河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日本の外交・安全保障

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 田母神前空幕僚長の核武装論が核保有を既成事実化している北朝鮮への対抗意識から出ていることは本人が明らかにしている通りだが、致命的な事実誤認と偏見がある。
 それ故、彼の主張は私憤の域を出るものではなく、大義名分に欠ける。
 彼に心情的に共鳴する現象が一部に出ているが、迷走する対北朝鮮外交への閉塞感が背景にあると見られる。

 田母神氏は今週号『フライディー』のインタブューで、「核を持てば、我が国侵略への抑止効果は非常に大きい。北朝鮮のように核を保持している可能性があるというだけでも、絶大なる抑止力を発揮する。政治家が『核兵器を持ちたい』という意志を示せばそれだけで抑止力は高まる」と語っている。
 皮肉なことに、これは金正日総書記の持論そのものである。田母神氏としては不本意かもしれないが、金総書記に忠実な朝鮮人民軍幹部、立派な労働党員としても十分に通じると請け負ってもよい。

 田母神氏の滑稽は、「我が国」と北朝鮮とは置かれた状況が根本的に異なることが解らないか、もしくは、混同していることから来る。

 北朝鮮が核武装した理由は、一言で言えば、1990年に同盟国のソ連邦が韓国と修交したことで「核の傘」を失い、韓国に配置された米国の核に丸裸になり、自前の核を持たざるをえなくなったことにある。
 それが冷戦の亡霊と闘う北朝鮮の大義であり、中国の核保有と通じるものがある。

 その歴史的経緯については『証言』に書いておいたので、田母神氏には、「救う会」や「新しい歴史教科書を作る会」系の、見てきたような嘘話に惑わされず、基礎的な事実関係をまず勉強し直すことを勧めたい。
 直情怪行的な性格から、「北朝鮮の核武装は、体制維持のためだ」「日本侵略のためだ」と思い込んでいる節がある。この種のことを公言すれば、以前なら変人かキチガイ扱いされたものだが、拉致問題がこじれてから社会が神経質になった。「北朝鮮の脅威」をことさら煽る勢力につけこまれ、マインドコントロールされていないか、自己を冷静に省みる必要があろう。

 日本が北朝鮮と異なるのは、日米同盟の下で「核の傘」の保護を受けてきた点である。
 その意味で日本に、被爆国としての非核3原則を破ってまで核保有する必然性も、大義もない。

 ポスト冷戦の流れに逆行して核の亡霊に憑かれたのは、拉致問題への対応やテロ支援国家指定解除で米国への不信感を高じさせているからと思われる。
 だが、日本独自の核戦力などは東アジアを核開発競争の修羅場にするばかりか、日本を北朝鮮に倍する国際的な孤立と制裁に晒さしめ、田母神氏が信奉する旧日本軍と同じ自殺行為を繰り返させることになろう。

 日本が本来果たすべき役割は、米国と北朝鮮の間でポスト冷戦秩序構築へのコーディネーターであり、小泉政権時の日朝ピョンヤン宣言にはそうしたビジョンが込められていた。
 だが、安倍政権以降はトラブルメーカーと化した観がある。その背後には、「北朝鮮の脅威」を煽ることで肥え太ってきた産軍複合体の存在がある。

 イージス艦、ミサイル防衛システムなど初期費用だけで1兆円以上投じ、イラク派遣自衛隊員には1日3万円だかの特別手当を支給するなど、湯水のように軍事予算を注いできた。田母神氏が核までくれと言い出したのは、明らかに防衛官僚の驕り、甘えである。
 しかし、そのしわ寄せで財政赤字が膨らみ、国民生活の破壊が急速に進行している。

 そもそも「北朝鮮の脅威」なるものは、攻撃的なネオコンのブッシュ・ドクトリンに便乗して、過大に誇張されてきた面があった。
 ブッシュ政権が消え去ろうとしている今、次期オバマ政権を見据えた新たな平和外交、金融危機克服と生活防衛のために、肥大化した日本の防衛の無駄こそが問われるべきである。
 田母神現象から汲むべき教訓は、そこにあろう。

 「日本は素晴らしい国だ。侵略国家などではない」とする田母神氏の気持ちは、理解できないではない。
 自分が生まれ育った国を貶める人など、そうそういるわけがない。

 しかし、それは、戦前の反省の上に立った、現在の憲法の下の平和的な日本に対してである。
 しかるに、故意か無知故かは知らぬが、彼は問題をすり替えている。戦前の侵略行為を「濡れ衣」と開き直るようでは、本末転倒だ。現憲法と、戦後の日本人の歩みを否定する傲岸不遜な態度と言わねばならない。
 
 のみならず、国際社会の怒りを呼び起こし、平和的な交易秩序の上に生きている日本の生存基盤を脅かす。
 現に、田母神発言は、北朝鮮は言うに及ばず、韓国、中国(台湾を含む)に自衛隊の暴走への警戒感を抱かせ、対日シフト強化へと向かわせる。それだけで日本の防衛コストは、数千億円はね上がろう。国際社会の信頼を取り戻すには、自衛隊の改革と透明化が避けられまい。

