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米中首脳が合意した新型大国関係はいよいよ各論の段階に入った。
皮相的な議論が飛び交っているが、実は、南シナ海問題の本質はそこにある。 オバマ大統領はトルコでのG20を皮切りにマニラのAPEC首脳会談、クアラルンプールの東アジアサミットまで精力的に参加し、中国による南シナ海での岩礁埋立問題を積極的に議題に取り上げ、「埋め立てや軍事化を止めるべきだ」と各国の同調を求めた。 直前にイージス艦や戦略爆撃機を問題の岩礁地域に出動させるなど砲艦外交さながらの外交攻勢であったが、一連の宣言はいずれも同問題への言及を避けた。21日の米国とASEANの首脳会議共同声明でも「航行の自由が確保されることの重要性を確認した」とするのみで、中国が名指しで批判されることはなかった。 オバマ大統領はその少し前、米国を国賓訪問した習近平主席との会談で対等な米中新型大国関係構築について噛み合わず、南シナ海問題で激論を交わしている。 世界の警察官の役割を米国単独で担えなくなったオバマ大統領は当初、中国に補完的な役割を期待したが、米国建国前から世界に君臨した中華の夢を追う習主席は米国の風下に立つことを潔しとせず、あくまでも米中対等な縄張りを求める。太平洋を真ん中で二分し、東は米国、南シナ海を含む西は中国が仕切るというものだ。 オバマ大統領にとって一連の首脳外交は地域のもう1つの大国である日本の加勢を得て対中包囲網を構築し、中国を押さえ込む狙いがあったが、逆に、押し切られた結果となった。 とりわけ、米中綱引きの主戦場となったクアラルンプールでは、21日のASEAN首脳会議の議長声明から去る4月の議長声明にあった「航行の自由に対する深刻な懸念」が削除され、中国のタフな巻き返しにあっている。 思わぬ劣勢に苛立ったオバマ大統領は19日にマニラで安倍首相との首脳会談を持ち、共同で中国に圧力をかけるデモをしたが、厳しい現実を思い知らされる。 安倍首相がオバマ大統領に合わせ南シナ海に「自衛隊派遣を検討」と発言したことが、旧日本軍の侵略を受けた地域の反発を招いたのである。日本国内でも批判の声が上がった。 安倍首相は22日、クアラルンプールで急遽記者会見を開き、「具体的な計画は今のところない」と軽率な発言を撤回せねばならなかった。 米国の限界が露になったのが、一連の首脳外交の総仕上げと言うべき22日の東アジアサミットである。 オバマ大統領は中国による人工島造成を即座に中止するように強く求めたが、李克強首相は「域外諸国(米日)が声高に介入している」と撥ね付け、「域内当事国の交渉による解決」、「航行の自由」など5つの提案をして支持を広げた。 議長声明からは原案の「埋め立てへの一部首脳からの深刻な懸念」が削除される雲行きであり、オバマ大統領はサミット終了後の記者会見で、来年早々にASEAN首脳を米国に招き、中国不在の場で自陣に取り組む苦肉の策を明かした。 オバマ大統領は、地域における中国の圧倒的な存在感を再認識した事であろう。 李首相はASEAN地域のインフラ整備にポンと100億ドル融資すると表明し、各国首脳を小躍りさせた。武器の提供で一部の国の支持を繋ぎ止めようとしたオバマ大統領がドン・キホーテと重なって映る。 ASEANはサミットと同日の22日、市場統合のASEAN共同体設立署名式を行った。年末から始動するが、その成否は中国経済に大きく依存するのが実情である。AIIBが同時期に始動し、人民元が域内国際通貨として遠からずドルにとって代わろうとしている。 安倍首相はインドネシアのジョコ大統領にジャワ島の高速鉄道計画受注が中国に奪われた事に「失望」を伝え、失笑を買った。 自衛隊派遣失言といい、刻々変化する地域の状況をよく理解していないようだ。 対照的なのが朴槿恵大統領である。 21日のASEAN+3首脳会談で議長を務め、中国を軸とする「地域経済成長及び金融安定共同声明」を取りまとめ、持論の東アジア共同体建設のロードマップを披露してみせた。英独仏などと共にAIIB設立に積極参加した勢いそのままである。TPPに関心は示すが、反対論渦巻く米議会で批准されるのか不透明であり、基本的には様子見である。 同盟国であるオバマ大統領に配慮し、東アジアサミットで「関連当事諸国による人工島問題の軍事化に反対する」と取り上げた。