河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

北朝鮮核・ミサイル・ロケット

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 自信満々に人工衛星打ち上げを予告し、多くの海外メディアを発射場に招待しておきながら、みっともない結果となった。
 私は打ち上げは大きな政治的賭けと書いたが、最悪の事態となり、この失敗をどう取り戻すのか、金正恩第一書記と側近グループはいきなり危機管理能力を試されることになった。
 
 ロケットが発射間もなく爆発したと聞いた直後、ツイッターで「打上失敗は、金正恩新体制に水をかけた。失敗の理由をどう説明するかによって、影響は分かれる。失敗原因を明確にし、次回打上に繋げることが出来れば傷は浅いが、下手な説明をして誤魔化すと政治的な危機に発展する可能性もある。注目しよう」とつぶやいた。
 その後、数時間、金正日時代には考えられなかった異例の状況がピョンヤンで醸された。ピョンヤン市内のプレスセンターから、発射失敗を知った海外記者が午前8時頃から「失敗か」と北朝鮮側担当職員に詰め寄り、北側職員が無言で困惑した表情を浮かべている模様がテレビ生中継で伝えられた。センターの大型スクリーンにも何も映し出されていない。
 隔世の感があった。これだけでも北朝鮮の情報開示は格段と進んだと言えよう。

 他方、朝鮮中央テレビは午前9時から放映を始めたが、朝鮮労働党代表者会の再放送映像などを流すだけで衛星発射には触れなかった。
 しかし、四時間ほど経った午後0時11分に番組が中断され、アナウンサーが「科学者たちが失敗の原因を調査中」と40秒ほど原稿を読み上げ、元の番組に戻った。
 
 まあまあ冷静な対応と評価できる。
 失敗を正直に報じたのは北朝鮮としては画期的な事である。海外メディアを呼び込んだ以上、いまさら誤魔化せないという状況を割り引いても、事故の原因を科学的、客観的に究明しようという姿勢は評価できる。
 ロケット打上に事故はつきものであるから、技術的問題は原因を明らかにすれば新たな進歩に繋がる。
 それを下手に政治的な問題化すると混乱は際限なく広がり、立ち上がれなくなる。
 国民の反応も「失敗もありうる」と比較的冷静であり、昨年来の中国資本の大量流入でミニバブル現象が起きているとの情報もあり、経済的にある程度の余裕が出てきたようだ。

 失敗の原因は、公開すると言っていた発射を早朝に強行し、プレスセンター責任者にも知らせなかったことに窺われる。
 金正恩を国防第一委員長に選出した最高人民会議に合わせ、現地の準備状況を無視して発射を急がせたため不具合が生じた、というのが私の見立てだ。北朝鮮特有の政治文化ではありうることである。
 誰がそうしたかは今後に置くとして、その辺りを再点検して教訓を導き出し、現場の科学者により大きな権限を移譲し、管理体制を合理化すれば再出発は可能である。

 宇宙の平和利用への北朝鮮科学者、技術者の熱意は熱い。その数は一万人を数えると言われ、総力を挙げてくるだろう。
 早ければ今年中、建国記念日の9月9日か創党記念日の10月10日に再チャレンジすると読める。
 北朝鮮はさらに透明性と情報公開を進め、国際社会の理解を得るために努力すべきであろう。

 第三次核実験の可能性は低い。 
 国連安保理で非難決議と制裁が可決されれば、強硬には超強硬で応える対決の構図が復活し、06年、09年の再現もありうるが、中国、ロシアが反対しているのでそれはないだろう。中ロは引き続き北朝鮮との経済協力を進めるとみられる。
 
 決定的な対立を避けたい米国としては、時期を見て朝米協議を再開させる方向に動くだろう。
 日本も制裁すればどうにかなるという不毛の対決構図を捨て、軍から党主導の政治システム転換を進める金正恩新体制の変化を慎重に見極めながら、対話へと転換すべきである。
 
 

 田中防衛相が先月30日に北朝鮮人工衛星打上ロケットに対して破壊措置命令、いわゆる迎撃命令を出したが、現場指揮官の運用次第で北との偶発戦争を引き起こしかねない危険な盲点があることに誰も気付いていない。

 田中防衛相は防衛官僚に言われるままに、東シナ海と日本海などに展開するイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)で「大気圏外でも軌道をそれたら本体を破壊する」と言うが、いつの時点で「弾道をそれたら」と定義するのか曖昧で、現場の艦長に丸投げしている。
 日本の安保に直結する重大判断が制服組の一艦長の腹三寸では、シビリアンコントロールが機能しているとは到底言えまい。

