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韓日が基本条約に調印し、国交正常化してから22日で50年になる。
国内の猛烈な反対を押し切って“不十分”な日韓条約に調印したのが朴正煕であるが、その娘の朴槿恵大統領が従軍慰安婦問題など個人賠償問題で安倍首相と激しく対立し、首脳会談一つ持てないでいるのは、宿命的である。 日韓条約には個人賠償に関する規定は全く存在しない。いわばグレーゾーンである。 朴槿恵大統領は父親が積み残した課題を解決し、名実ともに日韓新時代を切り開こうとしていると考えれば、日本のメデイアが不可解と嘆く一連の対日強行姿勢は合理的に説明がつく。 それはやはり個人賠償問題で衝突している日中関係の解法にヒントを与えるものとなろう。 日韓関係は戦後最悪と極論する向きも一部にあるが、皮相的な見方である。 年間数百万のヒトが日韓を行き交い、経済も水平分業化へと相互的補完関係へと深化するなど、大局では良い方向に向かっている。 焦眉の従軍慰安婦問題でも昨年4月から日韓外務省局長会議が重ねられ、「日本が取る措置には元慰安婦への財政支援や、安倍首相による謝罪や責任への言及を含む声明が挙がる」(日経6月18日)ところまで来ている。 韓国側は海外での反日キャンペーン中止、国内外の慰安婦像撤去、現政権による最終解決への保証、などを行うというものである。 朴槿恵大統領は11日付のワシントン・ポストとのインタビューで「相当な進展があり、現在、最終段階にある」と述べたが、実務レベルでの協議を受けてのことであろう。 ユン・ビョンセ外相が4年ぶりに訪日するのも、政治レベルで詰める狙いがあるものと読める。 問題がここまで尖鋭化した以上、朴槿恵大統領も安倍首相も、まあまあ主義で手を打つことは許されない。 50年前は貧困国の韓国が経済支援欲しさに妥協し、禍根を残したが、同じ轍を踏む愚は避けるべきである。 最低限、安倍首相による従軍慰安婦への明確な反省と謝罪が必要である。 米国の東アジア問題の権威であるハーバード大のエボラ・ボーゲル名誉教授は従軍慰安婦問題について「悪かったと言い続ける必要がある」と述べたが、日本が真摯に反省してこそ韓国も赦す事が出来る。 村山談話や河野談話を日本側が覆した事が現在の事態を招いた経緯から、当然の教訓を汲み取るべきであろう。 私は『朴正煕ー韓国を強国に変えた男』で、朴正煕大統領が経済開発に必要な外資を得る事を優先させ、賠償問題で譲歩した経緯を書いた。 後世に解決を委ねたのであるが、当時の状況としてはやむを得ぬ側面があった。 その娘の朴槿恵大統領が韓国の国力の伸長を踏まえ、日本側に父親が言えなかった事を物申し、従軍慰安婦問題や強制徴用者の賃金未払い問題などの個人賠償など積み残された問題を最終的に解決しようとしているのは、至極当然の流れであり、宿命的ですらある。 個人賠償に関しては韓国や中国の裁判所で訴えを受理するケースが相次ぎ、日本側は日韓条約や日中共同声明などで「完全かつ最終的に解決」と反対するが、一方的な解釈輪であり、問題がある。 韓国憲法裁判所判決(2011年8月3日)が「日本軍慰安婦としての賠償請求権が韓日協定第2条第1項によって消滅したか否かに関する韓日間の解釈上の紛争を、同協定に従って解決しないでいる被請求人(韓国政府)の不作為は違憲」とするのは、十分に根拠がある。 個人賠償問題は法理論的にはグレーゾーンにある積み残された問題なのである。 すなわち、日韓請求権協定は国家請求権について言及し、個人賠償権には触れていない。 個人請求権に触れているのは、サンフランシスコ条約14条b項「連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の・・・請求権・・・を放棄する」である。 台湾の蒋介石政権はそれに準じて対日請求権を放棄したが、北京の中国政府は日中共同声明でそれに言及していないので、日中間では個人賠償問題はグレーゾーンにあると言える。 ましてや韓国は連合国ではなかったのでサンフランシスコ条約に言及する立場になく、日韓条約でも触れていないので、個人賠償問題は完全に未解決のグレーゾーンにある。 従って、グレーゾーンにある個人賠償問題を完全かつ最終的に解決するには新たな立法措置、すなわち条約が必要である。 従軍慰安婦問題などはそうした視点からとらえるべきである。 