河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

盧武鉉政権→・・・朴槿恵政権

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 民意を積極的民意と消極的民意に分けるとすれば、今回の韓国総選挙ほどそれを対照的に示したものはなかろう。
 有権者3779万6035人の46・0%、1739万3516人だけが投票し、前回比14・6ポイント減、歴代最低記録となった投票率が意味するのは、恐らく、中高年や富裕階級を中心とする保守層が長年鬱積した思いを吐き出すために投票所に足を運び、その他、過半数の国民は政治不信、政治家不信、争点不在から「選ぶものがない」と、棄権することで意思表示をしたということである。

 ちなみに、再選は43・8%、131人で、前回34・8%より高い。ただ、初当選は45・8%、137人で、62.9%、188人が初当選し「新人旋風」が吹いた前回に比べ大幅に減少した。
 当選回数は、自由先進党の趙舜衡議員が7選で最多。6選4人、5選7人、4選19人、3選44人、2選87人。年齢構成は50代47.2%、40代以下31.7%、60代以上が21.1%。前回は40代以下43.1%、60代以上16.4%で、年齢が上がった。女性議員は13.7%、41人で、前回39人より微増した。
 
 「北風」について言えば、北朝鮮による激烈な挑発的言辞は保守層の反発と結束を呼び起こし、皮肉にも、北朝鮮は李大統領に塩を送る結果となった。
 他方の、旧与党を支持し、北朝鮮に対しても同族としての連帯感を有していた進歩層は、「またか」と北朝鮮の意図を見透かし、ほとんど無視した。北朝鮮に近いとされる民主労働党と進歩新党が議席を半減したことが、象徴的である。
 北朝鮮は、こうした韓国民意の変化を知らねばならない。

 保守層が投票所を席巻した結果、国会の勢力図は進歩政権が10年間かかって克服しようとした地域対立が復活した。
 否、単なる復活ではない。保守は嶺南(慶尚南北道)、進歩は湖南(全羅南北道)との対立構図に、右翼系保守の自由先進党が新たに李会昌総裁の出身地である忠清道地域で躍進して三極構図が鮮明化し、以前よりも地域対立色は深まった。 
 これにハンナラ党の親李、親朴対立が加わり、一層複雑な様相を帯びている。
 
 アイヌや旧琉球などを抱える日本などに比べ遥かに純度の高い単一民族でありながら、これほど地域で対立する国も珍しい。他国なら、とうに地方自治制や連邦国家へと移行していたであろう。
 これに北朝鮮との対立が加わるのであるから、南北関係改善や統一がいかに難しいものであるか想像しても余りあろう。
 それを統合する、ナショナリズムを超えるビジョンを示すのは容易ではない。野党から即興的な発想、独善的発想と批判される李新大統領が掲げる「世界化」「一流国家」「創造的実用主義」は、これから真価が試されることになろう。

 私は「朴正煕 韓国を強国に変えた男 その知られざる思想と生涯」の文庫版(04年5月)の後書き「朴正煕時代の総決算に入った韓国」で、「盧武鉉政権下で朴正煕時代の総決算とポスト近代への模索が本格的に始まったと言ってよいだろう。権威主義、強権的手法、門閥主義、政経癒着と不正腐敗など朴正煕時代の負の遺産の清算が深化しているが、とりわけ、韓国政治を蝕む癌である地域主義の根絶が重要な段階に入っている」と書いたが、現状は後退しているようにすらみえる。
 だが、政治システムの問題としてみれば、今回二度目の与野政権交代を経たことで韓国の民主主義は確実に成熟度を高めており、一歩後退二歩前進と言うことも十分にありえる。
 http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/315296.html
 
 今後注目されるのは、サイレントマジョリティーと言うべき消極的民意が、どう声を上げていくかである。
 かつてそれを代弁したのが旧与党の民主党であるが、政治的未熟さからポスト争いと内紛を繰り返し、ほとんど自滅に近い形で信頼を失ってしまった。
 目標の100議席を大きく下回ったが、かろうじて与党の対抗勢力としての最低限の議席確保には成功した。孫鶴圭代表、鄭東泳元統一相ら幹部が落選して足腰が定まらず、前途多難であるが、同党再生は韓国民主主義の健全な発達のためにも欠かせない。

 今回の選挙は、やたら熱くなったり冷たくなったりと、極端から極端にぶれる傾向がある韓国人気質を示した文化的現象でもあった。
 その国民に747公約を訴えて大権を掌中にした李大統領は、いかに国民の期待に応えることができるか、批判する立場から批判される立場に立ち、厳しい審判が待っている。

