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朝鮮半島は現在のところ平和である。韓国には年間、日本を上回る1200万超の外国人観光客が世界中から訪れ、来月中旬には仁川アジア大会が開かれる。
北朝鮮はというと、ピョンヤンでは各種アパート建設が行われ、金正恩第1書記がニコニコしながら現地指導している様子が労働新聞一面に連日、掲載され、緊張感はない。仁川アジア大会に選手団を派遣する意向を示しているくらいだから、曲がりなりにも平和を享受していると言えよう。 ところが、奇妙なことに、朝鮮中央通信や労働新聞には連日、「戦争前夜」「いつ戦争が起きても不思議でない」といった類いの好戦的な記事が溢れている。 18日から29日までの予定で実施されている韓米合同軍事演習「乙支フリーダム・ガーデイアン」の中止を求めてのことである。 演習前日には北朝鮮軍総参謀部報道官声明が「核、戦術ロケットなど挑発者を一撃でなぎ倒す武装装備を完全に備えている」とし、「任意の時刻に先制攻撃を開始」と極めて危険な言辞を弄している。 金正日が先軍政治を始めたとされる先軍記念日の25日前日の中央報告大会でも、李永吉総参謀長が「最高司令官の攻撃命令を待っている」と演説して、韓米側を挑発した。 軍トップがここまで言えば、通常なら相手側から「宣戦布告」と受け取られ、攻撃を受ける。 しかし、韓米側はいつものビッグマウス、政治宣伝と受け流し、特別な動きはない。 しかし、それはあくまでも表面的なものである。実際は、北朝鮮側の動きを少しも見逃すまいと衛星やレーダーなどを駆使して監視していよう。 そして、北朝鮮側に不穏な動きが探知されたら、先制攻撃に移る段取りになっている。北朝鮮が核攻撃を公言しているとして、核攻撃も含まれる。 今回の「乙支フリーダム・ガーデイアン」の狙いがまさにその実戦演習にある。北朝鮮が昨年3月に採択した核・経済建設並進路線に対抗して、同年10月の韓米定例安保協議で両国国防長官が取り交わした新抑止戦略を、初めて実戦的に運用と位置付けられている。 韓民求韓国国防長官は「局地的な挑発には指揮系統も破壊する」と明らかにしており、20日に来韓したブレア前情報局長官も記者会見で「北朝鮮が核を使えば米国も使う。北朝鮮は終わる」と明言している。 延坪島砲撃事件のようなケースで、韓米側が一挙にピョンヤン制圧を目指しているのが明らかである。 韓米と北朝鮮の圧倒的な戦力差を考えれば、勝負にもならない。 北朝鮮もそれを理解している。入れ替わり立ち替わり論評で「合わせ型抑止戦略」に言及し、「韓米による核先制攻撃」「ピョンヤン占領を狙っている」と非難している。 強気に言い返しているが、内心は戦々恐々としていよう。 北朝鮮の核・ミサイル戦力の実情をよく知っているのは無論、北朝鮮自身である。 「全米都市を核攻撃」などと喧伝するが、実態以上に強く見せようとする宣伝戦術であり、そんな実力はない。 米側も熟知している。 2日に人民日報系列の環球時報が10個の核弾頭を装備して1万キロ以上を飛ぶとされる新型ICBM東風41の存在を示唆して、米側を緊張させた。だが、米専門家の中には、それすら見せ掛けではないかと疑う声がある。 米政府は、中国にはるかに及ばない小国北朝鮮が東風41以上の核・ミサイル戦力を保持しているとは全く思っていない。「新抑止戦略」で充分対応できると判断しているのである。 ステルス戦闘機、電磁銃など各国が競っている軍事技術の開発は、研削機械や素材開発など総合的な経済力がものを言う。 高級鋼板ひとつ出来ない北朝鮮のような脆弱な経済力で到底、賄えるものではない。 実情とかけ離れた北朝鮮の好戦的な宣伝は、第1に、並進路線が裏目に出て動揺している国内を締め付けるのが狙いである。 