河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

金正恩政権の深層分析

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索
朝鮮中央テレビが4日午後3時、特別重大放送で「大陸間弾道ミサイル『火星14』の発射に成功した」との国防科学院の声明を伝えた。「発射角度を上げるロフテッド軌道で打ち上げられ、最高高度2802キロに達し、39分、933キロを飛行し、目標水域に正確に着弾」と移動発射台に搭載されたミサイルが発射される映像と共に報じた。
「核兵器と共に世界のどの地域も打撃できる最強のICBMを保有する核強国として、米国による核戦争の脅威を根源的に終わらせ、朝鮮半島と地域の平和、安定を守る」と同科学院は強調したが、金正恩委員長の思惑が端的に表現されている。

何よりも金正恩の狙いを正確に見抜くことが重要となるが、日韓米には少なからず混乱が見られ、脅威のレベルを上げて揺さぶる金正恩を喜ばせている。
トランプ大統領は実験直後に「あの男はほかにやることがないのか」と呟いたが、「米独立記念日への贈り物」と金正恩はほくそ笑んでいる。

今回の発射についてミサイル戦略軍の創設記念日に合わせて実施し、主権国家の判断と北朝鮮は強弁するが、無論、実情は異なる。
特別重大放送によると金委員長が3日に発射実験を指示し、翌日午前9時に本人立ち会いで発射したとされるが、この一連の行動に、私がこれまで何度か指摘した金正恩独特のパターンが読み取れる。
すなわち、ストックホルム国際平和研究所が3日に「北朝鮮は10〜20発の核弾頭を保有。実戦配備はしていない」と発表、日米韓メデイアが大きく報じたが、スマホを愛用する自意識過剰な北朝鮮の若い指導者が飛び付くように反応したのである。

金正恩は実験成功に科学者たちと抱き合い、ガッツポーズまで決めて喜びを爆発させた。ストックホルム国際平和研究所が発表した核弾頭のイメージと結び付け、米国を牽制する手段を手に入れたと考えたのである。
だが、肝心なことを忘れている。核弾頭の実戦配備に大きく近づいた事は事実であるが、ICBMに搭載する小型化は依然として完成していない。そのため、「標準化、規格化された核弾頭の構造と動作特性を確認した」前回2016年9月の実験に続く6回目の核実験を強行する可能性がある。

それこそレッドゾーンを越えた事になり、米国の軍事行動を招く事になろう。
つまり、金正恩は自ら米軍による攻撃を受けるリスクを高めていることになる。

トランプ大統領が先の習近平主席との会談で軍事オプションの猶予期限とした「100日間」の期限は正確には今月16日となる。
米国としては中国が石油禁輸に踏み切れば金正恩政権は瓦解する、あるいはその前に音をあげて核廃棄に舵を切ると期待しているが、実際は思うように進んでいない。

習近平が躊躇うのは、一つは、北朝鮮崩壊で難民流入など朝中国境が不安定化する事である。秋の共産党大会を控え、そうした不測事態は避けねばならない。
もう一つ、THAAD問題がある。トランプの要求に従うことで米国の軍事的プレゼンスが朝鮮半島や周辺地域に強まる事を恐れているのである。

しかし、トランプは金正恩が米国本土への核攻撃能力を有することを座視する事は軍事戦略上の常識からもあり得ない。
日韓への北朝鮮の反撃リスクを負ってまで米国が軍事行動に出る可能性は小さいとの見方が日本のマスコミでは支配的であるが、どうであろうか?
金正恩もそれを見透かし、日韓への攻撃をちらつかせてトランプを牽制するが、それもつまるところ程度の問題である。
軍事的野心に憑かれた金正恩との対話など全くの幻想である。現実的には、核保有した金正恩と戦うか、その前に多少の犠牲覚悟で除去するかの選択となる。

