河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

盧武鉉政権→・・・朴槿恵政権

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韓国憲法裁判所は11日、朴槿恵大統領への弾劾認容を8人全員一致で下したが、国論分裂を助長した愚かな行為、と歴史に記録されよう。
「司法の行き過ぎた政治決定か」とのタイトルの読売社説(12日)は「大統領罷免を求めた国民の声に阿って権力を行使したとすれば行き過ぎだろう」と辛辣に批判するが、海外では概ねそのように評価されている。
中国外務省副報道官も「中韓関係の推進のために多くの仕事をした」と朴大統領の功績を評価し、韓国憲法裁決定に驚きを表明している。「在任中にTHAADの韓国配備を決めた」とも述べたが、外交的に鋭く対立する側面があったことを認めたもので、むしろ朴槿恵イニシアティブが存在感を発揮したことの反証となる。

唯一、金正恩政権だけが弾劾認容を歓迎する声明を出し、朴大統領に罵詈雑言を浴びせている。
それと、ロウソク集会など朴大統領弾劾の動因となった韓国内の反朴勢力や次期大統領有力候補に名乗りをあげている文在寅氏ら野党指導者の言辞が奇妙に重なっているのが現況の特徴であり、今後の不安定要因でもある。

内外の時局を読めず、功名心からはやったと見られるが、そろいもそろって8人の裁判官たちは全く愚かな判断をしたものである。
失職した朴前大統領は昨晩、私邸前に集まった多数の支持者に対して、憲法裁の決定に承服することを拒否し、「時間が掛かるだろうが、真実は必ず明らかになる」と側近を通してメッセージを発したが、当然である。
たかだか8人の裁判官が選挙で選ばれた大統領を「国民の信頼を裏切った」などと曖昧模糊とした理由にならない理由で罷免する越権行為を冒した結果、韓国の法治主義は根底から揺らぎ、大統領選挙を含めた激しい政治闘争の時代に突入する。
その間、黄教安大統領代行・国務総理が統帥権者として安保の責任を負うが、金正男暗殺事件などで北朝鮮情勢が緊迫化している最中でのことだけに難しい舵取りを求められる。
(続く)
北朝鮮核・ミサイル廃棄問題が山場に差し掛かり、それと密接に関連するTHAAD配備に対して中国が神経質な動きを見せる今こそ、朴槿恵大統領が習近平主席と再度会い、約束通りに北の核・ミサイル問題さえ片付けばTHAAD配備はしないし、たとえ配備しても撤去すると説得し、一段とイニシアティブを発揮せねばならない。
ところが、国会の弾劾で朴大統領は職務停止となり、動きが取れない。右往左往するだけの野党は、中国にいいように揺さぶられている。国益を自ら損なう愚かな行為であり、亡国的愚挙と言っても過言ではない。

誰が愚かかと言えば、「秘線疑惑」なるフェイクニュースに煽られたロウソク集会を「民心」と政治的に利用し、動揺した一部与党議員まで巻き込んで大統領弾劾決議案を採択した野党主導の韓国国会である。
権力欲や党派的な利害の為に国論を分裂させて争い、亡国へと転落した李朝末期の愚挙を目の当たりにするようである。植民地転落は「日帝の侵略」以前に、内部に要因があったことを知らねばならない。

セオル号なる一民間旅客船沈没の責任まで大統領に問う弾劾の根拠が荒唐無稽であることは、国会の委任で設立され、任期を終了した特別検察官が弾劾事由を立証する証拠をどれ一つとして挙げられなかったことが端的に物語る。
朴英洙特別検察官は6日の記者会見で捜査結果を発表し、捜査の核心について「韓国社会の慢性的な腐敗の輪である政経癒着」を挙げて成果を強調した。さすがにセオル号問題はさりげなく逃げたが、癒着云々も抽象論的で、肝心の証拠は何も呈示できなかった。

