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日本人拉致問題について「全員生存、全員生還」が安倍政権の最優先課題とされ、10年間、何の進展もなく徒労となったが、その元凶が平成のデマゴーグと呼ぶべき西岡力「救う会」会長である。 蓮池薫ら5人が帰国し、拉致問題が解決へと大きく動き出した最中、安明進・元北朝鮮工作員と組んで「北朝鮮のどこどこで横田めぐみさんを見た」といった捏造以外の何物でもない生存情報を連日マスコミに垂れ流し、「全員生存、全員生還」の虚構世論を作り上げた張本人、それが西岡をはじめとするデマゴーグたちであった。 安明進はその後、麻薬密売で韓国で逮捕され、西岡らにデタラメ情報を高く売ったと明かした。 しかるに、その「証言」を得意気に紹介した「北朝鮮に詳しい某たち」は知らんふりを決め込み、某テレビ局キャスターのAは懲りもせず今だにゲスなポピュリズムを煽っている。 その西岡の正体がようやく裁判で露になった。 西岡は従軍慰安婦問題を追跡した元朝日新聞記者から捏造で名誉を傷付けたとして損害賠償訴訟を起こされているが、被告人尋問で週刊誌のコメントや自身の著作で事実と異なる捏造を行った事を認めた。 従軍慰安婦であったと名乗り出て、裁判で賠償を求めた金学順について「女性は親に身売りされて慰安婦になったと訴状に書き、韓国紙の取材にもそう答えている。捏造記事と言っても過言ではない」と週刊文春(2014年2月6日号)とコメントしたことを尋ねられ、「記憶間違いだった」と力なく答えている。 それのみでなく、著書にも韓国紙ハンギョレの記事を引用したとして、「私(金学順)は40円で売られてキーセンの修業を何年かして日本軍隊に行った」と書いた。その真偽を問われると、「間違いです」と小声で捏造を認めた(写真。佐藤和雄・週刊金曜日9月4日)。 西岡のこうした言辞が櫻井よしこらによって喧伝され、「従軍慰安婦ではなく、売春婦」といった風説を広めたが、それが嘘であったことが明らかになったのである。 恥を忍んで訴え出た被害者を貶める非人間的、非人道的な行為である。世論を惑わす平成の悪しきデマゴーグと言っても過言ではない。 西岡の性癖とも言える嘘八百は慰安婦問題に止まらない。「常識外の偏った考え方」と社長自ら事実上の廃刊処分にした新潮45などで長く反北朝鮮反韓国の論陣を張り、無知な読者を欺いてきたのは知る人ぞ知ることである。 西岡に乗ったのが小泉内閣の官房副長官に抜擢された安倍晋三である。 転機が「横田めぐみの遺骨」問題であった。高熱で焼かれ科学警察研究所がDNA鑑定は不可能としたが、吉井・帝京大学講師が特殊な試薬で二人のDNAを採取し、「横田めぐみの遺骨ではないかもしれない」とした。英科学誌ネイチャーが「非科学的」と疑問を投げ掛けたが、細田官房長官(現細田派座長)が「他人のもの」と断定し、この瞬間から拉致問題は人道問題から政治問題となった。 なお、その後、吉井は警察庁傘下の科学捜査研究所に医科長として引き抜かれ、今日まで一切マスコミとの接触を断たれている。露骨な口封じである。 そこで西岡らが韓国から引っ張ってきたのが安明進であり、連日マスコミに登場し、偽の生存情報を流し、「全員生存」とマスコミ世論が形成されていく。 さらにそれに便乗したのが無名であった安倍官房副長官で、「全員生存、全員生還」を声高に叫んで注目を浴び、首相にまで駆け上がる。 当初から解決不可能な課題を安倍政権は掲げたのであり、今日まで10年以上も「早期解決」を横田夫妻らに約束しながら成すこともなく引っ張ってきた。 安倍政権は拉致問題が解決できない責任を北朝鮮側に押し付け、対決姿勢を誇示してきたが、世論を欺く巧妙な詐術である。嘘と公文書偽造で国政を私物化していると国民大半から疑われているモリカケ問題と瓜二つの構図である。 例えば、北朝鮮と再調査で合意したスコットホルム合意であるが、安倍政権は北朝鮮は約束を守らないと世論を誘導してきたが、全くの嘘である。北朝鮮側は再調査を終え、日本側に渡している。