのにそれほどかかるまい。核開発も自衛権の範囲との立場を取り、膨大なプルトニウムを保有する日本の核武装はもはや悪夢である。

北朝鮮核問題は地域の核ドミノの危険性を孕んでおり、中国は地域の大国としてそれを除去する責任を果たさなければならない。

杭州G20とTHAAD問題

G20が杭州で4、5日に開催されたが、直前の3日に米中首脳会談が開催され、方向性が定まった。
全ての国に温暖化ガス排出の規制を求めたパリ協定を最大排出国である米中2国首脳が批准し、潘基文国連事務総長に批准書を提出した。オバマ大統領は「地球を救ったと後世、言われる日が来る」と語ったが、記録的な豪雨や強風が地球上を襲い、この日本でも連日のように人命が失われている状況を見れば、決して誇張ではない。
人類最大の脅威となっている地球温暖化問題に比べれば、各国のマスコミが国益がどうのと大騒ぎしている諸問題は、小さな局所的な問題に過ぎない。

その温暖化対策で米中が共同してリーダーシップを発揮したことは、世界が事実上、米中による新型大国関係を基調に動いている事を如実に物語る。
とりわけ、それが国連を通して行われた事に注目したい。イスラム過激派問題など世界を混乱に陥らせた発端は、ブッシュ政権が9・11を口実に「米国の国益優先」の攻撃的な対外政策に乗り出し、国連を無視してアフガン、ついでイラクを攻撃したことにある。地域の秩序は破壊され、米国をはじめとする外の世界に対してストレートに憎悪を剥き出した。
その反省の上に立って、米中が国連を通してリーダーシップを発揮していけば、世界秩序再建の道が開けてくるだろう。

オバマ大統領、習近平主席は首脳会談で南シナ海問題やTHAAD問題で対立したが、その後の共同記者会見で、パリ協定批准の意義を強調し、個別の対立を必要以上に拡大せず、協調を基本とすると相互確認したのは偶然ではない。
米国はライス大統領補佐官(安全保障担当)らが早くから中国入りし、協議を重ねてきた。ライス補佐官はキッシンジャー元国務長官に随時アドバイスを求めているが、キッシンジャーは名うての親中派で、ナチス同様に日本軍国主義に厳しい目を向け、アジアの秩序は米中協調を軸とする事を持論とする。米中は歴史認識を一にしていることが協調のベースになっているのである(『二人のプリンスと中国共産党』参照)。

日本ではG20で南シナ海問題などが議題となり、安倍首相が東シナ海問題と共に積極的に取り上げると事前に報じられていたが、蓋を開けてみれば、低成長に喘ぐ世界経済対策に的が絞られ、「中国次第」と中国の存在感が際立つ結果となった。
その裏で首脳外交が活発に繰り広げられ、プーチン大統領は南シナ海問題で中国支持を鮮明にし、域外国は口を挟むべきでないと日米を牽制した。EU離脱で注目された英国のメイ新首相も「英中は黄金時代」と述べ、中国との自由貿易協定締結に意欲を示すなど、中国が初めて主催したG20は習主席が期待した成果をほぼ達成したと評価できる。

南シナ海と並ぶ懸案事項がTHAAD問題であったが、米中協調が再確認された事がプラスに作用した。
習主席はオバマ大統領のリバランス戦略の一環としてTHAAD配備をとらえて警戒していただけに、米中対立が強まれば韓国が発言する余地は狭くなる。また、南シナ海問題と東シナ海問題が連動して日中対立が深まることも不利に作用する。
韓日中外相会談の効を奏したこともあってその2つの懸念が緩和されたことで、朴槿恵大統領がイニシアチブを発揮する空間は格段に広がった。

朴大統領は5日の習主席との会談で「THAADは北の核・ミサイルに対抗して配備したものであり、第3国の安保上の利益を害する理由も必要もない。北の核・ミサイル問題が解決すれば必要ない」と伝え、北朝鮮の核・ミサイルの脅威が除去されれば配備を止めることを明確に伝え、中国の協力を求めた。
金正恩政権が根底から揺らいでいる中、北朝鮮貿易の9割を握る中国が対北制裁のレベルを上げれば、金政権は持ちこたえられない。核・ミサイル開発も断念せざるを得なくなるとの認識である。

これまで外相以下の実務的なレベルで中国側にそうした意向が伝えられ、ギクシャクした面もあったが、首脳会談で取り上げられるのは初めてである。習主席も初めて直に韓国側の意向を耳にしたことになる。
両首脳は本音を出しあい、「対話継続」で合意した意義は極めて大きい。今回で首脳会談は7度目となり、個人的な信頼関係を築いてきた事が利いている。

習主席の反応については外交儀礼上、朴大統領側は明かしていないが、新華社は「地域安定の役に立たず、紛争を激化させる恐れがある」と従来の立場を述べたと伝える一方で、「中韓は近い隣人として共同利益を有しており、政治的な協力の土台を大切に思う」と含みを持たせた発言も報じている。
韓国はTHAAD配備は「来年末まで」と時間を置いて中国側に対応を促しており、基本的にはその思惑通りに進んでいると読める。
朴槿恵大統領は6日、ビエンチャンでオバマ大統領と会談し、THAAD問題への対応を協議したとみられる。オバマ大統領は「THAADは純粋に防御用であり、北朝鮮の核に対応するものである」と述べ、事実上、朴槿恵イニシアチブを追認した。

その最中の5日、北朝鮮がノドンを3発発射し、日本海(東海)にある日本の経済水域に落下した。
それに「精度が増した」、「脅威が増した」と現象面だけ見て騒ぐマスコミには困ったものであるが、海外メデイアが騒ぐのを見て大喜びする北朝鮮の若い指導者にも困ったものである。
韓中首脳会談の直後であり、当て付けであることは明らかであるが、飛んで火に入る夏の虫と朴槿恵大統領は内心、ほくそ笑んだことだろう。

翌日、国連安保理は北朝鮮を非難する報道声明を出した。SLBM実験に対する先月26日の報道声明はTHAAD問題があって発表まで数日掛かったが、今回は翌日、発表と中国は米国に歩調を合わせた。
習主席の怒りが見えてくるようである。
前回の報道声明は新たな挑発には「重大な措置をとる」と警告したが、中国もいよいよ決断せざるを得なくなった。

こうした結果は少し考えれば分かりそうなものだが、金正恩には外で自分が無法者のように見られ、立場が難しくなっていることがまるで見えない。
国内での恐怖政治の手法そのままに、無闇に反発し、力を誇示して跳ね返そうとするから、逆に自分の首を絞めることになる。資質に欠ける人物を指導者に祭り上げてしまった世襲体制の悲劇、あるいは喜劇と言うべきである。

井の中の蛙という言葉がある。金正恩の核・ミサイルが国民生活を犠牲にしていかに進展したとしても、核ミサイルが依然として実戦段階にない事は間違いない。
戦略的にはその前に除去してしまえば全て済むことであり、国連決議を公然と繰り返し否定する金正恩は、その名分を与えてしまっている。

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