日本ではあり得ないことだが、冷静かつ客観的に事実を積み上げて容疑を固めるべき検察官が、正義の味方の政治家にでもなったつもりか、やたら逮捕状を乱発し、自白強要に偏った挙げ句、まともな証言を何一つとして得ることが出来なかった。
的を絞れず、本筋とは何の関係もない文化人リスト問題へと盲撃ち同然に対象を拡大させて捜査陣を混乱させた無能無策に加え、結論ありきの強引な捜査指揮は社会を無用に混乱させ、逆に拷問と人権侵害の訴えまで起こされている。

語るに落ちたとはこの事で、朴英洙は己の失敗を糊塗するためであろう、まともな証拠もなく国家元首を「433億2800万ウオン収賄」と断定し、世界の前で自国を貶めた。現代に蘇った李完用の亡霊と言うべきか。
朴大統領と支援者の崔順実被告が共謀し、サムスン電子副会長から賄賂を受け取ったと断定しているが、「要請」「支援」と共謀したとされる容疑者らはいずれも否認し、裏付けとなる物的証拠はゼロときている。想像と妄想の下手な作文である。
弾劾認容か棄却かを決める憲法裁判所が特別検察官の捜査結果を証拠ではなく、参考と判断したのは至極当然である。

その憲法裁の判断が注目されている。イ・ジョンミ所長代行の任期が13日に切れるため、弾劾賛成派はそれまでに判決が下されることを期待する。弾劾認容には8人の裁判官のうち6人以上が賛成しなければならない。賛成派と期待されるーこれ自体が異常であるがーイ所長代行の任期が切れる前に判決を、と希望を託している訳である。
しかし、判決予定日の公表が遅れていることから推して、当初は弾劾認容と見られた憲法裁も、弾劾反対派のデモの数がロウソク集会を上回る状況を見て微妙に雰囲気が変わり、政治判断ではなく、本来の純法理的判断に立ち戻るべきとの意見が強まっているようだ。

純法理的な判断なら弾劾は法的根拠なしとして棄却されるだろう。
いずれにしても国論の分裂は避けられない。

国益を優先させるなら、朴大統領の早期復帰しかない。
習近平主席やトランプ大統領と対等に話せる政治家は朴槿恵以外、いない。
北朝鮮問題やTHAAD問題でフラフラしている野党指導者にはそうした見識と能力を持ち合わせている人物が見当たらない。その彼らが自身のいたらなさを棚に上げて、朴大統領に対して崔に操られている、国政籠断だ、ああだこうだと言いたい放題なのだから、本末転倒とはこのことである。
ソウル中央地裁が19日、サムスン電子のイ・ジェヨン副社長に対する逮捕状の請求を棄却した。
朴槿恵大統領に対するいわゆる秘密疑惑を捜査する特別検察官が贈賄や横領の容疑で請求し、疑惑解明の核心部分と意気込んでいただけに、その影響は計り知れない。
捜査は振り出しに戻り、憲法裁判所による大統領の弾劾判断にも影響を与えるのは必至である。

同地裁は逮捕状請求棄却理由について、「拘束の事由と必要性、相当性を認定することは難しい」とした。
事実無根と容疑を全面否認してきたイ副会長の弁護団の主張に沿ったものであり、噂と伝聞に踊らされた特検の捜査の杜撰さが改めて明らかになった。

特検が想定した贈収賄容疑の構図は以下のようなものである。
サムスングループの中核企業であるサムスン物産と第一毛織が2015年7月に合併案を決議した際、大株主の政府機関「国民年金公団」が賛成票を投じた。朴大統領が働きかけ、見返りに崔順実らに資金提供させたというものである。

この構図は臆測の域を出ない噂や伝聞で組み立てられたもので、何一つ物証がない。すなわち、妄想の類いでしかなく、日本でなら立件できる代物ではない。
いみじくもソウル中央地裁によってそれを指摘されたが、一連のロウソクデモを「民心」と早とちりし、迎合的に迷走した特検の在り方が問われることになろう。

そもそも国民年金公団が賛成票を投じたのは、外資系の投資ファンドによるサムスンへの経営権干渉を排する国益上の判断から成されたもので、特定個人の私益とは無縁である。
そうした初歩的な知見もなく、政経癒着なる感情論に惑わされて捜査権を濫用し、経済に無用な混乱を引き起こす特検の責任が問われなければならないだろう。