純軍事的には米国と北朝鮮の軍事力は天地ほどの違いがあり、例えば、バンカーバスターに戦術核を搭載して金正恩のピョンヤン地下司令部と核・ミサイル施設、ソウルを狙う長距離砲部隊を狙えば、一瞬にして事は終わる。しかし、それは北朝鮮市民にも一定の犠牲を伴うもので、さすがにトランプも躊躇わざるを得ない。その意味で金正恩は北朝鮮国民を人間の盾にしているのである。

先の大戦中、劣勢に立たされたドイツのヒットラー、日本の東條英機は米ソに先立つ原爆開発に血眼になった。韓米との休戦協定を一方的に破棄し、国民生活を犠牲にして核開発を急ぐ金正恩の心境がそれに近い。
それを止めるために、核廃棄しなければ生きていけないことを痛感させ、対話の場に呼び出すか。それが出来なければ、軍事オプションはやむを得ない。
血で血を洗う中東情勢が証明しているように、無償の平和など幻想である。大禍を予防する小禍はあり得る。核保有した金正恩との対話など、地域の核開発競争に火を点ける愚策であると知らねばならない。
北朝鮮が14日に国連安保理が禁じている弾道ミサイル実験を強行した。例のごとく早朝5時27分というのは、昼間寝て深夜に活動する金正恩委員長の欲求に合わせたのであろう。
その狙いについて日韓で様々な憶測が飛び交うが、ことさら合理的な理由付けをしなくとも、金正恩の意固地な性格と結び付けて考えた方が理解しやすい。

金正恩が最後の期待を繋ぐ文在寅韓国新大統領を試しているのである。
太陽政策を引きずる文大統領は10日の就任演説で「必要なら直ちにワシントンに行く。北京、東京にも行き、条件が整えばピョンヤンにも行く」と述べていた。選挙戦中には「真っ先にピョンヤンに行く」と述べて有権者にアピールしており、軸足が定まっていない。
金委員長はその点を揺さぶったのである。実験後、朝鮮中央通信など北朝鮮メデイアは金委員長が現地で今後も核・経済建設を同時に進める並進路線を堅持すると述べたと伝えた。国内向けのアピールであると同時に、南北対話再開に意欲を示す文大統領に対話の前提は並進路線の是認、と注文を付けたのである。東亜日報社説が「金正恩は文政権を甘くみている」と書いたのは、その限りで当たっている。

文大統領は16日、初外遊としてワシントンを訪問すると発表し、韓米同盟を基本とする姿勢を明らかにしたが、金委員長に揺さぶられた観は否めない。
THAAD配備問題では米国との間に依然として隙間風が吹いており、朴槿恵大頭領の弾劾というハプニングで誕生し、「蝋燭デモ大頭領」と北朝鮮に見透かされている準備不足は隠せない。新政権内に開城工団早期再開を主張する親北派を抱え、足腰が定まるには一定の時間がかかるだろう。

しかし、内外情勢を読めない金正恩の悲しさで、揺さぶれば自分になびくと計算してミサイルを発射したものの、逆に文大統領を対北強硬路線に傾かせてしまっている。
17日、文大統領は韓国と北朝鮮が軍事衝突する可能性が高まっていると警告し、軍にいかなる事態にも対応できるようにと最高司令官として命令を発した。さらに「南北対話は北が核廃棄の姿勢を明確にしてから」と事実上、朴槿恵前政権と同じスタンスに立った。
北朝鮮がここまで国際社会から孤立すると、韓国の選択肢も自ずと限定されてくるのである。

国連安保理は現地時間の16日午後に「制裁を含むさらなる重大な措置を取る」との報道声明を全会一致で発表し、中国も含めた緊急会合で具体的な協議に入った。
ヘイリー米国連大使は「我々が求めているのは、北朝鮮の指導者が信じ込んでいる体制転覆や暗殺などではなく、朝鮮半島の平和である」と述べ、「北朝鮮との対話の意思はあるが、実現するのは北朝鮮が核・ミサイル開発を完全にやめたのを見てからだ」と釘をさした。