 李明博大統領は、金正日総書記が視聴しているCNNで首脳会談を呼びかけた。
 米朝対話の進展を読んだ上での変わり身の早いパフォーマンスはそれなりの外交的センスを感じさせるが、課題はむしろ内政、やや大風呂敷を広げた観のある公約実行だ。

 李大統領は昨年暮の大統領選で、金大中=盧武鉉の革新政権時代を経済を破綻させた「失われた10年」と切り捨て、747公約(年平均成長率7%、10年後の1人当り所得4万ドル、世界7大強国の仲間入り)を掲げて民心を掴んだが、それを実行するのは極めて難しい。

 日本でもこの辺を誤解しているメディアが少なくないが、1997年の金融危機後に始まった革新政権時代の年平均経済成長率は5%台で、OECD諸国でも最優等生の部類である。
 ただ、IT化による就業構造の変化に伴う雇用悪化や格差拡大で、支持基盤の青年・勤労者層にそっぽを向かれてしまった。ソウル市長時代の経営手腕を認められた李大統領は、そこをうまく突いてバラ色の夢を振りまき、地滑り的な支持を獲得したのである。

 ハンナラ党など保守系はその余勢を駆って総選挙に突入し、数字的には200に達する圧勝となった。
 だが、投票前の各種アンケートで浮動票が50%を超えていたように、大統領選時に比べ国民は冷め、しらけてすらいた。年初からの原油高騰や米景気後退などで今年の韓国経済の成長率は昨年の5%台をかなり下回ると推測され、747公約実現は極めて困難な状況となったからだ。 
 総選挙の結果は、そうした揺れる民意を反映していると言える。

 開票結果は、定数299議席のうち、ハンナラ党153議席(現在112)、大統合民主党81議席(136)、自由先進党18議席(9)、親朴連帯14議席(3)、民主労働党5議席(6)、創造韓国党3議席(1)、無所属25議席となった。
 ハンナラ党は06年5月の統一地方選挙、昨年12月の大統領選に続く勝利である。1987年の民主化以降、与大野小の国会構図は前回に次いで2度目であり、李政権の国政運営は一応安定した。
 
 しかし、ハンナラ党は一時は確実と言われた改憲ラインの200議席どころか、すべての常任委員会で過半数を占める絶対多数157議席にも届かなかった。
 加えて党内は、李大統領支持派が政局を主導できる状況ではない。李在五(イ・ジェオ)元最高委員ら李大統領の側近が相次いで落選する一方で、李大統領と対立する朴槿恵(パク・クネ)元代表派が30議席前後を確保した。朴槿恵派は公認争いからハンナラを離党した親朴連帯や無所属、その他シンパも含めれば70〜80に達するとみられ、野党第一党の民主党に拮抗する勢力を誇る。

 李大統領は党内反主流の協力なくしては国政運営もままならなくなったが、これが容易ではなさそうだ。
 次期大統領を狙う朴元代表は、経済政策や対北朝鮮政策などで李大統領と考えを異にし、大統領の最大公約である大運河建設事業にも反対の意向を表明しているからだ。

 公認争いの遺恨を引きずった復党問題が、事態をさらに複雑にしている。
 親朴派復党は反主流派の勢力を拡大させるとして反対する主流派に対して、ハンナラ党の地盤とされた嶺南(慶尚南北道)で大勝した親朴派は、自分たちこそ朴正煕元大統領の流れを受け継ぐ正統派と強気で、無条件復党を主張して譲らない。
 李大統領派と朴元代表派の集団指導体制も検討されているが、復党問題がこじれれば、朴新党が旗揚げし、同じ保守の自由先進党と組んでの政界改編もありうる。
 
 李大統領派は6月の国会開会前の党大会早期開催で決着を付けようと動いたが、李大統領は姜在渉(カン・ジェソプ)代表の任期が切れる7月まで延期した。
 党分裂の事態を回避し、創造的実用主義を基に、国の競争力向上、金融・産業分離や出資総額法などの規制緩和、法人税引き下げ、韓米自由貿易協定(FTA)批准、公営企業民営化などで実績を積み、支持率アップによる求心力回復を狙う作戦とみられる。 

 9日投開票の第18代国会議員総選挙は数字的には与党ハンナラ党が過半数を確保し、勝利したが、李明博新政権の前途は決して楽観できるものでない。
 李大統領も13日の就任後初めての会見で、「今回の選挙で示された国民の思いがなにか、よくわかっている。妥協と統合の政治を行い、経済再生と民生向上に邁進せよとの厳しい命令だ」と述べ、期待を下回った選挙結果に手放しで喜ぶことは出来なかった。

