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安倍首相は米中「新型大国関係」に反発し、「強い日本復活」で日米同盟を強化して対抗しようとしている。
それに適応し、米中間で存在感を発揮しようとしている朴槿恵大統領と対照的である。 本来なら朴槿恵イニシアティブは安倍イニシアティブであってしかるべきものであったが、安倍の優越感と劣等感入り交じった歴史認識に邪魔されたのは、安倍個人のみならず、日本にとっても不運であった。 ある種の焦りに駆られた靖国参拝後、安倍は自身の予想に反して、米中韓から二重、三重の外圧を受ける羽目に陥った。 長州は英国との戦争で惨敗してから攘夷から開国へと豹変したが、世襲政治家の安倍に、食うや食わずの下級武士から這い上がった同郷の先達たちの柔軟性と機知を期待するのは難しそうである。 習近平主席が昨年の米中首脳会談で提唱した「新型大国関係」については、オバマ政権内にも異論、反論がある。 とりわけ、日本保守層の安倍応援団からはシャドーバンキングなどの個別的現象を挙げて、中国分裂・崩壊論といった極論が目につく。 先見の明が問われる所以だが、時代がその方向に流れていることは間違いあるまい。 最近、それを占う注目すべき発言が欧州の金融トップからなされた。 メハシュ欧州中央銀専務理事が26日、人民元が国際貿易や投資分野で重要性を増し、ドルに対抗する通貨となる可能性があると述べたのである。ユーロ圏での中国金融機関の存在感が高まり、主要な決済通貨として機能しつつある現状を追認したと考えられる。 中国のGNP は既に日本の二倍となり、IMF などは2030年までに米国を抜くだろうと予測している。 それに伴い、政治的な分野でも米国を中心とした世界秩序が変化し、米中二極化へと地殻変動するのは避けられない。 日本保守層でも桝添東京都知事が10年以内に中国は世界一の経済大国になるとの見方を示し、北京市、ソウル市との首都交流に舵を切ろうとしており、安倍派の旗色は悪くなっている。 安倍の最大の誤算は、無謀と批判された異次元の金融緩和で円安へと誘導したにも関わらず、輸出が思うように伸びないことである。貿易赤字が底抜けに落ち込み、経常収支の黒字も危うくなり、国家債務は絶望的な数字に膨らみ、デフォルトの影が忍び寄っている。 その要因は 、歴史認識や尖閣領有で対立した煽りで、成長力を取り込むとしていた世界最大の中国市場から閉め出されていることにある。 他方で、漁夫の利を得る形でライバルの韓国は日本の分まで対中輸出を増大させ、昨年の貿易黒字、経常収支共に史上最大を記録した。 ほぼ1年経って、「新型大国関係」に反発した安倍と、適応しようとした朴槿恵がハッキリと明暗を分けた。安倍支持派からは「朴槿恵の二股外交」云々の声が噴出しているが、今となってはやっかみの類の域を出ない。 安倍の第2の誤算は、戦後秩序の機軸である日米韓連携に取り返しのつかない亀裂を生じさせてしまったことである。 従軍慰安婦を否定する不誠実な歴史認識が韓中共闘へと向かわせ、日本の孤立が露になった。 韓国に対する日本の経済的優位や影響力を過信し、圧力をかければ折れてくると画策したことも全て空回りし、恨みつらみを言うしか手がなくなってしまった。 「強い日本」の幻想に憑かれ、中国や韓国の経済的政治的な伸長を甘く考え、適切な対応を怠った付けが回ってきたのである。 弱り目に祟り目との諺もあるが、頼みとする米国からは、「失望」に混じって、安倍は緻密な思考が出来ないと、突き放すような声が頻繁に聞こえてくるようになった。 堪らず、安倍側近から「米国が「失望」と言ったのは、我々のほうが失望した」(衛藤晟一首相補佐官ホームページ)と反発する動きが公然と出たが、菅官房長官が慌てて削除させる狼狽ぶりである。内閣改造で求心力回復を策すが、第一次安倍内閣を彷彿させる終局が透けて見えてくるではないか。 先月25日に公表された米議会調査局報告書は「安倍首相の歴史観は第二次大戦に関する米国人の認識とぶつかる危険性がある」と警告しているが、安倍への不信感極まったと解すべきであろう。 過去の過ちへの反省を「自虐的」と拒否する貧弱な知性は、同じ過ちを繰り返すのである。 |
小泉・・・→安倍晋三
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安倍首相のキャッチフレーズは「美しい日本」「強い日本」であるが、ことさら強調するのは、今の日本はそうでないと強く思い込んでいるからにほかならない。
