河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

盧武鉉政権→・・・朴槿恵政権

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

 昨日の時点で、李明博新政権の閣僚15人の顔ぶれが事実上決まった。
 太陽政策の「廃棄」「全面見直し」を声高に主張して売り込んだ“強硬派”は外され、金大中、盧武鉉政権で外交を担った人物が首相、外交通商部長官に起用されるなど、手堅い布陣となった。統一部も存続の方向だ。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2008/02/16/0501000000AKR20080216000100001.HTML

 しかし、日本のメディアには、期待半分(以上?)の先走った見方を流すのが少なくない。
 例えば、昨晩7時のNHKニュースだ。外交通商相に柳明桓(ユミョンファン)駐日大使が内定したと伝えたのだが、「イ・ミョンバク次期大統領としては、北朝鮮の核問題の解決などに向けて、日米韓3か国の連携を強化するねらいがあるものとみられます」には、思わず食事中の箸を止めてしまった。
 さらに、「北朝鮮への融和政策を主導してきた統一省を、外交通商省に統合することなどを盛り込んだ省庁再編案をめぐって与野党の調整が続いており」には、取材不足、あるいは、安倍前政権の放送命令による締め付けがまだ利いているのかと、小首をかしげてしまった。
 http://www3.nhk.or.jp/news/2008/02/16/d20080215000164.html

 「日米韓3か国の連携強化」というキャッチコピーは、安倍前政権時から日本のメディアがよく使ってきたが、ブッシュ政権の対北路線が転換したのに、いまさら「連携」もあるまい。6か国協議で孤立している日本が、他国に足並みを揃えれば済む話である。
 あるいは、とうに破綻したネオコン流の強硬路線回帰で日米韓が連携を強化することを主張しているとしたら(そんなことはないと思うが)、公平・客観性を旨とする公共放送としての資質が疑われよう。

 柳大使は北米局長、駐米公使などを経て05年10月から第1次官、07年3月から駐日大使を務めている。
 第1次官当時、独島(日本名竹島)周辺海域での日本海上保安庁の海洋調査をめぐって両国が対立した際、交渉を手際よくまとめたことから、日本側には、歴史認識でギクシャクした日韓関係改善に寄与するとの期待がある。

 そこまではよいのだが、太陽政策の変更役まで期待するのは、贔屓の引き倒しというものである。
 柳大使は第1次官として岐路にあった6か国協議をまとめ、米朝対話をバックアップする上でも少なからず寄与した。いわば現政権の対北朝鮮包容政策の推進役でもあった。
 根っからの職業外交官であるから李明博新大統領の新政策実現のために働くのは当然だが、やはり金大中政権で外交通商部長官として太陽政策に関わった韓昇洙(ハン・スンス)新首相内定者とともに、一貫性のある現実的な対北政策を担うと見るのが妥当だ。

 李次期大統領がいわゆる強硬派と一線を画していることは明らかで、ハンナラ党を飛び出して大統領選に出馬、落選後に強硬派を糾合して自由先進党を創った李会昌(イ・フェチャン)総裁から、「北朝鮮側の顔色をうかがってばかりいる」と批判を浴びている。
 顔色をうかがっているわけはなかろうが、慎重に実用主義外交のスタンスを測っているのは事実である。

 李次期大統領はさる1日に東亜日報、朝日新聞、ウォールストリート・ジャーナル3紙との共同インタビューで、昨年10月の南北首脳会談で合意した対北経済協力事業について「政治家がサインしたからと実行しなければならないものでもなない」と再検討の考えを示し、核問題の進展を見ながら、妥当性、経済性、財政的な負担能力と価値などを検討し、国民的合意を得ながら進めると述べた。
 それ自体は至極当然なことで、内容を吟味し、優先順位を付けることで効率性が高まるメリットもある。