第2に、戦争雰囲気を煽って韓国に揺さぶりをかけ、経済協力を引き出す狙いがある。6・15宣言履行を求め、分野別分科別の交流機関再稼働を求めている事に、それが端的に現れている。 北朝鮮の悲劇は、戦争雰囲気を煽れば何かが獲られると勘違いしていることにある。 それが逆に国際的な孤立を深め、韓米からの圧力を強めているだけなのが見えていない。 労働新聞論評は「国際的な平和勢力の支援」を求めるが、一向にそのような声が起きない。中国さえ沈黙している有り様である。 「米帝と南朝鮮傀儡に反対する全民族な聖戦」を呼び掛ける労働新聞論評があったが、時代錯誤と言うしかない。 戦争は絶対悪であり、戦争を口にした方が好戦的と非難されるのが現代世界の潮流である。「聖戦」などイスラム過激派の狂信的なスローガンでしかない。 北朝鮮を無用に縛り、経済を疲弊させているのは、核への盲信である。 二兎を追う並進は不可能である。 韓米軍事演習が終わるのを見計らって南北高官級協議に応じると見られるが、韓国の安全を脅かしていると韓国民の圧倒的多数が考えている核放棄の意思を明確に示さないかぎり、核開発に流用される経済協力を得ることは出来ない。 民族の宝剣などといった身勝手な理屈は通じないのである。 逆に、核放棄さえすれば、南北和解と北朝鮮経済再建に不可欠な6・15宣言履行は直ぐにでも実現し、北朝鮮経済開発に新たな地平が開ける。 北朝鮮は核を放棄すると吸収合併されると警戒するが、杞憂と知るべきである。 |
北朝鮮核・ミサイル・ロケット
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ソウルで開催されている韓米定例安保で2日、金寛鎮、ヘーゲル国防長官が北朝鮮の核攻撃を先制攻撃で封じる新抑止戦略に署名した。
北朝鮮による核の脅威を「脅威」「使用間近」「使用」の三段階に分け、「使用間近」の兆候を衛星などで察知したら、「韓米軍の総力を挙げて先制攻撃を加えて破壊する」とされる。 韓米の報道などを総合すると、核攻撃もオプションに入ると読める。 ヘーゲル長官は共同記者会見で「北朝鮮の核、ミサイル、化学兵器が憂慮される」と述べ、シリア情勢と関連付けながら、米国が北朝鮮の大量破壊兵器全般を想定していると強調した。 韓米は先月30日から今日まで空母ジョージワシントンを含む合同軍事演習を韓国南部で行っており、3日間の予定で8日から同水域で自衛隊も加わる新規演習が行われる。 新抑止戦略は既に機能している。 と言うのも、北朝鮮の金正恩政権が今年2月以降、核保有を全面に出した並進路線により韓米日への核攻撃を公言する中、それに対抗して米国は1990年代に韓国から撤収した核兵器を再び前面展開し、B 2などを交えた軍事演習を強化してきたからである。 核抑止は核先制攻撃の危険を伴う恐怖の均衡であるが、ここまで露骨に核先制攻撃を含む抑止戦略を公表するのも珍しい。 しかも、「使用間近」なる基準は曖昧であり、誤判の危険性が伴う。 韓米当局は金正恩を予測不能な行動を起こす危険人物と見なし、警戒していると伝えられ、なおさらである。 他方の金正恩政権もいつやられるかと疑心暗鬼に駆られ、枕を高くして眠れまい。 遺憾なことに、朝鮮半島と周辺地域で偶発的な核戦争が起きる危険性は高まっていると言わざるをえない。 歴史的な由来を探れば双方に色々な言い分があろう。 だが、事の直接的な発端原因が金政権の核保有の並進路線にあることはこれまでの経緯から明らかであり、北朝鮮が非核化の意思を明確にすることが不可欠である。 既に6カ国協議再開の動きが始まっている。 金政権は少なくとも2月以前の段階に事態を戻す誠意を示さねば、韓米は納得しないだろう。 |
