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李明博大統領は、金正日総書記が視聴しているCNNで首脳会談を呼びかけた。
米朝対話の進展を読んだ上での変わり身の早いパフォーマンスはそれなりの外交的センスを感じさせるが、課題はむしろ内政、やや大風呂敷を広げた観のある公約実行だ。
李大統領は昨年暮の大統領選で、金大中=盧武鉉の革新政権時代を経済を破綻させた「失われた10年」と切り捨て、747公約(年平均成長率7%、10年後の1人当り所得4万ドル、世界7大強国の仲間入り)を掲げて民心を掴んだが、それを実行するのは極めて難しい。
日本でもこの辺を誤解しているメディアが少なくないが、1997年の金融危機後に始まった革新政権時代の年平均経済成長率は5%台で、OECD諸国でも最優等生の部類である。
ただ、IT化による就業構造の変化に伴う雇用悪化や格差拡大で、支持基盤の青年・勤労者層にそっぽを向かれてしまった。ソウル市長時代の経営手腕を認められた李大統領は、そこをうまく突いてバラ色の夢を振りまき、地滑り的な支持を獲得したのである。
ハンナラ党など保守系はその余勢を駆って総選挙に突入し、数字的には200に達する圧勝となった。
だが、投票前の各種アンケートで浮動票が50%を超えていたように、大統領選時に比べ国民は冷め、しらけてすらいた。年初からの原油高騰や米景気後退などで今年の韓国経済の成長率は昨年の5%台をかなり下回ると推測され、747公約実現は極めて困難な状況となったからだ。
総選挙の結果は、そうした揺れる民意を反映していると言える。
開票結果は、定数299議席のうち、ハンナラ党153議席(現在112)、大統合民主党81議席(136)、自由先進党18議席(9)、親朴連帯14議席(3)、民主労働党5議席(6)、創造韓国党3議席(1)、無所属25議席となった。
ハンナラ党は06年5月の統一地方選挙、昨年12月の大統領選に続く勝利である。1987年の民主化以降、与大野小の国会構図は前回に次いで2度目であり、李政権の国政運営は一応安定した。
しかし、ハンナラ党は一時は確実と言われた改憲ラインの200議席どころか、すべての常任委員会で過半数を占める絶対多数157議席にも届かなかった。
加えて党内は、李大統領支持派が政局を主導できる状況ではない。李在五(イ・ジェオ)元最高委員ら李大統領の側近が相次いで落選する一方で、李大統領と対立する朴槿恵(パク・クネ)元代表派が30議席前後を確保した。朴槿恵派は公認争いからハンナラを離党した親朴連帯や無所属、その他シンパも含めれば70〜80に達するとみられ、野党第一党の民主党に拮抗する勢力を誇る。
李大統領は党内反主流の協力なくしては国政運営もままならなくなったが、これが容易ではなさそうだ。
次期大統領を狙う朴元代表は、経済政策や対北朝鮮政策などで李大統領と考えを異にし、大統領の最大公約である大運河建設事業にも反対の意向を表明しているからだ。
公認争いの遺恨を引きずった復党問題が、事態をさらに複雑にしている。
親朴派復党は反主流派の勢力を拡大させるとして反対する主流派に対して、ハンナラ党の地盤とされた嶺南(慶尚南北道)で大勝した親朴派は、自分たちこそ朴正煕元大統領の流れを受け継ぐ正統派と強気で、無条件復党を主張して譲らない。
李大統領派と朴元代表派の集団指導体制も検討されているが、復党問題がこじれれば、朴新党が旗揚げし、同じ保守の自由先進党と組んでの政界改編もありうる。
李大統領派は6月の国会開会前の党大会早期開催で決着を付けようと動いたが、李大統領は姜在渉(カン・ジェソプ)代表の任期が切れる7月まで延期した。
党分裂の事態を回避し、創造的実用主義を基に、国の競争力向上、金融・産業分離や出資総額法などの規制緩和、法人税引き下げ、韓米自由貿易協定(FTA)批准、公営企業民営化などで実績を積み、支持率アップによる求心力回復を狙う作戦とみられる。
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