河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日本の外交・安全保障

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 社会保障費を圧迫している―食いつぶしているとまでは言わない―防衛省が、また北朝鮮核危機を利用して、防衛予算分捕りを画策している。
 いわゆる“迎撃騒動”で無用の長物であることを露呈したミサイル防衛システムを補完する「第3のミサイル」との売込みで、年末に行う「防衛計画の大綱」(防衛大綱)や「中期防衛力整備計画」(中期防)の改定に反映させ、予算を膨らませようとの魂胆である。

 防衛庁が北朝鮮危機を口実に保有しているのは海上配備型迎撃ミサイル(SM3)、地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)だが、笊のようなもので、ほとんど役立たず。
 そこで新たに、地上配備型の「高高度広域防衛システム」(THAAD、サード)という新型迎撃ミサイルを導入しようというわけだ。

 北朝鮮弾道ミサイルの軌道は、米国の早期警戒衛星が発射を探知した後、イージス艦のSM3が高度100キロ以上の大気圏外で迎撃、撃ち漏らした場合、弾道ミサイルが地上15〜20キロに到達した時点でPAC3で迎え撃つ仕組みだ。だが、PAC3は守備範囲が半径20キロ程度に限られるため、10年度中に計11カ所に広げても日本全土はカバーできない。そこで、射程が100キロを超えるTHAADを3〜4基配備すれば、ほぼ全土を守ることができると防衛省はアピールする。
 PAC3は11カ所への配備だけで5000億円程度かかるが、防衛省はTHAADの導入費については明らかにせず、「THAADの方が少ない予算で日本全土をカバーできる」と売り込みに必死だが、費用対効果に疑問が出ている。
 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090705k0000m010111000c.html
 
 危機を高めながら防衛強化に走る防衛省の試みは、いたちごっこのようなもので、際限のない軍備拡張の泥沼に足をとられることになろう。
 防衛省は現在のSM3、PAC3は穴が大きすぎるので補完したいと一見もっともらしいことを言うが、既にSM3とPAC3だけで8000億円以上を費やし、さらにTHAAD配備に数千億円を求める。
 GNP比1・8倍もの先進国最悪の累積赤字を抱え財政破綻が現実味を帯びる中、新たな防衛出費は予算を大きく圧迫する。

 だが、防衛省を後押しするのが自民党国防族である。4月に北朝鮮が発射した人工衛星ロケットを自民党国防族は弾道ミサイルと言い換え、MD拡充を求める声を上げている。
 自民党は毎年2200億円もの社会保障費削減を進め、国民生活を破壊してきたが、MD拡充はそれをさらに悪化させるだろう。

 北朝鮮の核ミサイルは日進月歩である。防衛省が次々とMD拡充案を考え出すことが、それを事実上、認めている。
 莫大な予算を投じてTHAADを整備しても、すぐに北朝鮮の新たなミサイル出現で笊となり、さらなるMD拡充を迫られる。しかも、それは中国、ロシア、さらに韓国をも刺激し、地域の軍拡競争に火をつける恐れもある。
 いたちごっこで日本の防衛予算は膨らみ続け、経済や国民生活は破綻してしまうだろう。

 北朝鮮は地下要塞を全国に張り巡らせた軍事国家として半世紀以上、生きてきた。
 その北朝鮮と同じ土俵に乗せられてしまって勝てるわけがなく、いずれ日本は自ら北朝鮮化し、自滅してしまうだろう。
 まさに、「ミサイル防衛強化」という名の自爆行為である。

 北朝鮮は何も、日本自体を挑発しているわけではない。
 4日にスカッドC(射程約500キロ)、ノドン(同1300キロ)とみられる計7発の弾道ミサイルを日本海に向けて断続的に発射した。日本のメディアは「挑発行為」と報じるが、米独立記念日(4日)にあわせているように、北朝鮮としては米国へのメッセージを込めている。
 圧力には圧力で、強硬には「超強硬」で対抗するというのが北朝鮮の一貫した姿勢(通米正面突破戦略)であるが、ICBM発射を自制しているのは米国を協商のテーブルに誘っているためである。

