河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日本の外交・安全保障

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 北朝鮮の人工衛星を「弾道ミサイル」と決め付け、迎撃姿勢をあらわにしている麻生政権は、オバマ政権の目にも過剰反応と映っていることだろう。
 米政府高官は「注視する」と慎重な言い回しにとどめ、キーティング米太平洋軍司令官も20日の上院軍事院会で「ミサイルなら迎撃できるが、北朝鮮は人工衛星と発表しており、脅威とはみなしていない」と証言し、対決的な麻生政権とは明確に一線を画している。
 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/03/19/AR2009031903180.html

 遺憾なことに、日本のマスコミも多くが、麻生政権と口裏を合わせるかのように、「弾頭ミサイル迎撃」と国民に対決姿勢をあおっている。
 典型的なのが産経新聞で、「テポドン2号『撃ち落とす用意ある』米太平洋軍司令官」と、キーティング米太平洋軍司令官が上院で証言した内容と矛盾したことを報じている。
 同紙は、キーティング司令官が26日の米ABCテレビとのインタビューで「テポドン2号」を発射した場合について、「オバマ大統領の命令が出れば、対応する準備はできている」と述べ、撃ち落とす可能性があることを明らかにしたと伝える。
 だが、同司令官は「衛星でないならば、われわれは対処することになる」と断っており、上院証言通りに、衛星ならば対処しないということである。
 http://sankei.jp.msn.com/world/america/090227/amr0902271838026-n1.htm

 麻生政権は日米韓が一致して国連安全保障理事会で制裁決議をすると強気であるが、その韓国でもメディアが、鳥取県がミサイル避難訓練をしてると日本の異常な動きに警戒感を隠さず、李明博政権も麻生政権と距離を置き始めている。
 予想したことだが、6か国協議の韓国首席代表である魏聖洛・外交通商省平和交渉本部長は訪中後の25日、ミサイルが発射されても「必ずしも制裁になるとは断定できない。6か国協議再開を期待している」と軌道修正を示唆した。
 これに対しても産経新聞は、「韓国政府“弱腰” 首席代表『制裁決議』に悲観的」と感情むき出しに反発している。
 http://sankei.jp.msn.com/world/korea/090325/kor0903252351010-n1.htm 

 このように麻生政権や日本メディアは冷静さを失い、感情的に流れつつあるが、これは逆に、「迎撃には全面報復する」と宣言している北朝鮮を刺激し、いたずらに危機を高め、最悪の結果を招く危険性も排除できない。
 何よりも懸念されるのが、誰よりも冷静であるべき麻生首相自身が熱くなっていることである。

 某政府高官が23日の記者団との懇談で、北朝鮮ミサイル防衛迎撃について「鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなものだ。当たるわけない」と述べたが、麻生首相は翌日、同高官を首相執務室に呼び、「つまらんことを言うんじゃない。緊張感が足りないんじゃないか」と声を荒げたという。
 国民生活を犠牲にし6600億円もの巨費を投じたMDが使い物にならないと知られたら、政権へのダメージは計り知れない。また、対決を煽って政権浮揚を図る政局にも狂いが生じかねないと熱くなったとみられるが、いずれにしても安全保障の基本からずれた姑息な党利党略的な打算である。
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090325/plc0903252255022-n1.htm

 テレビのコメントテーターにも同様なことを軽率に口にするものがいるが、国民の生命・財産に関わる基本的な情報を開示することは民主主義国では当然のことであろう。
 国民にありもしない幻想を抱かせ、無謀な作戦に突っ込んで大災禍をもたらした先の戦争の教訓を忘れているのではないか。

 日本が政府からメディアまで冷静さを失っているのは、拉致問題での感情的なしこりがそのまま顔を表しているからである。
 さらに、上空を北朝鮮の人工衛星ロケットが通過することに、面子がつぶされるとの反発もあるとみられる。そのため、上空は必ずしも領空ではないとの国際法の常識が通じなくなっているのである。 

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 日本の各新聞・テレビは北朝鮮の「通信実験衛星」打上について「中国が北朝鮮に自制を求めた」としきりに流すが、外務省→記者クラブを通した希望的な誘導記事の類で、実際は、中国は逆に日本の過剰反応を戒めている。
 この問題は日本のメディアが大本営御用機関の忌まわしい過去と決別し、国民の側から真実を報道する姿勢を貫けるか、試金石でもある。

