河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日本の外交・安全保障

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 対北朝鮮テロ指定解除で生じたブッシュ大統領と麻生首相の亀裂は、オバマ新大統領登場でさらに拡大し、東京を素通りして北京やピョンヤンに向かう米政府関係者が増えるだろう。
 クリントン新国務長官はブッシュ政権が対話を拒否し、強硬策に偏ったことが北朝鮮の核実験を招いたと批判している。安倍首相=麻生外相コンビもボルトン前国連大使らネオコンと歩調を合わせてそれに加担しており、責任の一端を問われかねない。

 情けないことに、麻生首相も取り巻きの外交ブレーンも、誰一人としてそれが読めない。
 谷内前外務次官が政府委員に任命された人事は、この政権の外交ナンセンスをはっきり示している。

 先頃、名ばかりの拉致問題担当の中山首相補佐官を急遽米国に派遣し、日本に無関心なオバマ新政権との人脈作りを試みたが、モンデール元駐日大使に会うのが精一杯で、全く相手にされなかった。
 拉致問題への同情を買おうとする見え透いた下心が嫌われたのだが、それで慌てて起用したのが、谷内ではいかにも能がない。

 安倍=麻生の拉致一辺倒外交を政策実務面で支えたのが、谷内外務次官だったからだ。「自由と繁栄の弧」なる言語明瞭意味不明の迷ビジョンを考え出し、インドやオーストラリアに袖にされた“実績”の持ち主である。
 オバマ新政権の目には、ブッシュが遺した悪しき亡霊に映ることだろう。

 麻生首相は谷内委員を通してオバマ新大統領から「ブッシュ前大統領のように、私も拉致問題を忘れない」との言質を得る作戦のようだ。
 しかし、「日本は感情論と外交を区別できない」「核問題の本質を理解できていない」「地域に責任を持てない」・・・と、日本の国家ブランドを自ら傷つける結果しかもたらさないだろう。

 拉致問題を政権浮揚策にしようと必死の当人は、拉致解決のために努力していると国民にアピールし、支持率アップをと目論んでいるのだろうが、柳の下にそう易々と二匹目のドジョウはいない。
 その間にも、日本の存在感は限りなく透明になりつつある。

 麻生首相が昨日自民党大会で放った「オレたち」とオバマ次期大統領がよく使う「我々」は、同じ呼び掛けでもかなり差がある。
 前者に呼応するのは柄のよくない利権集団、後者は理想主義的なリアリスト集団といったところか。

 不支持率が各種世論調査で70%を超え、日増しに人相が悪くなる麻生首相だが、議会制民主主義の盲点を突いて棚からぼた餅で手にした首相の座に、任期一杯まで居座る腹を固めた模様だ。
 麻生不況をみても首相としての資質や能力は落第点だが、福田前首相にまんまと禅譲させた政局観は、侮るべからずだ。

 その彼が心深く秘めた逆転カードが、胸から離さない例のブルーリボンバッジだ。
 先頃、日韓首脳会談のために訪韓した際も、胸にはそれが付いていたが、根っからの世間知らずのためすべからく独り善がりに流れる悪い癖が、ここでも顔をのぞかせている。

 安倍首相=麻生外相コンビ時代に、ブッシュ政権前期のネオコン路線に便乗して対北朝鮮強硬策に傾き、どの国際会議でも本題そっちのけで「包括的に」拉致問題を繰り返し取り上げ、「それしか知らないようだ」と不評を買った。
 その結果が、頼みのブッシュ大統領からの、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の事実上の事後通告電話であった。
 それを浜松での後援会酒席で受けた前代未聞の醜態は以前書いたが、この人は頑固なのか我儘なのか、あるいは学習能力に欠けるのか、ほとんど教訓を汲んだ形跡が見えない。

 日本首相の胸に光る奇妙なバッジについて、一般韓国メディアは経済問題以外はスルーし、目敏いごく一部の人が「あれ?」と反応した程度であった。
 むしろ国内向けに、「外国に行っても拉致問題は忘れていない」とアピールする狙いがあったのであろう

 一部の日本メディアは「李明博大統領から拉致問題で理解、支持を得た」と伝えたが、実情とは程遠い。 
 周知のように、韓国政府内には日本が核問題とは無縁の拉致問題を6か国協議に持ち込み、エネルギー支援参加を渋ることに「いつまで我儘を続けるのか」と不満が高まっている。

 麻生首相は「北朝鮮は日米韓の離間を狙っている」と警戒を呼び掛けたが、その通り。
 それが外交であり、したたかな北朝鮮も当然、そうしている。
 問題はそれに対抗する政策、知恵だが、麻生外交にはそれがまるでない。