なお、本稿はさる17日に新宿永和ビルでの研究会「日韓国交正常化50周年 朴正煕1965 」で行った講演「自我覚醒期に入った日韓の認識ギャップと課題」を基にしている。 現在の日韓関係を「成熟期に入った」ととらえる見方もあるが、「自分が一番」と互に競い、自己の立ち位置や相互の違いすら認識できずに感情的に対立する現状は、成熟期には程遠い。 日韓共同世論調査でも日本は韓国を「民族主義的」と、韓国は日本を「軍国主義的」とみなすのが最も多い。民族主義も軍国主義もナショナリズムの一形態であるが、国家を超えるスープラナショナリズムに向かっているEUに比べれば、遺憾なことだが、日韓はまだ青臭い。 日韓は、経済的には電機、造船、鉄鋼などで競争しつつも、他面で互に協力して高度な完成品を作り出す水平的な分業関係にある。 そうした経済的な相互補完関係に見あった意識の刷新と制度設計が求められている。 |
東アジア国際関係論
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アベノミクスが失敗に終わった事は昨年の日本の実質GDP成長率がマイナス1%、今年の成長率もOECDが3日発表した予測で、先進国で最も低い0.7%と下方修正している事でも明らかである。
「異次元の量的緩和」なる日銀の無謀な円垂れ流しにより、株バブルが人為的に作られ、円安誘導により一部輸出関連企業が潤っているだけで、実体経済は全く上向かず、先進国最悪の国家債務と貿易赤字が際限なく膨れ上がっている。 円安を喜んでいるかのような風潮が、展望を失った日本経済の実状を端的に物語る。 一般論で言えば、為替は国力のバロメーターであり、国力が衰退すると、為替は弱くなる。 円安は、日本経済の衰退そのものなのである。 日銀が禁じ手の量的緩和に踏み切ったのはデフレ解消が名分であったが、実体的な供給と需要のギャップが、紙に一万円、五千円と書いただけの銀行券で埋まるはずもない。 「2%の物価上昇」が2年経っても実現できず、目標の来年中もメドが立たないのは、当初から分かっていたことであった。 2%のインフレターゲットは実は表向きで、真の狙いは円安誘導との見方もあるが、これも、輸入物価の高騰と消費の落ち込みで逆効果になりつつある。 一時はアベノミクスに最後の期待をかけた庶民も、食料品など生活必需品高騰でアベノミクスが虚構であったことを実感しつつある。 また、中小企業も多くが輸入材高騰に直撃され、国内市場は縮小し、経営不振に陥っている。 アベノミクスに「強い日本復活」を夢見た宴は、終焉を迎えていると言うべきであろう。 日銀のさらなる金融緩和を求める声もあるが、これ以上、傷口を広げるのは自暴自棄の愚策というものである。 最大の課題である財政再建について安倍首相は「3%以上の成長率で税収を増やし、プライマリー・バランスを回復」とのシナリオを描いていたが、不可能になった。 さすがに安倍政権内にもアベノミクスへの悲観論が出始めているが、安倍首相は依然として強気である。 7日からドイツでG7が開かれるが、「アベノミクスの実績をアピールし、2020年までの5年間に1100億ドルをアジア地域のインフラ整備支援に投じる計画を表明する」(読売新聞)という。 現実離れしているが、AIIBへの対抗心だけは見てとれる。 安倍首相は都合のよい数字を挙げてアベノミクスの「実績」をアピールするつもりであろうが、客観的に見れば、昨年度の実質GDP成長率は、米国2.4%、ユーロ圏0.9%に比べ、日本だけがマイナスである。 2015年度の予測もOECDは日本について1%から0.7%に引き下げている。米国2.0%、ユーロ圏1.4%より低いが、貿易赤字や国内消費の落ち込みなどを原因に挙げる。2016年度も1.4%であり、長期停滞から抜け出せないというのが、国際社会の日本経済への基本的な見方である。 安倍首相の独りよがりは、株高に浮かれる日本国内はいざ知らず、G7の場では浮き上がるだけである。 ましてや、中国への対抗心からAIIB批判を繰り広げても冷ややかにあしらわれるのは目に見えている。 英国、ドイツ、フランス、イタリアはAIIB創設国に加わり、人民元取引に積極的であり、当初反対していた米国も水面下で加盟条件を打診しているとの情報もある。 安倍首相は南シナ海の埋め立て問題で中国を追い詰める作戦を思い描いていると読めるが、ユーロ圏諸国は政経分離を明確にしており、中国との経済的な結び付きを強化する方向へと舵を切っている。 