だが、「全員死亡」とあったので日本側が受け取りを拒否し、今日に至っている。 無垢の日本人を拉致した金正日政権の罪は思いが、国際法的には小泉首相との会談で合意文書まで交わして決着して、蓮池薫ら五人が戻された。 「横田めぐみ遺骨」を偽物と断定してから安倍政権は北朝鮮側の嘘を非難してきたが、どちらが嘘をついてきたのか、今や明々白々である。 拉致被害者家族と世論を欺いた西岡の責任は重大である。その巧妙で意図的な嘘は、売名と出世主義が主たる動機であろうが、拉致で反北朝鮮、従軍慰安婦問題などで反韓国、という特異な姿勢に私はかねてから興味を抱いていた。その訳はどうやら韓国留学時代にある。 日本では戦後も在日朝鮮人への差別が酷かったが、実は、韓国に於ける日本人差別はそれをはるかに凌ぐものがある。韓国の日本人妻が日本語を喋れなくなっているのを知って私は愕然とし、日本人であることを徹底的に隠して生きてきた状況を把握した。無性に虚しく、悲しくなった記憶がある。 そうした中で学んだ西岡が半島への怒りと憎悪を募らせたであろうことは容易に想像できる。似たケースをいくつも見てきたからである。 隣国同士がそうした関係にあることは不幸なことである。 それを清算する突破口の一つが、嘘に阻まれた拉致問題の解決であることは間違いない。 |
日本人拉致問題
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安倍首相が昨年、日本国民の大多数が違憲と反対した集団的自衛権行使容認の閣議決定を正当化する為に、北朝鮮有事における韓国在留の「邦人救出の必要性」をマンガパネルでしきりに説明していたのは記憶に新しい。
今年に入って戦争法案と日本各界から非難轟々の安保法制案を強行採決したのも、その延長線上にある。 安倍首相は自ら指示して作らせたマンガパネルにある狙いを秘めたのであるが、それが最近、中谷防衛相の韓民求韓国国防長官との会談で露になり、物議を醸している。韓長官が北朝鮮有事で自衛隊が北朝鮮に出動するには事前に韓国の承認を得なければならないと注文を付けたことに、「北朝鮮地域は韓国が実効支配していない」として拒絶したのがそれである。 元自衛隊員の中谷氏は口下手で、戦争法案を巡る国会審議でも失言、妄言でしばしば議事を紛糾させたが、それなりに正直である。韓国マスコミは例のごとく中谷発言の真意がどうのこうのと口角泡を飛ばしているが、中谷氏は安倍首相の秘めた狙いを代弁したに過ぎない。 「北朝鮮の拉致被害者を自衛隊が救出する」と聞けば、危険な妄想と誰でも思うであろうが、実は、安倍周辺でかなり以前からまことしやかに言われてきたのである。拉致問題に託つければ何を言っても日本国民の支持を受けるといった思い上がった意識が、ブルーリボンバッジをこれ見よがしに付けている政治家には顕著に認められる。 人道問題であった拉致問題が安保問題に変質してしまっているのだが、その言い出しっぺは荒木和博・特定失踪者問題代表である。日本中で年間数万と言われる失踪者の中から在日朝鮮人・韓国人と友人、商売相手等の関係がある人物を探し出し、大町ルート云々ととそれらしく結び付け、「拉致の可能性を排除できない」として800人をリストアップしている。朝鮮人狩まがいの排外感情を煽る一種のレイシズムであるが、横田夫妻らへの同情論に便乗して一部で支持を受けている。 看過できないのは、荒木氏が予備自衛官でもあることから、自衛隊員の中に浸透している事である。航空自衛隊トップの田母神空幕僚長までが現役時代から信者となり、南海の離島で模擬訓練までしていたくらいであるから、荒唐無稽と笑い飛ばせる話ではない。昨今、八方塞がりの西岡「救う会」会長らも声をあわせている。 拉致被害者生存説や特定失踪者云々は安明進元北朝鮮工作員が連日のように日本のマスコミに登場して日本社会に広まったが、国家情報院のエージェントであった安自身が後に「西岡氏らと一緒になって騙した」と明かした時点で破綻したと言える。 安倍首相もまともに生存説を信じている訳ではあるまい。 