河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

小泉・・・→安倍晋三

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 鳩山新政権になって拉致問題の呪縛から解放され、外交の幅が広がり、温暖化対策や核軍縮問題でイニシアチブを発揮するなど国際的な存在感がとみに高まっている。
 政権交代を機に始まった脱官僚依存、政治主導の効果が外交面でも出てきたということであろう。

 周知のように、安倍、福田、麻生政権時代は首相、官房長官、外相らが口を開けば「拉致」「拉致」「拉致」とオウムのように官僚の作文を繰り返しながら、何の進展もなく、外交は停滞し、軍事費増大で財政赤字悪化と内政疲弊の一因となった。政権交代はそうした淀みを一掃し、日本の国際的なイメージを変えている。
 麻生首相が旧麻生炭鉱の強制連行者への未払い賃金問題を黙殺したように自民党歴代政権には独特の薄汚さが付きまとっていたが、鳩山新政権には植民地支配と侵略への反省と謝罪に正面から向かい合う清潔感が漂い、東アジア共同体構想にも真摯に耳を傾けてみようと言う気にさせられる。
 韓国、中国では期待感が高まっているが、北朝鮮も例外ではない。

 遠からず再開されるであろう北朝鮮との対話は、日朝ピョンヤン宣言に明確なように、日本が一方的に拉致問題を追及する場ではなく、日本が過去の責任を明確にする場でもある。
 歴史認識に重大な瑕疵がある安倍、福田、麻生三代政権はそれを履き違え、北朝鮮側の不信感を買い、交渉能力を喪失してしまった。拉致被害者の再調査など単純な手続き上の問題で何年も不毛の対立を繰り返してきた背景には、そうした基本的なスタンスの違いがあったのである。
 鳩山政権は前任者の愚を繰り返すことなく、アジアに通じる健全な歴史観と戦略的ビジョンの下で北朝鮮との交渉に臨んでもらいたい。

 それは、日本の当面して最大の安保上の課題である北朝鮮の核・ミサイル問題とも連動する。
 北朝鮮はこれまで核問題では米国以外は相手にしなかったが、鳩山政権がマニフェストなどで掲げる核軍縮構想には別の反応をする可能性がある。
   
 岡田外相は17日、薮中三十二外務事務次官に60年日米安保条約改定時の核持ち込み、朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動についての密約、72年の沖縄返還時の有事の際の核持ち込みに関する密約について今年11月末をめどに調査結果を報告するよう命令した。
 同時に、「私の持論は『先制使用すると明言する国に核軍縮や核の不拡散を言う資格があるのか』ということだ。先制不使用によって核の抑止力が弱まるとは考えていない」と述べ、米国に対して核の先制不使用を働きかける意向を示した。

 それらの密約は北朝鮮への核先制攻撃を想定したものであり、北朝鮮が主張する「自衛的な核抑止力」開発の口実となった側面があったことは否定できない。
 それを隠してきた自民党政権を北朝鮮が相手にしなかったのは、ある意味で当然なことであった。

 鳩山政権がそうした歴史的な事実を見据えて、非核3原則を実効性あるものとし、オバマ政権の核軍縮を進める方向でイニシアチブを発揮すれば、北朝鮮の非核化にも少なからぬ影響を与えることができよう。
 温暖化防止問題とともに、核廃絶問題でも鳩山イニシアチブに期待したい。

 
 

 鳩山新政権が発足したが、官僚によって捻じ曲げられた対北朝鮮外交を政治主導に戻すことが出来るか、注目したい。
 一般論を今更言っても意味がない。ずばり焦点になるのは拉致被害者の再調査だ。

 日本では「横田めぐみら拉致被害者は生存している」→「戻さないのはけしからん」と反北朝鮮感情が拡散している。
 仮に生きている被害者を隠し、返さないでいるとしたら、北朝鮮は全くもってけしからんとなるのは当然のことだが、拉致を認め蓮池薫氏ら生存者を返した北朝鮮に、ことさら日本側の憎しみを掻き立てる理由はない。
 日朝対立を煽り、日朝修好を妨害することによって利益を得る勢力の存在を疑ってみるべきであろう。

 日朝の棘となっている生存説は、安明進・元北朝鮮工作員らの無責任な伝聞証言によるもので、客観的な根拠がない。
 それを承知で、自民党政権時代に官邸に置かれた拉致問題対策本部が中心になってマスコミを巻き込む虚偽の情報操作を行い、政権浮揚などに利用してきたというのが事の真相に近い。
 安倍ー福田ー麻生3代の政権たらい回しはその結果だが、その間、肝心の拉致問題は全く進展せず、日朝の不毛の対立だけが増幅されて軍事的な対立にまで発展し、MDやイージス艦配備など軍備拡張派に利用されてきた。 
 