 それに対して日本が「挑発」と身構え、圧力・制裁で対抗しようとすると、矛先は日本に向けられ、日朝間の緊張が高まらざるを得ない。
 昨日発射されたミサイルに、日本を射程に入れ、核弾頭化の可能性が高いノドンが含まれているとしたら、日本への牽制も含まれていると考えるべきである。日本のメディアは「今のところ核兵器をノドンに搭載する能力はないとみられる」と楽観論を流し、国民の動揺を抑えようとしているが、それは一部の憶測でしかない。
 自衛艦を出動させる日本独自の臨検を実施する案が国会に出されているが、北朝鮮は「臨検を戦争行為とみなす」としており、日朝偶発戦争の危険性を増すだけである。

 日本はいたちごっこの泥沼から抜け出すために、対話へと発想を転換させるべきである。
 6者協議の議長を務める中国の武大偉外務次官が米日韓ロ4カ国を歴訪中で、水面下の動きが活発化している。麻生政権のように政局的な思惑から対決姿勢にのめりこみ、6か国協議参加国で唯一北朝鮮と対話チャンネルがない危うい状況では、ある日突然、蚊帳の外、ということになりかねない。
 安倍晋三氏の度重なる嘘で北朝鮮を悪者に仕立て、拉致問題を政権浮揚に悪用してきた自民党政権では不可能だが、政権交代の暁には、日朝ピョンヤン宣言の信義に立ち戻り、リセットする必要があろう。

 麻生訪中前、日本のマスコミは「北朝鮮ミサイル問題で対応協議」「1718号制裁履行を求める」と伝えたが、終わってみれば、中国首脳から何の言質も得ることが出来ず、逆に、麻生首相は中国首脳から「冷静に」と、過剰反応に釘を刺された。
 靖国問題でも胡錦濤国家主席から諌められて釈明し、「日中戦略的互恵関係」が「友好の60周年」を迎えた「朝中同盟関係」に遠く及ばないことがあらわになった。
 抗日闘争に基づく歴史観道徳観を共有する朝中と、日本との間には越えがたい溝がある。

 それが理解できない麻生首相は、3月の訪中がキャンセルされただけに今回の訪中に賭け、日本が主導したと自負する安保理議長声明の履行を中国に求める腹積もりであった。
 中国が加わらない制裁措置は意味がないからだが、中国首脳から事実上、無視されてしまった。その意図に反して、議長声明の死文化が決定的になった瞬間であった。
 
 反対に、「6か国協議再開に努力する」と言質を取られる始末で、一段と苦しくなった。
 中国は以前から機会あるごとに、日本が6か国協議9・19共同声明に定められたエネルギー支援を怠り、障害を作っていると苦言を呈してきた。
 日本は「拉致問題の進展がない限り、参加できない」と弁明してきたが、自国の問題を地域の安全保障の上に置くわがままは通じなくなったということである。

 こうしたことは日本のマスコミの政府寄り報道だけでは見えない部分だが、一連の流れを分析すれば自ずと浮かび上がってくる。
 麻生訪中(4月29日〜30日)に先立つ27日に、オバマ政権のボズワース対北朝鮮政策担当特別代表が国務省で、藤崎駐米大使が同道した拉致被害者家族会、「救う会」、拉致議連訪米団と30分間面談し、家族会側が求める北朝鮮へのテロ支援国家再指定、金融制裁再強化を「理由がないし、効果もない」と言い渡し、対話の重要性を強調した。
 米国国務省側からはソン・キム六者協議米首席代表、トング朝鮮部長が同席しており、それがオバマ政権の基本的なスタンスであると思われる。

 北朝鮮外務省が29日に発表した報道官声明は、それを見越したものである。
 同声明は、国連安全保障理事会が議長声明で長距離ロケット発射に対し制裁を求めたことを国際法違反と批判し、謝罪を要求、対抗的な「追加的自衛的措置」として核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を予告した。さらに、軽水炉発電所の建設と、核燃料を国内生産する技術開発を開始すると述べた。北朝鮮は世界有数のウラン埋蔵国であり、ウラン濃縮技術開発を示唆したのは間違いない。
 北朝鮮外務省は25日にも「試験原子炉から出た使用済燃料棒再処理を始めた。自衛的な核抑止力を強化する」とプルトニウムとウランの二段構えの核開発推進を宣言したが、麻生訪中当日に再度強硬声明をぶつけたのは、議長声明を主導した日本へのあからさまな牽制と読める。
 中国側はその意図を読んで、 麻生首相に自制を再度促したのであろう。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/04/04-29/2009-0429-014.html