しかし、米中の対立を超えて地域の経済統合を目指す熱い使命感を内に秘めており、バランサーとしての役割を忘れることはない。 APEC首脳会合を2025年に韓国で開催する合意を取り付けた。韓国外交の戦略的なレールを敷き、クアラルンプールで会談した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長を含む後任者に後事を託す意向とみられる。 習近平主席がオバマ大統領を押し返したのは、資金力の差もさることながら、7日にシンガポールで行われた台湾の馬英九総統との歴史的な会談が伏線となっていた。 地域のもう1つの隠れた経済大国である台湾が中国との間で「1つの中国」を確認したことが衝撃波となって伝わり、時代の流れみたいなものを地域首脳に感じさせたのである。 第3次国共合作と言うべき会談は西安事変の張学良を現代に蘇らせたが、その歴史的意義は『二人のプリンスと中国共産党 張作霖の直系孫が語る天皇裕仁、張学良、習近平』に詳しい。 |
東アジア国際関係論
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横須賀を母港とする米イージス艦が27日午前、中国が埋め立てている南沙諸島のミスチーフ礁から12カイリの海域を3時間にわたって「自由航行」した。
これに対し中国政府は「主権を脅かす」と反発し、イージス艦と巡視艦が出動して米艦を「監視し、追跡、警告を行った」と発表した。米政府は作戦が数週間から数ヶ月続くと明らかにし、地域の軍事的緊張が一挙に高まっている。 これに対し韓国外務省報道官は「事態を把握中」と冷静な対応を見せたが、中央アジア歴訪中の安倍首相は「国際法に則った行動」と即座に米国支持を表明し、韓日の対応が割れた。 危機管理には冷静な状況把握が最優先の大原則である。ボヤに油を注ぐような軽挙妄動は厳に慎まなければならない。 幸いにして来月早々にソウルで韓日中3国首脳会談が予定され、韓日首脳会談も日程に上がっている。地域に責任を負う3首脳が風運急の地域の平和と安定の為に、今こそ文珠の知恵を搾るべきであろう。 何よりもまず中国の自制が必要である。ベトナム、フィリピン、マレーシアなどと領有権を争う南沙諸島の岩礁を「歴史的に自国領」と言い張り、埋め立てを強行したのは国際海洋法上、明らかに問題がある。 私が近著『二人のプリンスと中国共産党』で明らかにしているように、そもそも欧米帝国主義が地域に侵入した近代以前は無人島の領有権を巡って争うといった愚かな発想そのものがなかったのである。 帝国主義侵略に反対してきた伝統を自負する中国共産党が無人島に固執するのは自己矛盾となる。 しかし、中国にも言い分がある。 王毅外相は今年8月のASEAN地域フォーラムで岸田外相が南沙埋め立てに異義を述べた事に「日本も沖ノ鳥岩を棒鋼とセメントで人工島に変えた」と反論している。日本が1987年に水没の危機に瀕しているとして沖ノ鳥岩に護岸工事を施し、排他的経済水域と大陸棚権利を主張した事を指摘したのである。 岩か低潮高地か判別できない箇所への護岸工事には中国と共に韓国も無効として抗議したが、日本は9・44平方メートルの岩を大きく囲って島仕様にし、灯台まで築いて実効支配をしてきたのは周知の通りである。 沖ノ鳥島問題が南沙埋め立ての先例となった事は否定できない。 実は韓国もそれを見倣って済州島沖合の岩礁に護岸工事を施し、中国との間で物議を醸している。 無人の岩を地域の政治問題化したのが、石原慎太郎都知事(当時)である。沖ノ鳥島に日章旗を掲げて上陸し、中国を刺激した。 ナショナリストを自認するこの希代のオポーチュニストは、以前から尖閣上陸を試みていたが、都知事になるや尖閣を正体不明の個人から購入すると騒ぎだし、野田政権を国有化宣言へと追いやり、日中間の対立を煽るだけ煽った。 海賊が新大陸を略奪したDNAを受け継ぎ、絶海の無人島まで執着する貪欲な欧米帝国主義的な発想からそろそろ解放される時ではないか。 オバマ大統領の南沙への軍艦派遣は唐突で砲艦外交を彷彿させるが、任期切れを控えた苦肉の辻褄合わせであろう。 核廃棄宣言でノーベル平和賞を受賞し、アフガン、イラクからの撤退を公約にして期待を持たせながら、いずれも失敗している。利己的な一国主義で世界秩序をグチャグチャにしたブッシュ前政権の重荷に潰された格好になった。世界の警察の役割を放棄し、「米中新型大国関係」と中国に責任分担を求めたが、思うようにいかず、日韓を取り込むリバランスに切り替えた。