河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日本の外交・安全保障

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 国連安保理議長のヘラー・メキシコ国連大使が「人工衛星かどうか見きわめる」と内外記者団に語ったことで、国連安保理での北朝鮮非難決議は事実上、不可能となった。
 北朝鮮の挑発に乗せられて仰々しい迎撃体制を発令し、G20が開かれたロンドンでは、金融危機対策そっちのけで決議採択を各国首脳に呼びかけている麻生首相の失態が明らかになり、政治責任が野党などから厳しく問われる事態もありそうだ。

 今後の東アジアの政治構図にも、少なからぬ影響を与えよう。
 麻生首相は国内での軽いイメージを、ロンドンでも振りまいてしまった。それを冷ややかに見ながら、金融危機対策でリーダーシップを発揮している胡錦涛・中国主席と対照的である。世界に責任を負う大国中国と、自国のメンツや利害しか見えない辺境国家・日本の新構図がくっきりと浮かび上がってきた。
 首脳記念撮影(AP配信)で、胡主席が前列中央にどんと構え、麻生首相が最後列右端で横を見ながら、無邪気にニコニコ笑っている姿が象徴的である。

 麻生首相は2日夕(日本時間3日未明)、ロンドン市内のホテルで記者団に対し、「人工衛星であろうと弾道ミサイルであろうと、日本の国の頭上を飛び越えていくことは極めて大きな話だ。安保理決議違反であることははっきりしている」と、あくまで強気の姿勢を崩さない。
 しかし、それはあくまでも日本国内向けのポーズで、現状は苦しい。

 日米両政府は一ランク下の安保理決議1718の「厳格な履行」を求める新決議案提出に戦術ダウンしたが、「人工衛星の打ち上げでも決議違反」との文案には、「人工衛星なら問題ない」との立場を鮮明にしている中国、ロシアが反対することは必至である。
 決議は全会一致を原則とするだけに、拘束力の無い議長声明や報道機関向けの「プレス声明」採択すら難しい状況である。

 そうした結果は十分に予測できたことだけに、膨大な税金と時間・労力を浪費した麻生首相に対して「一体何のためにロンドンまで出かけたのか?」との批判が日本国内で高まることは避けられまい。

 そもそも人工衛星と弾道ミサイルの区別すらできないのは、一国の指導書としての資質すら疑われる。
 メキシコ大使が言うように、事前通告通りの人工衛星なら国際法上全く問題がなく、宇宙の利用は各国の主権行為とする国際社会の要求にも合致するというのが常識的な見方であり、基礎的な見識が欠如しているのではないか。
 頭上云々も領空と上空を混同し、宇宙空間を独占するものとの批判を、他国から浴びかねない。

 麻生首相とそのブレーンたちの失態は、法と政治の峻別、つまり、国際法上の問題と政治的問題を区別できず、それを手当てする外交的な手段・方法も持ち合わせていないことである。
 「頭上を飛ぶのは大きな問題」云々は日本の問題であって、第三国は関係なく、本来は北朝鮮との対話で解決すべき問題であるのに、拉致問題に偏重したため外交が機能していない。
 そのため外国に頼って不用意に国際社会に持ち出し、自分の尻拭いも出来ないと顰蹙を買うのである。

 それは、「米国との関係改善さえなれば、後は自ずとついてくる」との通米一点突破戦略に自信を深めている北朝鮮の思うつぼとなり、結果的に、日本は弄ばれている格好だ。
 ブッシュ前大統領と異なって現実主義のオバマ大統領は、MDのお得意先である日本にある程度付き合うが、頃合を見て、すでに水面下で接触している北朝鮮とのミサイル交渉に入るのは、100%間違いない。

 韓国も、発射後を見据えて日本と距離を置き始めた。
 玄仁澤(ヒョン・インテク)統一相は2日、「国連安保理で議論すること自体が北への制裁になるのではないか」と、決議採択そのものにはこだわらず、韓国独自の制裁については「人道支援と政治状況は別で、その考えはない」と否定、「対話での問題解決が現状を打開できる唯一の道だ」と新たな対話を呼びかけた。
 http://www.asahi.com/international/update/0403/TKY200904020315.html

