|
鳩山新政権になって拉致問題の呪縛から解放され、外交の幅が広がり、温暖化対策や核軍縮問題でイニシアチブを発揮するなど国際的な存在感がとみに高まっている。
政権交代を機に始まった脱官僚依存、政治主導の効果が外交面でも出てきたということであろう。
周知のように、安倍、福田、麻生政権時代は首相、官房長官、外相らが口を開けば「拉致」「拉致」「拉致」とオウムのように官僚の作文を繰り返しながら、何の進展もなく、外交は停滞し、軍事費増大で財政赤字悪化と内政疲弊の一因となった。政権交代はそうした淀みを一掃し、日本の国際的なイメージを変えている。
麻生首相が旧麻生炭鉱の強制連行者への未払い賃金問題を黙殺したように自民党歴代政権には独特の薄汚さが付きまとっていたが、鳩山新政権には植民地支配と侵略への反省と謝罪に正面から向かい合う清潔感が漂い、東アジア共同体構想にも真摯に耳を傾けてみようと言う気にさせられる。
韓国、中国では期待感が高まっているが、北朝鮮も例外ではない。
遠からず再開されるであろう北朝鮮との対話は、日朝ピョンヤン宣言に明確なように、日本が一方的に拉致問題を追及する場ではなく、日本が過去の責任を明確にする場でもある。
歴史認識に重大な瑕疵がある安倍、福田、麻生三代政権はそれを履き違え、北朝鮮側の不信感を買い、交渉能力を喪失してしまった。拉致被害者の再調査など単純な手続き上の問題で何年も不毛の対立を繰り返してきた背景には、そうした基本的なスタンスの違いがあったのである。
鳩山政権は前任者の愚を繰り返すことなく、アジアに通じる健全な歴史観と戦略的ビジョンの下で北朝鮮との交渉に臨んでもらいたい。
それは、日本の当面して最大の安保上の課題である北朝鮮の核・ミサイル問題とも連動する。
北朝鮮はこれまで核問題では米国以外は相手にしなかったが、鳩山政権がマニフェストなどで掲げる核軍縮構想には別の反応をする可能性がある。
岡田外相は17日、薮中三十二外務事務次官に60年日米安保条約改定時の核持ち込み、朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動についての密約、72年の沖縄返還時の有事の際の核持ち込みに関する密約について今年11月末をめどに調査結果を報告するよう命令した。
同時に、「私の持論は『先制使用すると明言する国に核軍縮や核の不拡散を言う資格があるのか』ということだ。先制不使用によって核の抑止力が弱まるとは考えていない」と述べ、米国に対して核の先制不使用を働きかける意向を示した。
それらの密約は北朝鮮への核先制攻撃を想定したものであり、北朝鮮が主張する「自衛的な核抑止力」開発の口実となった側面があったことは否定できない。
それを隠してきた自民党政権を北朝鮮が相手にしなかったのは、ある意味で当然なことであった。
鳩山政権がそうした歴史的な事実を見据えて、非核3原則を実効性あるものとし、オバマ政権の核軍縮を進める方向でイニシアチブを発揮すれば、北朝鮮の非核化にも少なからぬ影響を与えることができよう。
温暖化防止問題とともに、核廃絶問題でも鳩山イニシアチブに期待したい。
|