今回の事態はある種のデモである。 とは言え、艦艇派遣は9月の習近平主席との会談で事実上、通告済である。一定期間、交渉と圧力の綱引きが演じられることになろう。 その辺りの事情を熟知しているのが、中国の9・3閲平式典に参加して習主席と会談し、さらにオバマ・習会談直後に訪米してオバマ大統領と会談した朴槿恵大統領である。 オバマ大統領から南沙問題で支持を求められながら黙殺したのは、一方に偏って火に油を注ぐのではなく、紛争予防で果たす自己の仲裁的な役割を心得ているからであろう。習、オバマとの個人的な信頼関係を存分に活かせれば十分に可能である。 他方、そうした状況を蚊帳の外から覗くだけであった安倍首相はやや軽率に過ぎる。 沖ノ鳥島問題や尖閣問題を抱えているため、有事に米国の支援を得たいとの思惑もあって、ここぞとばかりに日米同盟云々と米側に偏ってしまう。 その意味で、ソウルでの韓日中3国首脳会談は時期適切である。 欧米帝国主義に植え付けられた狭量な一国ナショナリズムで不毛の論争を蒸し返すのではなく、地域の平和と安定の大局から、3国のわだかまりの根底にある領土問題や歴史認識問題に至るまで忌憚のない意見を交換する場とすべきである。 |
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朴槿恵大統領は16日、オバマ大統領と会談した。朴大統領が9月北京での「抗日戦争勝利70周年」の閲兵式に参加したことに一部から「中国傾斜論」との批判の声が出ていたが、オバマ大統領は共同記者会見で「米韓関係は過去のどのときよりも強い」と、韓中関係強化に理解を示した。
当然である。北朝鮮の核・ミサイル開発阻止と金正恩政権を改革開放へとソフトランデイングさせる戦略を盛り込んだ韓米共同声明が両国史上初めて発表されたが、朴大統領の一連の対中外交、具体的には、習近平主席との個人的な信頼関係がなければ到底、不可能なことであった。 北朝鮮の命綱を握る中国の協力なくして北朝鮮核・ミサイル問題解決が難しいことは、オバマ大統領も重々承知している。イスラム国対策に手を焼き、アフガニスタンからの米軍撤退公約を撤回するほど外交的に追い詰められている最中、中国の協力は喉から手が出るほど欲しいのが実情である。朴大統領に感謝したことであろう。 私は近著『二人のプリンスと中国共産党 張作霖の直系孫が語る皇太子裕仁、張学良、習近平』で東アジアで「米中新型大国関係」という地殻的な変化が起きていることを明かしたが、従前の枠に囚われた情勢認識で新しい事態を正確に捉えることは難しくなっている。 韓米首脳会談にある種の期待を掛けて凝視していたのが日本である。「韓国の中国傾斜にクギ」と一面で報じ、「『日米韓』の重み自覚を」(毎日社説18日)と注文をつけるメデイアもあった。朴槿恵大統領が訪米中の講演で「韓米中」を強調したことに「日本より中国との協力を重視したいのが本音ではないか」と不安を吐露している 「国際秩序の安定に無関心との印象を与える」というのが論拠であるが、我田引水ではないか。安倍政権が国際秩序の安定に寄与していると言いたいのなら、根本的な誤りである、と指摘しておく。 オバマ大統領は共同記者会見で中国が国際規範に反する行動をした場合は「韓国が米国と同じように声を上げることを期待する」と述べた。南シナ海の南沙諸島や東シナ海の尖閣諸島問題を念頭に置いたとみられる。 朴槿恵大統領は黙殺したが、東アジアの平和と安定、韓国の国益を考えれば当然のことである。 ワシントン19日発の共同が「スプラトリー諸島(南沙諸島)の中国の人工島の12カイリ内に近く米海軍の艦艇を派遣する方針を、オバマ大統領が東南アジアの国々に外交ルートで伝えたことを18日、複数の外交筋が明らかにした」と報じたが、実際に派遣されれば一挙に緊張が高まる。 韓国がすべきは、無条件米国の側に立って緊張激化を煽ることではなく、中国との間に立って紛争防止に動くことである。 オバマ大統領も朴槿恵大統領との共同記者会見で「もし朴氏が習近平と会えば、米国に問題が生じるとの見方があるが、おかしな話だ」とその役割に期待している。 安倍政権には尖閣諸島で何らかの紛争が生じた場合に日米韓の連携が機能することを期待する声があり、その観点から朴槿恵大統領の「中国傾斜」に不安を感じたりしているとみられるが、自家憧着と言うべきである。 尖閣諸島問題では韓国の国民感情は中立であるが、安倍政権が強行採決した安保法制に警戒感が高まっている。従軍慰安婦問題や靖国神社参拝問題など安倍首相の歴史修正主義への不信感も高じており、安倍首相自ら中国寄りに追いやっている側面がある。信なくして外交は立たないのである。 朴槿恵大統領のイニシアチブで来月上旬にソウルで日韓中三国首脳会談が開かれる方向で調整が進んでいるが、あらゆる意味で注目される。 三国が近代以前の信頼関係を再構築できれば、先行き不透明な東アジアの平和と安定に大きく寄与することが出来よう。 |