むしろ、対中貿易を減少させ、貿易赤字を増やしている日本の轍を踏むまいと、反中ナショナリズム過剰の安倍首相を反面教師とするだろう。 日本では中国経済の減速や「崩壊」論まで飛び交っているが、反中感情に目が曇らされ、客観的な数字が全く見えていない。 中国の昨年度の経済成長率は7.4%であり、今年のOECD予測は6.8%と、いずれも日本には高嶺の花の数値である。0.6%の減速は無論「崩壊」などではなく、「安定成長」への転換とみるのが順当である。 安倍首相はアベノミクス失敗から国民の目を逸らそうと、中国を仮想敵とするかのような安保問題にふっているが、日本経済にとっては百害無益と言うべきである。 先の戦争の教訓ではないが、狭い願望ではなく、客観的に自己の立ち位置を認識しないと取り返しのつかないことになる。 日本には経済的に中国と対抗する余力は残されておらず、協調が唯一賢明な選択肢である。 中国市場に積極参加し、AIIB創設国となった韓国が、昨年3.3%、今年3%、来年3.6%と先進国では最も高い成長率を描いていることが日本の参考になる。 外国人観光客の大半を占める中国人、韓国人観光客によって日本の消費にいくらか明るさがさしているのも象徴的である。 AIIBもそうした視点から素直に見直すと、日本の希望となろう。 |
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南シナ海において中国は、フイリピンと目と鼻の先の南沙諸島(スプラトリー諸島)の岩礁を埋め立て、滑走路や港湾を建設している。 上掲の地図の、下方に大きくくぼんだ赤線(九段線)をみても、南シナ海を丸ごと領海に収めようとする中国の主張が一方的なものであることは一目瞭然である。 しかし、米国が遠く離れた南シナ海にまで影響力を行使するのは不当である、との中国の主張にも一理ある。 少なくとも阿片戦争(1840年〜42年)で中国が阿片密輸入を謀った英国に惨敗するまで、南シナ海では中国船が自由に航海し、米国船など影形もなかった。 「中華復活の夢」を描く習近平主席が米国に対して線引きの修正を求めるのは、ある意味で当然であり、時代の流れでもある。 習主席はこの秋に訪米し、オバマ大統領と会談するが、かねてから合意している「新型大国関係」構築の各論として、南シナ海問題を議題に上げることになろう。 その前哨戦が行われていると読める。 中国が南シナ海の海洋権益を主張する狙いは、中東・アフリカから輸入する原油の8割が通る海域の安全確保、海底地下資源開発、米本土を射程圏内に入れる潜水艦発射弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を水深の深い海に展開させる対米核抑止戦略、の3点と考えられている。 中国人民解放軍の孫建国副総参謀長は5月31日、シンガポールのアジア安保会議で講演し、南シナ海での埋め立てについて「軍事、防衛上のニーズを満たすため」と、中国軍幹部として初めて軍事目的に言及した。前日にカーター米国防長官から「即時中止」を求められたことを意識してのことである。 講演後の質疑応答で防空識別圏設定についても「中国領空への脅威などで総合的に判断する」と含みを持たせた。 ここにきて中国が埋め立てを公然化しているのは、米国防総省が5月8日に年次報告書『中国を含む軍事安全の発展2015』を議会に提出し、「南シナ海で中国が5ヶ所の前哨基地を建設中であり、危険が迫っている」と中国の脅威を主張したことと無関係ではない。その1週間後に6120億ドルの軍事予算を承認されている。 日本の自衛隊の南シナ海での後方支援が論議されていることも、力には力で対抗すると中国軍を刺激している。 5月26日に発表された国防白書『中国の軍事戦略』は「海上軍事闘争への準備」を明記し、米国を強く牽制した。 そこには、習近平主席の持論を踏まえた「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現する。中国の夢は強国の夢であり、強軍の夢だ」と書かれている。 習主席が相当の覚悟を固めている事がうかがわれる。中国軍を陸軍偏重から海空軍とのバランスのとれた新編成に着手しており、南シナ海問題が戦略的な次元に位置付けられていることが分かる。 一部には米中軍事衝突かと先走った見方も出ているが、あり得ない。 米国防総省は米海軍主催の2016年環太平洋合同演習への中国軍招待を撤回しない方針を示した。マケイン上院軍事委員長らの撤回要求を一蹴した。 