河信基の深読み

タブーを排し、批判精神を高めましょう(商用無断転載厳禁)

朴正煕

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 『韓国を強国に変えた男 朴正煕』が韓国で望外の反響を起こしていることに、著者として率直に喜んでいるが、中には誤解している向きもあるようなので、二言三言付け加えたい。
 
 「河信基はこのまま行ったら第2の趙甲済になる」と憂慮する声があるが、杞憂である。
 朴正煕が韓国近代化の礎を築いたとの評価は政敵であった金大中元大統領も認めた客観的な認識に関するもので、その点について私と趙甲済氏の朴評価が一致するのは当然のことである。
 しかし、私と趙氏のスタンスは右と左ほど異なる。
 
 私のスタンスは、文庫版(2004年5月)の後書きに書いた「朴正煕時代の総決算に入った韓国」に尽きる。
 すなわち「韓国は近代化を課題とした朴正煕の時代の総決算とポスト近代へと脱皮する陣痛期に入った。・・・極端な競争社会の米国よりも、欧州のような社会民主主義政党と保守党の二大政党制に向かうのが、社会連帯意識の強い国情に合っていると思われる」というのが私の問題意識である。
 
 その意味で、ソウルの友人からの国際電話で「朴槿恵(パク・クネ)氏があなたの著書『朴正煕』を読んで、『父のことを良く書いてくれた』と感激している」と伝えられたことに我が意を得たと思ったわけである。
 何らかの商売っ気で言っているわけではない。

趙甲済氏との面識はないが、氏は月刊『朝鮮』編集長(当時)に私の文庫本の後書きを韓国語に全訳して自身のブログ(http://kr.blog.yahoo.com/stonekey59/994363.html)で紹介し、「読むに値する」と評価していた。
 私もエコノミスト誌の要請で趙甲済氏の著書『朴正熙、最後の一日―韓国の歴史を変えた銃声』を評価する書評を書いたが、視覚差も明確にしておいた。
 朴正熙研究家として相互批判は当然の交流であるが、スタンスは異なる。
 特に日本人拉致問題では私と氏の視点はほとんど対立的である。最近、前掲ブログが削除されたのはそのためと思われる。
 
 北朝鮮観も異なる。
 私は金正日総書記の先軍政治は朴の開発独裁をモデルにしていると考えている。
 金総書記が現代グループを通して朴正煕の愛飲したマッコリを韓国から特別に取り寄せ、朴正煕の経済開発戦略に関する資料を入手していることは知られている。拙書『朴正熙』を読んで教訓を得ている節もうかがえる。
 
 それは偶然ではなかろう。
 解放後の一時期、南朝鮮労働党(共産党)員であった朴正煕は、開発独裁のヒントを金日成のプロレタリア独裁から得ていたからである。
 
 北朝鮮は今後、開発独裁で経済開発に努め、経済開発=近代化を終えた韓国はポスト近代へと進む。
 それが南北朝鮮の現住所である。
 現象的な問題で一喜一憂する近視眼的ではなく、中長期的な戦略的スパンでとらえる必要があろう。 

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 一昨日、ソウルの友人から国際電話が掛かってきた。
 「朴槿恵(パク・クネ)氏があなたの著書『朴正煕』を読んで、『父のことを良く書いてくれた』と感激している。韓国語訳本が準備中だ」というものである。
 
 著書を誉められて気分が悪かろうはずがない。
 「訪韓し、朴槿恵氏と会うのはどうか」との言葉に、快く応じた。
 
 『韓国を強国に変えた男 朴正煕』初版は1996年に出版され、翌年に韓国で教科書専門の世経社から翻訳出版された。その訳を担ったのが電話の主のカン檀国大元学長である。
 04年に文庫本となり、ソウルの大手書店・教保(キョボ)文庫の光化門店日本書籍コーナーに今も平積みされ、ロングセラーとなっている。
 朴槿恵氏が読んだのが初版か文庫本か定かでないが、父親の元側近ら複数の筋から勧められたようだ。
 
 朴槿恵氏は次期大統領候補に関する世論調査で常にダントツのトップを占めている有力政治家であるだけに、『朴正煕』を愛読し、新たに韓国訳本を出そうとしている意義は小さくない。
 同書は朴正煕と金日成をタブーを排して比較した唯一の本であり、今後の南北関係を考える上で示唆を与えるものだからである。
 
 朴正煕の娘がいかなる感性や情緒の持ち主なのか作家としての関心もあるが、今後の韓国政治、南北関係を考察するためにも良い機会になると、その日を楽しみにしている。

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 小沢・民主党幹事長に対する東京地検特捜部の暴走的な捜査が問題となったのは記憶に新しいが、韓国でも特定の供述に頼った思惑捜査が世論の批判を浴びつつある。
 どの国でも政権交代期には付き物の現象だが、李明博大統領への中間評価とされる6月の地方統一選挙を控え、与党には逆風が吹き始めた。
 
 前に、元後援者の運送会社社長が「人事の口利きの見返りに5万ドルを総理官邸で渡した」と検察で供述したのが発端となり、盧武鉉前政権で韓国初の女性首相となった韓明淑(ハン・ミョンスク)盧武鉉財団理事長が収賄容疑で起訴され、判決が9日に出ると書いたが、大方の予想通り、ソウル中央地裁は「供述は二転三転し、信憑性に欠ける」として無罪を宣告した。
 