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習近平主席が22日から就任後初の米国公式(国賓)訪問を開始したが、米紙は「オバマ大統領は軍事・経済・人権を巡って拡大する米中間の相違を習近平主席との個人的な関係を動かそうと考えている」(ウオール・ストリート・ジャーナル)といった見方が支配的である。
それが米中の「新型大国関係」構築を意味することは、言うまでもない。もともと「米国は世界の警察官ではない」と宣言したオバマ大統領が、胡錦涛主席に提案したことである。世界の軍事・経済問題などで米中が緊密に協力することを求めたのであるが、胡主席は時期尚早であるとして固辞した。 だが、習主席は就任直後の2013年、中南米3国歴訪の帰りに米国を非公式訪問し、オバマ大統領の提案を受け入れることを伝えた。8時間にわたりノーネクタイで会談した両首脳はスッカリ意気投合し、互いに補ないあいながら、世界に対して責任を負うことを約した。 しかし、その間に米中の間にはウクライナ問題、サイバー攻撃問題、南シナ海岩礁埋め立て問題、尖閣問題などで対立が生じ、米中関係は視界不良に陥っていた。 今回の米中首脳会談の焦点も米中関係の再構築に置かれ、「未来像をどう描くか、中国側と議論した」(スーザン・ライス大統領補佐官)と事前調整に時間を費やした。 ホワイトハウスには「新型大国関係」は世界秩序維持で中国が米国の補助的な役割を果たすのではなく、米国の優位そのものを覆すとの警戒感が広がっていたのである。 だが、蓋を開けてみれば、習近平主席は米中対等な「新型大国関係」を求め、一歩も譲ろうとしなかった。 オバマ大統領との首脳会談では本音が剥き出しになり、南シナ海や尖閣問題で衝突する場面もあったであろう。直後の記者会見で両首脳が厳しい表情で牽制しあっていたことがそれをうかがわせる。 人民日報は「中米首脳は(対等な)新型大国関係で合意した」と報じたが、オバマ大統領が中国を「大国」と公式の場で呼んだことから推しても誇張とばかりは言えない。 戦後、米大統領と対等に渡り合ったのは冷戦で世界を二分したスターリン・ソ連首相だけであったが、習近平はそれ以来ということになる。 新冷戦と呼ぶ向きもあるが、早とちりである。 米中首脳会談ではサイバー攻撃防止に焦点が絞られ、合意している。人民日報は49項目にわたり米中間で合意が成されたと“蜜月”を強調している。 意見の違いは対話で解決することを再確認しただけでも、大きな前進である。6回も会談を重ねてきた習主席とオバマ大統領との間には相違を乗り越える個人的な信頼関係があるということになる。 「新型大国関係」は各論に入ったと断言してよかろう。 習主席は訪米第一歩のシアトルで、世界最大の中国市場進出に目を凝らす米IT企業経営者らと歓談し、ボーイング社を訪れて旅客機300機、日本円で4兆円超の爆買をし、米財界を味方につけた。 要するに、経済をテコにオバマ大統領を押しきったのである。同時期に訪米したローマ法王歓迎熱の陰に隠れた感もあったが、戦略的には十二分な成果をあげたと評価できる。 ロシアのプーチン大統領がシリアに軍事介入し、反アサド政権派への無差別爆撃で米国を怒らせたが、オバマ大統領は「シリアで米ロが代理戦争をするつもりはない」と含みを残した。ブッシュ前政権の無謀なイラク攻撃から始まる中東混乱の負の遺産に悩むオバマ政権としては、ロシアの手を借りたいのが本音だ。 見逃してはならない重要なポイントは、プーチンの強気は習近平との協調関係に支えられており、オバマも無視できなくなっている事である。 |