 北朝鮮の狙いはあくまでも通米正面突破戦略に基づく米朝直接協議であるが、協商の範囲を、北朝鮮の非核化から韓国や日本に対する米国の“核の傘”と連動させ、北東アジア地域の包括的な安保問題に発展させようとする目的意識が認められる。
 つまり、核保有国として米国と同等の立場で地域の安保問題を扱い、拉致問題で浮き上がっている日本に対しては逆包囲網を作り、圧力を加えようとするだろう。

 やはり北朝鮮が核保有国化した事実は、軽視できない。オバマ政権内でも、6か国協議の枠外の対北朝鮮対話を検討し始めたとの報道がある。
 ブッシュ前政権も6か国協議協議の枠内とは言え、事実上、米朝協議を先行させながら6か国協議を進めていたから、新たな状況に応じた米朝対話の形式を考えているとしても、少しも不思議ではない。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2009/05/01/0505000000AKR20090501026900071.HTML

 いずれにしても、麻生政権が日本特有の情緒と屁理屈をこね、拉致問題にこだわればこだわるほど蚊帳の外に置かれる。
 今回のロケット発射を「偽遺骨とする」とのノリで「ミサイルとする」と言い換え、迎撃騒動にみられる対決姿勢をあらわにしたことが裏目になりつつある。 
 日中会談でも「ミサイル」との言葉を遣ったようだが、中国首脳は「ロケット」であり、言葉がまずかみ合わない。

 日本の常識は、ままして世界の非常識である。世界を見渡しても、銀河2号を「ミサイル」と官民が口裏を合わせているのは日本くらいである。
 韓国でも無論、ロケットが一般的である。中央日報などの日本語サイトは「ミサイル」と翻訳して流しているが、日本特有の情緒と屁理屈に合わせただけのことに過ぎない。

 麻生政権下で日朝関係は戦後最悪、軍事衝突もありうるチキンレースの様相を帯びてきた。
 カーティス・コロンビア大教授が今朝のTBSテレビ対談で「北朝鮮に対して日本政府もマスコミも、感情的になりすぎている」と述べていたが、国際社会の目に映っている日本の姿をよく言い表している。

 私が最近、招かれたあるシンポジウムでも、日本を代表する北朝鮮専門の学者たちが「対話で解決するしかない」と冷静に分析しているのに比して、マスコミ関係者の“挙国一致的な熱さ”が気になった。
 北朝鮮が発射した銀河2号ロケットについても、「ミサイル」「テポドン2号」と政府に右へ倣えして言い換えている現象は、日本のメディアにしかみられない。日本が「日米韓提携」と期待する米国メディアは状況に応じて使い分け、韓国では「長距離ロケット」が一般的である。

 日朝対決は金正日総書記と麻生首相の闘いであるが、信長的な一点突破的な戦略戦術をめぐらす金正日に対して、米国頼みの麻生は押されている。
 家康のような深謀遠慮がなく、顔は似ている秀吉の智恵も無い。あえて言えば、高ぶって相手を侮り、公家風の出で立ちで大軍を連ね、桶狭間であっけなく討ち取られた今川義元に近い。
 一点に総力を挙げる北朝鮮に、経済大国の日本は総身に智恵が回らない恐竜のように太刀打ちできないでいる。

 ミサイルだと決め付け、迎撃騒動まで起こして満を持した安保理決議は見送られ、議長声明に基づく制裁リストもわずか3社でお茶を濁され、麻生の目論見はことごとく外れた。
 米中ロに体よくガス抜きされ、弄ばれたと言ってよかろう。

 焦点は米朝直接協議に移り、麻生には正念場の桶狭間になりつつある。
 劣勢を挽回しようと麻生が親書を託して送り込んだお友達の安倍は、かろうじてバイデン副大統領と短時間会談しただけで、「当面、米朝二国間協議はしないとの確約を得た」と日本に戻って“成果”を吹聴しているようだが、政権投げ出しの原因となった甘さが克服されていない。

 金正日は外務省に使用済み核燃料棒の再処理着手を表明させて米国を揺さぶり、その直後の25日、クリントン国務長官は電撃訪問したイラクで、「対話再開を期待する」とラブコールを送っている。
 安保理制裁委員会が北朝鮮企業3社をリストに挙げたことに「断固した姿勢を示し、歓迎する」と述べたのは、麻生を慰労するリップサービスの類だろう。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2009/04/26/0511000000AKR20090426001900071.HTML

