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山口県光市の母子殺害事件の被告弁護団に対して5月に大阪のテレビ番組で視聴者に懲戒請求を呼びかけ、物議をかもしている橋下徹弁護士が、今度は自らのブログで、2ちゃんねる上に「殺害予告」があったとして刑事告訴したことを明らかにした。
「2ちゃんねらーの方、大変残念ですが」との書き出しではじまるブログは、殺害予告について「100%イタズラであることが判明しました」としながらも、「内容や僕の立場,また家族のこともありますので、やむをえず刑事告訴しました」と、事務所や警察と協議したうえで告訴に踏み切ったと明かしている。
その上で「一般市民の言論に対しては,法律の専門家として、できる限りアクションは起こしたくなかったのですが、上記の事情をご理解下さい 」と結んでいる。
ネットでの「殺害予告」など、犯罪の温床になっている殺人サイト、自殺サイトなどの闇サイト同様に言語道断だ。単なる落書きの類であっても、ネット上に現れると影響を受ける愚か者がいるのが昨今の世情だ。
橋本弁護士が家族を心配して刑事告訴したのは当然で、発信人を特定し、責任を問うべきであろう。いかなることにも最低限のモラル、マナーがある。
同じ観点から、テレビ番組などで活躍している橋本弁護士がタレント活動の中で行った“懲戒請求呼びかけ”も、みだりに他人を威嚇する軽率な行為であったそしりは免れない。現に弁護士連合会に懲戒請求件数が殺到し、弁護活動に大きな支障をきたしている。
「殺害予告」も、それにサイケリックに反応した変質者の行為、との見方も出来る。
私は「橋下徹弁護士が呼びかけた懲戒請求は、言論テロではないのか」と批判し、“正義派弁護士”を演じているタレント活動と弁護活動を混同していないかと指摘した。著名人と匿名の一個人の違いはあるが、“懲戒請求呼びかけ”と「殺害予告」にある種の共通性があることは否定できない。
世間に向けた扇情的な放言である。「100%イタズラ」であるとしても、社会に否定的な影響を与える可能性があり、無視できない。
「言論の自由」を主張する橋下氏が「一般市民の言論に対しては、法律の専門家として出来る限りアクションは起こしたくなかった」としながら、いたずらと分かっていることを告訴したのは、ジレンマに陥ったからであろう。
弁護士である以上、自己の言動に責任を負うべきで、「事務所や警察と協議した結果」などと弁解じみたことを言うのは見苦しい。
プロレスと見紛うボクシング中継など、最近のメディアには、視聴率を取れば世間の注目を集めれば何でも許される、といった軽佻浮薄性が目に付く。
ニュースや時事番組がショー化し、過激発言、無責任発言、品を欠いたヤクザまがいの言動がもてはやされ、客観的事実と個人の意見がごっちゃ混ぜになり、視聴者に誤解と偏見を植え付けている。そうした発言が検証されることもなく、言ったもの勝、井戸端会議のレベルだ。
インターネットで視聴している韓国のテレビやラジオと比べても、異常、との感が免れない。
新聞、テレビなど各メディアに対する人々の信頼が落ちているのは、偶然ではあるまい。
その間隙を突くように、権力によるメディアへの監視・統制が進んでいる。NHKへの放送命令、『僕はパパを殺すことに決めた』著者への強制捜査など、すべてが一本の黒い糸で結ばれているように思える。
日本のメディアは危機的な状況にある。その自覚に欠けることが最大の危機ではないか。
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