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朴槿恵大統領は9月2日から4日まで訪中し、習近平主席との6回目の首脳会談に臨み、翌日、軍事パレードを含む「抗日戦争勝利及び世界ファシズム戦争勝利70周年」記念行事に参加する。 これに対して米国政府は「韓国の主権行為を尊重する」とある種の期待感を表明したが、中国との対決姿勢を強める安倍政権からは「二俣外交」などと不満の声が漏れてくる。 転換期にある東アジアにおいて朴槿恵政権と安倍政権は対照的な軌道を描いているが、根底に、外交による融和か、力の対決かの根本姿勢の違いがある。 朴槿恵大統領は、南シナ海、東シナ海問題などでギクシャクしている米中が円滑に意思疏通出来るようにと、バランサー的な役割を担うことで東アジアの平和と安定を確固たるものとし、もって朝鮮半島の平和的統一に繋げようとしている。 韓国国民が戸惑いながらも支持するのは、周辺国が無視できなくなった韓国の国際的な存在感の高まりを実感しているからに他ならない。 韓国は今、旧植民地から世界有数の経済大国に飛躍した実力に相応しい平和外交を展開する段階にある。 それはノ・ムヒョン元大統領が手掛け、ようやく陽の目を見ようとしているバランス外交であり、与野を超えた韓国民の悲願とも言えよう。 朴大統領の訪中は米日の反対を押し切ってアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加を決めた今年3月の時点で、ほぼ既定路線化していた。 その後、中国国内の人権問題や南シナ海問題などで欧米首脳が不参加に傾き、またマース問題対策で訪米を延期する中、正式発表を遅らせてきたが、今月13日に訪米を10月16日に調整することで環境は整った。 20日に金正恩政権が突然、準戦時体制を宣言した背景には、第2のマース事態を作り上げ、朴大統領の訪中を阻止する狙いもあった。 しかし、金正恩政権が腰砕けになり、雨降って地固まるように訪中条件はより好転した。不安定な北朝鮮管理で中国の協力を得る大義名分が生じたからである。オバマ大統領も6ヵ国協議の枠を維持強化するために、朴大統領に期待するしかなくなった。 韓国大統領府が朴大統領訪中を正式に発表したのは、金正恩政権が矛を納め、南北の和解と対話に同意した南北報道文が発表された直後の26日であったが、絶妙のタイミングとなった。 西側諸国首脳が不参加を表明する中、アジアの有力隣国の韓国大統領の参列を熱望していた中国に大きな貸しを作ることになったからである。 ロシアなど30余ヵ国首脳が参列する見込みだが、朴槿恵大統領は閲兵式などで習主席の隣という破格の礼遇が準備されているという。 朴槿恵大統領の外交的発言力は否応にも高まるであろうが、意外と見逃されているのが経済的な効果である。 朴大統領は過去最大の156人の経済人を引き連れて訪中し、李克強首相とも会談して経済協力を話し合う。中国経済は成長から安定への過渡期にあり、経済構造改革が課題となっているが、韓国の経験とノウハウはまさに打ってつけである。双方の経済に好刺激となろう。 他方の安倍首相は70年談話で侵略を謝罪するなど、ギリギリまで訪中を模索していたが、断念した。かくも対中外交がぶれるのは安保法案強行採決を目指すなど、戦争と平和の間で揺れているからである。 尖閣で対立する中国への圧力を高めるには日米韓の連携が不可欠と考え、韓国側に訪中中止をそれとなく求めてきたが、従軍慰安婦など歴史認識問題の溝が埋まらず、一蹴されてしまった。 安倍政権周辺から朴槿恵大統領の訪中を二俣外交などとやっかむ声が聞こえるのは、焦りの裏返しである。 実際、北京での抗日戦勝記念行事には中国、韓国、ロシアの隣国首脳が顔を揃え、安倍日本の東アジアでの孤立が鮮明となる。 安倍政権の最後の頼みは、米国である。米中対立につけこみ、同盟国米国の力を借りて中国を封じ込める狙いだが、うまくいきそうもない。 実は米国も同じ戦勝国として、駐中大使がオバマ大統領の特命全権大使として参列する。日本軍国主義の亡霊を背負っている限り、日本につけこむ余地はない。 そもそもオバマ大統領に中国と全面対決する気は毛頭ない。 すでに習主席と新型大国関係構築で合意しており、今秋に訪米する習主席とさらに煮詰める。 その枠内で米国の立場を強固にするのが日米同盟の役割なのであり、尖閣などで安倍政権が暴走するのをむしろ警戒している。 安倍首相と対照的に、朴槿恵大統領は米中新型大国関係構築が東アジアの平和と安定に繋がると肯定的に評価し、独自の対中外交を展開している。 訪米は習訪米と前後する微妙な時期となるが、9・3はバランス外交を一段と加速する契機となろう。 |