 前後が見えず取り残され気味の麻生政権には、北朝鮮との対立だけが残される。
 北朝鮮が今後も繰り返し人工衛星を打ち上げ、揺さぶってくるのは用意に予想されることであるが、目先の発射阻止に精力を使い果たし、発射後への対策が欠如している戦略無き日本外交は一段と厳しい局面に追いやられるであろう。

 当面、憂慮されるのは日朝間の紛争勃発の危険性である。
 北朝鮮人民軍総参謀部は2日、朝鮮中央通信の「重大報道」を通して、日本に対して「我々の革命武力は高度の戦闘準備態勢を整えている。敵対勢力が平和的衛星に対するささいな『迎撃』の動きでも見せれば、速やかに、既に展開している迎撃手段だけでなく、重要対象にも断固たる報復の攻撃を加える」と警告した。
  http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/04/04-02/2009-0402-012.html

 それを「北朝鮮の国内向けの話」とはぐらかす向きもあるが、目の前の危機から国民の目をそらそうとする無責任な態度である。
 必要な情報が与えられず、「何が起きているのか」と不安がっている一般国民は、麻生政権の迎撃論が日朝間の緊張を必要以上に高めている現実を正確に知る権利がある。

 日本政府は「弾道ミサイルは迎撃する」と言い張って日本海にイージス艦「こんごう」「ちょうかい」を展開し、「EP3」など海自の電子偵察機などが偵察活動をしている。
 それに対抗して北朝鮮軍は1日までに、咸鏡北道舞水端里の人工衛星発射基地近くにミグ23、29などの新鋭戦闘機を移動させた。
 米軍のイージス艦7隻も展開していると伝えられ、日朝相互を監視し、偶発的な衝突を防止する役目も負っているようだが、田母神的な跳ね上がり行為が海自に起これば、日朝全面衝突に発展する危険性も否定できない。
 
 麻生首相は「地域の平和と安全を損なっている」と北朝鮮を一方的に非難するが、視野狭窄ではないか。
 中国などが繰り返し日本に冷静な対応を求めているように、国際社会の目には日本の迎撃騒動が過剰に映り、地域の緊張を必要以上に高めていると受け取られていることも知らねばならない。

 最後に言う。国際法上、ミサイルに転用できるロケットへの規制はなきに等しい。
 喧嘩していればロケットもミサイルだが、仲良くすればミサイルもロケットである。

 喧嘩太郎の異名を取る麻生首相は、猪突猛進しているだけで、何をしているのかわかっていないようだ。
 北朝鮮の“弾道ミサイル”発射を阻止すると言いながら、実際は、“強硬派”を国民にアピールする総選挙対策用パフォーマンスで北朝鮮を無用に刺激し、偶発的衝突で核報復攻撃されるリスクを高めているだけではないのか。

 「強く明るい」がモットーの麻生首相はまだ信じていないようだが、日本のマスコミも「北朝鮮、東京に核撃ち込む能力持つ」(読売新聞4月1日)と報じ始めた。
 ブリュッセルに本部を置く国際研究機関「国際危機グループ」(理事長・エバンス元豪外相)は3月31日、「北朝鮮が核弾頭の小型化に成功し、中距離弾道ミサイルのノドンが、すでに東京に核弾頭を撃ち込む能力を持つ」とする報告書を発表した。ノドンの配備数を320基とし、中国国境付近に新たな基地建設を続けている兆候があるという。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090401-00000994-yom-int

 06年10月の核実験が小規模であったこと、北朝鮮が米側に渡した核施設無能化報告書でプルトニウム2キロを実験に用いたことを示唆していたことから、十分に予想されたことである。
 本ブログでもすでに伝えたように、米国防情報局(DIA)も3月10日に上院軍事委員会に提出した報告書で、「核爆弾数発を弾道ミサイルに搭載できるよう小型化させた可能性がある」と指摘している。

 日本では、拉致問題絡みで北朝鮮への制裁・圧力強化を主張する麻生サイドのメディア、学者・文化人らが「経済破綻で崩壊寸前だ」「核ミサイルなど開発する力も、技術も無い」と繰り返していた。
 “安全保障のスペシャリスト”と称する森本某のように、日本のMDを過信し、北朝鮮のミサイル本体を迎撃せよと声を張り上げる輩もいたが、国民を危険に陥れる無責任な言動であることが改めて明らかになったと言えよう。

