河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

盧武鉉政権→・・・朴槿恵政権

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朴槿恵大統領が27日、北京空港に降り立ち、習近平主席と共に儀仗兵を閲兵した。
旧敵国で国賓として最高の栄誉を受けたことが、今回の訪中の意義を如実に物語っている。

日本のマスコミはおしなべて「米国の次に日本を訪れる慣例を破った」と驚きの論調で伝えたが、実は、ピョンヤンでも、「金正恩第1書記が会う前に韓国大統領が会うなどありえない」と声なき衝撃が広がっている。

すなわち、今回の韓中首脳会談の画期的な意義は二つ、朝中首脳会談と韓日首脳会談先行の慣例を破り、北朝鮮と日本をさしおく形で挙行されたことにある。
朴大統領と習主席はギブアンドテイクでそれぞれ大きな収穫を得たことになり、互いに満面の笑みを浮かべて固い握手を交わしたのは故なしとしない。
両国の影響力が補完的に高まることは必定であり、東北アジアの国際秩序に地殻変動を引き起こすであろう。

いや、既に起きている変動が可視化されつつあると言った方が正確かもしれない。
私は04年の『朴正煕・韓国を強国に変えた男』文庫版後書き「朴正煕時代の総決算」で「いつまでも国家や民族という抽象物に身を焦がし、一国のことばかり考えれば済む時代ではない。・・・東アジアは・・新秩序形成へと向かいつつある。・・・韓国は緩衝地帯ではなく、基軸国家を目指すべきである。・・・対等な新秩序構築である。」と書いた。それが具現化しつつある。

無論、誤算が無かったわけではない。最大の誤算は、北朝鮮がその流れに加われないでいることである。
04年は、初の南北首脳会談が行われ、金正日国防委員長が7・1措置で市場を事実上、公認する改革に踏み出した直後であり、懸案の経済再生に希望が出ていた。
しかし、それが中途半端に終わり、核兵器開発へとずれてしまったのは残念と言うしかない。

日本の孤立化、日米韓連携に亀裂、といった分析が日本各紙に踊るが、それ以上の孤立感を味わっているのが、唯一最大の同盟国をライバルの韓国にかっさらわれそうな北朝鮮である。
朝中蜜月時代を知っている幹部たちは、朝中新首脳が未だ一面識すらないのに、韓国大統領が北京で大歓迎を受けている状況は到底信じがたいであろう。
当然であるが、北朝鮮指導部には動揺が起きている。幹部の動向に変調が認められ、最近、金格植・総参謀長、張成沢・国防副委員長のメディア露出が激減しているのは偶然ではあるまい。

逆に、朴槿恵大統領としては、訪中したことに大きな政治的な意味がある。
朝鮮戦争で北朝鮮を全面支援した中国は、朝鮮半島におけるピョンヤン政府の優位性や正統性を一貫して支持してきたが、それは基本的に消滅したと言える。

首脳会談で南北統一問題も議論され、習主席は「中国国民が望む朝鮮半島の二大希望は非核化と平和統一」と述べたと伝えられる。
金正恩政権の頭越しに朝鮮の統一問題が論じられたわけであり、ピョンヤンの受けた政治外交的なダメージは決して小さくない。

韓中貿易は昨年2千億ドル(韓国の輸出1343億ドル、輸入807億ドル)を超え、経済的な相互依存関係が極めて強くなっている。
韓中が政治的に接近するのは必然的であり、もはや北朝鮮がつけこむ隙は蟻の穴ほどもない。
朴槿恵大統領が儀礼を廃し、通訳を抜いてオバマ大統領と二時間に渡って率直に話し合ったことは、両者の個人的信頼関係を築き、微妙な段階に入っている東アジア国際問題で協力関係を維持する上で画期的なことであった。
安倍首相とオバマ大統領との会談が通訳時間を抜くと正味30分を切るものであったことに比べれば、いかに中身が濃いものであったかが分かる。

韓国と米国の間にはこれまで北朝鮮のみならず、中国、日本への対応でも温度差があったが、基本的に解消されたと評価できる。
朴槿恵プロセスに弾みがつこう。
なお、報道官のスキャンダルというハプニングがあったが、大局に影響するほどのものではない。

北朝鮮への対応では、韓米は北朝鮮の非核化で完全に歩調を合わせることになった。
北朝鮮は休戦協定を破棄し、核全面戦争を公言する過激な路線で米国を揺さぶり、韓国の頭越しに、核保有国としての対米交渉を企図したが、事実上、不可能になった。

逆に外交的に孤立し、韓米共同の軍事的圧迫を招き、動きが取れなくなった。
韓米日一般都市への核攻撃を公言したことで道徳性が失墜し、大義は色褪せ、韓国への領土的な野心を疑われたことは、取り返しのつかない大失態と言わねばならない。

