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李明博(イ・ミョンバク)次期大統領は28日、注目される次期政権の首相に「グローバル・マインドとビジネス・マインドを身に付け、経済再生と資源外交に最適」として、韓昇洙(ハン・スンス)・国連気候変動特使(71)を指名した。
実務能力と実用主義に基づく登用だが、学者出身の次期首相は、盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)3政権で要職を歴任しており、特に、金大中政権で外交通商相として太陽政策の推進役を担った経歴が注目される。
首相をはじめとする閣僚人事は次期政権の対北朝鮮政策を測る尺度となるが、金大中ー盧武鉉政権の10年の太陽政策の成果を、微調整しながら基本的には継承発展させるものとなりそうである。
李次期大統領の747公約を実現するためにも、新たな経済的資源を南北関係に求め、北朝鮮との融和を維持しながら経済交流促進に努めなければならないのが現実である。それを踏まえた手堅い人事と評価できる。
世襲制の強い日本と異なり、科挙で人材を登用した伝統のある韓国では、学者が政権の要職に抜擢されるのはごく普通のことだ。
その典型的な人物が韓氏で、延世大学政治外交学科を卒業した後、ソウル大、英ヨーク大大学院で修士・博士課程を終え、ヨーク大、ケンブリッジ大、ソウル大で経済学を教える。その間、ベネズエラ招請財政諮問官、世界銀行財政諮問官、ヨルダン政府財政顧問官などを務め、ハーバード大や東京大でも講義を行った。
ソウル大教授を最後に政界に転身し、1988年の第13代国会議員総選挙に民主正義党候補として当選、その後、盧泰愚政権で商工相、金泳三政権で駐米大使や大統領秘書室長、副首相兼財政経済院長官、金大中政権で列国議会同盟(IPU)韓国理事会議長、外交通商部長官、国連総会議長を歴任した。
一時大学に復帰するが、2000年の第16代総選挙で民国党議員として当選、盧武鉉政権下で2014年平昌冬季五輪招致委員長を務め、昨年5月から国連気候変動特使に任命され、潘基文(パン・ギムン) 国連事務総長とも懇意の間柄だ。
「政治的な考慮なく、仕事中心に首相を人選する」と公言していた李次期大統領らしい、気配りの利いた人事と言える。
李氏とは特別の縁故や人脈はなく、論功行賞や学閥、地縁を排した。李氏の母校・高麗大とライバルの延世大出身で、出身地も政界では少数派の江原道は、絶妙なバランスと評されている。
だが、そこは政治の世界、自ずと思惑が働く。
与野党に顔が広い韓氏の起用は、少数与党を率いることになるため、多数派の現与党にも受けの良い人物を選ばざるを得なかった事情も見え隠れする。
また、4月の総選挙に向けてのハンナラ党の「大和合」=挙党体制づくりのために、大統領予備選以来のライバルである朴槿恵(パク・クネ)・元ハンナラ党代表との関係改善も欠かせない。当初は朴元代表の首相起用説が有力であった。その代わりに浮上したのが、朴元代表の遠縁に当たる韓氏の抜擢で、朴元代表も好意的な反応を示したと伝えられる。
とは言え、次期首相には、1936年生まれの高齢、政権交代のたびに与野党を渡り歩いて要職を占めたことなど、やっかみ混じりの批判も出ている。
とりわけ、国会の人事聴聞委員会で問題になりそうなのが、全斗煥を常任委員長として1980年に設置された国家保衛非常対策委員会に加わった点で、新軍部の政権奪取に加担したと批判されるのは避けられまい。
李次期大統領の今回の首相人事は、やはり少数与党として出発した盧武鉉大統領との共通点が多い。
盧大統領も血縁、地縁を排し、保守系と見られていた高建氏を首相に抜擢した。民主化運動で投獄された体験を経て体制側のビジネスマンに転進した李氏は、体制側の判事から民主化運動派の人権弁護士に転じた盧大統領と方向は反対だが、合理主義と現実主義的なスタンスは通じるものがある。
ともに貧困家庭から苦学して身を立てた苦労人であり、日本で言われているほど哲学や政治姿勢に差があるわけではない。
政治スタンスのキーワードも同じ「和合」だが、李会昌元総裁ら旧ハンナラ党右派と袂を分かった穏健保守だけに、無用な対立を避けようと常に中庸に舵を取ろうとするだろう。
北朝鮮に対しても同様と読める。
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