 北朝鮮が新政権に対して一切非難せず、異例の沈黙を守っているのも、警戒感の反面で、期待感があるからに他ならない。
 15日に開かれた金正日総書記生誕66周年慶祝中央報告大会で金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が演説し、「米保守勢力は6か国協議の裏でわが国を狙って軍事力の近代化を進めている。こうした二重基準的な態度を注視し、敵対的な行動には強硬に対応していく」と語調を強めたが、韓国に対しては南北首脳会談合意の履行を強調したものの、李次期政権には全く触れなかった。
 http://www.uriminzokkiri.com/Newspaper/kcna/2008/2008-02-16-K0-07.htm

 李次期大統領が実用主義外交を掲げる限り、金大中、盧武鉉政権が苦労して敷いた太陽政策の軌道に限りなく近づくことになろう。
 大統領職引継委員会は当初、それを「失われた10年」などとシンボリックに批判し、統一部を目の仇にして廃止する政府組織改編案をぶち上げたが、以前書いた通りに、「国会で妥協を引き出そうとの戦術」レベルの話でしかなかった。国会で多数を占める現与党の統合民主党(仮称)と、ハンナラ党、大統領職引継委員会による交渉の過程で、統一部の存続があっさりと決まった。
 スリムな政府を目標とする新政権は海洋水産部や女性家族部の廃止に焦点を絞り、10日後に迫った新政府発足までに何とか政府組織改編案を採択したいところだが、今日この時点でも与党側の了解を得られず、閣僚名簿の発表さえ出来ない状況である。
 4月の国会議員総選挙まで残すところ50日ほどだが、仮にそこでハンナラ党が勝利し、多数派となっても新国会召集は6月である。新政権としては出だしで躓くリスクを避けるために、現与党側に歩み寄るしかなかろう。
 http://news.kbs.co.kr/article/politics/200802/20080216/1510477.html

 そうした政局レベルの話を脇に置いた、現実的な政策レベルの次元で見ても、太陽政策の大幅修正は極めて困難である。
 金大中、盧武鉉政権は、ブッシュ政権の対北路線を強硬から対話へと、事実上の太陽政策へと誘導し、朝鮮半島と東アジアの平和構造構築に置ける韓国のイニシアチブを発揮した。李次期政権がそれを捨てることは、大きな外交的損失となる。
 そればかりか、目玉の474公約も北朝鮮との融和あって可能なことであり、緊張がぶり返せば外資は逃げ出し、国内産業も新規投資を手控えるのは必定である。
 李次期大統領はそうしたことを視点に入れ、手堅い布陣をしているとも解釈できる。
 
 新たな柱に据えようとしている資源外交を展望しても、鉄、亜鉛、石炭、各種意レアメタルは遠いアフリカや南米まで行かなくとも、目と鼻の先の38度線の向こうに無尽蔵に眠っている。
 青瓦台に入り、責任ある政権の座に就けば、そうした現実と新たな可能性が段々と見えてくるものである。
 それを踏まえた実用主義的手腕に期待したい。

 さて、日本だが、変わるべきは韓国ではなく、自身であることを忘れてはならない。

開く トラックバック(1)

 李明博(イ・ミョンバク)次期大統領は28日、注目される次期政権の首相に「グローバル・マインドとビジネス・マインドを身に付け、経済再生と資源外交に最適」として、韓昇洙(ハン・スンス)・国連気候変動特使(71)を指名した。
 実務能力と実用主義に基づく登用だが、学者出身の次期首相は、盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)3政権で要職を歴任しており、特に、金大中政権で外交通商相として太陽政策の推進役を担った経歴が注目される。

 首相をはじめとする閣僚人事は次期政権の対北朝鮮政策を測る尺度となるが、金大中ー盧武鉉政権の10年の太陽政策の成果を、微調整しながら基本的には継承発展させるものとなりそうである。
 李次期大統領の747公約を実現するためにも、新たな経済的資源を南北関係に求め、北朝鮮との融和を維持しながら経済交流促進に努めなければならないのが現実である。それを踏まえた手堅い人事と評価できる。