 そうした中、今朝のNHKニュース「おはよう日本」はなかなか意味深であった。
 中国を訪れている浜田防衛相が梁光烈国防相との会談で、「北朝鮮に自制を強く促してほしい。日本は領土、領空、領海に飛んでくるものがあれば対処する」と述べたことに対し、梁国防相は、「日本の懸念はわかるが、冷静に対処すべきだ。北朝鮮がミサイルを発射しないのがいちばんよいが、日本は淡々と受け止めたほうがいい」と応えたという。
 http://www3.nhk.or.jp/news/k10014883411000.html

 中国のリップサービスを真に受ければ、「自制を求める姿勢を示した」(日本テレビ)となるが、全体の脈絡を見れば、中国側が冷静な対応を求めているのは日本に対してであることは明らかである。
 そのことは、中国の北朝鮮への神経の遣い方ぶりにも現れている。

 北朝鮮の金英逸首相が18日から21日まで中国を訪問したが、胡錦濤国家主席、温家宝首相、呉邦国・全国人民代表大会常務委員長ら中国首脳が会談に応じるなど、上にも下にもおかぬ厚遇ぶりだ。
 金首相一行は金属工業相、農業相らを伴い経済交流重視の陣容だが、時期柄、人工衛星問題で意見交換されたことは言うまでもない。

 18日の温家宝首相との会談について、日本のメディアは「北朝鮮に弾道ミサイル発射について、間接的に自制を求めた」と、苦しい表現ながら口裏を合わせたが、視点を変えると違うものが見えてくる。
 同日の朝鮮中央通信は「朝中総理会談」と速報し、「親善協調関係発展と共通の関心事について意見を交換」「同志的で親善的な雰囲気の中で進行」と好意的に伝えた。中国側から、間接的であれ自制を求められたら、プライドの高い北朝鮮は一行で済ませ、こうした伝え方はしない。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/03/03-18/2009-0318-018.html

 そもそも金首相の訪中そのものが、「国交樹立60周年を迎えた友好年の朝中関係強化」を軸に調整されたものであり、金正日総書記と胡主席の相互訪問など“人工衛星打上後”を見据えたものである。
 会談には訪米してオバマ大統領、クリントン国務長官と会談した楊外交部長が参加していることから、米側の反応など中国の米朝仲介努力が紹介されたと読める。人工衛星打上後に米朝会談、6か国協議再開へと進むシナリオが確認されたということである。

 おりしも今日の読売新聞が「中国の国連大使らは先週末から今週にかけて日米韓などの国連代表部を訪れ、『中国は決議に反対する』と伝え始めた。北朝鮮が人工衛星の打ち上げと主張し、国際海事機関に事前通報するなどの手続きを取っていることから、『発射しても、北朝鮮に弾道ミサイル計画の停止・放棄を求めた過去の安保理決議違反とはいえない』との見解を示した模様だ」と報じた。
 これは、「中国は人工衛星打上を事実上容認し、米国に北朝鮮との新たな対話を促している」という私の持論を裏付けるものに他ならない。
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090320-OYT1T01078.htm

 予想したことだが、オバマ政権はミサイル問題と核問題を切り離し、米朝対話を含む6か国協議再開を優先させる方針を固めたとみられる。
 その立場から、北朝鮮が人工衛星を発射しても拘束力のない議長声明にとどめ、米朝ミサイル協議の場で問題解決を別途に図ることになろう。
 
 二階に上って梯子を外されるみっともない格好になったのが、麻生首相である。
 国会答弁で「国連安保理での制裁決議」をぶち上げたが、トーンダウンした米国に追随して「遺憾の意などを表明する議長声明を想定した文案作成に着手」(読売)するしか選択肢がなくなった。

 実は1998年8月には日本はテポドン1号発射と大騒ぎしたが、北朝鮮は事後に人工衛星「光明星1号」打上と発表している。
 当時のクリントン大統領も「三段目が失敗した」とそれを認め、国連安保理は公式の報道機関向け「プレス声明」を出すにとどまった。

 今回、北朝鮮は事前に国際機関に「試験通信衛星」と通告しており、国際法上はなんら問題がない。
 日本だけ過剰に反応して暴走すると、そうでなくとも孤立気味の6か国協議でトラブルメーカーとみなされ、完全に浮き上がることになろう。