北朝鮮拉致問題はあくまでも安保法制案採択の為のダミーであり、本筋は尖閣や歴史認識で対立する中国である。中谷発言も「中国傾斜」とかねてから不満の朴槿恵政権を揺さぶる事に狙いがあると読める。 安倍首相としては「全員生存、全員帰国」を掲げ、いつか解決すると家族会や日本国民の期待を繋ぎ止め、安保問題に最大限利用する、というわけである。パラドクシカルに言えば、安倍政権である限り拉致問題は解決しない。 他方の金正恩委員長は朝日国交回復は亡父の遺訓であり、早く拉致問題に決着を付けたい。日本の経済協力を得たいとの思惑もある。 とは言え、「全員生存、全員帰国」という安倍政権の要求に応える事は物理的に不可能である。父の金正日委員長が小泉首相に「5人生存、8人死亡」と正式に伝えた結論はもはや動かしようがない。生きている者を隠す理由もない。 この膠着状態を打開するには、国連などの第3者が公平に仲介するしかない。 そのための第一歩がすでに出来上がっている再調査報告書の早期公開である。 安倍政権が受け取りを拒否している中、有田議員が間に入ることの意義は決して小さくない。 |
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横田めぐみら日本人拉致被害者に対する北朝鮮の再調査報告が遅れていると問題になっているが、真相は別のところにある。
以前も指摘したが、北朝鮮の再調査報告書はとうに出来上がっており、日本政府側が「意に沿うものでない」として、受け取りを拒否しているのが真相である。「あれでは到底、『全員生存、全員帰国』を求める家族会を納得させられない」と日本外務省もお手上げ、というのが実情なのだ。 不明な真相を明らかにするのが再調査の常識であり、前もって条件を付けるのも談合紛いのおかしな話だが、常識が常識でなくなっているジレンマが日本政府にはある。 拉致問題で一躍注目され、「全員生存、全員帰国」を公約にして首相にまで駆け上がった安倍氏は、常日頃から胸にブルーバッジを付けてアピールしているだけに、今さら変えることが出来ない。さる9月の拉致問題集会にも参加し、「解決への信念は揺るがない」と繰り返している。菅官房長官も10月5日の記者会見で、「被害者全員の早期帰国に政府として全力で取り組んでいる」と述べている。 10年以上も流通している空手形のようなものである。 先の内閣改造ではまたまた交代した新任の拉致問題担当相が「早期解決」と新手形を振りだしたが、さすがに家族会から「兼任とは何だ。やる気があるのか」と怒りが噴出した。高齢化した横田夫妻ら家族会メンバーが亡くなるのを待っている、との批判の声まで出ている。 家族会支援団体を自称する「救う会」会長の西岡力氏らが安倍寄りで家族会をなだめ、まとめようとしている。 だが、横田夫妻が住む地方組織の「救う会」神奈川や同徳島が、特定の政治勢力に偏らず人道主義の原点に戻り、拉致問題と共に日本人遺骨収集、日本人妻一時帰国等も進めるべきだと主張し始めた。拉致問題の全容を解明する上でも有益であると思われたが、「全員生存、全員帰国」路線の西岡会長が除名の強権をふるい、紛糾している。 そうした中、有田芳生参院議員が今月27日から訪朝する。拉致被害者再調査の現状を聴取するために宋イルホ朝日国交正常化交渉担当大使らと面会するという。遺骨収集民間団体の顧問をしている有田議員は、遺骨埋葬地への訪問も予定している。 既に出来上がっているであろう北朝鮮の再調査報告書を全面公表する事が出来れば、真相究明への大きな一歩となる。領分を侵される日本外務省は嫌な顔をするであろうが、国政調査権の一環と考えれば何の問題もない。 膠着した現状に焦り、拉致問題にかこつけて北朝鮮への武力干渉を正当化する過激な動きが一部で露骨化しているだけに、有田訪朝は新たな試みとして注目される。 |
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拉致問題の解決を願う集会が10日、都議会議事堂ホールで開かれ、180人の参加者を前に、横田めぐみさんの母早紀江さんが「安倍首相が『解決します』と明言していることを信じている」と訴えた。