オバマ大統領は1日、ASEANの若手指導者たちとの会談で、「埋め立ては非生産的」と批判しながらも、「中国の主張にも一理ある」と述べ、外交的に問題を解決する姿勢を明確にした。 オバマ大統領は「中国は経済的には成功するだろう」との認識を示しており、南シナ海の岩礁問題で世界最大の市場を失う選択肢はないということである。 米政府は5月26日、米中戦略経済対話が6月22日から3日間、ワシントンで開催されると発表している。その一方で、フイリピン、ベトナムとの連携を強化しており、搦め手で中国に抑制を求める狙いと思われる。 中国側も航行の自由を保証すると述べており、力ずくで現状を変更する限界は認めている。経済的な相互依存関係を踏まえ、秋の習・オバマ会談で決着を図ることになろう。 問題は、一方の当事者であるASEAN諸国がいかに発言権を高めるかにある。どの国も米中の軍事衝突を望んでおらず、独自の外交力でそれを保障しなければならない。 ASEANが法的拘束力のある行動規範を中国に認めさせるためにどこまで統一的な行動をとれるか、問われる。 |
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米国は強いという常識はもう捨てた方が良いかもしれない。
日米が「対中抑止力強化」を名分にことさら同盟強化を喧伝するのは、中国を必要以上に恐れているからにほかならない。 日米が見事に孤立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)ショックであろう。経済、安全保障共に一人では自信がないから、二人で力を合わせて立ち向かおうということである。 もっとも、日米間の思惑は必ずしも一致してはいない。 オバマ大統領と習近平主席は既に「新型大国関係」構築で合意しているが、習主席の秋の訪米に向けて日米の思惑の違いが次第に露になっていこう。 日米首脳会談は28日午前(現地時間)、ホワイトハウスで行われ、「日米共同ビジョン声明」が発表された。同声明には「力や強制により一方的に現状変更を試みる事は、国際的な秩序に反する挑戦」と明記された。 オバマ大統領は、共同記者会見で「中国は東アジアや東南アジアで力を拡大しようとしている」と批判した。中国が南シナ海でフィリピン等と領有権を争っている海域の岩礁を一方的に埋め立て、飛行場や港を作っている事を念頭に置いている事は言うまでもない。 安倍首相も尖閣諸島(釣魚島)問題を念頭に東シナ海での中国の強引な海洋進出を非難したが、オバマ大統領とは微妙な温度差がある。 オバマ大統領は「安全保障条約第5条は尖閣諸島も含め、全ての日本の統治する地域に適用される」と述べたが、日本側が強く求める領有権には言及しなかった。前年4月の訪日での記者会見で述べた域を一歩も出ていない。 辺野古移設についても沖縄の反対を意識してか、「より柔軟に対応したい」と述べている。 中国との今後の外交交渉に余地を残したということである。 キッシンジャー元国務長官は「(尖閣は)日清戦争で中国から奪った」との認識を示している。 中国もその辺は心得ており、自衛隊が地球的規模で米軍の補完的役割を担うとした新ガイドラインに対しても、外務省副報道局長は「米国から発表前に連絡があった」と明かした上で、「米日同盟は中国を含む第3者の利益を損なってはならない」と自制的なコメントをしている。 人民日報(28日)は「中米日の三角関係は重要かつ複雑で、3ヵ国とも極めて慎重に対応する必要がある」との余裕の論評を掲載しているが、背景には政治・経済面で米国は中国を無視できないとの自信がある。 オバマ大統領は日米同盟強化をリバランス政策の成果としてアピールし、安倍首相を歓待したが、歴史認識に危うさも感じている。 安倍首相は米下院決議で従軍慰安婦に謝罪するよう求められるなど厳しい立場に置かれているが、記者会見でも突っ込まれ、「人身売買(human trafficking)の犠牲となって筆舌に尽くしがたい、辛い思いをされた方々の事を思い、非常に胸が痛む。河野談話は継承し、見直す考えはない」と答えた。human traffickingは米国では黒人奴隷売買を指すが、安倍首相は「強制性はなかった」と未だに固執しており、溝は埋まっていない。 オバマ政権は従軍慰安婦問題に対する韓国や米国内アジア系の反発を非常に気にしており、今後も尾を引きそうである。 オバマ大統領は「世界で最も成長が速いアジア太平洋でルールを作るのは、中国ではなく米国だ」と対抗心を剥き出しにするが、AIIBでの孤立の衝撃がそれだけ大きいということである。 日米が巻き返す最後の手段はTPPであるが、半年ぶりに東京で行われた日米閣僚交渉は15時間も費やしながら合意できない。 中国抜きで経済を語ることはもはや不可能ということである。 その認識をベースに米日のAIIB参加も視野に入れ、秋の米中首脳会談を迎えることになろう。 |