 安倍ー福田ー麻生3代の政権は、拉致問題対策本部を牙城とする外務官僚、警察官僚などによって自縄自縛され、弄ばれた側面がある。
 いわゆる拉致利権なども生まれ、拉致被害者家族会、救う会、特定失踪者問題調査会なども世論操作の道具に使われてきた。
 
 拉致被害者の再調査は拉致問題の解決の突破口となるばかりか、不毛の日朝対立を解き、日本の外交・防衛費のムダを省く上でも大きく資することとなろう。
 幸いにして、鳩山新政権では拉致問題対策本部が解体される運びであり、対北朝鮮外交は脱官僚、政治主導に向けて正常化の第一歩を踏み出したと評価できる。
 岡田克也外相は17日未明、初閣議後の記者会見で北朝鮮側に拉致被害者の再調査を求める考えを示したが、タイミングとしては悪くない。

 北朝鮮側もすでに民社国新連立政権を念頭に、新たな対日外交シフトを開始している。
 金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が10日、共同通信との会見で、「日本がピョンヤン宣言を重視し、宣言に基づき不幸な過去を誠実に清算しようとするのであれば、両国間で解決できない問題はない」と述べた。
 対日交渉の実務責任者である宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使も翌日、拉致被害者再調査などを盛り込んだ昨年8月の中国・瀋陽での日朝実務者協議の合意について「新たに出発しなくてはならない」と語っている。

 拉致被害者再調査の合意は、日本側が「生存を前提とする」などと国内世論におもねる政治的な条件を押し付けたため実現不能となったが、前提条件なしに科学的・実務的に対応すれば済む問題である。
 真に拉致問題を解決する意思さえあれば、それほど難しいことでもあるまい。

 昨晩、鳩山代表が小沢代表代行を幹事長に任命する電撃人事を発表した。来年夏に選挙を迎える民主党参院幹部からの強い要請に応えたとの見方が有力であり、民主党の選挙重視路線は参院選まで継続することになった。
 少なくともそれまでは、社会保障拡大・派遣制限など所得の再分配に重点を置いた左派的なマニフェスト実現に力を入れ、衆院選大勝の勢いを維持しようとするだろう。すでに最大の目玉であった子供手当を参院選直前に支給するための法案準備を急いでいる。

 現時点での民主党の左傾路線は、大企業重視で生活破壊を招いた自民党に対する国民の不満を吸収する選挙目当てのポピュリズムの域を出ない。
 つまり、党の理念やビジョンにしっかりと根ざしたものではない。

 民主党に保守指向の人物が少なくないことは事実であり、鳩山代表も典型的な保守的な家庭で育った。
 そもそも、実力者の小沢氏にしてから、左派といったイメージとはほど遠い。
 したがって、参院選で大勝したその日から、保守回帰へと馬脚を現す可能性は否定できない。

 だが、彼らが自民党と異なるのは、官僚や大企業と癒着した既得権益と決別し、疲弊した国民生活を再建する意思と覚悟があることである。
 それを裏付けるように、民主党はマニフェストに官僚支配の打破を掲げている。また、全体として企業からの政治献金が少なく、企業献金禁止を打ち出している。
 特に、明治維新以来実質的にこの国を支配し、保守の中核と目される官僚組織との対決は注目される。
 鳩山氏は友愛を掲げ、小沢氏は「私は変わる」と語っており、期待してもよかろう。

 いずれにしても、高度成長時代が終わり、その付けである膨大な財政赤字に直面する日本は、否応なしに富の再分配と国家予算配分の選択と集中の時代に入った。
 左右の利害対立が深刻化することは必定であり、各党がどこに軸足を置くかで消長が左右されるであろうし、政界再編が引き起こされる可能性もある。

 なお、焦眉の北朝鮮問題では、自民党よりも理性的で、現実的な姿勢をとるだろう。
 『証言』でも書いたように、鳩山氏、小沢氏、菅直人氏らはいずれも政府代表団として訪朝した経験があり、相手をある程度知っていることがプラスに作用しよう。 

 
  
 

 
 
 
 
 

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 総選挙で大勝した民主党について欧米の主要メディアは「中道左派」と伝えているが、それが国際標準というものである。
 日本のメディアに左派、右派の表現を嫌う傾向があるのは、自民党政権時代の一億総中流化の幻想や右傾化の雰囲気からまだ抜け出せないからで、総選挙の審判がそうした微温湯的な体質を破った現実をまず直視する必要があろう。

 AFP通信は「日本の有権者は、未知数の中道左派政党を圧勝させた」、AP通信は「中道左派」とそれぞれ報じた。
 また、イタリアのレプブリカ紙は「右派・自民党に中道左派・民主党が圧勝」と大きく伝え、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは民主党を「中道」とし、「左派の社民党」と「保守系の国民新党」と連立政権を組むと伝えた。ワシントンポストも社説で民主党を「自民党出身者や元社会党員、市民活動家の集まり」と紹介した。