 森本敏・拓大教授が今日の産経新聞コラム「正論」で「北朝鮮ミサイルの迎撃決断を」と勇ましいことを言っているが、何のことはない、「北がどのような対応に出るか予想がつかない」と、相手もわからず突撃ラッパを鳴らす無知蒙昧な暴論でしかない。
 北朝鮮人民軍総参謀部が9日、「衛星迎撃には(相手の)本拠地に報復的打撃で応える」と言明していることも知らないで、国民の安全と平和を脅かす虚言を弄する森本を曲学阿世の輩と言わず何と言えよう。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/03/03-09/2009-0309-002.html

 森本は安全保障の専門家を自称するが、北朝鮮に関しては無知に等しく、誤認と偏見が強い分、より質が悪いと言える。
 例えば、「北朝鮮が1998年8月、日本に向けて発射したテポドン−1ミサイルは、人工衛星とは判別されなかった」と書くが、米国が後に「人工衛星を打ち上げたが、失敗した」と発表したのは、専門家なら当然知っているべきことである。
 日本で飛び交っている俗論を鵜呑みにしたようだが、その程度のおぼろげな知識で、知ったような顔をして安全保障を論じる無神経こそ危ういと言うべきある。

 さらに、「米国の出方にかかわらず発射実験はすると考えるべきだ。空域確保のため韓国に民間機航行の安全を保証しない、と脅かしているのはその証左である」には、重大な事実誤認がある。北朝鮮は韓米軍事演習に対して警告を発したのであり、人工衛星発射とは無関係である。
 身勝手な立論のために、事実関係を捏造して屁理屈を連ねる森本に、北朝鮮云々する能力と資格があるであろうか。

 それにもかかわらず、麻生首相の自覚を求めると称して、「日本やその周辺に飛翔するものは、当然、撃墜するべきである」「まだ総理の政治決断は下っていないが、時機を逸したのでは取り返しがつかない」と、言葉だけは勇ましい。
 本音は「そうでないとミサイル防衛システムを配備した理由が説明つかない」にありそうだ。要するに、防衛族の利権代弁人なのである。
 
 森本のいい加減さは、「撃墜率は高いと予想されるが失敗しても、技術開発途上なので改善すればよいだけの話だ」と予防線を張っていることだ。
 「北にミサイル発射中止を求めるより、ミサイル防衛システムで撃墜する方がよほど、抑止効果が高い」と続くと、支離滅裂な強がりでしかない。

 しかし、さすがに森本も自己の無知に不安になったのであろう。
 「北がどのような対応に出るか予想がつかない」と吐露し、「速やかに、日米韓の緊密な連絡調整と危機管理体制をとる必要がある」と、米国に頼ることに逃げる。その米国が中国の仲介で米朝対話に動いていることなど知る由もないのだから、もはやピエロである。
 「国家と国民の安全を守ることは最優先でなければならない」はその通りだが、それに背いた暴論を吹聴していることへの自覚はまるでないようである。
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090313/plc0903130257002-n1.htm

 北朝鮮は北朝鮮で、日本の人工衛星打上をミサイル実験と警戒している。無知蒙昧同士が睨み合うと、事態は悪化こそすれよくならない。
 宿命的な隣人同士、誤解や偏見を排し、理解を深める努力が必要だろう。

 二月初めに訪朝したボスワース対朝鮮特使とソン・キム6か国協議首席代表の新布陣が固まり、オバマ政権が遠からず北朝鮮との直接対話に乗り出すことは間違いない。
 この新しい流れが全く読めず、逆送しているのが麻生政権である。麻生緊急訪米が空振りに終わったのも、自業自得であった。
 日本外交のリセットが求められているだけに、次期首班がほぼ確実な小沢・民主党代表の外交政策、特に対北朝鮮政策が内外から注目されるのである。

 小沢代表の米軍削減発言が、北朝鮮との関係正常化で日朝間の緊張を解くとの戦略的な発想に基づくものなら、合理性があり、また、現実的でもある。
 自衛隊のイラク派遣、MDやイージス艦配置など一連の軍拡と9条骨抜きの憲法改悪路線は、すべて北朝鮮との緊張関係が口実となった。そのあおりで、ポスト冷戦に伴う防衛費削減も頓挫して財政を圧迫し、国民生活を圧迫している。
 逆周りの時計の針を元に戻し、余計な外交的経済的な負担を無くすには、日朝関係改善が不可欠である。