 韓国の民意は、しばしば掌を返したように急変する。
 李大統領は閣僚人事の不手際で味噌をつけ、大運河など公約にも疑問符が付いているだけに、課題の対北朝鮮政策と経済再生で可視的な成果をあげられないと、支持率低落は止まらず、政権運営は求心力を失い、厳しい局面に直面することになろう。 

 韓国の民意動向に神経を尖らせているのは北朝鮮も同様で、労働党機関紙「労働新聞」は17日、「厚顔無恥な我田引水」なる署名論評で、「選挙者の大多数が参加を回避した選挙は、事実上、民意を代表した選挙と言うことはできない」と評した。
 しかし、これは韓国の民意を見誤り、議会制民主主義への理解が浅いと指摘せざるを得ない。投票率は46.0%と過去最低を記録したことは事実だが、棄権にも民意が反映されているのである。単純に投票率が高ければ良いというものではない。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2008/04/04-17/2008-0417-008.html

 北朝鮮の労働新聞は総選挙最中の1日の評論員論評で、「明博逆徒」と李大統領を名指し非難した。野党に有利な“北風”を起こそうとしたとみられるが、パラム(風)は全く吹かなかった。
 韓国民が、北朝鮮に対しても厳しい視線を向け始めたことを物語る。

 儒教の国・韓国は古来、「東方礼儀之国」と言われてきたが、グローバル化の流れの中で価値観が多様化し、米国流の打算主義や拝金主義が鎌首をもたげ、「東方無礼な国」となったと韓国人すら自嘲する国に変貌しつつある。理解しがたい人は、「エコノミック・アニマル」と呼ばれた80年代の「日の昇る日本」時代を想像すれば分かりやすいだろう。
 グローバル経済の悪しき副産物であるが、市場経済に向かう北朝鮮も、伝統的な民族主義に訴える「ウリキリ(同族同士)」では通じなくなっていることを知らねばならない。

 訪米中の李大統領は今日、ソウルとピョンヤンに連絡事務所を設置し、南北高位級外交チャンネルを構築することを提案した。
 米朝シンガポール合意に合わせて南北対話を呼びかけたと解釈できるが、北朝鮮がそれにどう応えるか、多くの韓国民が注視していることだろう。
 http://news.kbs.co.kr/article/politics/200804/20080418/1545524.html 

 李明博新政権は、韓国の口さがない政界雀から盧明博(ノ・ミョンバク)政権と揶揄された。
 先月26日に発足したものの、つい先日まで内閣人事に手間取り、統一相を含めた盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権の閣僚4人がそのまま閣議に参加する異常事態に陥ったからだ。
 韓国では人事が最も重視されるが、余りのお粗末さに、「金儲けさえ巧ければ、誰でも良いのか」と李大統領の哲学まで疑問が向けられている。

 前代未聞の迷走人事の内幕をのぞいているうちに、韓国のエリート層はここまで拝金主義に侵されていたのかと唖然とし、次第に暗澹たる気持ちにさせられた。
 李明博新政権の初代内閣の顔ぶれ15人は、先月18日に発表された。著名大学教授、元次官、全国経済人連合会副会長、市民団体代表など一見してそうそうたるメンバーだが、資産平均申告額が39億ウォン(4億2千万円)と公開されるや、早速、「土地成金内閣」と報じられた。
 福田内閣平均資産約1億1700万円の3倍強となる。韓国民の平均所得は日本の6割強だから、かなり庶民離れしている。最低額が李国防長官内定者の8億ウォン。トップの柳文化体育観光部長官内定者はなんと140億ウォンで、福田内閣トップの鳩山法相の約7億3000万円の倍以上になる。
 http://news.kbs.co.kr/article/politics/200802/20080222/1513924.html

 無論、資産が多いこと自体は、閣僚としての資質をいささかでも疑わせるものではない。問題は、常軌を逸した蓄財術にある。
 福田内閣でも資産2位で約3億6100万円の舛添厚労相が自宅や別荘を「私の研究所所有だ」と公開資産から外して問題化したが、李新政権の閣僚内定者にはそれに輪を掛けた無軌道ぶりの人物が少なくない。
 閣僚内定者15人のうち11人が家族名義でアパートなどの不動産や有価証券、ゴルフ会員券などを複数所有し、不動産投機、所得隠し・・・脱法行為すれすれの反社会的な行為を重ねているのも少なくないから、開いた口がふさがらない。