また、朝鮮戦争後、曲がりなりにも60年維持されてきた半島の平和は不安定化し、特に北朝鮮の安全保障は根底から揺らいでいる。
米国は冷戦終了後にロシアとの間で核軍縮交渉を進めてきたが、核攻撃を弄ぶ北朝鮮が冷水を浴びせた。
核搭載機のB 2などが韓国に公然と飛来して軍事演習に加わり、ミニットマンの実験が再開されるなど本来はあってはならないものであるが、北朝鮮の暴走への抑止措置として正当化されてしまっている。
韓国、日本の反核勢力がすっかり勢いを失ってしまった責任の多くは北朝鮮にある。

北朝鮮は核保有により平和が保障されたと強弁するが、事実は逆である。
韓国、米国、日本への核攻撃を公言した以上、自身にいつ跳ね返ってくるかもしれない。いつ核攻撃されるかと怯えなければならなくなってしまったのは皮肉な結果である。

核保有にこだわる限り北朝鮮に未来はないが、核廃棄に応じれば、事態は全く異なる展開を見せよう。
オバマ大統領は非核化を北朝鮮との対話条件に挙げる戦略的忍耐にこだわるが、朴槿恵大統領は幅を持たせ、開城工団再開問題など個別問題での対話と信頼醸成のプロセスを模索する。
今回の会談でその温度差が埋まり、オバマ大統領は朴槿恵プロセスに基本的な理解を示した。
それだけ朴槿恵大統領のフリーハンドが広がったということである。

北朝鮮はこの好機を見逃すべきではない。
オバマ政権は金正恩政権そのものをカダフィ政権のように見限ろうとしているが、朴槿恵大統領はまだ共存共栄のパートナーとなる可能性を捨てていない。

思い付き的な核開発との並進路線で足をとられた北朝鮮経済は現在、資金不足、物資不足、技術不足の極めて深刻な事態に直面している。
八割以上の貿易相手国である中国が徐々に締め付けに動いている。他方で、北朝鮮で最も収益性が高く、有力な外貨獲得ルートであった開城工団をみずみず操業中断に追い込んだことで、展望性ある政策を提示できなくなり、場当たり的な収拾策で急場をしのいでいる。

政経分離の原則に基づく開城工団再開の協議を取っ掛かりにして、南北対話を広げて行くのが最も合理的かつ現実的である。
それが金正恩政権が生き残る唯一の道でもある。
朴槿恵大統領は7日、オバマ大統領と通訳抜きの実直な会談を行い、朝鮮半島信頼プロセスや北東アジア平和協力構想を説明し、基本的にオバマ大統領の支持を得た模様だ。

その核心はまず南北間で信頼を醸成して緊張を緩和し、対話の枠を6カ国協議へと広げていくことにある。
朴大統領は「 金正恩国防委員会第1委員長と会う機会があれば、北朝鮮が変わることが生き残る唯一の道であると説得する」と述べたが、この言葉に朴槿恵プロセスの本質がある。

朴槿恵プロセスの特徴は妥協なき硬軟作戦を組み合わせ、北朝鮮の非核化と変化を誘導することにある。
それは一面において、力には力の対決を前面に出した超強硬策である。北朝鮮の挑発に対する韓米共同対処計画に見られるように、挑発には指揮命令系統まで破壊し、数倍の対価を払わすというものである。
父親の朴正煕元大統領譲りの断固とした意志を滲ませ、李明博前大統領よりもかなりタフである。北朝鮮は見くびると大火傷を負うだろう。

同対処計画は北朝鮮の砲撃で島民が犠牲になった2010年11月の延坪島砲撃戦の教訓を踏まえている。
北朝鮮の軍事挑発に韓国軍が自衛権行使として即応し、米軍が支援する形をとるが、金正恩委員長が核攻撃を公言した状況を踏まえ、米軍による核攻撃も想定している。

韓米合同軍事演習に核搭載のB 2などが参加し、オバマ大統領が共同記者会見で「核の傘の義務を果たす」と強調したのはそれを示唆する。
NPT 会合で韓国が日本と共に核の不使用宣言への署名を留保したのも、そうした文脈で読むと理解しやすい。

これは現時点で、一定の抑止効果を挙げている。
北朝鮮はムスダンを撤去するなど一時に比べて大幅にトーンダウンしており、自画自賛する核戦力を全面に押し出した強硬路線に限界を感じている事が伺われる。

それを対話局面に転換できるか、いよいよ水面下の外交戦が繰り広げられていく。
朴槿恵大統領はホワイトハウスで「韓米中提携」という新外交戦略を提唱し、注目されたが、北朝鮮と距離をとりはじめた中国の動向が重要な鍵としてクローズアップされてこよう。
激戦の末に3%の差で破れた野党のムン・ジェイン候補が敗北宣言でパク・クネ候補の健闘を称え、パク・クネ候補が慰労の言を送ったことに、韓国の民主主義の成熟を見ることができた。
朴正煕時代の総決算が確実に進展している。
私はノ・ムヒョン元大統領につながるムン・ジェイン候補を支持していたが、パク・クネ候補は勝つべくして勝ったと言える。