私が当初から熱病と指摘しているように、秘線疑惑なるものは次期大統領選挙絡みの政治的謀略に一部国民が乗せられてしまった虚妄のスキャンダル騒動である。
その証拠に、疑惑の発端となったタブレットPCの実態すら不明である。崔被告は自分のものではないと否認し、弁護人から盗難品との主張が出されているが、特検はまともに反論できないでいる。
その他のあれやこれやの疑惑も取って付けたようなもので、要するに、噂や伝聞のレベルでしかない。

その類いの事が大統領弾劾にまで発展するのは、権力欲に目が眩んだ党派闘争で亡国に転げ落ちた過去の悪弊が払拭されていないことを物語る。
今また、党派闘争的な大統領弾劾の混乱の中、中国、日本との間に暗雲が垂れ込め、トランプ大統領が誕生する米国との関係も心許なくなっている。

統治機能の回復が急務である。今回の地裁決定は熱病を冷ますきっかけとなるであろうし、また、そうあらねばならない。
韓国人は愚かではない。1月7日のデモ参加者数は弾劾反対派が賛成派を上回り、弾劾反対世論が強まりつつある。
憲法裁判所が弾劾デモ参加者最大32万の極端な世論に惑わされず、法治主義の原則と証拠に基づく理性的な判断をすることを望みたい。

過日の講演でも指摘し、好反応を得たが、THAAD問題をはじめとする現在の外交・安保上の難局を乗り切れる外交手腕を有する人物は、地域のキーパーソンである習近平主席と7回の首脳会談を重ね、個人的な信頼関係を築いている朴槿恵大統領しかいない。

付け足しだが、トランプ大統領の就任が数時間後に迫り、どのような政策を出すか注目されるが、ツイッターの呟きを見ていると、あるパターンがあり、方向性が見えてくる。
結論をかいつまんで言うと、対外的には最大貿易相手国である中国との協商を軸にドル高元高へと誘導し、全体的には『二人のプリンスと中国共産党』で予測した通りに米中新型大国関係構築へと向かおう。
韓国国会特別委員会聴聞会では相変わらず、大の国会議員、大学教授、新聞社前社長らが国の品格を貶め、世界に恥を晒す茶番劇に夢中になっている。真面目に聴いていると、個人攻撃まがいのレベルの低さにほとほと気が滅入ってくる。
かつて社会主義諸国で流行った人民裁判を彷彿させる。中国人は文化大革命時の幹部吊し上げを想起しているであろう。先進国でそんなことをしているのは韓国くらいであり、根底の何かが歪んでいると考えざるをえない。

その1が、セオル号沈没時の「空白の7時間」に朴大統領が美容で会議に15分遅れたと、野党議員が目尻を上げて追求した場面である。韓国人がそこまで時間に厳格であるとは初めて知ったが、通常の業務の合間に健康管理や身支度を整えるのは安倍首相やオバマ大統領もごく普通に行っているし、セキュリティの問題で大統領府に医者や美容師を呼び入れるのに何の問題もない。

ところが「空白の7時間」なるフィクション、妄想に取り付かれ、何とか道義的責任に結び付けようと、ああでもないこうでもないと因縁を付け執拗に追求する。当の議員はセオル号沈没の最大責任者である船長の名前も忘れ、問題を政局に利用するのに必死の形相である。
結局、どの証人からも思うような証言を得られずに終わる。客観的な事実は15分遅刻だけで、あとは全て言いがかりの類である。ジ・エンドと思いきや、疑惑が深まったと負け惜しみを言い、マスコミまで大衆迎合的に報じるのだから、熱病は相当に重症である。女性蔑視の感情も混じっているようにみられる。

「空白の7時間」熱病は、鳥インフルエンザのように日本の一部にも伝染している。
熱病と認知症の違いはあくまでも相対的なもの。根底は日頃の不満を吐き出す集団ヒステリックなポピュリズムであり、ある日、突然入れ替わることもあり得る。