 というよりも、北朝鮮の術策に自らはまってしまっている。
 麻生外交は、なんのことはない、日米韓の離間の原因を自ら作り上げ、結果的に、北朝鮮に核開発の時間稼ぎを助けてしまっているのである。

 オバマ新政権が、大統領の訪朝が日程に上がっていたクリントン政権時代の対北朝鮮政策を継承することは、その外交布陣から見てほぼ確実である。
 日本政府はオバマ新政権とのチャンネル作りに四苦八苦しているが、北朝鮮は以前から複数の太いチャンネルを通じて交流しており、金桂官外務次官を団長とする大統領就任祝賀団派遣まで打診している。

 ブッシュ大統領までが捨て去った時代錯誤のネオコン路線を引きずって、一体、麻生氏は何をしようというのだろうか。
 

 

 北朝鮮核問題解決とは何か?
 これについては、06年10月の核実験前と後に分けて改めて再検証する必要があろう。

 核実験前は、核開発の放棄で北朝鮮を含む関係国が一致していた。
 しかし、核実験後は、米国防総省08年年次報告書が北朝鮮を「核保有国」として中国、ロシアなどと併記したように、時間の経過とともに既成事実化してゆく核保有国・北朝鮮との共存、というコンセプトも考えなくてはならなくなっているのが、偽らざる現実である。

 遺憾なことに、日本ではこうした現実から顔を背けた観念的かつ情緒的な議論がいまだに横行し、特に安倍政権以降、核問題が拉致問題とごっちゃ混ぜになって方向が定まらず、時間を無為に費やすことで、結果的に、核保有国・北朝鮮の既成事実化に手を貸してきた。
 日本の外交が迷走しているのは、北朝鮮が核開発へと向かう動機やロジックに対して無理解であり、曲解や偏見で相手を誇張したり見くびり、的を絞りきれないからである。
 この状態が続くと、オバマ政権登場後は、日本がまったく蚊帳の外に置かれた状態で北朝鮮核問題の軟着陸が図られていく公算が大きい。

 前にも書いたように、北朝鮮の核開発は米国による核の脅威への対抗手段である。
 これは歴史的にも明らかなことで、マッカーサー米軍=国連軍司令官は朝鮮戦争中に中国東北部への原爆投下作戦を立案した。トルーマンによって原爆投下作戦が却下され、マッカーサーは解任されたが、金日成には、米軍は原爆を使用しようとしたとの恐怖がトラウマとして残った(『証言』第3章“民間”が切り拓いてきた戦後の日朝貿易「金日成のトラウマ」)がある。
 これは毛沢東にも共通するもので、中国の核開発の動機となった。
 
 日本では「金日成独裁体制強化のために核を開発した」→「独裁体制を倒せば核問題は解決する」との風評や短絡的な思考が保守系論壇で“定説化”し、麻生首相までが影響されている節がある。
 だが、このレベルの情報と認識では、北朝鮮核問題解決の場に参画することは難しい。事態を必要以上に混乱させ、足を引っ張るのなら、むしろ蚊帳の外にいた方が無難であろう。

 北朝鮮核問題解決には、米国による核の脅威を除くことが絶対的な必要条件である。
 それを理解しているクリントン元政権の外交スタッフが多く入るオバマ次期政権は、クリントン政権が時間切れで果たせなかったプロセス=米国と北朝鮮との平和条約締結と国交樹立へと向かうことになろう。
 
 ただ、クリントン政権時代と異なるのは、ブッシュ政権の失政で北朝鮮が核保有国化してしまったことである。
 一度手にした核を放棄させるのは、かなりの労力と時間を要する。
 クリントン次期国務長官は就任演説で核不拡散を強調したが、北朝鮮がシリア、イランなどへの核協力を断念して核不拡散に同意し、なおかつ、オバマ次期大統領が重点を置くアフガン戦線に北朝鮮が派兵するなどの姿勢を見せれば、パキスタン方式に倣って核保有国・北朝鮮と共闘・共存するシナリオもありうる。
 北朝鮮は9・11テロ直後に米国支持の声明を出している。ブッシュ大統領は無視したが、オバマ新大統領がどう評価するか、注目される。

 いずれにしても、北朝鮮核問題は今後、良くも悪くも多様な展開をしていくであろうが、日本がそれに対応できるか心もとない。
 今朝の朝日新聞社説「佐藤首相発言―核をめぐる政治の責任」は「北朝鮮の核放棄は検証の段階で足踏みしている。しかし、拉致問題に比べると、核放棄を迫る日本の対応についての議論はいまひとつ盛り上がらない。・・・。情緒で核を語るのは愚かしいことだ」と、現状を批判する。
 それはよいのだが、どこか奥歯に物が挟まったように歯切れが悪い。
 http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 日本国内の関心が薄れ、政治の動きが鈍いのは、世論を喚起するべき新聞言論の責任でもある。
 北朝鮮核問題が日本の安全保障の根幹に関わる重大な岐路に差し掛かっているとき、まず新聞言論がもっと広い国際的な視野から、踏み込んだ議論を起こしていくべきではないか。 