 麻生政権はさすがに無謀なことを悟ってか、途中から「落下物の迎撃」とトーンダウンしたものの、イージス艦やPAC3部隊をものものしく展開した。
 ミサイル本体の迎撃も難しいのに、落下物の迎撃など不可能である。それを承知での部隊展開は、国民へのパフォーマンスとの反発が、日本国内の平和団体からも出ている。

 さらに、三段式のロケットに衛星が搭載されることはすでに確認されており、日本政府も知っていたとの情報がある。
 肝心な事を国民に隠し、「弾道ミサイル」と言い張っての部隊展開が、北朝鮮を無用に挑発することは容易に想像できることであった。

 挑発に挑発という負の連鎖が始まったかのように、朝鮮中央通信は3月31日夕、「迎撃には最強の軍事的手段で報復する」と東京などへの核ミサイル攻撃を示唆した。先制攻撃を公然と唱える田母神前空幕長僚の影響力が残る自衛隊が攻撃してくる可能性があると、北朝鮮軍が身構えていよう。
 核搭載したノドンの発射ボタンの側に当直将校が緊張した面持ちで待機している、といったハリウッド映画まがいの状況が現実に起きているかもしれないのである。

 その状況を作った麻生首相は先月31日の会見で「発射は安保理決議に反する。(新たな)安保理決議の可能性も念頭に議論するのは当然だ」と言い残してロンドンに飛び、金融危機対策そっちのけで、米英仏など有志連合の力を借りて決議案を提出しようと釈迦力になっている。
 ネオコンの支持を受けた安倍首相が国連決議1718号採択に“奮闘”した前例を頭に描いているようだが、悲しいかな、当時外相であった麻生氏は脳内時計がその時点でストップし、ネオコンが駆逐され国際状況が激変したことがまるで見えていない。

 日本国内の状況も変化した。平和団体や市民団体が破壊命令撤回や迎撃中止を求め、衆参本会議で先月31日に全会一致で採択された、北朝鮮に対し長距離弾道ミサイル発射について自制を求める決議案からも、自民党原案にあった「国連安保理決議に明白に違反する」が削除された。
 ロシア国連大使が米政府に「人工衛星であれば国際法上、何の問題も無い」と正式通告したように、「衛星であれミサイルであれ、国連安全保障理事会決議に違反するという姿勢は基本的に変わらない」(河村官房長官1日記者会見)は麻生政権の政治的解釈であり、国際法とは相容れない。

 国連決議については中国、ロシアが反対し、米国も適当なところで手を引き、「人工衛星であったから、国際法上問題ない」で決着することになろう。
 北朝鮮がハードルを挙げたため米朝接触は現在中断状態だが、発射後を見据えた動きはすでに始まっている。イランを見ても、人工衛星打上に成功すれば、北朝鮮の存在感や対米交渉力が高まることは必至であり、米朝ミサイル交渉→6か国協議へと流れ、日本が漂流してしまうシナリオが透けて見えるのである。

 あるいは、政権基盤の脆弱な麻生首相が、反北朝鮮派の「家族会」「救う会」「拉致議連」などの圧力で日本単独の制裁強化に乗り出し、北朝鮮との緊張が一段と高まる事態も考えられる。
 それにより日本は北朝鮮との外交チャンネルを自ら閉ざした形になり、偶発的な衝突が戦争へと発展する危険性が高まる。

 かくして、政権維持に汲々として危機管理能力を欠く麻生政権により、国民は不必要なリスクを背負わされることになりかねない。
 麻生首相は前任者二人のようにやばくなったら海外にでも逃げ出すつもりかもしれないが、逃げ場の無い一般国民はどうするのか。

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 人工衛星かミサイルかを巡る日朝番外劇は、ロシア国連大使が「人工衛星なら国連決議に違反しない」との見解を正式に米政府に伝えたことで、本割の国連では金正日総書記が押し切り、麻生首相は朝青龍のような盛り立て役に終わる形勢になってきた。
 通米一点突破戦略の金総書記と、拉致問題に偏重し核ミサイル問題をおろそかにしてきた場当たり的な麻生外交の差がもろに出てきたと言えよう。