金正恩委員長に生き残る最後の機会を与えたこの発言の裏に、ギリギリまで北朝鮮との対話の努力を続けたと国際社会に示し、最後の手段となる軍事行使を正当化するトランプ大統領の意図が透けて見える。
すなわち、中ロ、さらに韓国に誕生した新政権とギリギリの調整をするということである。

14日のミサイル、火星12号発射について金正恩は米国に達するICBMの完成に近付いたと成果を誇示し、並進路線継続を強調するが、それが逆に米国による軍事攻撃を招く危険性を高めている重大な錯覚であることがまだ分かっていない。
トランプ政権及び米軍部は、北朝鮮が米本土を核攻撃する能力を保持する前に実力で排除することで一致している。この点の理解が肝心であり、日本の一部に北朝鮮の核ミサイルが米国を攻撃出来るかのように誇張する論調があるが、為にする誇大妄想である。

現在、日本海にはカール・ビンソンが展開し、新たにロナルド・レーガンが加わり空母2隻の打撃群が同時展開、原子力潜水艦も潜伏する臨戦態勢を取っている。
金正恩が核実験を強行するようなことになれば、斬首作戦も含めた攻撃を受けることはほぼ間違いない。トランプはロシアゲートで苦境に追い込まれ、支持率も低下しているが、それを一挙に挽回する秘策がブッシュ政権のアフガン、イラク攻撃に倣った北朝鮮攻撃であると読める。

最期に、北朝鮮攻撃が始まれば在日、特に北朝鮮系は厳しい立場に置かれるが、在日も故国の状況に一喜一憂することなく、主体性を持って活躍する時期に来ている。三代世襲という正当性のない金正恩政権に運命を託すなどあってはならない。北朝鮮が非核化→改革開放に向かえば、在日が活躍する空間が開かれるはずである。
私は6月に『日本改革の今昔 首相を目指した在日・新井将敬』(彩流社)を出版するが、元秘書二人が絡んだ石原慎太郎の豊洲の闇や安倍一強体制の盲点の分析と共に、蓮舫民主党代表を含めた広い意味の在日論を展開した。広く一読願いたい(アマゾン、楽天などで予約可能)。
軍事力行使を選択肢に入れたトランプ大統領の対北朝鮮外交攻勢が頂点に達しつつある。中国と北朝鮮との対立が表面化しているのがその証左である。
朝鮮中央通信は3日、「中国は無謀な妄動がもたらす重大な結果について熟慮すべきだ」と中国を初めて名指しで批判した。中国共産党機関紙人民日報と系列の環球時報が北朝鮮の核開発を危険な挑発行動と批判していることに「不当な口実で朝中関係を根から壊そうとしていることに怒りを禁じ得ない」と強烈に反発した。
これが労働党の公式論評なら国交断絶となるところであるが、無署名の個人の論評とし、さりげなく交渉の余地を残している。

これに対して翌4日、環球時報が反論し、「非理性的な考えの北朝鮮との口げんかに付き合う必要はない」としながら、「北朝鮮にレッドラインが何処にあるか分からせる必要がある。新たな核実験をすれば、中国は前例のない厳しい措置を取る。中朝関係の主導権は中国が握っている」と強く警告した。
これについて日本の政府、マスコミは状況を図りかねて右往左往しているが、水面下で朝中が熾烈な外交交渉を行っていると理解するのが妥当であろう。

それを窺わせるのが、香港の親中国誌・争鳴5月号が「中朝間で昨年8月から水面下の交渉が行われ、最後の説得中」と伝えた。
それによると、中国側は3ヶ月以内に北朝鮮が核を廃棄すれば、体制保証と経済支援を行うと提案した。これに対して北朝鮮側は、今後10年に亘って中米韓日ロが毎年60億ドル、総額600億ドルの無償経済援助、米国との平和協定締結、国連の制裁解除、朝中、朝ロ首脳が署名した協定による金正恩政権安全確約を条件とし、その上で3年かけて段階的に核廃棄すると逆提案した。
つまり、どこで折り合うかで火花を散らしており、業を煮やした北朝鮮が公開で中国に不満を表明したと読める。