 さながら「投機師内閣」だが、大統領選惨敗で野党に転落し、4月9日の総選挙で捲土重来を期している統合民主党が座視するわけがない。
 国会多数派の力を駆使して、当初じは新政権が予定した中央官庁縮小案(18部4処から13部2処)反対に力点を置き、統一部と女性部を存続させ15部2処に変更する政府組織法改正案を可決させた。
 やがて世論の動向を見ながら、孫鶴圭(ソン・ハクキュ)代表が「不動産投機取り締まりリストじゃないのか。なぜこのような人たちが長官に内定されたのか」と、「特権層の偏重人事」を問題視するようになり、一部内定者に対しては国会の人事聴聞会そのものをボイコットし、更迭を求める戦術で揺さぶりだした。

 そうして先月24日、女性部長官内定の李春鎬(イ・チュンホ)韓国自由総連盟副総裁が内定辞退、事実上の更迭に追い込まれた。
 本人と息子名義で全国5地域に40件もの不動産(45億8197万ウォン=5億1752万円相当)を所有していることが発覚し、投機疑惑とともに脱税疑惑まで浮上した。李大統領がソウル市長に当選した02年に引継委員を務め、女性有権者連盟名誉会長、ソウル市女性委員長などを歴任したが、そうして築いた人脈を悪用しながら不動産を買い漁っていたものとみられる。

 続いて、統一部長官に内定していた南柱洪(ナム・ジュホン)京畿大教授と環境部長官に内定していた朴銀瓊(パク・ウンギョン)大韓YWCA連合会会長が入閣辞退した。
 南氏は対北朝鮮強硬派として注目された論客だが、夫人の不動産投機、夫人と子どもの二重国籍(米市民権)、教育費二重控除、兵役逃れなど次から次へとボロが暴かれ、「何でこんな人物が?」と失笑を買った。金泳三政権の国家安全企画部安保統一補佐官、民主平和統一諮問会議事務処長、統一部統一教育審議委員などを歴任しながら、蓄財に励んでいたとみられる。
 対北強硬論は有事になったら家族と米国に逃げられるからだろう、と散々陰口を叩かれ、面目丸つぶれだ。

 それに劣らずぬ世間の顰蹙を買ったのが、朴銀瓊氏だ。
 環境正義市民連帯代表など市民団体で環境運動をしながら、済州道や京畿道金浦の農地を不法購入し、変則贈与で偽装した疑惑などが炙り出された。強気に釈明していたが、嘘の上塗りで辻褄が合わなくなり、ついに国会環境労働委員会での人事聴聞会直前に辞退せざるを得なくなった。

 無論、全ての内定者が投機師というわけではなく、余人に変えがたい人材もいる。
 教育人的資源部長官の金道然(キム・ドヨン)ソウル大学教授、外交通商部長官の柳明桓駐日大使、国防部長官の李相憙(イ・サンヒ)元合同参謀本部議長らだ。農務部長官に抜擢された鄭雲天(チョン・ウンチョン)韓国農業CEO連合会会長は、「ベンチャー農業会の李健熙(サムスングループ会長)」と呼ばれ、FTAなど市場開放で揺れる農業再建の手腕が期待されている。

 しかし、聴聞会が始まると、出るわ出るわ、分譲権転売や贈与税未納など不動産投機疑惑以外にも、論文重複掲載疑惑、長女の国籍放棄問題、経歴詐称などが次々と暴かれ、立ち往生した。
 国民の怒りを増幅させたのが、徴兵制の韓国で男子の基本的義務とされる兵役忌避疑惑だ。13人の男性内定者のうち5人が軍役免除、1人が中途退役、つまり半数が引っかかった。一般社会の軍役免除比率は過去10年間4%だから、異常に高い。
 国民としての基本的義務を果たさず、家族の二重国籍など国家への忠誠義務に疑義のある人物らを閣僚に選んだ李新大統領の哲学にも批判の声が向けられた。

 韓昇洙(ハン・スンス)首相内定者への任命同意案がようやく可決されたのは、新政権発足3日後の先月29日であった。女性部、統一部、環境部の長官内定者3人が事実上更迭されたため、民主党が党議拘束を外して妥協した。採決は在籍議員298人のうち270人出席で無記名投票で行われ、賛成174票、反対94票、棄権1票、無効1票であった。
 それを受けて、李大統領は同日、韓首相と他の閣僚内定者に任命状を授与し、さらに、今月2日に統一部長官に金夏中(キム・ハジュン)駐中国韓国大使、環境部長官に李万儀(イ・マンイ)環境部次官ら官僚から後任を補充し、全長官内定者への聴聞要請書を国会に提出した。かろうじて形を整えたが、ここまで組閣がずれこんだのは韓国憲政史上初のことである。 
 しかし、余震はいまだ収まらず、新たに国家情報院長に内定した金成浩(キム・ソンホ)前法務部長官にサムスン関連の収賄疑惑が持ち上がり、今も紛糾している。