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北朝鮮は核保有の現状を既成事実化した新たな対話の枠組みを作ろうとあれやこれやの対話攻勢をかけているが、逆に核放棄が前提とたがをはめられ、どれも不調に終わっている。
直近では飯島・内閣官房参与やカーター元大統領に訪朝を招請したが、芳しい返答はもらえないでいる。 日米政府共に先核廃棄行動後対話の方針を確認しており、拉致問題や米人釈放といった個別交渉で釣り上げるには自ずと限度がある。 そうした中、中国が北朝鮮が祖国解放戦争勝利60周年と位置付ける7・27記念式典に李源潮国家副主席・党政治局員を派遣すると発表した。 金正恩第1書記の特使として訪中した労働党政治局常務委員の崔龍海軍総政治局長の招請に応じたものだが、通例なら政治局常務委員が派遣されるところであり、格下げの感は否めない。 北朝鮮に核放棄を求める習近平政権の厳しい姿勢がうかがえる。 金・李会談でどのようなやり取りが行われるか、注目されるが、中国が6カ国協議参加への具体的行動を求めることは明らかであり、外交の舞台初登場の金第1書記はいきなり手腕が試される。 朝鮮休戦協定を一方的に破棄して戦争状態を宣言し、核全面戦争まで公言した粗っぽい金第1書記への国際社会の目は非常に厳しく、外交の基本である信頼関係が全く壊れてしまった。 ゼロからの構築には、相当に長い時間がかかることを覚悟しなければならない。 北朝鮮が核戦力を強化しようとするほど国際社会との軋轢は強まる。 核戦力強化で対抗し、米国から譲歩を勝ち取ろうとしたソ連は軍事偏重で内部社会が硬直化し、経済破綻→自壊への道を辿った。 核・経済並進路線ではミニソ連となる可能性が高い。 北朝鮮は史上最多の降雨で穀倉地帯の平安道や黄海道が甚大な被害を受けており、内情は膨大な費用をかけて式典を執り行うどころではあるまい。 中国や韓国からのカネ、モノの流れが止まって予算も資材も足りず、国内の災害復興に韓国など外部の支援を得たいところだが、核問題が足枷になって動きが取れない。 金正恩政権が岐路に立っていることは間違いあるまい。 私が金正恩の最大の後見人と指摘していた叔母の金ギョンヒ書記が2ヶ月以上も姿を見せない。健康悪化が伝えられるが、この後ろ楯を失うような事があれば、基盤がまだ固まっていない金政権は山積する内憂外患に耐えきれないだろう。 北朝鮮の政治的な不安定化は地域の安定にとって好ましい事ではない。 韓国、米国、中国などは既にそれを視野に入れ、それぞれの思惑で動き出している。 金正恩政権は統治能力が残されている間に、自ら軟着陸を図るのが賢明である。 韓国の四〇分の一の経済力しかない小国の北朝鮮が、核保有国の仲間入りして東アジア地域で存在することは物理的に不可能なことである。 韓国、日本も許されない。 この地域はかつては米ソの力が拮抗した場であり、ソ連崩壊後は一時的な空白期を経て米国、中国の力の均衡へと回帰しつつある。 それが如実に示されたのが、天安艦沈没と延坪島砲撃戦時に西海の北朝鮮沖合への進出を試みた米国の原子力空母ジョージワシントンを中国軍が強硬に反対して、韓国の群山沖合に押し返した事件であった。 この時私は東アジアの新冷戦と評したが、これが地域政治の分水嶺である。 大局的に見れば、北朝鮮核問題はそうした空白期に生じたハプニングみたいなものである。 経験不足の金第1書記は延坪島事件を北朝鮮の力で跳ね返したと過信し、一連の対米強硬路線に傾斜したとみられるが、中国の存在なくして米国、韓国を押さえることは不可能であった。 核についてもソ連崩壊後、事実上、北朝鮮は中国の核の傘に入り、米国の核の傘に入っている韓国とバランスを取っていた。 金日成主席もそうした認識から韓国と非核化協定を結んだのである。 