 日本の安全保障の観点からすれば、北朝鮮の挑発に乗せられた麻生首相の政治的責任は免れまい。
 「人工衛星であれなんであれ国連決議違反」として迎撃の意思をあらわにし、北朝鮮側から「光明星2号を迎撃すれば、最も威力のある軍事的手段であらゆる迎撃手段とその牙城を無慈悲に粉砕する」と反発され、結果的に、東京への報復的な核攻撃のリスクを高めたからである。

 そのパフォーマンス的な対応は、北朝鮮を侮ってやたら感情的に高ぶり、一貫性に欠けていた。
 麻生政権は自衛隊による「ミサイル迎撃」を公言していたが、後に、北朝鮮が人工衛星打上を国際機関に事前通告、中国、ロシアなどが容認の姿勢を見せると、「落下物を迎撃する」とのいわゆる破壊命令に軌道修正した。
 しかし、マスコミなどは「ミサイル迎撃」と本体そのものを迎撃するかのようなキャンペーンをはり、自衛隊部隊展開の様子を物々しく伝えたことで刺激された北朝鮮側が、迎撃に対する報復体制に入っていることは間違いない。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/03/03-31/2009-0331-012.html

 北朝鮮は誇張して言う癖があるが、それだけ本音が出やすい。
 「最も威力のある軍事的手段」は、最悪、核弾頭が搭載されているとみられるノドンによる報復も、含まれる。
 田母神前空幕長の影響を受けた自衛隊イージス艦が、落下物ではなく、万が一にも人工衛星ロケットを迎撃すれば、自衛隊基地を指すとみらる「迎撃手段」に第一撃、米日側の対応次第で「牙城」=東京も危うくなる。
 
 北朝鮮はまだ核ミサイルを有していないとの説もあるが、「有している可能性がある」との米国防局長の上院軍事委員会での証言もある。
 いずれにしても、危機管理が最悪の場合をも想定して備える定石からすれば、麻生政権の対応は国民の生命・財産を危険にさらした軽率なものがあったと指摘せざるを得ない。
 麻生首相は単なる脅しと受け取っているようだが、これほど危険なことは無い。

 迎撃論と安保理制裁をぶち上げ、“第二の安倍人気”を醸して支持率アップを狙ったジャパニーズネオコン最後の首相のパフォーマンスは、内外の嘲笑を浴びそうな雲行きになってきた。
 ロシア政府が米政府に「人工衛星なら安保理決議違反ではない」と通告、中国と歩調を合わせたことで、北朝鮮への制裁決議は事実上、不可能になったためである。
 他方の北朝鮮は、イランがそうであったように、人工衛星打上で国威を世界に発揚し、存在感を増すことも予想される。

 米議会の出資で設立されたRadio Free Asiaが28日、「ロシア政府が『人工衛星を搭載していればロケットであり、国連制裁決議には違反しない』との見解を米政府に正式に通告し、安保理での対北朝鮮制裁決議案が通過する可能性は薄くなった」と報じた。
 「米韓の複数の外交消息筋」の話として伝えたものだが、「ロシアはミサイル関連の活動停止を求めた06年の国連安保理決議を法的に検討し、結論を出した」という。
http://www.rfa.org/korean/in_focus/russia_nk_missile-03272009140047.html

 これを受けた韓国では、中国の動きも注視しながら、慎重に対応を検討することになり、“強硬姿勢”の日本との温度差が広がっている。
 27日にワシントンで6か国協議の日米韓首席代表会談が開かれ、日本代表の斎木アジア大洋州局長は「発射した場合は決議違反だとして、直ちに国連安保理での協議を求める方針を確認した。ただちに6か国協議開催とはならない」と日本人記者団に語ったが、韓国はあくまでも6か国協議再開を重視する姿勢を崩していない。
 http://news.kbs.co.kr/article/world/200903/20090328/1748127.html

 今回に限ったことではないが、斎木局長の言葉には、誇張を超えた世論誘導の思惑も見え隠れする。
 斎木局長は小泉訪朝にも同行し、長く北朝鮮側との接触を担ってきたが、「日本世論に遠慮して二枚舌を使う」と宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使ら北朝鮮側から信頼されていない。