とりたてて目くじらを立てることもなさそうな平凡なフレーズだが、A 級戦犯を祀る靖国参拝をきっかけにリスキーな政治性を帯びる。そこに含まれている歴史認識が戦前の軍国主義肯定、復古的で、右傾化した危険なナショナリストとの安倍批判が世界中に急速に拡散し、強烈な「外圧」となり、日本国内の世論が複雑に割れ始めた。 一方で、安倍内閣が未だに50%前後の支持率を維持していることが示すように、少なくない日本国民が依然として安倍氏のキャッチフレーズに痺れ、日本復活に最後の希望をかけている。 「外圧」に対しても、二十代、三十代の若い層には韓国、中国への対抗心から安倍氏支持に回る生硬なナショナリズムの空気が淀み、親米的とされた保守層内部でも靖国参拝を「失望」と評した米国への不満が渦巻いている。 他方で、昨年秋の特定秘密保護法案強行採決や原発再稼働推進などに反発して噴出した安倍批判の新たなうねりが見られる。 リベラル、左派は戦後憲法秩序を根こそぎ破壊するかのような安倍氏の暴走に危機感を募らせている。 注目すべきは、「外圧」を鏡にして日本の立ち位置を再認識しようとする理知的な動きであるが、その一つが田中康男元長野県知事の、「(過去の侵略行為や植民地支配への反省を拒む)自虐史観否定は自慰行為であり、自爆史観にほかならない」との指摘である。 ツィッターでみかけ、「本質をついた痛快な指摘です」と書き込むと、「自爆史観は日本及び日本人への信頼を毀損します」との返信があり、即座に百を超すユーザーからリツィートされた。 安倍首相を愛国者とみなす世論と、海外と摩擦を引き起こす右傾化のリスクと認識し、「自爆史観」とまで警戒する世論とのせめぎあいは、日本が重大な岐路に差し掛かっている状況の反映にほかならない。
それをアベノリスクと呼ぶことにするが、その危険度が高まっていることは一連の衝撃的な経済指標がはっきりと物語っている。
第一次安倍内閣を国会開会直後に「不治の病」を理由に投げ出し、政治生命が終わったとみなされていた安倍氏が復活し、現在も一定の支持を得ているのは、「デフレからの脱却」を標榜したいわゆるアベノミクスに拠るところが大きい。しかし、それすらリスクに転じつつある。
昨年の経済成長率は2%台前半にとどまり、韓国の2・8%にもとどかない。貿易立国の日本の命綱である貿易は肝心の対中輸出がライバルの韓国に食われて鈍化し、昨年の貿易赤字は史上最悪の10兆6399億円、経常収支黒字も1985年以降最小の3兆3061億円に縮小した。バラマキ公共事業で国の借金が過去最悪の1017兆9459億円とGNPの240%に膨らんでおり、国債暴落、財政破綻の影がヒタヒタ迫る。
そうした危機感は当の安倍首相が誰よりも強く抱いていることである。昨年12月26日に「今しかない」と唐突に靖国参拝へと走ったのも、予期しなかった政権の急速な弱体化で念願の靖国参拝を果たせなかった悪夢が頭を過ぎったからであろう。また、低下し始めた支持率を保守の心情に訴えて盛り返そうとの思惑がある。
籾井NHK会長から首相補佐官にわたる安倍氏のお友達や側近らが一連の失言で物議を醸しているのも、似たような心理である。
それらは失言というよりも、安倍氏周辺で普段から交わされている本音というのがより正確である。安倍氏の応援団である産経新聞系列のメディアは、靖国参拝に対して「憲法改正への道を切り開いた」(『正論』3月号、中西輝政・京大名誉教授)、「戦後レジームに風穴を開けた快挙」(同、阿比留瑠比・産経新聞編集委員)と、もはや邪な本音を隠そうともしない。 こうした現象を、日本もしくは日本人そのものと捉えるのは正しくない。それはあくまでも日本の中の部分的な現象に過ぎず、私はそれを安倍問題と呼んでいる。
この現象は極めて根が深く、政治、経済、文化一般まで広範に及ぶ。
安倍問題の特徴は、従軍慰安婦、南京大虐殺問題などを巡る韓国、中国など近隣諸国との軋轢にあり、領土問題が絡んで深刻化している。
そこには、アジアといかに向かい合うかという、近代日本の出発点で刻印された宿業的な情緒との相克がある。
「泰平の眠りをさます上喜撰(蒸気船)たった四はいで夜も眠れず」 日本人なら誰でも一度は教科書でお目にかかる、文化史上、最も知られた狂歌である。1853年、品川沖に突然現れたペリー率いる四隻の黒船に鎖国の国是を破られ、上に下にと蜂の巣をつつく混乱状態に陥った幕末の世情を見事に映している。 外圧と自戒を込めて語り継がれている事象であるが、日本は明治維新を成し遂げ、「脱亜入欧」へと強かに豹変し、アジアの先頭をきって近代化を実現した。そこには二つの相反する側面、外圧がなければ動かない島国的な閉鎖性と、一度動き出すと外圧を巧く利用して開国→近代化へと一丸となる進取性が同居している。 これまでも日本は、欧米との貿易摩擦や市場開放要求に直面するたびに、当初は抵抗しても、ある時点で「黒船には弱いから仕方ない」と国民多くが観念し、果敢に自己変革して状況を乗り切ってきた。