 幸いにして、オバマ大統領も施政演説で軍事費削減を明確にし、北朝鮮との国交正常化を視野に入れている。
 小沢代表がそこまで視野に入れているとするなら、先見の明があると言うべきである。

 しかし、90年の湾岸戦争当時に自民党幹事長としてペルシャ湾に自衛隊を派遣しようとした小沢代表に対しては、「そのころから変わっていない」(野中広務・毎日新聞2・27夕刊)という根強い批判がある。
 そこから、米軍削減発言は自衛隊の増強を示唆したとの懸念が一部から起きている。
 「63年たっても日本は戦争の傷跡を修復していない。中国、韓国、北朝鮮などとの関係を見ても、自分たちの世代の責任として戦後未処理問題を解決しよう、といううねりが出てこない。この問題に真剣に取り組まないと東アジアに未来はない」(同)との声に、小沢氏は応えることが出来るだろうか。

 安倍、麻生、中川昭一のジャパニーズ・ネオコントリオは、元A級戦犯ら先代の負の側面を踏襲した二世、三世議員であり、復古主義的な国家主義的軍拡勢力に体よく担がれて時計の針を逆に回し、日本を現在の苦境に陥れた。
 小沢氏は「自分は変わる」と公約したが、「国民生活第一」をマニフェストに掲げている以上、嘘はなかろう。世間知らずの世襲議員が陥りやすいジャパニーズ・ネオコンとは自ずと立場を異にすると思うが、さらに足を踏み込み、「歴史の教訓」を共有し、時計の針を元に戻せるか、それが問われている。
 
 
 
  

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 小沢・民主党代表が「米国のプレゼンスは必要だが、おおむね第7艦隊の存在で十分だ」と発言したことに、政府・与党が一斉に噛み付いた。
 麻生首相が「我々を敵国のように言っている国があるのに、どうなのか」と北朝鮮を暗に引き合いに出したが、毎度のことながら、煙を見て火を見ていない。

 麻生氏は、北朝鮮と関連付けて劣勢挽回のきっかけにしたいと、頭の中は政局で一杯なのだろう。
 外交は内政の延長、という側面があるが、「防衛省 北ミサイル迎撃検討 MD導入後、初の実運用へ」と産経新聞が伝え、安倍政権誕生のきっかけとなった06年の「核・ミサイル危機」を彷彿させる雰囲気を醸そうとしているのも、それと無関係ではあるまい。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090227-00000085-san-pol

 小沢氏は25日、大阪市内で記者団に「米国のプレゼンスは必要だが、おおむね第7艦隊の存在で十分だ。日本の防衛に関することは日本が責任を果たせばいい」と発言した。
 曖昧な部分があるものの、クリントン国務長官との会談で「同盟は一方が従属する関係であってはならない」と述べたことの延長とするなら、一般論としては、ごくまっとうな発言と言える。

 ところが、敵失を必死に探している政府・自民党が、この発言に目の色を変えて飛びついた。
 「非現実的だ。政権交代を標榜する民主党代表の考えとしてはいかがか」(河村建夫官房長官)、「暴論」(町村信孝前官房長官)、「日本の軍事増強でカバーする発想なら、共産党や社民党がよく一緒に行動している」(伊吹文明元幹事長)、「政権を取ったような気分で、言いたい放題言っている」(安倍元首相)と言った調子だ。
 火付け人が責任を他に転嫁するような、こうした一連の発言の中に、疲弊した自民党長期政権下で袋小路に陥った日本の安全保障の問題点が凝縮されている。

 キム・ミョンギル・北朝鮮国連公使は昨日、米国でのセミナーで「人工衛星打ち上げは主権国家の権利であり、予定通りに実施する」と強調した。
 政府・自民党はそれと結びつけて小沢発言への批判をエスカレートさせると見られるが、外交や安保が政局の道具にされ、いわゆる強硬派が発言権を強めるほど危険なことはない。亡国の道である。

 結論から言えば、米ネオコンの影響を受け、日朝関係悪化とともに軍拡路線へと迷走し始めた日本の安全保障問題は、北朝鮮との関係改善問題を避けている限り、出口は見えてこない。

 ネオコンを厳しく糾弾してきたオバマ政権が北朝鮮との新対話路線へと舵を切り、来週にもボスワース特使を極東に派遣するなど国際環境は激変している。
 日本国内でも政権交代が現実化している中、小沢発言を機に、拉致問題で感情化しこじれた日朝関係を、冷静かつ根本的に考える必要があろう。 


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