 世襲制の強い日本と異なり、科挙で人材を登用した伝統のある韓国では、学者が政権の要職に抜擢されるのはごく普通のことだ。
 その典型的な人物が韓氏で、延世大学政治外交学科を卒業した後、ソウル大、英ヨーク大大学院で修士・博士課程を終え、ヨーク大、ケンブリッジ大、ソウル大で経済学を教える。その間、ベネズエラ招請財政諮問官、世界銀行財政諮問官、ヨルダン政府財政顧問官などを務め、ハーバード大や東京大でも講義を行った。
 ソウル大教授を最後に政界に転身し、1988年の第13代国会議員総選挙に民主正義党候補として当選、その後、盧泰愚政権で商工相、金泳三政権で駐米大使や大統領秘書室長、副首相兼財政経済院長官、金大中政権で列国議会同盟(IPU)韓国理事会議長、外交通商部長官、国連総会議長を歴任した。
 一時大学に復帰するが、2000年の第16代総選挙で民国党議員として当選、盧武鉉政権下で2014年平昌冬季五輪招致委員長を務め、昨年5月から国連気候変動特使に任命され、潘基文(パン・ギムン) 国連事務総長とも懇意の間柄だ。
   
 「政治的な考慮なく、仕事中心に首相を人選する」と公言していた李次期大統領らしい、気配りの利いた人事と言える。
 李氏とは特別の縁故や人脈はなく、論功行賞や学閥、地縁を排した。李氏の母校・高麗大とライバルの延世大出身で、出身地も政界では少数派の江原道は、絶妙なバランスと評されている。

 だが、そこは政治の世界、自ずと思惑が働く。
 与野党に顔が広い韓氏の起用は、少数与党を率いることになるため、多数派の現与党にも受けの良い人物を選ばざるを得なかった事情も見え隠れする。
 また、4月の総選挙に向けてのハンナラ党の「大和合」=挙党体制づくりのために、大統領予備選以来のライバルである朴槿恵(パク・クネ)・元ハンナラ党代表との関係改善も欠かせない。当初は朴元代表の首相起用説が有力であった。その代わりに浮上したのが、朴元代表の遠縁に当たる韓氏の抜擢で、朴元代表も好意的な反応を示したと伝えられる。

 とは言え、次期首相には、1936年生まれの高齢、政権交代のたびに与野党を渡り歩いて要職を占めたことなど、やっかみ混じりの批判も出ている。
 とりわけ、国会の人事聴聞委員会で問題になりそうなのが、全斗煥を常任委員長として1980年に設置された国家保衛非常対策委員会に加わった点で、新軍部の政権奪取に加担したと批判されるのは避けられまい。

 李次期大統領の今回の首相人事は、やはり少数与党として出発した盧武鉉大統領との共通点が多い。
 盧大統領も血縁、地縁を排し、保守系と見られていた高建氏を首相に抜擢した。民主化運動で投獄された体験を経て体制側のビジネスマンに転進した李氏は、体制側の判事から民主化運動派の人権弁護士に転じた盧大統領と方向は反対だが、合理主義と現実主義的なスタンスは通じるものがある。
 ともに貧困家庭から苦学して身を立てた苦労人であり、日本で言われているほど哲学や政治姿勢に差があるわけではない。

 政治スタンスのキーワードも同じ「和合」だが、李会昌元総裁ら旧ハンナラ党右派と袂を分かった穏健保守だけに、無用な対立を避けようと常に中庸に舵を取ろうとするだろう。
 北朝鮮に対しても同様と読める。

 日本のマスコミは、韓国の政権引継委員会が統一部の外交通商部への統合案を発表したことを受けて、「李明博次期政権は太陽政策見直し」と報じたが、李明博当選者は昨日(17日)の外国人記者との会見で、それを明確に否定し、「政権が変わっても南北間の和解と平和を維持するための努力をさらに傾ける」と明らかにした。