 その背景については、金丸訪朝以来の日朝外交を裏でセッティングした吉田猛・新日本産行社長の証言を検証した「証言「『北』ビジネス裏外交--金正日と稲山嘉寛、小泉、金丸をつなぐもの」に詳しいので、参照すると理解を深めることが出来よう。

 アフガンに戦線を集中させ、敵を孤立させ味方を増やす戦略に転換したオバマ政権も、北朝鮮との対話路線が基軸であり、事態を必要以上に悪化させることは望んでいない。
 日本をなだめたりすかしたりしながら国連安保理制裁決議を提案しても、結局は、中ロと歩調を合わせ、ミサイル協議、6か国協議再開で事態収拾を図るであろう。

 ネオコン全盛であった06年当時とは、国際状況が激変していることがいまだに読めないでいる麻生首相は、蚊帳の外に置かれかねない苦しい状況になってきた。
 

 いつもながらの無責任な直感思考だが、麻生首相が「衛星であろうとなかろうと、国連決議に違反していることははっきりしている」と迎撃の意思をあらわにしたのは、無用な対決を煽る感情論であり、危険な賭けである。
 国連安保理決議1718号は「弾道ミサイル開発に関するすべての活動を停止」と規制するが、国際手続きに則った「宇宙の平和利用」目的のロケットは対象外である。それを迎撃すれば、国際法違反となるばかりか、北朝鮮側から「本拠地(東京)への全面報復」(人民軍総参謀部スポースクスマン声明)を招くリスクが極めて高くなる。

 麻生首相は、表向きは「国民の生命・財産を守るため」と称しているが、実態は、無謀な挑発行為をしているも同然なのである。
 冗談ではなく、麻生首相は「北朝鮮ミサイルは日本を狙っている」と思い込んでいた節がある。

 強硬姿勢を示すことで抑止効果を狙った側面もあろうが、短慮は否めない。日米韓連携を軸に中国、ロシアを巻き込んで発射中止へと追い込む作戦であったが、北朝鮮が「実験通信衛星・光明星2号」打上と国際機関に事前通告したことで、意表を衝かれてしまった。
 中国からは麻生訪中をキャンセルされ、訪中した浜田防衛相は中国国防相から逆に自制を求められた。打上後を見据えて動き出した米国、韓国との間にも微妙なズレが生じ、唯一北朝鮮と外交チャンネルがない日本は浮き上がってしまった。

 北朝鮮は打上予告日(4月4日〜8日)直後の9日に最高人民会議第12期第1次会議を召集すると公示し、国の威信をかけた不退転の決意をあらわにしている。
 予告通りに宇宙の平和的利用を目的とした人工衛星打ち上げであったことがはっきりすれば、国連安保理非難決議どころか、一部で伝えられる議長声明の採択も難しいだろう。

 麻生政権は慌てて軌道修正に乗り出したが、いかにも場当たり的である。
 麻生首相は当初、「日本上空を通過する場合は迎撃する」として閣議決定で自衛隊に迎撃命令を出す意向を示していたが、「いたずらに刺激すべきではない」との意見が政府内に高まり、後ろに引っ込まされた。
 代わって河村官房長官、中曽根外相、浜田防衛相が会合し、27日午前の安全保障会議で「秋田、岩手両県の上空を通過する予定軌道を外れ、ミサイル本体やブースターが日本の領海や領空に落下する場合にMDシステムで迎撃する」と大幅にトーンダウンし、浜田防衛相が3年前に制定された自衛隊法82条2の第3項に基づく「破壊措置命令」を発令した。
 
 この「破壊措置命令」も形ばかりのもので実効性に乏しく、責任追及を逃れるためのアリバイ作り程度のものでしかない。
 SM3を搭載したイージス艦二隻が日本海に展開し、浜松基地のPAC3が秋田、岩手両駐屯地に移動、首都圏の陸自市ケ谷駐屯地、朝霞、習志野両駐屯地にも発射機を展開する。また、ミサイル落下の可能性が高まった場合、昨年閣議決定した「緊急対処要領」に基づき、消防庁や警察庁などに通知するというものだが、これで、落下物を迎撃できると考える人がいるとしたら、かなりのお人よしである。