 近視眼の麻生は、オバマ大統領が中ロの協力を得ながらブッシュが壊した米国の地位を回復しようといることがまるで見えない。
 北朝鮮問題もその戦略構図に位置づけられており、ロケット発射をめぐる米中ロの融和的な動きにそれが透けて見える。
 米朝協議再開について北朝鮮は無論、中ロ韓も支持し、米国も早晩その方向に動き、唯一反対する日本問題が浮上してこよう。

 象徴的なのは、ロシアが明確に北朝鮮寄りの姿勢を示したことである。
 朝鮮中央通信によると、23日に訪朝したロシアのラブロフ外相が「『国連制裁に反対する立場を再確認し、6社会談が必要なくなったとの我々の立場に留意した』と記者の質問に答えた」と報じている。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/04/04-24/2009-0424-014.html

 中ロは以前から、日本が6か国協議9・19共同声明に定められた重油20万トン支援を拒否してきたことが、北朝鮮を怒らせ、事態を複雑にさせたと批判してきた。韓国の盧武鉉前大統領は再三日本に苦言を呈し、後期ブッシュ政権も同様の立場から北朝鮮へのテロ支援国家指定解除に踏み切った。
 その矛盾が顕在化し、ロシア外相が北朝鮮から韓国に直行し、「北朝鮮への制裁は非建設的」と公然と表明し、日本がエネルギー支援を怠っていることを批判したことで、麻生に逆風が吹き始めた。
 ラブロフ外相は李明博大統領に訪朝の結果を詳細を伝え理解を求めたが、数少ない仲間の李にまで袖にされるようだと麻生は苦しくなる。
 
 保守系からも「中露がリストの拡大に反対し、訪朝したロシア外相が『制裁強化は非生産的だ』などと述べたのには耳を疑う。・・・北の挑発や脅しに屈してはならない。日米韓の連携を一層密にして、北への圧力を着実に強めていくことが今、最も必要で、かつ効果のある道だ」(産経新聞主張4・26)と、悲鳴が上がっている。
 だが、感情的になって自身を見失い、「日米韓連携」などという他力本願の幻想にこだわっている限り、日本外交に未来は無い。

 特定の拉致被害者におもねた感情論に溺れず、自己の運命は自力で切り開く覚悟と姿勢が必要である。
 北朝鮮をむざむざ核保有国に追いやり、自身の安全保障を危うくしてきただけの愚かな制裁を即座に解除し、冷静に日朝ピョンヤン宣言の精神に立ち戻り、北朝鮮と虚心坦懐に話し合うしかあるまい。

 北朝鮮から特別機で韓国に入ったロシアのラブロフ外相は24日、韓国の柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商相との会談後の記者会見で、北朝鮮への制裁について「非建設的」と明確に反対し、日本が6か国協議9・19合意に基づくエネルギー支援を怠っていることを批判した。
 同外相はまた、北朝鮮に人口衛星打ち上げをロシアが代行することを提案したことを明らかにし、北朝鮮の宇宙平和利用に協力する姿勢を示した。

 ラブロフ外相は23日に訪朝し、北朝鮮との間で「09年〜10年文化・科学交流計画書」に調印した。北朝鮮の人工衛星支援は、同計画書に含まれているとみられる。
 同外相は朴義春(パク・ウィチュン)外相に続いて金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と会談し、金正日総書記にあてたメドベージェフ大統領の親書を手渡した。

 一部に、金正日総書記との会談が実現しなかったことから「ロケット発射問題で、両国間に意見の不一致があった」との見方が流れているが、旧ソ連時代にも訪朝したソ連外相と金日成国家主席が合わなかった例があり、うがちすぎである。ラブロフ外相も「金総書記との会談は要請しなかった」とソウルで語っている。
 朝鮮中央通信など北朝鮮メディアはロシア外相の訪朝日程を丁寧に伝えており、建国以来の伝統的な友好関係を強化する合意が形成されたと考えるのが合理的である。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/04/04-23/2009-0423-021.html
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/04/04-23/2009-0423-016.html
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/04/04-23/2009-0423-020.html

 ラブロフ外相は記者会見で6か国協議再開の重要性を強調し、「北朝鮮が早期に6か国協議に復帰する用意はない。我々の共同目標は6か国協議再開の条件を作ることだ」との認識を示した。
 冒頭の発言はその脈絡から出たもので、「他の関連諸国は、それぞれが自己の義務を必ず履行しなければならないことを忘れてはならない。それは9・19共同声明に明記されており、ピョンヤンでの会談後、その思いを強くした」と、間接的な表現ながら、日本を批判した。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2009/04/24/0503000000AKR20090424215000043.HTML?template=2087 