 李明博当選者の発言は、記者の質問に答える形で、大統領選の公約である「非核・開放3000」構想を再確認したと言える。
 統一部が外交通商部に統合される問題に関しては「統一も念頭に置いて、政府組織を改編する」と述べて、一部の誤解を解くとともに、経済協力事業を一層拡大する意向も示した。
 その上で、「北が核を放棄することが北政権にも住民にも助けになることを、忍耐強く説得する」とし、北が核を放棄するように説得と協力を継続するとの姿勢を強調した。また、北が核を放棄したら大規模支援に乗り出すとも語った。
 人権問題などについて「言うことを言う」と述べたことについては、 「正直に対話をする必要性を述べた」と補足した。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2008/01/17/0504000000AKR20080117173700043.HTML

 政権引継委員会も同日、「簡単に分かる新政府組織」との資料を配布し、「李明博政府は政権交代にもかかわらず、現政府の対北政策の基本的枠組みと方向性は維持する方針だ」と明らかにし、「ただ、北の核問題前進などに総合的な状況を考慮して南北経済協力を推進する」と微調整があることを示唆した。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2008/01/17/0504000000AKR20080117203000043.HTML

 前々日、政権引継委員会が統一部の統合方針を発表すると、盧武鉉大統領が「対北政策の継続性が失われる」と懸念を表明し、ハンナラ党を除く各党が反対を表明、国民の中からも非難の声が高まった。
 それを受けて李明博当選者が選挙公約を再確認し、沈静化を図ったと見られる。

 太陽政策は国民の中に定着しており、それを前提に「非核・開放3000」公約を掲げた李明博当選者としてはいまさら変えるのは難しい。
 現実論としても、北朝鮮との関係が緊張すれば資本は海外逃避し、最大公約の「747」は完全に絵に描いた餅になる。
 対北政策を韓米同盟強化や日本との関係強化に合わせて速度調整すべきとの意見もハンナラ党内部にあるが、国益よりも外国との関係を優先させるとか、韓国がせっかく発揮してきた外交的イニシアチブを損なうとの批判を浴びている。

 当初から事情通の間では、統一部の統合案については別の狙いがあるとの見方があった。
 政権引継委員会は18部4処18庁10委員会の13部2処17庁5委員会への縮小案を発表したが、本当の狙いは情報通信部、女性家族部などで、統一部はカードではないかいうものだ。
 と言うのも、新与党のハンナラ党は少数与党だ。政権発足までに組織改編法案を国会で採択するために旧与党系の反対を見越して統一部の統合案をぶち上げ、最終的には妥協を引き出そうとの戦術である。

 外交通商部との業務調整やスリム化は必要だが、統一部がこれまで蓄積した情報やノウハウは他では得がたい。
 新政権は効率的な活用を図っていくことになろう。
 
 拉致問題を利用して「北朝鮮の脅威」を煽り続け、なんとか悲願の憲法改正、軍拡路線につなげたい日本の対北朝鮮強硬派としては、李明博新政権を北朝鮮から引き離し、制裁圧力路線に巻き込みたいとの思惑が渦巻いているが、取らぬ狸の皮算用に終わろう。
 ブッシュ政権もいまさら対北強硬路線に再転換することはできないし、その力も時間もない。
 福田政権がいつ対話路線に踏み出すか、課題はやはりそのことに尽きる。

 李明博次期政権の対北朝鮮政策の輪郭が明らかになってきた。新政権の母胎となる大統領職引継委員会は4日、李明博当選者の選挙公約である「非核・開放3000」構想を支えるために、400億ドル規模の国際協力基金の設立を目指すことを決めた。
 引継委報道官によると、外交通商部から政権引継ぎのために業務報告を受けた後、11日までに基金設立の具体的な方法と実効策を報告するよう求めた。

 引継委はまた、韓日米の協力関係を強化するために3か国外相会合の定例化を目指す。
 さらに、安保と経済協力を組み合わせた「ヘルシンキ・プロセス」を朝鮮半島のモデルとすること、ユーラシア大陸とのエネルギー外交・協力の強化を目指すエネルギーシルクロード構想などを明らかにした。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2008/01/04/0501000000AKR20080104193300001.HTML

