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社会保障費を圧迫している―食いつぶしているとまでは言わない―防衛省が、また北朝鮮核危機を利用して、防衛予算分捕りを画策している。
いわゆる“迎撃騒動”で無用の長物であることを露呈したミサイル防衛システムを補完する「第3のミサイル」との売込みで、年末に行う「防衛計画の大綱」(防衛大綱)や「中期防衛力整備計画」(中期防)の改定に反映させ、予算を膨らませようとの魂胆である。
防衛庁が北朝鮮危機を口実に保有しているのは海上配備型迎撃ミサイル(SM3)、地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)だが、笊のようなもので、ほとんど役立たず。
そこで新たに、地上配備型の「高高度広域防衛システム」(THAAD、サード)という新型迎撃ミサイルを導入しようというわけだ。
北朝鮮弾道ミサイルの軌道は、米国の早期警戒衛星が発射を探知した後、イージス艦のSM3が高度100キロ以上の大気圏外で迎撃、撃ち漏らした場合、弾道ミサイルが地上15〜20キロに到達した時点でPAC3で迎え撃つ仕組みだ。だが、PAC3は守備範囲が半径20キロ程度に限られるため、10年度中に計11カ所に広げても日本全土はカバーできない。そこで、射程が100キロを超えるTHAADを3〜4基配備すれば、ほぼ全土を守ることができると防衛省はアピールする。
PAC3は11カ所への配備だけで5000億円程度かかるが、防衛省はTHAADの導入費については明らかにせず、「THAADの方が少ない予算で日本全土をカバーできる」と売り込みに必死だが、費用対効果に疑問が出ている。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090705k0000m010111000c.html
危機を高めながら防衛強化に走る防衛省の試みは、いたちごっこのようなもので、際限のない軍備拡張の泥沼に足をとられることになろう。
防衛省は現在のSM3、PAC3は穴が大きすぎるので補完したいと一見もっともらしいことを言うが、既にSM3とPAC3だけで8000億円以上を費やし、さらにTHAAD配備に数千億円を求める。
GNP比1・8倍もの先進国最悪の累積赤字を抱え財政破綻が現実味を帯びる中、新たな防衛出費は予算を大きく圧迫する。
だが、防衛省を後押しするのが自民党国防族である。4月に北朝鮮が発射した人工衛星ロケットを自民党国防族は弾道ミサイルと言い換え、MD拡充を求める声を上げている。
自民党は毎年2200億円もの社会保障費削減を進め、国民生活を破壊してきたが、MD拡充はそれをさらに悪化させるだろう。
北朝鮮の核ミサイルは日進月歩である。防衛省が次々とMD拡充案を考え出すことが、それを事実上、認めている。
莫大な予算を投じてTHAADを整備しても、すぐに北朝鮮の新たなミサイル出現で笊となり、さらなるMD拡充を迫られる。しかも、それは中国、ロシア、さらに韓国をも刺激し、地域の軍拡競争に火をつける恐れもある。
いたちごっこで日本の防衛予算は膨らみ続け、経済や国民生活は破綻してしまうだろう。
北朝鮮は地下要塞を全国に張り巡らせた軍事国家として半世紀以上、生きてきた。
その北朝鮮と同じ土俵に乗せられてしまって勝てるわけがなく、いずれ日本は自ら北朝鮮化し、自滅してしまうだろう。
まさに、「ミサイル防衛強化」という名の自爆行為である。
北朝鮮は何も、日本自体を挑発しているわけではない。
4日にスカッドC(射程約500キロ)、ノドン(同1300キロ)とみられる計7発の弾道ミサイルを日本海に向けて断続的に発射した。日本のメディアは「挑発行為」と報じるが、米独立記念日(4日)にあわせているように、北朝鮮としては米国へのメッセージを込めている。
圧力には圧力で、強硬には「超強硬」で対抗するというのが北朝鮮の一貫した姿勢(通米正面突破戦略)であるが、ICBM発射を自制しているのは米国を協商のテーブルに誘っているためである。
それに対して日本が「挑発」と身構え、圧力・制裁で対抗しようとすると、矛先は日本に向けられ、日朝間の緊張が高まらざるを得ない。
昨日発射されたミサイルに、日本を射程に入れ、核弾頭化の可能性が高いノドンが含まれているとしたら、日本への牽制も含まれていると考えるべきである。日本のメディアは「今のところ核兵器をノドンに搭載する能力はないとみられる」と楽観論を流し、国民の動揺を抑えようとしているが、それは一部の憶測でしかない。
自衛艦を出動させる日本独自の臨検を実施する案が国会に出されているが、北朝鮮は「臨検を戦争行為とみなす」としており、日朝偶発戦争の危険性を増すだけである。
日本はいたちごっこの泥沼から抜け出すために、対話へと発想を転換させるべきである。
6者協議の議長を務める中国の武大偉外務次官が米日韓ロ4カ国を歴訪中で、水面下の動きが活発化している。麻生政権のように政局的な思惑から対決姿勢にのめりこみ、6か国協議参加国で唯一北朝鮮と対話チャンネルがない危うい状況では、ある日突然、蚊帳の外、ということになりかねない。
安倍晋三氏の度重なる嘘で北朝鮮を悪者に仕立て、拉致問題を政権浮揚に悪用してきた自民党政権では不可能だが、政権交代の暁には、日朝ピョンヤン宣言の信義に立ち戻り、リセットする必要があろう。
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