しかし、今の日本に向かって押し寄せている外圧は、西洋の黒船ではなく、同じアジアの韓国、中国からの黒船である。言わば、「脱亜入欧」の負の遺産の清算を求める第2の新型の外圧なのである。
吉田松陰を信奉する長州出身の安倍氏には、それを受け入れることはルーツを否定される屈辱的、自虐的なことに感じられる。
安倍氏ならずとも、「脱亜入欧」を日本の近代化そのものと、ある種の自負心を持って意識してきた少なからぬ日本人にとって、文明史的な大事件と言っても過言ではなかろう。
そうした文明論的な視点を踏まえて、歴史的な転換期にある日本を誤った方向に陥らしかねないリスクとなっている安倍現象を検証してみよう。
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安倍首相は参院選大勝でねじれ解消に成功し、長期政権に意欲を見せているが、国民は意外と冷めた見方をしている。
直近のNNN 世論調査では内閣支持率は政権発足以来最低の53%台に落ち込み、政権基盤が必ずしも安定しているとは言い難い。 そもそも参院選の投票率が史上三番目に低い52・6%で、自民党の比例得票率が34・7%でしかない。 つまり、有権者の18・2%しか安倍自民党に投票していないのである。 これは少しの風向きで政局が変わることを意味する。 つまり、次の国政選挙まで自民党政権は安泰だが、安倍内閣の支持率が赤信号の30%台に落ちれば、恒例の政権交代がありうることを示している。 しかも、私の見たところ、その可能性は低くない。 その主な理由は二つある。 一つは、安倍内閣支持者が最も期待するアベノミクスのリスクが日増しに高まっていることである。 株高が安倍人気を支えているが、日経平均株価が先週から昨日まで四日連続で下降し、下落幅が1100円を超えた。 10兆円の買い越しと言われる外国人投資が投機的に株高を演出し、株価乱高下を繰り返している。 これは国債金利上昇と連動しており、ヘッジファンドは日本売りの機会をうかがっている。 日本経済がいつになく不安定化していることは明らかである。 その最大の原因である1000兆円の累積債務を安倍政権はバラマキ投融資と財政規律を無視した量的緩和で膨らますだけで、効果的な手を全く打てないでいる。 来月上旬に発表予定の中期財政計画でも「赤字半減」とするが、その要の消費増税には触れずじまいである。 国民の反発を恐れてのことであるが、無為無策と批判されても仕方あるまい。 あてにならない成長の矢に誤魔化されるほど財務省もバカではないから、消費税8%案を準備し、麻生副総理・財務相談を押し立てて何とか通そうとしている。 安倍内閣支持率が50%を切れば、ポスト安倍の野心を隠さない麻生副総理が財政再建を政局にする展開も十分にありうる。 二つ目は、安倍首相が歴史認識問題で中国、韓国と必要以上の軋轢を引き起こし、日本経済に悪影響を及ぼしていることである。 その端的な例が貿易赤字の急増である。 今年上半期の日本の貿易赤字は史上最大の4・8兆円を記録した。 貿易立国の基盤が崩れつつあり、財政債務とあいまった双子の赤字は日本国家の破産を現実のものとしつつある。 その原因は、円安による輸入価格の上昇と輸出不振である。 共にアベノリスクが引き起こしたものであるが、とりわけ、安倍政権下で中国との関係が戦後最悪となり、世界最大の成長市場を失いつつあることが響いている。 日本ではほとんど見逃されているが、日中関係悪化で漁夫の利を得ているのが韓国である。 韓国は日本と対照的に今年上半期の経常収支が史上最多の297億ドルとなった。貿易黒字が直近の6月だけでも50・3億ドルを記録したからである。 対中輸出が大きな比重を占めている。 つまり、日本が減らしている分、韓国が儲けている訳である。 今後ともこの勢いで行けば、日本企業は韓国企業の下請けとなって間接的に中国市場に参入する比率が高まって行くだろう。 韓国は今年第2四半期のGNP 成長率が前期比1・1%、前年比2・3%増となり、今年の成長率を2・8%に上方修正した。皮肉だが、安倍様様である。 安倍首相はナショナリズム高揚と憲法改正で存在感を示し、アベノリスクを覆い隠そうとしている。 しかし、経済指数は正直である。物価高騰が庶民生活を直撃しており、支持率低下は避けられそうもない。 本人は汚名挽回と長期政権に意欲を示すが、前回の失敗からほとんど教訓を得ることなく、古い体質の旧自民党に回帰しつつある。 一度あることは二度ある。 |