 「非核・開放3000」は新政権の対北朝鮮政策の基調となるもので、北朝鮮が核を放棄することを前提に、北朝鮮の1人当たり所得を10年以内に3000ドルに引き上げるために支援というものである。
 独自色を出そうと努め、表現方法や力点に多少の違いはあるが、基本的に現政権の太陽政策を引き継ぐことになる。一方的な支援ではなく、相互主義に基づき北朝鮮の自助的努力を促そうとする経営者的視点はそれなりに評価できる。
 国際協力基金設立構想はまだアイデアの域を出ないが、各国の経済的利害を調整しながら北朝鮮支援を国際的に進めることができるならば、一定の肯定的役割を担う可能性はある。
 
 大統領職引継委員会は公的な機関で、現政権との政策の継続性、安定性を保障するために、各官庁から政策の遂行状況について業務報告を受け、新政府の政策を準備する。
 政権交代が見えてきた日本にとっても参考になろうが、与野党間の本格的な政権交代であるため、一定の緊張が生じることは避けられない。李明博当選者も謙虚に、低姿勢で業務報告を受けるように指示しているが、各官庁に現政権に対する評価や次期大統領の公約の施行計画を報告するよう求める業務報告要領を送りつけるなど、勇み足がみられる。高圧的になり不必要な摩擦を起こす委員もいる。
 閣議でも問題となり、盧武鉉大統領は4日、「引継委の政策推進過程はやや威圧的で、性急に見える。引継委は各官庁から情報を受け、助言を聞く場であって、指示するところではない。しかりつけたり反省文の類を要求するようなことはあってはならない」と批判した。

 李明博大統領当選者の歴史観・哲学は、昨年12月31日発表の「新年の辞」を通してうかがい知ることが出来よう。
 「2008年は韓国先進化元年」と位置づけ、次のように任期5年を展望する。
 
 「建国60周年、絶え間ない挑戦を続け世界史に輝く歴史を創造した。これからは国のすべての部門がさらに成熟した段階に高まる必要がある。古いことは振り落とし、新しいことを創造し、未来と世界に向かって進まなければならない。これまでは他の後を追ったが、これからは自ら新しいものを創らなければならず、その入り口に立っている。2008年を大韓民国先進化の元年とし、世界一流国家作りに乗り出そう。
 先進化は法と秩序を守ることから始めなければならない。国も国民も大統領も例外なく、法と秩序を守ろう。政治も原則を守らなければならず、南北関係でも基本が守られなければならない。便法と情緒法という言葉は我々の辞書から消してしまおう。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2007/12/31/0501000000AKR20071231063400001.HTML

 朴正煕時代との連続性を踏まえた時局観は、共感できる部分が少なくない。
 私は『朴正煕 韓国を強国に変えた男』の文庫版(2004年5月)の後書き「朴正煕時代の総決算に入った韓国」で「韓国は、近代化を課題とした朴正煕時代の総決算とポスト近代へと脱皮する陣痛期に入った。 朴正煕を超えた新たな国家のグランドデザインが求められている」と書いた。
 朴正煕時代の「漢江の奇跡」をCEO型経営者として支えた李明博氏が「先進化」というグランドデザインを掲げて今後5年間を率いるのは、ある種の宿命かもしれない。
 今回の大統領選については「死せる朴正煕が、生ける金大中に勝った」(趙甲済・月刊朝鮮編集委員、「正論」07/12/26)との見方もありうるが、私は両者の統合の過程に入ったと考えている。

 世界最貧国というゼロから出発した朴正煕は、「我が五千年の歴史は退廃と粗雑と沈滞の歴史であった。自らを弱者とみなし、他を強大視する卑怯で事大的な思想、この宿弊を克服せずに発展は期待できない」と過激な言葉を吐いて有無を言わせぬリーダーシップを発揮したが、金大中時代を経て「先進化」の入り口に立った韓国に、もう怒りと憎悪を掻き立てる扇動的な檄は不要だ。
 代わって求められるのは、合理主義の精神に訴えるマニフェストである。大統領選で有権者が与党候補の理念・道徳性よりも李明博候補の生活・経済を選択したのは偶然ではない。