 身勝手な行為で日本のイメージを傷つけておきながら、田母神氏は「自らの身は顧みず」と、著書で訴えている。
 社会の目を自分に向けたくて、モラルのブレーキが磨耗したのであろう。

 田母神氏を支持する右派勢力が、保守系メディアを通してここぞとばかりに声をあげ始めたことは、日本社会がいかに病んでいるかを示している。
 田母神氏が荒木「特定失踪者調査会」代表らが提唱する北朝鮮奇襲攻撃論に同調していることは、前回指摘したが、拉致被害者家族への同情につけこんで、社会を危険な方向に誘導しようとしている動きが顕在化していることに、格別の注意を傾ける必要があろう。
 中間層からリベラルや左派までが拉致被害者に感情移入して思考停止状態に陥り、マスコミも「奪還運動」に無批判的なだけに、いつか来た道ではないが、社会全体がずるずると引きずられていく可能性がある。

 航空自衛隊トップが長きに亘って極端な歴史観と旧日本軍を庇う好戦的思想を吹聴していた事実は重大で、過激分子が真珠湾攻撃を真似た北朝鮮空爆を行わない保証はないと考えるべきであろう。
 北朝鮮が繰り返し死亡したと通告している拉致被害者が生きていると信じる異常性もさることながら、現実的には、核保有国への奇襲を考える危険性こそ指摘せねばならない。

 米国防総省の「08年合同作戦環境報告書」はNアジア大陸沿岸国のuclearPowerとして、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、そしてロシアと挙げている。これを「核保有国」と訳すかどうかは外交上の解釈の問題であるが、米統合戦力軍が事実上、北朝鮮を核保有国と認識していることは間違いない。
 北朝鮮攻撃派は北朝鮮を見くびってその核能力を低く評価したがるが、これほど無責任で危険な火遊びはない。

 事態をここまで放置した政治の責任は、重い。
 麻生首相は拉致問題を「一番大きい」と位置付け、田母神氏同様に胸からブルーリボンバッジを付けて離さない。
 空爆は冗談としても、朝鮮総連への弾圧をエスカレートさせ、レームダック化した政権浮上の起爆剤にする自棄っぱち行為に出る可能性はある。実際、それを期待する団体が存在するのである。

 いずれにしても、拉致問題を首相盗りと自民党政権延命に利用した安倍政権時代のスキャンダルを抱え込んだ自民党政権に、自爆行為になりかねない拉致問題解決は難しい。
 本格的な野党政権に究極的な解決は委ねられることになろうが、その場合も、日朝ピョンヤン宣言を結んだ小泉元首相を特使に派遣する政治的決断が必要となろう。
 金正日総書記が即座に会談に応じる信義を感じている日本の政治家は、小泉氏以外に見当たらないからだが、その理由は『証言』に詳しいのでそちらに譲る。

 田母神氏の脳内細胞は「横田めぐみを返さない北朝鮮はけしからん」と、沸騰していたのではないか。
 ブッシュ大統領がイラク攻撃前夜、「フセインは大量破壊兵器を隠している」と疑い、貿易センタービルテロへの報復感情に燃える国民の支持を確信していたことと精神的社会的状況が似ている。

 ブッシュ大統領は亡命イラク人らの偽情報に踊らされていたのであるが、田母神氏は特殊な勢力にマインドコントロールされている可能性が高い。
 問題となった論文は、ほとんどが例の「新しい教科書を作る会」系のコピーで、その熱心な信者であるアパ代表が強引に最優秀賞に押し込んだヤラセだったことが明らかになっている。

 とりわけ目を引くのが、荒木和博「特定失踪者調査会」代表との特殊な関係だ。
 荒木氏が予備自衛官の肩書を利用して自衛隊を拉致問題に巻き込もうと工作してきたことは知られており、署名運動を各地の自衛隊基地内外で行い、特別な便宜を図ってもらっていることは自分達のHPなどで認めている。幹部隊員らを相手に学習会を組織しているとも伝えられる。

 田母神氏が今週号の週刊現代で「北朝鮮に空爆するとの圧力をかければ、拉致被害者を返すはずだ」といった趣旨のことを述べているのも、その文脈で捉えると、やはり、となる。
 これは以前からの荒木の持論であり、家族会の横田早紀江氏にも「娘たちを自衛隊を送って取り戻すと言う人たちもいるんです」と言わせている。

 こう分析すると、荒木氏が現職の航空自衛隊トップに同じことを言わせた、との見方も十分にできようる。
 アパの論文には航空幕僚監部が全国の部隊にファックスで応募を勧め、97人の幹部自衛官が応じた。拉致を口実に、北朝鮮を奇襲攻撃することを狙う組織的工作が、自衛隊にかなり浸透していると見るべきではないか。