北朝鮮が提示したとされる先援助、後3年内の段階的核廃棄案はクリントン、ブッシュ政権時代に試されたものであり、過去の対北朝鮮政策は失敗であったと断じるトランプ大統領が受容する可能性はゼロに近い。
先の米中首脳会談で軍事行動も辞さないとするトランプ大統領に協力を約した習近平主席としても、受け入れられない。先核廃棄が絶対条件となる。

冒頭の朝鮮中央通信個人論評は「我々の忍耐の限界を試すな」と一見、勇ましい。その実、金正恩委員長の苛立ちを物語るが、有効な手立てがあるわけではないことは承知していよう。
迫り来るカールビンソンを牽制するため対艦ミサイル発射実験を2度試みたが、いずれも失敗した。4月25日の人民軍創建記念日に数百門の長距離砲実射訓練を試みたが、北朝鮮国民に米国を恐れていないと虚勢を張る以上の意味はない。核実験を強行すれば攻撃されると内心、脅えている。豊渓里の実験場要員たちにこれ見よがしにバレーボールに興じさせるのも、金正恩一流の条件闘争とみられる。

金正恩は進めず引けずの窮地に陥っているが、自国の核ミサイル戦力を勘違いしたつけが回ってきたのである。
核保有の並進路線を公然化した当時、北朝鮮メデイアは「ワシントンを火の海にする」と大言壮語し、あたかも米国を直撃する核ミサイルを保有しているかのごとき論陣を張っていた。「核を保有することによって米国の核の脅威から脱することが出来た」とのレトリックが労働新聞に踊っていたが、金正恩はそれを鵜呑みにしてしまったのである。
北朝鮮軍首脳は無論、政治的なレトリックであることを承知していたが、鵜呑みにし、思い込んだ金正恩は彼らと衝突し、諫言を聞かずに粛清し、暴走した。

金正日時代までは核開発はあくまでも外交交渉のカードであったが、外交不在の金正恩は不用意に軍事問題にしてしまった。
核の小型化、ミサイルへの搭載という実戦段階以前の不完全なものを全面に押し出したのであるが、独特の現実主義者であるトランプにより、完成前に叩き潰すと逆手を取られてしまったと言えよう。

旧ドイツ軍や日本軍は核開発で劣勢を挽回する一縷の希望を掛けたが、現在の金正恩政権が置かれた状況はそれに似ている。
軍事的に北朝鮮が勝利する確率はゼロである。北朝鮮国民に多大の犠牲を強いる前に、北京での水面下の交渉に応じるのが得策である。それは旧同盟国の中国の最後の心遣いと心得るべきである。
4月29日にカールビンソンを中心とする米空母打撃群が対馬海峡から日本海(東海)に入り、午後6時から韓国海軍のイージス艦世王大王などが参加して韓米合同演習を行った。
同日早朝5時半に北朝鮮西部の平安南道の北倉から弾道ミサイル1発が発射され、数分後に空中爆発し、北朝鮮内陸部に墜落した。韓国国防部は対艦ミサイルと推定している。
金正恩委員長は米空母打撃群到着前に対艦ミサイルを誇示し、北朝鮮への接近を阻もうと意図したと読めるが、無様に失敗した。しかも、ミサイル実験は4連続の実験失敗であり、焦慮感に憑かれ、前後の見境がなくなっている金正恩を象徴している。

空母打撃群は早くとも韓国大統領選投開票の5月9日までは日本海(東海)に留まると見られているが、さらに長引く可能性がある。5月1日に横須賀から自衛艦いずもが出港し、米軍補給艦の警戒任務にあたると報じられたが、空母打撃群への補給任務にあたるとみられている。
トランプ大統領はツイッターで北朝鮮核問題に決着をつける意向を繰り返し呟いており、軍事行使を重要な選択肢に入れている事は明らかである。
軍事力で圧倒的に劣性な金正恩は旧日本軍やイスラム過激派が用いた非対称戦術で対抗するしかないが、それも自ずと限界がある。