その2は、崔の娘の「不正入学疑惑」であるが、ほとんど人権侵害に近い個人攻撃であり、アムネステイーが黙っていないだろう。
当時のイファ大総長が否定しているのに、「合格指示の証言」があるとして20歳の娘を名指しで攻撃する。
アジア大会乗馬で金メダルを取っており、特待生資格で入学している。早稲田など日本の名門大でも普通に行われ、何の問題もなかった。それが秘線疑惑と無理に結び付けられ、妬み、嫉妬の類の証言で一転、入学取消となり、ソウル市教育庁が高校卒業資格まで取消と、全否定するのだから人権も何もあったものではない。
朴ソウル市長が次期大統領の椅子を狙って強権を発動したとみられるが、政治弾圧と指摘されても反論できまい。

その3は、韓国マスコミが新疑惑と騒ぐ大法院長(最高裁長官)への監視活動疑惑である。
世界日報前社長が「大法院長の日常活動を大統領府が監視していた」と証言し、三権分立を侵すものと議員と一緒になって声を上げたが、これも過度の思い込みである。
何故なら、見方を変えれば、当然の身辺警備となるからだ。実際、大法院はデモ争乱と関連した民主労総委員長の有罪を確定させるなど、狙われる立場にあった。連続の土曜日デモの中心勢力はこの民主労総であり、収監中の委員長の即事釈放を求めて憲法裁判所にデモをかける動きまで出ている。
市民革命などと浮かれず、ロウソクデモの実態を見極める必要がある。

このように崔国政介入疑惑なるものを裏付ける事実なり物証は連日の国会聴聞会で1つも出ていない。噂と伝聞による疑惑の上塗りでしかない。
客観的に見れば、大統領弾劾の法的根拠が崩れているのが明白である。
今日、朴大統領の弁護団が憲法裁に答弁書を提出し、「弾劾の理由ない」と棄却を求めたが、聴聞会の一連のやり取りをみても弾劾の理由を見つけるのは難しい。政治裁判にならないためにも、憲法裁の見識が問われる。

根拠薄弱な噂と伝聞で政治の中枢が動かされるのは、衆愚政治と民主主義の垣根がハッキリしていないからに他ならない。
1987年6月の民主化以来、韓国の歴代大統領は政権末期になると、次期大統領の椅子を狙う野心家たちが仕掛ける政争に巻き込まれるのが、“年中病事”となり、国力を不必要に消耗してきた。
李朝以来の党派闘争の悪習、道理と思い込むと事実をねじ曲げても自己主張する国民性など政治文化の問題もあるが、制度的には一期五年という奇形的な大統領任期制の弊害が大きい。独裁政治への警戒心から大統領任期を極端に制限したのであるが、社会が多様化した現状にそぐわず、制度的に限界である。

前から繰り返し指摘するように、87年体制は賞味期限をとっくに過ぎており、先進国のレベルに合ったものに作り替える必要がある。
改憲が急速に争点に上がっているが、派閥意識の強い韓国人に内閣制は政争を常態化させるだけである。欧米で一般的な2期10年とし、間に大統領の信認投票を入れれば政策の継続性、安定性も保障される。
今日、与党セヌリ党の院内代表選挙が行われ、親朴系主流派のチョン・ウテク議員が選出された。「次期大統領選挙前に改憲する」と金ジョンイン+孫鶴圭+金ドンチョルの改憲連合と歩調を合わせる事を明らかにしており、政局は当面、憲法裁の判断を睨みながら、改憲派と護憲派との攻防に焦点が当てられることになろう。

ただ、政体がいかようであっても、国民の国家観がしっかりしていないと、政治は安定せず、本来の役割を発揮できないが、韓国はこの点で深刻な内部対立を抱えている事を指摘せねばならない。
秋美愛民主党代表が弾劾案可決直後に来年春から導入予定の「国定歴史教科書廃棄」を求めたように、秘線疑惑が突然、持ち上がった背景には国家観の対立があった。

朴大統領のリーダーシップで進められた国定歴史教科書は、韓国の建国記念日を1948年8月15日とする。国際法的には常識的なことなのだが、現行憲法にはその規定がない。
前文で日本の植民地支配に反対して1919年に樹立された上海臨時政府の「法統を受け継ぐ」とするのみである。以前は同年を建国記念日とする記述があったが、さすがに国際常識に反するとして改められた。しかし、建国記念日は曖昧なままにされ、1948年は光復節と中途半端に据え置かれた。新世代は混乱するばかりであり、朴大統領はそれを正そうとしたに過ぎない。