 検察側は即時控訴を決めたが、「前政権への報復的な政治的な捜査」「野党弾圧」との見方が有権者の間に急速に広がっている。
 曖昧な供述に頼り、物証もなく野党の有力政治家を在宅起訴した検察の失態は覆うべくもない。
 検察は敗訴を見越したかのように、判決前日に「9億ウオンの新たな収賄容疑」で元首相に出頭を求めたが、ウルトラ保守の李会昌(イ・フェチャン)自由先進党総裁・元首相からも「前例のない政治捜査」と批判を浴びる始末だ。
 日本でも足利事件や毒ぶどう酒事件などで自白に頼りすぎた捜査が問題になっているが、韓国の検察もいまだに朴正煕軍事政権時代の自白依存体質が払拭されていない。
 
 5月には「検察の過度の捜査で自殺に追い込まれた」と国民から糾弾され、与党の支持率急落と検事総長辞任にまで発展した盧前大統領の一周忌を迎える。
 今回の検察の失態が当時の国民の怒りを再燃させるのではないかと政府与党は警戒し、反対に野党は攻勢を強める。
 李大統領の支持率は今年5%以上の成長率が予想される好調な経済により上向いたが、哨戒艇沈没事件の不手際で40%前後に落ち込み、さらに急下降すると見られる。
 
 韓元首相は統一地方選の目玉であるソウル市長選に出馬する予定であり、大差をつけられていた与党の呉セフン現市長との差は急速に縮まり、接戦が予想されている。
 勢い付く野党候補がソウル市長選を制すれば、2012年の大統領選挙に大きな影響を与えることは必至である。
 
 なお、韓元首相は朴正煕軍事政権下で民主化運動を闘った女性運動家としても知られ、長く獄中につながれた夫と交換した手紙は単行本『愛はおそれない 韓国・獄中からのラブレター』となって最近、日本でも出版された。

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 ソウル中央地裁民事合議14部は今日、李明博大統領の発言を虚偽報道したとして1千800人余の国民訴訟団が読売新聞相手に起こした損害賠償・訂正報道請求訴訟で「読売の報道は事実と異なる」と判示した。
 
 問題となったのは、李大統領が08年7月に北海道洞爺湖町で行なわれた首脳会談で、福田首相が「新中学校学習指導要領の社会科解説書に竹島を明記する」と述べた際、「今は困る。待ってほしい」と要請したと報じた同月14日付の読売記事だが、判決文は「日本の外務省も広報官声明で報道内容のような会話を交わしたことがないと公式の立場を明らかにした」ことなどを挙げて、誤報と断じた。
 他方で、原告の請求に対しては「報道により具体的に侵害された法的利益がない」として棄却した。
 
 今年は韓国併合100年に当たるが、当初、韓国政府は「静かな外交」で迎えようとしていた。
 ところが、最近の日本の小学校教科書の社会・歴史に「竹島は日本領土」との記述が新たに増えたことから、各メディアが「日本の文科省教科書検定課主導で事実上の国定教科書が作られ、歴史が捏造された」と報じ、世論が次第に硬化している。
 「東アジア共同体構想」を掲げた鳩山政権に対しても当初は友好ムードを歓迎していたが、「背後で別のことをしている」と警戒感が高まっている。
 
 こうした中、判決が注目されたが、読売誤報が判示されたことで、李大統領はとりあえず危機は免れた。
 しかし、教科書問題などで与野党から弱腰批判が噴出しており、5月に予定されている鳩山首相の訪韓を控え対応に苦慮している。

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 韓国民は今、李明博大統領の政治生命を左右しかねない裁判に哨戒艇沈没事件に劣らぬ関心を向けている。
 それがソウル中央地裁民事合議14部が7日に出す独島(ドット)関連判決である。
 
 発端は、読売新聞が08年7月15日に報じた日韓首脳会談関連の記事中で「福田首相が『教科書に竹島と書くしかない』と言うと、李大統領が『今は難しい。待ってくれ』と応じた」と伝えたことである。
 この李大統領の発言が「日本に独島問題で譲歩した」と批判されると、大統領府は発言自体を否定した。
 それを受けて1886人の国民訴訟団が昨年8月、読売新聞を相手に「虚偽報道で韓国人のプライドを傷つけた」として損害賠償請求訴訟を提起した。
 
 読売側は「事実確認した」と譲らず、ソウル中央地裁で弁論が重ねられ、7日に判決が出る。
 読売が敗訴すれば信用失墜し、勝訴すれば、李大統領に対する「売国奴」批判が一挙に高まり、重大な政治的な危機に直面するというのがソウルの大方の見方である。
 
 李大統領にとって気が休まらないのは、「最近、日本の文部科学省検定課主導の事実上の教科書国家検定で『竹島は日本の領土、韓国が不法占拠』と記した小学校の社会科教科書が承認された」と韓国各メディアが大きく報じ、一部メディアが「李大統領の軟弱発言が原因となった」と批判していることである。
 判決を誰よりも固唾を呑んで見守っているのは、哨戒艇沈没事件での対応の不手際から支持率が40%前後まで下落した李大統領ではないかとの声も聞かれる。
 
 読売が勝訴し、李大統領の発言が事実と認定されたら、第2のロウソク集会が再現し、大統領弾劾の動きも出てくる可能性もある。
 6月には李大統領への事実上の中間評価となる統一地方選挙が予定されている。ネット上では「もし、盧武鉉大統領だったら何と答えただろうか?」と、歴史認識問題で日本に厳しかった前大統領と比べながら李大統領を批判する声が次第に高まっており、選挙に影響することは必至だ。
 読売の紙爆弾は、李政権を吹き飛ばしかねない様相を帯びてきた。
 
 『韓国を強国に変えた男 朴正煕』文庫版の「朴正煕時代の総決算」とのあとがき(04年)で「東アジアは日本一強という一時的な時代を終え、新秩序に向かう」と書いた。
 鍵となる日韓関係が波乱含みでは、新秩序は先行き不確実になるだけである。

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