金正恩はいよいよ斬首作戦のターゲットになって生きるか死ぬかの土壇場に追い詰められているが、こうした事態は私が4年前から予測していた事である。
すなわち、金正恩が核開発と経済建設を同時に進める並進路線を宣言した直後から、核開発を公言するのは自殺行為であると繰り返し警鐘を鳴らしてきた。
権力維持の為の実績作りしか頭にない金正恩は軍事・外交的な無知故に致命的な戦略的勘違いを冒してしまったのである。

テイラーソン国務長官は28日、国連安保理事会閣僚級会合で演説し、「今、行動を起こさなければ、壊滅的な結果を招きかねない」と力を込めた。壊滅的な結果、とは北朝鮮が核ミサイルを保有してしまうことである。その場合、北朝鮮への軍事行動は核戦争を覚悟しなければならず、相当な犠牲を覚悟しなければならない。
テイラーソンが言わんとした事は、北朝鮮が核ミサイルを保有する前に軍事力を行使してでも核・ミサイル開発を阻止するということである。ブッシュ政権がイラク攻撃をした時とレトリックが似ているが、決定的な違いは、イラクには核物質がなかったが、北朝鮮は核爆弾を現に保有し、「ワシントンを藻屑にする」と公言している事である。

そうした事前予防の見地から、トランプ大統領が北朝鮮への先制攻撃を重大な選択肢に入れた事は100%間違いない。

さる26日、トランプ大統領はホワイトハウスに米下院議員全員を招き、機密指定をかけて対北朝鮮政策を説明した。その直後にテイラーソン国務長官やマテイス国防長官が声明を発表し、北朝鮮に核開発を許した過去の対北朝鮮政策を失敗と断定し、外交的努力を尽くすとしながら、「米国と同盟国の防衛のため」に軍事的選択肢も同時に追求するとした。同日、ハリス太平洋軍司令官が米下院軍事委員会公聴会で「米国は先制攻撃という選択肢がある」と述べた。「B52の護衛を日本から韓国に引き継いだ」とも述べ、カールビンソンら打撃群の展開が米日韓合同で行われている事を強調した。
トランプが対北朝鮮軍事行動を念頭に入れ、米議会に事前の了解を求めたと読める。

米大統領に交戦権はなく、議会だけが宣戦布告権を有すると米憲法は定める。
しかし、最高司令官として緊急期待での軍事出動を命令することは出来る。アフガン、イラク戦争以来、米政権は宣戦布告なき軍事行動が常態化している。
トランプがその方式で対北朝鮮軍事行動に踏み切ろうとしている文脈が見えてこよう。

トランプが気にしているのは中国、ロシアの動向である。
金正恩が恐る恐る弾道ミサイルを発射した直後にツイッターで「不成功だったとはいえ、中国と、尊敬されるべき国家主席の要請を踏みにじった」と発信している。米国が軍事行動に踏み切っても中国はもはや反対しまいと言外にメッセージを(習主席)発したと分析できる。

脅える金正恩

北朝鮮はペンス米副大統領が訪韓する直前の16日早朝6時20分、東海岸の新浦から弾道ミサイルを発射したが、直後に空中爆発した。
この無様な顛末に、金正恩委員長の追い詰められた心理状況が端的に読み取れる。言うまでもなく、ミサイル発射はトランプ政権の動きに極端に神経を尖らせる金正恩委員長の直接の指示によるものであり、彼の計算や心情がそのまま込められている。

トランプ大統領は習近平主席との会談でも北朝鮮への軍事オプションを明言し、カールビンソンを中心とする打撃艦隊を急遽、朝鮮方面へと再派遣した。
ミサイル発射はカールビンソンが朝鮮近海に到着する前に撃たれた事に最大の意味がある。表向きは米国の軍事的圧力に負けないとの意思表示のつもりであるが、実は、このタイミングならまだ攻撃を受けるリスクは少ないとの計算を働かせている。