 6か国協議参加国で05年の9・19共同声明義務を履行していないのは、日本だけである。
 周知のように、日本は「拉致問題が解決しない限り、参加しない」として重油20万トン分のエネルギー支援を拒否し、北朝鮮から批判されてきた。
 
 北朝鮮が6か国協議復帰を拒否しているのは、一貫した通米正面突破戦略に基づき、米朝協議を先行させているためである。
 スパイ容疑で起訴された米人記者2名の釈放を巡る米朝接触が活発化しており、米国務省高官がRAFに語ったボズワース米政府特別代表の訪朝が遠からず水面上に姿を表してくると読める。

 他方、麻生首相が最後の期待を掛ける議長声明のその後だが、予測した通り、有名無実化した。
 昨日の毎日新聞夕刊は一面トップで、「北朝鮮ミサイル」「国連初の資産凍結」「3組織対象 安保理合意へ」とのタイトルで、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁委員会が23日、朝鮮鉱業開発貿易会社、タンチョン商業銀行、朝鮮リョンボン総合会社など日米両国が提案した3組織の資産凍結でほぼ合意、24日午前(日本時間同日夜)で最終決定する見込み。「23日までの交渉で中露も了解」と報じた。
 http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20090424k0000e030079000c.html

 このタイトルはロケットをミサイルと言い換えキャンペーンを張った手前 引っ込みがつかなくなったためとみられ、実態に沿っていない。「議長声明形骸化」「麻生外交破綻」あるいは「大山鳴動して鼠一匹」とした方が適切であった。
 制裁対象リストには日本が14社、米国が11社を挙げたが、中ロなどの反対で選定されたのはわずか3社だからだ。KBSなど韓国メディアは、「象徴的でしかない」と伝えている。

 朴徳勲(パク・ドクフン)北朝鮮国連次席大使は安保理決定後、「いかなる決定も全面拒否する」と反発して見せたが、実害は無く、米国向けのパフォーマンスであろう。
 同時期、ロシア外相が北朝鮮側首脳と会談しており、暗黙の了解が交わされたと考えられる。

 日本のメディアは一切報じないが、実は、議長声明には「9・19共同声明を遵守する」との文面があり、日本にもたがをはめている。
 ロシア外相はそれを北朝鮮側に説明して了解を求め、ソウルでの対日批判発言につながったとみられる。

 米朝協議→6か国協議へと動けば、日本のエネルギー支援義務不履行問題が正面に浮上するのは不可避である。
 会費長期未納でプレーするのと同じで、もはや「拉致問題がどうのこうの」と、拉致問題を核・ミサイル問題の上に置く日本的な情緒的弁明は通じない。

 麻生首相には薮蛇となる不本意な結果になったが、選択肢は、6か国協議不参加かエネルギー支援の二者択一しかない。
 いずれにしても国民にどう説明するのか、苦しくなってきた。

 麻生首相の屁理屈は、世界の現実が見えていないことに起因する。
 エルバラダイIAEA事務局長が昨日、北京で「北朝鮮が9番目の核保有国である事実を直視せねばならない」と現実的対応を求めたが、過剰な迎撃出動など核保有国への無謀な対決路線を取り続ける麻生政権への間接的な批判と言うべきであろう。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2009/04/21/0511000000AKR20090421049000009.HTML
 
 国連安保理でも、ネオコンのボルトン米国連大使放逐とともに死文化した国連安保理決議1718号にしがみつき、非難決議採択を目指したが、拘束力の無い議長声明に終わった。
 「名を捨て実を取った」と麻生首相らは屁理屈をこねたが、米保守系紙のウォールストリート・ジャーナルさえも昨日の社説で「失敗」と断定し、実効性に疑問を投げかけた。

 それに賭けた麻生政権の外交的孤立は日を追って深まっている。
 制裁リスト作成もままならず議長声明は早くも有名無実化し、中ロは無視を決め込み、韓国もPSI参加を遅らせ、今日、北朝鮮の開城(ケソン)で李明博政権初の南北対話に入った。
 
 米国務省は南北対話を歓迎し、ボスワース特別代表の訪朝検討に入ったとの情報もあり、焦点は、米朝協議に移っている。
 “日米韓連携”を頼みにした日本は再び蚊帳の外に置かれているが、何故、安倍=福田=麻生政権は同じ過ちを繰り返すのか。