 私の表現が拙かったためか、(上)について北朝鮮の核武装を擁護したとの見方があるようだが、全くの誤解である。90年からの私の執筆活動は、逆効果にしかならない感情論を排し、北朝鮮核問題解決の合理的かつ現実的シナリオを提示することで一貫している。
 前回指摘したのは、北朝鮮の核兵器開発は韓国に核を配備した米国による「核の脅威」に対抗するものであった、旧ソ連の「核の傘」を失ったことで切羽づまった課題となったという歴史的事実である。

 佐藤元首相は米国から核保証を得て独自の核開発を思い止まったが、北朝鮮はそれが叶わず、自力で解決する選択肢を選んだ。
 それが北朝鮮核問題の本質であり、佐藤発言を多少なりとも理解できる読者は、北朝鮮の立場も理解できるはずである。

 北朝鮮は米国からの圧力が強まるほど核開発に走るという歴史的、力学的な構図がある。
 ブッシュ政権はそれが理解できず、核による先制攻撃までありうるとのブッシュ・ドクトリンを公言して北朝鮮を無用に刺激し、核実験強行に追いやった。ライス長官は北朝鮮は信用できないと言ったが、それ以上に北朝鮮は米国が信用できないと思っているに違いない。

 安倍政権以降の日本政府もブッシュ政権のネオコン路線に便乗し、感情的な拉致問題を絡めて圧力を加え、北朝鮮の核開発を早めてしまっている。
 誤った北朝鮮認識が故に逆のことを行い、自ら国の安全を脅かしている皮肉な結果となっている。田母神論文はそのジレンマが生んだ跳ね上がりであった。

 この負のスパイラルを断ち切らない限り、北朝鮮の核問題は解決できない。
 また、それは中国の核武装とも内的に関連しており、地域の安全保障の根幹を成す課題でもある。

 その意味で、米国自身の核軍縮に言及したクリントン次期国務長官に注目したい。

 40年以上も前の発言だが、妙に生々しいのは、北朝鮮の核保有と、それに対抗するような田母神前空幕長の核武装発言が物議を醸しているからであろう。
 北東アジア諸国は世界経済の牽引役を担い、経済的な相互依存性を強めているにもかかわらず、指導層の政治意識や国際感覚はそれについて行けず、何処かで時間が止まってしまっているように見える。
 そのため、先の日韓中首脳会談では300億ドル規模のスワップ協定を結び、国際金融危機に協力して対応することを迅速に決めたが、それに止まり、北朝鮮の核問題では逆に、古傷に触れたような疑心暗鬼に陥っている。

 今朝の朝日新聞によると、22日付で外務省が公開した外交文書に、1965年1月に訪米した佐藤栄作首相が、マクナマラ国防長官が3ヶ月前の中国核実験を念頭に「日本は今後、核兵器の開発をやるのかやらないのか」と迫ったのに対し、「(中国との)戦争になれば話は別で、米国が直ちに核兵器による報復を行うことを期待している」と答えた。
 前日のジョンソン大統領との会談では「中共の核武装にかかわらず、日本は核武装は行わず、米国との安全保障条約に依存するしかない。米国があくまで日本を守るとの保証を得たい」と求め、大統領は「保証する」と述べたという。

 「非核3原則」が評価され、74年にノーベル平和賞を受賞した人物の発言だけに“二枚舌”との批判を浴びそうだが、既に60年の日米安保条約改正で米艦船による核持ち込みは事前協議不要との密約が交わされている。
 国家国民に責任を負うリーダーに不可欠な資質の一つは、最悪の場合を防ぐ手立てを考えるリアリストであるということである。佐藤首相としては、“やや踏み込んで本音を言った”ということであろう。

 この発言を知って脳裏に浮かんだのが、90年9月の金永南・北朝鮮外相とシュワルナゼ・ソ連邦外相との会談だ。
 金外相は韓国との国交樹立に理解を求めた同盟国であるソ連邦に烈火の如く怒りを爆発させ、「独自に核兵器を開発する」と通告した。
 米国から頭越しに中国との外交関係樹立を通告された佐藤首相の立場を想像すれば、金外相の心中がある程度理解できよう。
そこには、核大国の都合で翻弄される国の怒りと悲哀がある。

『証言』に詳しく書いたように、北朝鮮はその解決策を核武装に求めたのであるが、日本では意外とこの歴史的な経緯が誤解されている。

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