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民主党に今一番求められているのは、政権交代の初心に戻って大同団結し、挙党体制を築くことである。 |
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菅改造内閣で拉致問題担当相を柳田稔法相が兼ねることについて、拉致被害者家族から「聞いたことも見たこともない人だ」「菅政権にとって拉致はこの程度の認識なのか」と困惑する声が上がったというが、よいことではないか。
安倍政権以来の、拉致問題解決を妨げてきた腐れ縁がなくなるという点では、一歩前進と言える。新しい酒は新しい袋、にである。 家族会の飯塚繁雄代表は柳田氏について、「拉致議連の人も知らないと言っていた。今まで継続していたものが切れた感じがする」と落胆したというが、テロリストの金賢姫(キム・ヒョニ)を国賓待遇で招請して内外から笑われるなど、「今まで継続していたもの」こそ問題なのである。
拉致問題を故意にこじらせ、政権浮揚に利用した自民党政権時代から8年もダラダラと引きずってきた悪弊を断ち切り、新たな出発を図ることで政権交代の実を出す、との狙いを感じさせるなかなか味のある布陣と言える。 もう一つ、岡崎トミ子・国家公安委員長にも旧弊打破の意気込みが感じられる。
産経新聞は例のごとく「仰天人事、岡崎国家公安委員長 反日デモに参加、在日朝鮮人から献金」と噛み付いているが、ここにも在日朝鮮人・韓国人への排外的な感情を煽り、政治家を孤立させようとの思惑が露骨に出ている。 不遜きわまるのは、「首相経験者の一人は『仰天した』というが、岡崎氏の過去の“特異な”言動を振り返るとそれも納得できる」と、下手な芝居を打っていることだ。
「首相経験者」は安倍氏か麻生氏であろうが、彼らこそ警察組織を官邸拉致対策本部に組み込み、警察の「総目付」役である国家公安委員長や警察庁長官を事実上の拉致対策実行部隊長に貶め、私兵化した張本人であった。そのため、「特定失踪者問題調査会」が400人ともそれ以上とも数える荒唐無稽な「拉致された疑いのある特定失踪者」の捜査に全国の警察組織が振り回され、本筋の犯罪捜査に支障を来たした。 菅首相や仙石官房長官がそれを見抜き是正を図っているとしたら、まさに慧眼である。 周知のように、産経新聞は安明進・元工作員の出鱈目情報を垂れ流し、世論を誤導してきた。
そうして作られた拉致世論の悪影響はいまだに清算されていないが、その責任の少なくない部分が産経新聞にあることは明々白々である。 他を謗る前に自らを謙虚に振り返るべきであろう。 産経新聞の根は深い。「岡崎氏はソウルの日本大使館前で韓国の慰安婦問題支援団体主催の反日デモに参加し、韓国人と一緒に大使館に向かってこぶしを振り上げた」と青筋を立てている。岡崎氏は「反日デモではなく、日本政府に謝罪と補償を求めるデモだ」と述べており、産経の言い掛かりである。
従軍慰安婦への謝罪と補償は村山首相談話など日本政府も表明したことであり、岡崎氏のデモ参加はむしろ誠実な行為と評価しても良い。 産経新聞は周知のように、従軍慰安婦、朝鮮人強制連行、南京大虐殺などを否定し、旧日本のアジア侵略戦争を正義の「大東亜戦争」と持ち上げてきた。
拉致問題に対する排外的な偏向姿勢は、そうした過去を覆い隠し、誤った歴史認識を広げる道具にする不純な目的から来ているのであろう。 「外国人犯罪が増えているというが、日本人が犯した場合には立件もされないような軽微な犯罪が多い」と岡崎氏の過去の言動をあげつらい、「岡崎氏の政治団体が北朝鮮籍で朝鮮学校理事長の男性と、韓国籍のパチンコ店経営者からそれぞれ2万円ずつ寄付を受け取っていた」と、在日との交流があたかも犯罪に結びつくかのようなあら探しをし、「こんな国家公安委員長で本当に大丈夫?」と結ぶが、こんな新聞で大丈夫だろうか。
リンゲル輸血剤やピアノの対北朝鮮輸出を犯罪視し、高校無償化で朝鮮高校を差別することが北朝鮮への制裁・圧力になるかのような幻想を抱き、結果的に在日をいじめ、日本の資源戦略を狂わすような愚かな行為にはそろそろ終止符を打つときである。
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