 イタリアは政治状況が日本と似ているため、特に関心が強いようだ。
 昨年、中道右派のベルルスコーニ政権誕生で下野した中道左派・民主党のフランチェスキーニ党首はわざわざ声明を発表し、「日本の民主党勝利は、イタリアも(中道左派への)政権交代に備えよという一つの指針だ」と述べた。
 
 毎日新聞によると、2度にわたり中道左派政権を率いたプロディ前首相(70)(前欧州委員会委員長)は民主党を「中道左派政党」と位置付け、「中道左派の圧勝は日本にとり大きな革命で、うれしい驚きだ。安定した議会運営ができる新政権は、富の分配や失業対策など世界中が抱える課題に取り組む条件が整い、国家設計が欧州に与える影響は大きい」と期待感を示した。
 興味深いのは、前首相が90年代から民主党の菅直人代表代行と互いを「協力者」と呼び合う仲だという点である。「菅氏らと私の政治姿勢はよく似ている。日伊は、高齢化と年金破綻、外国人対策、若者の失業、国内総生産を上回る国の借金など共通点が多い。失業者や格差に配慮した新たな国家デザインを、同じ問題で苦しむ欧州諸国は期待と共に注視している」とも語ったという。
 http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2009/09/02/20090902ddm007010051000c.html

 しかし、民主党の党首、つまり新首相になるのは、菅氏ではなく、鳩山氏である。
 そして、隠れた実力者が総選挙大勝の最大の功労者である小沢一郎代表代行であることも、紛れもない事実である。
 マニフェストの公約は所得の再分配に重点を置き、明らかに左派的だが、実態はどうだろうか。

 8月30日の民主党308、自民党119、公明党21、共産党9、社民党7、みんなの党5、国民新党3、新党日本1、新党大地1、無所属6という審判をもって、自民党は、少なくとも今後4年間、日本の政治の主流から消え去ることになった。
 その意味で自民党への関心は薄らぎ、本カテゴリーは、今日を最後に自民党を正面から扱うことは終わりとする。

 だが、惜別の辞を兼ねて言うならば、野党としての自民党の存在価値が消えたわけではない。巨大与党のチェック役を果たし、次なる政権交代に備えることができるか真価を問われることになる。
 自民党内にも解党的な出直し論が起きているが、それだけのエネルギーが残されているか、自民党の現状は極めて厳しい。

 前回述べたように、自民党は利権政党であり、政党としては未熟である。
 アメリカの庇護の下に旧A級戦犯が創立の中心となり、明治維新以来の強固な官僚組織におんぶに抱っこされて半世紀を生き延びてきた。それでも何とかやってこれたのは、権力の座にあったからである。
 
 その権力を失った今、理念と政策で新たに国民の支持を得る本来の政党に生まれ変わるしか生き残る道はないが、時代に耐えられる自立した理念、ビジョンを持ちあわせていない。歴史認識など極端な愛国イデオロギーは国民の目を外にそらし、利権を守るためにはある程度有効であったが、もはやその虚構性も見抜かれてしまった。
 多くが比例でかろうじて復活した議員の45%が世襲議員で占められるなど、人材も払底している。
 自民党の前途は多難と言うべきで、55年体制のライバルであった社会党同様に分裂し、小党化する可能性もある。

 今回の総選挙は日本憲政史上初めての民主的な政権交代であるが、与党への不満が奔流となって野党第1党への投票行動として現れる傾向性をはっきりと示した。
 小選挙区制の特徴で二大政党制に収斂していくとの見方が多いが、自民党の醜態を見ると、次回の政権交代の受け皿となる野党がどこか、現時点で見定めるのは難しい。

 日本が明治維新、敗戦に続く転換期にあることは間違いあるまい。資本主義の世界的な危機に加えて、巨大な財政赤字が覆いかぶさってくるからだ。
 自民党利権政治の結果であるGNPの1・8倍もの巨額の財政赤字は限界に達しており、今後、富や所得の再分配を巡る争いが激化し、社会は公平を主張する左翼と自由競争を固持する右翼に分かれ、中道入り乱れた熱い政治闘争の時代が幕開けした。
 
 それが対北朝鮮など外交にどう影響するのか、今後はそこに焦点が移る。
 北朝鮮の朝鮮中央通信は総選挙を「民主党が過半数を確保し、自民党が惨敗した。政権は自民党から民主党に移る」と事実だけを速報し、鳩山新政権が対話路線に舵を切るか、出方を見守っている。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/08/08-31/2009-0831-013.html

 なお、当カテゴリーはこれから鳩山新政権を中心に取り上げていく予定であり、タイトルも「小泉〜安倍→福田→麻生・・・→」から過渡的な存在以上の意味を持たない安倍、福田、麻生を除いて「小泉・・・→鳩山」と変更する。
 


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