野党はそれにも異義を唱えているが、何でも政局に利用する悪癖と共に、自身がしっかりとした国家観を持てないでいる事を示唆する。
国家観が確立していないから、何が国益か意見が一致しない。そのため政争が絶えず、結果的に国益を害している。北朝鮮核問題の鍵となるTHAAD問題でやたら反発しているのが、その一例である。

韓国人の大半が自覚していないが、1919年説にこだわる以上、北朝鮮から「傀儡」と批判され、コンプレックスを抱き続けなければならない。
何故なら、上海臨時政府の中心であった金九は解放直後に金日成の招請に応じてピョンヤンを訪れ、統一政府を樹立する南北連席会議に参加している。流れからすればそれを受け継ぐのが朝鮮民主主義人民共和国となる。韓国はそれに反し、米軍政府が李承晩を利用して樹立した不当な政府となる。韓国の左派、リベラルが親北的な傾向を帯びやすい原因である。

その金日成と対立し、開発独裁で韓国を経済強国に作り上げ、体制競争で北朝鮮を圧倒したのが、朴正煕大統領に他ならない。
その戦略を受け継いで、朴槿恵大統領は1948年を建国記念日にしようとしているのである。改憲を提唱したのもその延長線上にある。


それは韓国保守勢力の悲願とも言えるが、秘線疑惑で動揺し、異変が起きている。
弾劾案に賛成した金武星セヌリ党元代表らは「新保守」を標榜し、保守系紙の中央日報の李夏慶主筆はコラム「市民革命元年 朴正煕と決別しよう」(12月14日)と呼び掛けている。熱病に侵され、理念的墓穴を掘っていることが全く見えていない。

実は保守の溶融は日本でも起きている。安倍首相による改憲の動きがそれであり、敗戦国を経済大国にした吉田茂以来の正統保守が戦前志向的極右的な保守により変質させられようとしている。
世界的に格差拡大と社会の分裂が既成政治の枠を壊そうとしている流れが起きているが、韓国、日本もそれに洗われている。
崔スキャンダル真相究明の韓国国会特別委員会聴聞会は昨日も野党議員がセオル号沈没に関するいわゆる「空白に7時間」を究明すると称して、「朴大統領が美用のため対策本部到着が遅れた」と証人喚問し、大衆迎合のマスコミも無批判に報じている。
中・高校の反省会みたいな事を大のおとなが真面目な顔をしてやっているのだから、熱病は重症である。旅客船沈没事故は過剰積載と船長の不手際で大量の人命が失われた事は明白であり、大統領は何の関係もない。
道理の名を借りて不用意に感情論を持ち込み、政治的な野心を絡ませて事態を必要以上にこじらせている。肝心の原因を冷静に究明し、しかるべき対策を立てないから犠牲者は救われず、同様の事故が絶えない。

前にも指摘したが、日本では、旅客船事故よりも遥かに甚大な被害を起こした福島原発爆発で首相や無謀な原発を造った自民党歴代政権の責任が声高に糺されることもない。
明らかに、双方とも異常である。互いのいたならさを見比べながら、万民が納得する合理的な対策を講じるべきであろう。

私が予測したように、噂や伝聞がいつの間にか事実となり、責任問題に化けた挙げ句の大統領弾劾可決後の韓国政局は一段と混迷の度を深めている。
与党のセヌリ党は、弾劾案に賛成した非朴系が主流派の「枯死作戦」で「背信行為」、「廃倫」と攻撃され、金武星前代表が13日、記者団に「新保守と中道が手を組んで国家再建に尽力する」と脱党、新党立ち上げを明言した。
主流派は「革新と統合」を立ち上げて結束を固め、21日の新代表選出を機に非朴系を除名する構えを見せている。多数派工作に勝った方が主導権をにぎるが、朴正煕大統領以来の保守の理念を失った非朴系の劣勢は否めない。