最大の争点は一貫して、現政権の成長偏重、財閥偏重から来る格差拡大への不満をいかに解消するかに置かれていたが、パク・クネ候補は与野党の枠を超えてブレーンを集め、きめ細かな対策を立て、公約とした。
与党候補でありながら、李明博大統領と距離を置く政権内野党の立場から現政権を厳しく批判したことで、世代や地域を超えて広く国民の支持を集めることに成功した。

それが最大の勝因であるが、野党側から見た最大の敗因は、当ブログでも指摘したように、30代以前の若者に圧倒的な支持者を有するアン・チョルス教授との連携が遅れ、結果的に間に合わなかったことにある。
3%の差は多くがそれに起因する。
政策協定を結んでアピールすれば中間的な40代を引き寄せることも可能であったのに、惜しまれる。

さらに無視できないのは、パク・クネ氏の人間力である。
「私には両親も夫も子供もいない。国民が私の家族であり、国こそが唯一、すべてを捧げる対象である」
遊説中に彼女が語った言葉はSNS を通して中国にも伝わり、大きな共鳴の渦を巻き起こした。
それを私がツイッターで紹介したところ、やはり共感の声が多い。

私も、久しぶりに政治家の言動に感動した。オバマ大統領夫妻が初当選直後に黒人奴隷を送り出した西アフリカの旧奴隷市場を訪れ、泣き崩れるミシェル夫人を大統領が抱き支える場面がニュースで流れたことがあった。
それ以来の感動を覚えた先の言葉は、凶弾に倒れた両親の血に染まったシャツを洗ったパク・クネ氏の人生そのものである。

顕忠院に眠る父親の墓地を訪れ、勝利を報告したパク・クネ氏の表情には、決意がみなぎっていた。
親子二代の恨であろう。
マックス・ウェパーは『職業としての政治』で「いかなる不条理や困難にもめげない者だけが政治への天職を有する」と看破したが、パク・クネ氏にとって政治は運命的な天職であった。
 次期大統領有力候補の朴槿恵(パク・クネ)氏が父である朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が主導した1961年の軍事クーデターを「最善の選択だった」と発言し、賛否両論、侃侃諤諤の議論が広がっている。
 この問題はいずれ決着を付けねばならないことであり、大統領選前に一定の国民的合意を見たほうがよいかもしれない。
 朴大統領の政敵であった金大中元大統領も「韓国の近代化に寄与した」と大統領選前に発言しており、最善かどうかはさておき、全体としては近代化の礎を築いた事は事実として評価する流れにある。
 
 朴氏の発言は16日のソウルでの討論会で、質問に答える形で行われた。
 韓国人なら誰もが抱く疑問であり、12月の大統領選で与党セヌリ党の候補となることが確実な元大統領の娘に対して遅かれ早かれぶつけられる質問であった。
 朴氏が次期有力大統領候補とみなされてきた要因は、今もって故大統領への支持が慶尚南北道を中心に根強いからである。
 
 朴氏も当然、想定問答を準備していた。
 父親のクーデターに対して当時の韓国経済が世界最貧国水準だったこと、北朝鮮との軍事対立で安保環境が厳しかったことなどを挙げ、「父としては不可避な最善の選択をしたのではないか」と発言した。
 
 実は朴槿恵氏は私の著書『韓国を強国に変えた男 朴正煕―その知られざる思想と生涯  (光人社) を読んで、「父のことを良く書いてくれた」と評していた。
 世界最貧国水準や北朝鮮との安保環境などは同書で指摘したことでもあるが、そうした時代的背景の下で選択肢が限られていたことはしっかりとつかむ必要がある。朴のクーデターがなければ韓国はさらなる貧困と混乱に沈むケースも十分にありえたのである。
 なお、同書は今もソウルの大手書店・教保(キョボ)文庫の日本書籍コーナーに平積みされ、ロングセラーとなっている。韓国語約も出版されている。
 
これに対して、
朴正熙政権下で民主化闘争に参加した人々から与野問わず批判が出されている。
 最大野党である民主統合党の報道官は即日、「軍事クーデターを最善の選択という政治家に民主共和国の大統領になる資格はない」と批判し、李海瓉(イ・ヘチャン)代表も「朴元大統領は故人なので内乱罪に問えないだけだ」と述べた。
 
 そうした批判にも一理あるが、朴大統領のクーデターは半世紀前のことであり、具体的な状況はまるで違う。
 さらに重要なことは、朴大統領のクーデターと開発独裁を経て韓国は経済発展し、民主化の経済的物質的な条件を整えたことである。
 
 「朴正煕時代の総決算」は不可欠である。
 過去を単に蒸し返すのではなく、国民すべてが質の良い民主主義と豊かな生活を享受できる新たな社会建設へと踏み出す大きなステップとすべきであろう。
 

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