 例えば、NHKは先月25日の7時のニュースで破壊措置命令について「弾道がそれたら撃ち落とす」として図解入りで報じたが、それは大気圏外を飛行中の銀河本体を迎撃する挑発的なものであった。
 翌日に「北ロケットの残骸物が日本領空内に落ちてきた場合の迎撃」と訂正したが、「大気圏外でも軌道がそれたら打ち落とすのか」「いつの時点で軌道がそれたとみなすのか」「北朝鮮の了解は取るのか」などいまだに曖昧な点が多すぎる。

 北朝鮮も観ているから、無用な挑発は差し控え、正確を期す必要があろう。
 福島の原発事故でも露わになったように、日本には重大事項の権限と責任を曖昧にする文化風土があるが、相手は異なる政治文化の北朝鮮であり、極めて危険である。

 北朝鮮は、銀河3号は軌道をそれたら自爆装置が起動すると明らかにしている。自爆装置起動以前にSM3で迎撃しようものなら、意図的に仕組まれた主権侵害的な攻撃と判断し、怒り狂うのは目に見えている。
 祖国平和統一委員会は先月23日、「平和的な衛星の打ち上げをけなし、挑発的な反共和国謀議の場を作るなら、我々は誰も想像できない最も強力な対応措置を講じるしかない。」と述べており、主権侵害されたと判断したら報復攻撃を加えてくるだろう。
 地対艦ミサイル攻撃がイージス艦に加えられ、日本側の対応次第でノドン・ミサイルが発射され、偶発的な全面戦争へと発展しかねないのである。

 想定外の事態、などと呑気に構えている場合ではない。
 不測の事態を避けるために、迎撃命令の権限と指示は具体的に定め、北側にも通告しておく必要がある。

 今日の労働新聞一面トップに、北朝鮮が来月「12日から16日」に人工衛星を打ち上げると発表した朝鮮宇宙空間技術委員会スポークスマン談話を掲載。
 人工衛星でなかったら、やはりミサイル実験だったと袋叩きに。本当に人工衛星が確認されたら、さらにえらいことになる。
  
 16日付談話は要旨以下のとおり。
 「金日成同志生誕100周年を迎え、自らの力と技術で製作した実用衛星を打ち上げる。
 共和国政府の宇宙開発と平和的利用方針に基づいて、我々の科学者、技術者たちは2つの試験衛星の打ち上げに基づき実用衛星を開発、利用する科学研究事業を粘り強く進めてきた。
 今回の打ち上げは、光明星3号を地球観測衛星として利用するために、運搬ロケット銀河3号により、平安北道鉄山郡西海衛星発射場から南の方向に発射する。ロケットの残骸が周辺諸国に影響を与えないように飛行軌道を安全に設定した。
 私たちは該当する国際的な規制や慣行を円満に保障し、透明性を最大に確保する。
 光明星3号打上は、強盛国家建設を進めているわが軍と人民を鼓舞し、わが国の平和的宇宙利用技術を新たな段階に引き上げる重要な契機になるだろう。」

 談話にあるように、最大の目的は「強盛国家建設を進めているわが軍と人民を鼓舞し」、金正恩新体制を固めることにある。
 食糧問題が解決できず、思ったような経済的な成果がなかったため、人工衛星で国威を発揚する方法に頼ったのであろう。

 しかし、対外的には大きな波乱が予想される。
 先月29日に核実験・長距離ミサイル実験自制を条件に食糧支援に合意した米国は「約束違反」と反発しており、韓国、中国、ロシア、日本も憂慮を表明している。
 北の論理は「ミサイルではなく、ロケットによる宇宙の平和利用」というものだがどこまで通じるか。

 北朝鮮には反発を織り込んだ戦略的思惑があると読める。
 米国に届くミサイル開発能力を誇示して、米国のさらなる譲歩を引き出し、軽水炉問題や平和条約締結を一括処理するというものである。
 これは相当な冒険である。人工衛星打上がまやかしであったら、北は一層孤立するだろう。

 だが、人工衛星打上に成功し、国際社会が実際に衛星を確認したら、流れが変わる可能性がある。
 韓国、日本の衛星打ち上げと同じということになり、反発は和らぐだろう。
 
 同月に開催される第四次党代表者会議で総書記就任が予定されている金正恩は、自己の権威を一挙に確立しようと大きな賭けに出た。 

 北朝鮮にとって核は安全保障の核であり、数少ない外交カードの一つでもある。
 圧力を加えればさらに核強化に向かい、対外政策が強硬路線に傾くことはこれまで見てきたとおりである。
 米韓日はその解決策に頭を痛めているが、肝心なことを見逃しているので、堂々巡りしている。

 問題の第一は、北が核武装をいつ決意したかである。
 実験用原子炉を1960年代にすでに導入し、この時期から核開発が始まったとの説があるが、ほとんど意味がない。
 実験用原子炉は日本、韓国にもあり、それが核兵器開発の意志と判断することはできないからである。

