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国連安保理非難決議から麻生政権が強く求める強制貨物検査(臨検)などが中ロの反対で事実上、削除される見込みだ。
「骨抜きになる」「実効性が失われる」と悔しがるメディアが少なくないのは大いなる誤解であり、日本の平和と安全にとってもその方が良かったのである。
臨検重視は、ウィルスの何たるかを把握せず、無謀な水際作戦で国内での感染爆発を許してしまった新型インフルエンザ対策と似たところがあるが(日本の感染者500人超に対して、冷静に対応した韓国は50人余)、麻生政権はすべからく人気取りのパフォーマンスに流れ、腰が据わっていない。
前回も指摘したように、「拉致被害者5人の一時帰国の約束はなかった」(安倍官房副長官=当時)と嘘をついて国民を騙して誕生した安倍政権以降、北朝鮮との対決を煽りながら、安倍−福田−麻生と自民党政権延命に利用し、他方で、9条改悪・敵基地攻撃・核武装という三点セットの軍拡路線にのめり込んできた。
だが、麻生首相が世論誘導役と頼む拉致被害者家族会については「右派が率いている」(蓮池透・前家族会事務局長)との批判が内部から上がっており、安倍元首相関連のもう一つの大嘘である「横田めぐみの偽遺骨鑑定」も「外務省も生きていないことは知っている」(田原総一郎)と暴露されている。
嘘から始まった自民党政権の対北朝鮮強硬路線が暴走を重ね、日朝開戦という悪夢が正夢になる前に、発想の転換が必要である。
その意味で、次期首相最有力候補の鳩山民主党代表が核武装を明確に否定したことは評価に値するものであり、来たる総選挙の対立軸になりうる。
それに対して、「自らを縛る」「抑止感覚が欠如している」との批判があるが、「核には核」の小冷戦思考では北朝鮮の土俵に乗せられ、自滅するだけである。
のみならず、それはオバマ大統領が就任早々プラハで核廃絶を呼びかけた流れにも沿い、ややもたついている米朝間で日本が新たな外交的なイニシアチブを発揮する可能性をも開く。
二言するまでもなく、核実験は許されないことであり、北朝鮮への制裁決議は一罰百戒のためにも必要である。だが、それでもって問題が解決するとするのは幻想であり、その根源を絶たなければならない。
制裁・圧力偏重が北朝鮮の反発を招き、事態を複雑にするだけであることは、ブッシュ政権前期の国連無視の攻撃的なネオコン路線が北朝鮮の核実験を招いたことからも明らかである。
その反省から出発したはずのオバマ政権は、北朝鮮核問題が核開発疑惑から核放棄に変わった新局面に対応し切れないでいるが、問題の本質が、北朝鮮の安全保障を脅かす実体を解消することにあることに変わりはない。
実体解消とは、北朝鮮にソ連崩壊で失った「核の傘」に代わるものを提供することであり、具体的には、自力の核保有か、「核の傘」を不要にするしかない。
北朝鮮は、対米対話の主導権を握るために誇張した言い方で危機拡大を利用する側面はあるが、暴走しているわけではない。前もって外務省声明を出すなど通米正面突破戦略に沿った有言実行で、相手側が予測し、対応する余地を意識的に与えている。
資源や市場確保のための領土拡大野心がない分、カシミールの帰属を巡って争うインド、パキスタンや、パレスチナ問題を抱えたイスラエルよりも扱いやすい。
すでに核保有国化した北朝鮮の核廃棄には最低でも数年掛かるであろうが、その影響を受ける日本が、「核の傘」を不要にする国際環境整備に向け、米朝の間で被爆国としての立場から核廃絶の大義を高く掲げて仲裁役を担うことは、まだ死文化していない日朝ピョンヤン宣言に照らしても十分に可能であると考える。
次期政権にはそれを期待したい。
鳩山代表への期待感は、先の訪韓での李明博大統領との会談での次の言葉にも力付けられる。
「政治の信頼回復と、新しいアジア重視の外交をつくりあげていくために政権交代が必要だと申し上げた。現政権との違いは、過去の歴史を直視する勇気をもっていることです。そのことによって未来に大きな扉を開くことができる。過去のない未来はあり得ない。そのことに関して、李大統領からは、新しい日韓関係に対する期待感表明があった。過去に対してしっかりと見つめる勇気に対して、理解を示して頂いた。」
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16157
実は、安倍政権以降の日朝対立の背景には、歴史認識問題がある。安倍、麻生、中川昭一のジャパニーズネオコン御三家とそれに連なるグループは、戦前のアジア侵略や朝鮮植民地支配を正当化し、その謝罪と賠償を求める北朝鮮側と激しく対立している。
その溝を超えなければ、日朝和解はなく、核・ミサイル・拉致問題解決もないだろう。
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