 日本のMDシステムそのものが欠陥商品であり、某政府高官は23日の記者団との懇談で「鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなものだ。当たるわけない」と明かしている。
 麻生首相は翌日、同高官を首相執務室に呼び、「つまらんことを言うんじゃない。緊張感が足りないんじゃないか」と激怒したと伝えられたが、何故国民に隠そうとするのか。

 MDにはSM3、PAC3関連だけで6600億円もの税金を投じ、一隻建造費1400億円ものイージス艦を含めれば数兆円に達する。納税者に費用と効果を説明するのは最低限の責務であろう。
 巨費を注いだMDが使い物にならないと知られたら政権がダメージを受けると、保身を図ったとしたら本末転倒である。

 河村官房長官は「落下物が落ちてくる可能性は、極めて少ない」と国民に冷静な対応を呼びかけたが、振回されたのは国民の方である。
 さんざん対決姿勢を煽った麻生首相が国民に説明しようとせず、河村官房長官に尻拭いさせたのは無責任の極みではないか。

 トップがこの有様では、自衛隊へのシビリアンコントロールにも不安が残る。
 田母神前空幕長の影響を受けた自衛隊が暴走しない保証はなく、落下物ではなくロケット本体に攻撃を加えようものなら、身構えている北朝鮮軍が黙っているはずがなく、報復される危険性が高い。
 そうでなくとも手薄なPAC3の一部を、予定飛行コースを外れた首都圏に割いているのは、政府も同様な懸念を抱いているからではないのか。
 
 そもそも「日本上空を通過する場合は迎撃する」との発想自体が、非現実的で危険である。
 米国や欧米と異なり、日本は、米国防局長が「小型核弾頭を装着している可能性がある」と上院で証言したノドン・ミサイル200基などの射程内にある。
 だが、日本のMDシステムは今回の事前予告されたロケット迎撃すら難しい。06年7月のような連射には全く無力であり、面や線はおろか、東京など点すら防ぎことができない。
 ところが、拉致問題での感情的対立から外交チャンネルが断絶状態となり、偶発的な衝突がエスカレートし、最悪の場合は核ミサイルが日本に飛来する可能性すらある。
 
 これが日本の偽らざる現実であるが、麻生首相の視野狭窄的な軽率な言動を見ると、安倍政権時代の“ジャパニーズ・ネオコン的な強硬路線”で時計が止まり、状況の変化が全く見えていないのではないのかと、危惧される。

 とりわけ、上空と領空の識別すらないのは、度を越した傲慢、もしくは、驚くべき蒙昧無知である。
 国際法上、領空の上空を「宇宙空間」ないしは「大気圏外」とし、国家の管轄権が及ばない空間とする。上空をすべて縄張りとするのはやくざ的な発想だが、「日本上空を通過する場合は迎撃する」との発言はそこから来るのではないのか。

 いかにも常軌を逸した認識、発想だが、どこか、115人を殺害したテロリストの金賢姫元死刑囚を「韓国の母」と持ち上げる感情と通じるものがある。
 拉致問題に偏重し、「包括的」と称して核・ミサイル問題を何の関係もない拉致問題と糞味噌に扱ってきた日本の外交は、半脳死状態である。
 
 その一方で、外交不在から来る不安が軍事偏重となり、無駄な軍事費増大が国民経済を圧迫している。
 IMFは09年の日本の成長率をマイナス5・8%と先進国最悪(米マイナス2・6、ユーロ圏マイナス3・2%)とし、世界全体でプラスに転じる10年も、日本だけがマイナス0・2%と予測した。麻生首相は「景気対策が第一」「日本が最初に世界金融危機から脱する」と総選挙を遅らせてきたが、麻生不況は日を追って深刻化している。
 
 今回の迎撃騒動はそうした様々な矛盾を噴出させつつあるが、日本に修復能力が残されているだろうか。
 北朝鮮と喧嘩すればロケットはミサイル、仲良くすればミサイルもロケットである。関係修復を図り、軍事費負担を減らし、その分、資源の豊かな北朝鮮との経済協力に振り向ければ双方ウィンウィンの関係となる。
 発想の根本的な転換、リセットが必要である。


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