金正日国防委員長は改革開放政策に向かった中国との齟齬から、独自の核開発の意思を有したとみられるが、国際政治の現実を踏まえて6カ国協議参加に踏み切った。 クリントン政権からブッシュ政権に交代した後の米国の対朝鮮政策の一貫性の欠如から6カ国協議が中途半端になり、事態が必要以上に複雑化したことは否定出来ない。 その意味では、金正恩政権を核保有に向かわせた責任の一端は米国にある。 ここは過去の経緯を水に流して、本来の姿に戻すことが大人の智恵であろう。 北朝鮮は核放棄して中国の核の傘に戻り、韓国とバランスをとる。 その上で、南北と米中で半島の非核化を進めれば万事うまく行くだろう。 そうすれば北朝鮮の体制は保障され、韓国の全面的な協力を得て経済開発に総力を挙げる事が可能となる。 経済開発による産業化の成果を挙げる事で、国際社会から世襲独裁と正統性に疑問符がつけられている金正恩政権の歴史的な存在意義も確かめられよう。 |
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金正恩政権は米国が核保有国同士の対話に転じ、韓国の頭越しに朝米平和協定を締結することに最後の期待をかけている。
だが、その可能性は限りなく低い。 バイデン副大統領は18日、ワシントン市内でオバマ政権のアジア・大平洋政策について講演し、北朝鮮が対話を求めていることに対して「危機を煽り、見返りを求めるやり方を容認しない。北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動をとらない限り、対話に応じない」と述べた。 担当者のズムワルト国務次官補代理は上院外交公聴会でIAEA による全核施設の査察受け入れが具体的行動の第一歩と説明している。 つまり、北朝鮮が核放棄への行動を示さない限り、対話には応じないということである。 それに対して北朝鮮は核戦力の増強で対抗する構えを崩さないでいるが、時間が経てば経つほど苦しい状況に追い詰められることはこれまでの経過からも明らかである。 制裁圧力は不断に高まり、国内経済は疲弊し、国民の生活難は一段と悪化する。食糧、石油など戦略物資を外部に依存しているため、内部瓦解が急速に進行しよう。 金正恩政権は肝心な点を見落としている。 北朝鮮が現在の数倍核戦力を増強しても、それは使えない兵器である。 万が一にも北朝鮮が核を使用すれば、数倍、数十倍の報復を受けて北朝鮮全土が蒸発する。勝利のない戦いを挑む愚か者はいまい。 米国、韓国は北朝鮮を徹底的に封じ込め、内部崩壊を待っていれば済む。 最近、パナマで北朝鮮船籍が臨検され、砂糖袋の下に隠された武器が発見された。 キューバ政府は、砂糖は北朝鮮への寄付であるとして事実上、関わりを認めた。 金格植総参謀長がキューバを訪問した直後であり、2つの事が見えてくる。 シリア、ミャンマーを失った北朝鮮の武器取引が行き詰まって深刻な外貨難に直面し、遠いキューバにまで手を伸ばしている。 さらに、砂糖の枯渇である。 軍最高幹部が恥を忍んで友好国のキューバ政府に直接支援を頼み込むほど、事態が深刻化していることを図らずもさらけ出した。 北朝鮮が核保有にこだわる現実的なメリットがないばかりか、デメリットばかりが極大化している。 合理的に考えれば、核廃棄に舵を切るしかあるまい。 |
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人口衛星打上に失敗したというのに、北朝鮮はあたかも織り込み済みであったかのように冷静に受け止め、今日、金日成生誕百周年記念中央報告大会を開き、金正恩第1書記・国防委第1委員長が約20分間堂々と演説し、大規模軍事パレードには新型ミサイルが登場した。 |