 李大統領も「(人事検証関連)資料を活用できなかった」と釈明したが、政治家としてある種の限界を露呈したことは否めない。
 日本でも安倍前政権の“お友達内閣”が政治資金流用など不祥事続発で出足から躓き、身体検査の甘さが指摘されたが、李政権も同類の弱点を内包する。
 大統領府関係者は5000人の対象者から選んだと弁明するが、多くが李大統領のソウル市長時代に信頼を得た人物である。つまり、ソウル市長の感覚で国政の長の人事をしてしまったわけである。

 しかも、庶民経済の再生を掲げ、格差是正、失業対策をアピールして誕生した新政権の中枢が、実は、庶民経済破壊の現況の一つである不動産投機に関わった人物らで占められているというアイロニーは、いかんともしがたい。
 李大統領は周知のように、現代建設の社長として朴正煕政権時代の「漢江の奇跡」を生み出した主役の1人であり、個人資産は日本円にして50億円に達する。福田首相の公称7200万円よりはるかに多い。
 その経営者感覚で無批判に国政の人事を行い、今後も引きずるとしたら、致命傷になる恐れも十分にある。

 韓国には「人事が万事」という言葉がある。盧武鉉前政権発足時には80%台の支持を得ていたが、大統領選で圧勝した割りに李新政権は75%と意外と低く、一ヶ月前に比べ10%低下した。
 人事の不手際が影響したと見られるが、4月の総選挙で“野大少与”を逆転しようとの戦略にも暗雲が垂れ込めてきた。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領の就任式が、25日午前11時から国会議事堂前広場で執り行われたが、私も東京の自宅パソコンを通して、式典の模様をつぶさに観ることができた。
 全てのテレビ、ラジオ番組をインターネットで同時中継する、いわゆる放送と通信の融合は、韓国が世界に先んじて開始したが、その恩恵に与ったというわけである。

 内外人士5万人が参加した壮大な式典は、世界11位の経済大国に成長した韓国の国力の充実をうかがわせるに十分であった。
 家が盛んになれば客は増える。韓国が伝統的に「4強」と呼び神経を使ってきた4か国は、いずれも特使を送り込んできた。
 日本首相、米国務長官の参席は前回と同じで恒例化しているが、中国は唐家セン国務委員が胡錦涛主席の親書を携えて訪れ、李大統領との会談で李大統領の中国語版自伝『未来経営』を贈り、韓中関係を日本、ロシアと同レベルの「戦略的関係」へと発展させることを提案した。北東アジアで旧ソ連時代の影響力回復を目指すロシアも、初めてズプコフ首相が顔を見せた。
  
 特に印象深かったのは、式典の最後に、同日零時をもち軍統帥権など大統領としての憲法上の全権限を移譲した盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領を、李大統領がともに談笑しながら首席壇から降り、温かく送り出した場面であった。
 釜山に近い金海市近郊に帰郷する前大統領の乗用車を新大統領が礼を尽くして見送る姿は、今回で二度目となる与野党の政権交代が、単なる政争ではなく、民主主義の在るべき姿として韓国に根付いたことを象徴していると言えよう。

 保守が10年ぶりに政権の座を取り戻した新政権発足前は、進歩政権に報復する清算主義的な主張が一部にあった。
 しかし、李大統領は、保守、進歩の枠を超えた現実主義的、実用主義的な姿勢を堅持すると見られる。内外政策の基本枠は維持しながら、理想主義的な理念重視にやや傾いた前政権の姿勢を「実用主義の尺度」で部分調整することになろう。

 就任辞でも、「産業化と民主化に次ぎ、先進化へともう一段階国力を飛躍させよう」「産業化と民主化の結実を大切に育て、品格ある国を目指す」と、過去の成果を踏まえながら前進することを強調した。
 産業化は自ら現代建設社長として「漢江の奇跡」を起こした朴正煕時代以降、民主化は金大中、盧武鉉政権時代を指す。

 と、慶祝ムード一色の就任式であったが、第17代大統領の今後の5年間は必ずしも平坦な道とは言えない。 

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