全く同様の計算が一連の行事参加にも見て取れる。
11日の最高人民会議、13日のピョンヤン一角のマンション竣工式、金日成生誕記念日である15日の軍事パレード等に金正恩は姿を見せた。韓米の斬首作戦を極度に恐れながら公の場所に連日現れたのは、人質がいたからである。
人質とは他でもない特別に招いた海外記者団である。日本のマスコミでもピョンヤン特派員が連日のように現地情報を伝えるが、彼らがいる限り米国は攻撃に踏み切れないだろうと、臆病で計算高い若い指導者はそれなりに計算し、心理戦を仕掛けているのである。

しかし、事態は姑息な計算が通じる段階を越えている。
ペンス副大統領は17日午前、軍事境界線の板門店を訪れた後、黄教安首相と会談した。共同記者会見で「トランプ大統領の決意やこの地域の米軍の力を試すような事はしない方がいい」と金委員長に警告した。シリア空軍基地へのトマホーク攻撃やアフガンでの大規模爆風爆弾攻撃を挙げ、「いかなる攻撃にも圧倒的、効果的に対処する。戦略的忍耐の時代は終わった」と軍事行使も辞さないと強調した。
韓国外交部報道官も16日、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル実験に対して「耐え難い懲罰的な措置が必ずある」と警告する論評を発表しており、韓米間では現在進行中の合同軍事演習に沿った軍事オプションが既定の選択肢になっている事を伺わせる。

これに対して15日の軍事パレードで演説した崔龍海副委員長は「核攻撃には核攻撃で対抗」と勇ましい演説をしているが、北朝鮮国民の士気高揚的な意味はあっても、軍事的にはコケ脅し以上の意味はない。日本のメデイアでも誤解しているのがまだ見られるが、北朝鮮の核爆弾は小型化、核弾頭化の途上であり、また、ミサイルの未発達もあって、実戦化にはほど遠い。
トランプ政権は実戦化を防ぐために必要ならば軍事力で全ての核・ミサイル施設を破壊する意思を明確にしており、この点で北朝鮮には対抗手段がない。

金正恩委員長が脅える最大の理由もそこにある。
北朝鮮はソウルを射程距離に入れた長距離砲300〜500門を軍事境界線に沿って展開し、ソウル市民を人質にしているが、それすらも大規模爆風爆弾や戦術核搭載のバンクバスターで先制攻撃されれば一瞬にして無力化されよう。
誤解している向きが多いが、北朝鮮軍は金日成時代の一枚岩ではなくなっている。軍部首脳の粛清や最近の金正男暗殺で内部は分裂しており、例えば斬首作戦で金正恩指導部が消え去る事態になれば、動きは止まろう。

現在の状況は1968年1月のプエブロ号事件状況時に似て非なるものがある。
当時、元山沖の領海を侵犯したとして米海軍情報艦のプエブロ号が拿捕された。米国はエンタープライズ等を派遣して圧力を加えたが、同年12月に非を認め、謝罪せざるを得なかった。
ベトナム戦争悪化で第2戦線を開く余裕がなく、特に北朝鮮と軍事条約を結んでいるソ連、中国の自動参戦を恐れたからである。
しかし、カールビンソンら打撃艦隊が元山沖に展開した場合、もはや北朝鮮にそれに対抗する力はなく、有事に頼りとすべき中国の支援も期待できない。
5月中旬まで北朝鮮近海に展開するカールビンソンの姿を見た北朝鮮国民の中で動揺が拡散し、無為無策の金正恩政権への不信と怒りが噴出する可能性もある。

金正恩の最大の誤りは、「核を保持すれば政権は安泰。廃棄すればかつてのリビア、今のシリアのように攻撃される」との迷信に惑わされ、とうに破綻した並進路線に固執していることにある。
繰り返し言うが、核を廃棄し改革開放に舵を切るしか金正恩が生き残る道はない。
但し、永久に政権が保証されるわけではない。北朝鮮国民が主体的に決めることである。

.
河信基
河信基
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事