 北が核兵器開発を明言したのは1990年秋、ソ連のシュワルナゼ外相が訪朝し、韓国との国交正常化の意思を伝えたときである。
 金永南外相は激怒し、「それならば我々は独自に核を開発する」と明言している。
 その意味するところは、ソ連の核の傘を失うことを恐れ、独自に核防衛体制を築くしかないという決意である。

 その経緯については『証言 北ビジネス裏外交』に詳しく書いたが、意外と知られていない。
 安倍晋三の嘘など拉致問題に多くの紙面を割いたため敬遠されたのであるが、そうした感情論的反応が日本社会の欠点であり、外交を大きく制約している。

 問題の第二は、第一と内的に関連するが、ソ連の核の傘に代わるものをどう提供するかである。
 北朝鮮は独自の核兵器開発に全力を挙げ、北朝鮮を侮り、無用に刺激する米国の対応の不手際から2回にわたる核実験に至った。

 北朝鮮が核保有国になった以上、新たな対応が必要である。
 米国は核保有国と認めないなどといまだに非現実的な観念論にこだわっているが、それでは一歩も前進しない。食糧問題で攻めても自ずと限界がある。

 結論から言えば、失われた「ソ連の核の傘」に代わる新たな核の傘を提供し、非核化にともなう安保の不安を解消することである。

 私は日刊ゲンダイ(12月27日付)に以下のようにコメントした。
 「金正日という“重し”がなくなり、北朝鮮指導部全体の方向性は一致した。金正恩は核開発を縮小させ、中国の核の傘に入り、近隣諸国との関係も経済が中心となる」

 北朝鮮核問題を「中国の核の傘」との関連で解決の道を探ることは私の年来の持論であるが、一般紙にそうした認識が紹介され、人々に知られる意味は小さくない。
 最近の政治家、外交官は世論を異常に気にするからである。

 金正恩新体制が政治、軍事、経済全般にわたって中国との関係強化に向かうことはほぼ確実であるが、米韓日がそうした方向に北朝鮮を誘導できるかが問われている。
 核問題もそうしたパラダイムの中で解決されていくしかなかろう。
 

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 これも情報を積極開示して相手を交渉の場に誘う金正恩一流の情報戦略である。
 北朝鮮がウラン型原爆を保有している可能性を自ら明らかにし、日米韓は虚をつかれ、半パニック状態である。今朝の新聞各紙は一面トップに「北、ウラン濃縮の新施設」「北朝鮮の核新段階」との見出しを掲げ、「米政府には想定外」「オバマ政権は『待ち』の姿勢を続けるのは困難になった」「日本政府は深刻に受け止めている」と伝えている。
 
 私が前回指摘したように、根拠なき楽観論と無為無策のつけがいっきょに回ってきたと言えよう。
 各紙が「遠心分離器2000基」と報じたのは、最近訪朝したヘッカー米スタンフォード大教授が20日に同大ホームページに公表した報告書が基になっている。
 そこには「寧辺の軽水炉建設現場とウラン濃縮施設に案内され、高所から見ると、1000基以上の分離基が整然と設置されていた」と衝撃的な事実が紹介されている。北朝鮮側からは「遠心分離器は2000基以上。09年4月に着工して数日前に完成した。現在濃縮をしている」と説明されたという。
 
 北朝鮮の説明に嘘はあるまい。この期に及んで疑うものは、自身の不明を恥じるしかなかろう。
 『金正恩、鮮烈デビュー北朝鮮の改革開放が始まった』(エコノミスト11月9日号)で「金正恩は大胆かつ柔軟な情報公開で米国を対話の場に誘っている」と指摘したように、北朝鮮は金正日総書記の秘密主義から脱皮し、より合理的な情報戦略を展開している。それも読まず、理解していない頑迷な外交官や記者はもう退場した方が良かろう。
 
 西洋の教養を受けた金正恩は冷徹なパワーポリティックスの信奉者と思われる。
 可能な限り情報を公開し、余計な邪推や憶測、誤解を省いてストレートに米側と交渉しようという姿勢が一貫している。
 
 米日韓の待ちの「戦略的忍耐」は、北朝鮮自壊に密かに期待する棚からぼた餅式の無責任論である。
 時間は北朝鮮核ミサイル開発に拍車をかけているのが現実である。北朝鮮は世界最大クラスのウラン埋蔵量を有し、パキスタン、インドに勝るとも劣らない質量ともに優秀な科学技術陣を有している事実を直視しなければならない。
 
 幻想は一切捨て、核弾頭装備のICBMや潜水艦が公開され、北朝鮮がさらに交渉のハードルを上げる前に対話に応じ、歯止めをかける方が賢明である。
 

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