 自民党特有の世襲体質が資質、能力に疑問符が付く首相を三代生み続けたことが主因であることは、安倍、福田氏が行き詰まって政権を放り出したことが如実に示している。
 麻生首相が特使として送り出した世襲仲間の安倍氏は17日、ワシントンで「北朝鮮が日米を離反させる意図で米朝協議を進める危険性がある」と危機感を募らせたが、自ら招いた種であることがまだ分かっていないのが悲しい。

 彼ら世襲首相を裏で操るのは外務官僚だが、長期自民党政権との癒着から緊張感が弛緩しているためか、すべからく場当たり的で、外交戦略の不在が目に付く。
 例えば、安倍政権時の外務次官として麻生外相の「自由と繁栄の弧」構想を立案し、急遽政府代表に任命された谷内正太郎氏は、「北朝鮮の核・ミサイル増強は『大国』の道を目指すことを意味するから、地域の不安定要因になる。日本を含めた大国がそういう事態を許さないよう、どう連携していけるか」(「インタビュー急接近」毎日新聞4月17日)と述べている。大国志向はいかにもネオコン的だが、足が地についていないのではないか。
 これを読んで、日本のドタバタ外交の原因らしきものが見えてきた。

 世界2位のGNPを有する日本が「経済大国」であることは言うまでもないが、政治的文化的な意味での大国とは程遠い。
 地域の尊敬を受け、平和と繁栄に寄与する大国の品格に欠けるため、周辺国はいずれも日本の大国化野望を警戒しているのが実情である。

 北朝鮮の核問題を巡る6か国協議は日本の品格を試す場でもあったが、周知のように、05年の9・19共同声明に定められた約束=「20万トンの重油提供」を、「拉致問題について前進がない限り、履行しない」と我侭な理屈を付けて、いまだに果たしていない。
 大局的な立場から北朝鮮を説得するのではなく、自己の利害を前面に押し立てて合意進展を阻害するトラブルメーカーでしかなかった。06年の北朝鮮核実験には、日本にも責任の一端があった。
 谷内氏らは「各国の理解を得ている」と強弁するが、「核問題と拉致問題が何の関係があるのか。迷惑千万」というのが各国の常識的な考えである。やがて唯一の理解者であったブッシュ政権ともテロ支援国家指定解除で対立し、完全に孤立したことは記憶に新しい。

 前掲の発言を読む限りでは、谷内前外務次官が北朝鮮の核・ミサイルに反対するのは、「大国」日本への挑戦という卑小なメンツからであったようだ。
 しかし、軍事力に重きを置くその種のロジックは、北朝鮮の核保有国化で完全に破綻した。その尺度で計る東アジアの大国は、中国、ロシア、北朝鮮であり、日本は該当しない。
 軍事的な意味では、北朝鮮の掲げる「強盛大国」路線に屈したということになる。
 
 その点、谷内氏と同類と見られる中川前財務相の方が、酒の勢いを借りたのか、まだ正直である。
 中川氏は「北朝鮮が日本のほぼ全土を射程に入れるノドンを多数保有し、小型化した核爆弾を保有している」とし、「純軍事的に言えば核に対抗できるのは核だというのは世界の常識だ」と、核武装を議論すべきだとの考えを表明した。
 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090419/stt0904192210008-n1.htm

 中川氏は安倍政権時の自民党政調会長当時の06年10月、北朝鮮の核実験直後にも同様の発言をし、「憲法でも核保有は禁止されていない」と主張したが、これは屁理屈である。
 いずれにしても、日本は現実から目を背け、屁理屈をこねくり回している段階でないことだけは確かである。

 日本に住むものとしての個人的な感想を言えば、人工衛星ロケットを迎撃すると聞いたときは、「この国は大丈夫か」と心配になった。
 「北朝鮮は核保有国ではない」という虚構とメンツから、危ない橋をわたる冒険は金輪際、止めてもらいたいものである。

 日本の選択肢は、北朝鮮と同じ軍事優先路線の土俵に乗って核保有国化を目指すのか、日朝ピョンヤン宣言の基本精神に立ち戻って対話と協調へと向かうのか、二つに一つしかない。
 前者が現実的に不可能な以上、百害無益の制裁を即時に全面解除し、後者へと大胆に舵を切る時期である。 
 


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