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(23日付人民日報。インドネシア、ミャンマー首脳との会談は1面トップ。安倍首相は2面。国旗もない) 習近平主席と安倍首相が22日夕、ジャカルタでのアジア・アフリカ会議(バンドン会議)の60周年記念首脳会議に合わせ、5ヶ月ぶりに会談した。 会談時間が前回の北京でのAPEC首脳会合に合わせた素っ気ない会談と同じ25分間である事が、それぞれの思惑と限界を物語っている。 再会談して顔を繋いだ意味はあるが、内容的には互いの相違点を確認し、事態をこれ以上悪化させない意思を確認するセレモニー以上のものではなかった。 会談に先立って両者は笑顔で握手を交わし、習主席が「両国国民の努力のもとで中日関係はある程度改善できた」と切り出し、安倍首相が「地域や世界の繁栄に貢献していくことは両国の責務」と応じ、まずまずの外交辞令を交わした。 肝心の会談内容であるが、新華社通信などによると、習主席は「日本が真剣にアジアの隣国の懸念に対応し、歴史を直視して積極的なメッセージを発信するよう希望する」と述べ、安倍首相は「私自身も私の内閣も、村山談話、小泉談話を含む歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく」と応じた。 前回の北京での会談は事前のプレスリリーフで相違点を確認しあった後に実現したが、今回も内容的にはその域を出ない。 今回の会談を呼び掛けたのは日本側であった。来月の安倍首相の訪米前に、中国との関係改善に努力している姿勢を示す必要があった。 しかし、首相官邸からは「中国を牽制する時だ」として、中国に言質を取られかねない会談に否定的な声が公然と聞かれ、足並みが揃っていなかった。 他方の中国は、余裕を示す。王毅外相は会談に先立って朝日新聞の取材に「日本側が会いたいと提案してきたので、我々も会っていいと判断した。重要なのは日本側が積極的な政策をとり、言行が一致することだ」と注文を付けている。 アジアインフラ投資銀行(AIIB)を追い風に日本を包容する姿勢をアピールし、歴史認識問題で具体的な注文を付けた方が得策と判断したのであろう。 安倍首相の頭の中は、来月に控えた米上下院合同会議での演説文で歴史認識にいかに言及するかで一杯であろう。 夏に予定する戦後70周年談話のベースになるが、場所が場所だけに一つ扱いを間違えると致命的な外交的ダメージとなりかねないからである。 米上下両院合同会議での演説は韓国の朴槿恵大統領が2年前に行っているにもかかわらず、日本の首相としては今回が初めてとなる。 上下院議員には対日戦争に参戦した元兵士が多く、旧敵国首相を迎えることに反対意見が強かった。 今回ようやく実現するが、安倍首相側近たちが日頃公言している「日本は悪くなかった」、「真珠湾攻撃はアメリカの陰謀」などとやったら、その瞬間、一線を越えたとみなされ、全てが終わる。 そこまで愚かではなかろうが、米側が安倍首相が戦争責任について明確な認識を期待し、注視していることは間違いない。 歴史認識問題は対アジア諸国だけとの問題ではないのである。 安倍首相は日中首脳会談前のバンドン会議で演説したが、10年前の小泉首相と異なり、「植民地支配と侵略」や「おわび」は引用しなかった。 習主席との会談で「先の大戦の『深い反省』の上に平和国家として歩んできた」と釈明したが、中国側は間接的な表現に全く満足していない。隠そうとしていると疑ってさえいる。 バンドンは均しの場であった。安倍首相が演説で触れた「深い反省」というのは祖父の岸信介元首相が1957年の首相就任直後に言及した言葉であり、安倍首相は演説草稿を練る際、それに触れることには同意したという。 格別のこだわりが見てとれるが、元A級戦犯の祖父を超えないと、中国、韓国、米国の理解を得ることは難しい。 歴史認識問題では習主席は韓国、さらに戦勝国同士の米国との連携に自信を深めている。 安倍首相がこだわるほど窮地に追い込まれる。 |