 李当選者は、新政権が発足する新年の理想を「時和年豊」と表した。
 李朝500年の記録「朝鮮王朝実録」中宗45巻にある「朝廷に過ちが無く民衆に恨みが無ければ、時和年豊となり、災害が自ずとなくなる」から採ったもので、「国が太平で、毎年豊年となる」という意である。
 左右に偏ることなく、中庸の政治で社会の統合を図るということだろう。

 とは言え、政治は結果で評価され、結果を出さねば国民は満足しない。
 747公約(年平均成長率7%、10年後の1人当り所得4万ドル、世界7大強国の仲間入り)の実現は簡単ではない。
 モルガン・スタンレーの報告書は「大運河建設と不動産規制緩和で景気が息を吹き返す」として、「公約が執行された場合、2012年ごろ韓国の1人当たりの国民所得は現在の日本に近づくだろう」と予測した。韓国の1人当たりの国民所得は2万ドル超(世界34位)で、日本の3万4252ドル(06年=世界18位)より落ちるが、これまでの成長速度からいずれ追いつくのは可能だ。だが、公共投資主導の景気刺激策は投機的な不動産バブルを引き起こし、日本のような構造的不況に陥る恐れがある。
 大統領職引継委員会の国家競争力強化特別委員会の司空壱(サ・ゴンイル)共同委員長は7%の経済成長率達成について、親企業的な環境を整え、投資が増し、効率性が上がれば可能だとし、法人税引き下げ、税額控除拡大、出資総額制限制度廃止、金融と産業の分離規制緩和、首都圏開発規制緩和、韓米自由貿易協定(FTA)批准などを挙げるが、財界に偏り、労働環境悪化と格差拡大を助長しかねない。
 
 第二の「漢江の奇跡」を起こそうとする年平均成長率7%は、現政権5年間の平均年率4%〜5%に対抗する選挙コピーの側面があった。
 現政権5年間の平均成長率は以前に比べれば低く、ハンナラ党はそれをもって「失われた10年」と選挙で攻撃したが、冷静に考えれば、先進国クラブのOECDの平均以上で、日本の3倍近い。発展途上国の中国、インドならともかく、韓国のように高度化された経済構造では十分に健闘した部類である。
 
 しかし、中国、ロシア、さらに欧州につながる物流上の位置、鉄鉱やレアメタルなどの地下資源、低廉な労働力など北朝鮮の経済的潜在能力を取り込むことが出来れば、7%成長は決して不可能ではない。
 反対に、北朝鮮との緊張が高まると、軍事上の負担が増え、資本逃避という事態になり、マイナス効果が大きい。

 韓国の安全保障上、経済上の国益を考えれば、自ずと選択肢は定まってくる。
 李当選者も、盧武鉉大統領との会談や政権引継ぎ作業の過程で政策説明や情報提供を受けてそのことを理解し、現政権の政策の批判的継承という現実的判断に落ち着いてきている。

 海外が注目する対北朝鮮政策についても、相互主義で実利を追求することはあっても、金大中=盧武鉉政権が積み上げてきた包容政策を破棄するといった冒険的政策は採れないだろう。
 保守右派が“太陽政策の元凶”と解体を主張していた統一部の存続が決まったことが、それを端的に物語っている。

 東亜日報は28日、引継委員会が09年に金正日総書記が韓国を訪問する形式での第3回南北首脳会談を開催する構想を検討していると伝えた。
 首脳会談で北朝鮮の核廃棄意思を確認し、廃棄への手順を話し合うとしていうもので、漠然として今後検討すべき課題は多いが、第一回、第二回会談を継承しようとの姿勢は伝わってくる。

 日本の一部メディアに、李新政権誕生を機に「日米韓連携を強化して北朝鮮を追い詰める」といった主張が見受けられるが、認識不足というしかない。
 今後とも変わるべきは、制裁に偏った日本の姿勢である。

開く トラックバック(1)


.
河信基
河信基
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事