 事態は、シビリアンコントロールがどうのこうのと呑気に議論する次元を超えている。
 ここまで放置した政治の責任は、重い。

 曖昧にされている拉致問題が日本社会にストレスを鬱積させ、一部が狂気に変質している。
 日本のマスコミは触れたがらないが、田母神問題の本質はそこにあろう。

 記憶している人もいようが、航空自衛隊五万人トップの田母神・航空幕僚長は国会の参考人招致に応じた際、これ見よがしに、私服の胸に例のブルーリボンバッジを付けていた。
 拉致被害者家族会や「救う会」が「横田めぐみは生きている」として主張する「奪還運動」を象徴するバッジであることは知られている。

 田母神氏の陳述内容はつまびらやかではないが、拉致問題が隊内規律を無視して論文を発表する行動の主要な動機であることは間違いあるまい。
 それを裏付けるように、田母神氏は今週の週刊現代で「北朝鮮に空爆するとの圧力をかければ、拉致被害者を返すはずだ」といった趣旨のことを述べている。

 自衛隊の海外派遣や集団的自衛権を主張するのは、その脈絡からとみられる。
 航空自衛隊が近年グァムで、米軍と合同で長距離爆撃訓練を繰り返しているのも、それも無関係ではあるまい。

 田母神氏は週刊現代で、日本の核武装も声高に叫んでいる。北朝鮮の核に対抗するために必要、とかなり思い込んでいるようだ。
 無謀な奇襲攻撃論は旧日本軍の発想そのものだが、「侵略も虐殺もしていない。自衛戦争だった」と旧日本軍を庇うのは偶然ではあるまい。

 国際常識をわきまえない狭小な独善的思考の持ち主が航空自衛権トップにいたことには呆れてしまうが、無視できないのは、秋葉原や埼玉の無差別テロ犯との共通性すら感じさせる、ある種の狂気である。

 田母神・航空幕僚長(当時)の論文を検討すると、航空自衛隊トップの資質と能力に欠けることがよく分かる。
 大半がいわゆる自虐史観反対派の引用だが、無視できないのは「周辺国は日本を侵略国家だったなどとは思っていない」との件だ。政治的なアジ文まがいのこのような文は、周辺国の不安と警戒心を煽り、自ら敵を作るのも同じである。
 それさえも判断できない航空幕僚長とは、一体、何のために存在したのか?

 客観的な認識能力に欠け、敵味方の区別も出来ず、従って、戦略戦術論もまともにできない人物がどうして航空幕僚長に昇進できたのかと、頭をかしげざるを得ない。
 愚鈍さにおいて、彼が庇う、無謀な戦争に国民を駆り立てた旧軍に通じるものがある。

 単なる個人の問題でないことは明らかである。
 統合幕僚学校が以前から特殊な歴史観やイデオロギーを注入する講座を設け、航空幕僚監部教育課が論文応募を呼び掛けるファックスを隊内に流し、97人もの自衛官が応じていた事実は、組織的な動きがあったことを示唆する。
 しかも、定年退職扱いとなった田母神氏は参院外交防衛委員会での参考人証言で反省の色を全く示さず、逆に「憲法改正が必要だ」と開き直った。確信犯であったわけであり、その根は深い。

 旧軍を擁護し、自衛隊をその方向に変質させようと工作する旧軍マフィア的な勢力が背後に潜んでいることがうかがわれる。
 その種の隠された仕組を徹底的に洗い出す必要がある。それなくしては平和憲法も、シビリアンコントロールも絵にかいた餅でしかない。
 
 憲法の下で組織され、俸給を食む自衛隊トップが、その憲法を否定する論文を隊内手続も踏まない無届けで特定不動産業者の懸賞論文に応募したこと自体が言語道断である。
 当人は「表現、思想の自由」を主張するが、世間の常識すらわきまえていないことには呆れるしかない。
 汚職の疑いもあり、更迭でお茶を濁すのではなく、真相を徹底究明することが不可欠である。

 無視できないのは、問題の論文審査委員に、産経新聞の花岡信昭客員編集委員が加わっていたことである。
 他の委員は、事実上全てを仕切った業者のアパグループ代表、名目上の渡部昇一審査委員長、中山泰秀・自民党参院議員(外務政務官)らが含まれていた。この委員構成は、当初から現職航空自衛隊トップの論文を当選させる危険な企みがあったことを示唆する。

 それと関連して、代理として論文審査に参加した中山議員の秘書は「零点をつけた」とテレビで暴露した。
 これに反論して、花岡氏は産経新聞のコラム「政論探究」で「5人全員が点を入れた田母神論文が最高点になった。いずれにしろ秘書は田母神受賞を最終的に認め、満場一致で決まった」と釈明している。
 事実関係は食い違うが、客員とは言え、産経新聞の現役編集委員が加わっていたことは、言論の役割、新聞の役割を根本的に疑わしめる重大な問題を投げかけている。

 産経新聞は主張などで田母神論文を「言論の自由」の立場から擁護しているが、問題のすり替え、乃至は履き違えではないか。
 産経新聞は特定政治勢力の機関誌ではなく、不偏不党を名分とする一般商業紙として運営されている。
 世間に対して筋の通る説明をする責任があろう。


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