一見、宮澤喜一内閣が自民党実力者の小沢一郎前幹事長らの造反で内閣不信任案が可決され、下野した1993年の政局に似ている。
しかし、「背信者」と烙印を押された金武星前代表に非自民党政権を誕生させた小沢氏ほどの豪腕は期待できず、キングメーカーになる野望は実現しそうもない。

野党はと言えば、次期大統領への野心を露にし、現行憲法での早期大統領選挙実施を主張する文在寅民主党元代表に対抗し、金ジョンイン前代表、孫鶴圭民主党元代表、金ドンチョル国民の党非常対策委員長が「改憲連帯」を結成する動きを見せている。
保守理念を失って漂流するセヌリ党の非朴系が生き残りを掛けて「改憲連帯」に合流する構えを見せており、与野の垣根を超えて文氏の護憲派との対立が深まる可能性がある。

双方から距離を置く潘基文国連事務総長が漁夫の利を得て存在感を増し、韓国のトランプとの異名を取る李在明城南市長が絡んでいく構図となろう。
さらに、朴槿恵大統領の支持率が回復し、憲法裁が弾劾を却下すれば、改憲運動に弾みがつくと予想される。

さて、やはり改憲が政局の争点に上がっている日本の政局であるが、永田町では来年1月解散風が吹き始めている。
ウオッチャーの予測では、自公+維新の改憲派の圧勝説と民進、共産、社民、自由の野党の躍進説に分かれている。民進と共産の選挙協力次第であろう。

安倍首相がリスクを覚悟で解散の機会をうかがっているのは、来年の自民党総裁選挙を睨んで、直近のNHK世論調査で50%と支持率が高水準を保っている間に勝負を掛けたいと云うことであろう。
だが、安倍首相の支持率が現在の高水準を維持する保証は全くない。
3本の矢の1つと肝いりで始めた異次元の量的緩和は日銀の国債保有率を極端に増やして経営構造を不安定にしただけで、完全な失敗である。成長戦略の柱と位置付けたTPPはトランプ次期大統領の脱退声明で、これも事実上の失敗である。

オリンピック気分やバラマキ公共事業による部分的な好況で失業率が下がり、何とか支持率を維持しているが、年金カットが示すように、歪みが露になりつつある。
博打であるカジノに経済再建の希望を繋ごうとしているところに、手詰まり状況が端的に出ている。白紙領収書問題や政治資金規正法に抵触する問題が閣僚の中に蔓延しているように、悪弊の不正腐敗が再び目につき始めた。

安倍政権の実績にそぐわない異常な高支持率は、蓮舫民主党代表が党首討論で指摘したように「息をするように嘘をつく」安倍首相の情報戦略、いわば日本国民の認知症につけこんだ巧みな情報戦略に与るところが大きい。
第一次安倍内閣が無様に崩壊したことに教訓を得た安倍首相はマスコミ対策に力を入れ、記者会見で世間に受けそうな美辞麗句を連ねた。他方で、各社幹部や有力記者との会食を重ねる誘導、懐柔作戦で「安倍首相と会食した」と自慢気に公言するマスコミ関係者を増やし、世論操縦に効果を表している。
是非はともかく、不通の朴大統領と対照的である。

安倍首相は今、「新しいアプローチ」と称して、トランプ次期大統領詣でをし、プーチン大統領との会談、真珠湾訪問と立て続けに外交攻勢を仕掛け、マスコミの気を引いている。
その上で一気に解散、総選挙のシナリオを描いているが、相当に無理がある。

そこまでして解散にこだわる最大の理由は、急速に世間の注目を集める小池都知事の動向に危機感を深めているからであろう。
来年夏の都議選で小池新党が大勝し、自民党が都議会最大勢力の地位から滑り落ちると、中央政界に直に影響し、安倍首相の立場も危うくなる。
その前に国会の最大多数の地歩を固め、政権基盤を強化し、長期政権の夢を実現しようというものである。

果たして正夢になるか。こちらは数々の失政を忘れずに国民が冷静な投票行動が出来るかどうかに、大きく掛かっている。

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