安倍首相が国民大多数が反対する安保法制案を強行採決しようとしている最中、安倍首相にエールを送るような拉致被害者の発言に違和感を覚えた人は少なくなかったであろう。 実際、拉致被害者の集会に頻繁に参加する櫻井よしこ氏や田母神元航空自衛隊幕僚長らのように、安保法制案に積極賛成する人には、「自衛隊を北朝鮮に派遣して拉致被害者を救出せよ」と常軌を逸した事を口にする者が少くない。 集会はタイミング的に、支持率急落に悩む安倍首相に塩を送り、安保法案の強行採決を後押しする形になっている。拉致被害者を不純な政治目的に利用するのは、人道的に許されないばかりか、問題解決を一層遠ざけるだけである。 奇しくもこの日、北朝鮮のソン・イルホ朝日国交正常化交渉担当大使が共同通信記者に日本人拉致被害者を含む日本人調査結果について「ほぼ完成した」と明らかにし、報告が遅れているのは調査結果を日本と共有出来ないからとし、公式協議を呼び掛けた。 拉致問題は様々な意味で、佳境に入りつつある。 事件がこじれた時には出発点に立ち戻るのが常道であるが、拉致問題も事実関係を冷静に洗い直す時期に来ている。 日朝間の最大の争点は、金正日国防委員長が2002年9月の小泉首相との会談で「5人生存、8人死亡、4人入国せず」と通告した横田めぐみさんらの生死問題であり、北朝鮮が約束した再調査の焦点もそこにある。 再調査は福田政権時代の2008年8月に北朝鮮と合意したものであり、私も実は双方の橋渡しに若干関わった経緯があり(『証言 「北」ビジネス裏外交』参照)、あえて言うが、再調査さえ合意通りに行えば拉致問題はすんなりと解決するはずである。 ところが、その直後に福田首相が退陣し、事態は必要以上に紛糾し、第二次安倍政権誕生で振り出しに戻ってしまった。 現在、日朝は些細な言葉の定義でもめている。再調査とは文字通り白紙に戻っての調査であり、先入観や予断を排し、客観的に行わねばならない。 通常なら北朝鮮側が再調査の結果を出し、日本側が不足点や問題点を指摘し、さらに調査を深める。 ところが、日本側が再調査報告を受け取ろうとしない。 ソン・イルホ大使が公式協議を呼び掛けたのは、日本側に再調査報告の受け取りを促す意味がある。外務省との水面下の接触では埒が明かないので、メデイアを使ったのである。 何故、日本側は受け取らないのであろうか? これが現下最大の課題であるが、一言で言えば、「8人死亡、4人入国せず」と同じ結果が出たら困ると、再調査に先入観や予断を持ち込んでいるからである。 一部には、北朝鮮はまずいことがあるから被害者を出そうとしない云々とフィクションを連ねて受け取り拒否を正当化し、はては、「全員生存、全員奪還」と救出運動とすり替える傾向もある。 これでは自ら再調査を拒み、問題解決を故意に遅らせていると批判されても、反論する余地があるまい。 文化の衝突、という面もあろう。 韓国にも日本以上に拉致被害者がいるが、真相究明と生存者返還を求めても、「全員生存、全員奪還」と、感情的で非合理的なスローガンを掲げることはない。 戦前の一億玉砕、聖戦スローガンを彷彿させるが、村八分を恐れる強迫観念から一方向に流されやすいムラ意識が根強く残っているのであろう。 報復的な反北朝鮮感情を煽り、安保法案強行採決に利用する政治に利用されるとしたら不幸な事である。 韓国では北朝鮮が死亡と通告した事に憤激はしても、生きていると期待する事はあり得ない。朝鮮戦争の教訓や脱北者の情報などから、北朝鮮への幻想を一切持たないからである。 奇妙なことに、日本では北朝鮮が日本人拉致被害者を今でも生かして何処かで匿っていると思い込んでいる人が少くない。横田夫妻に同情している面もあるが、北朝鮮への幻想がないか、振り返って見る必要があろう。 客観的に観て、北朝鮮最高指導者が首脳会談の場で死亡と通告した拉致被害者を隠す理由は皆無に近い。死亡診断書など書類の不備は行政システムが日本のようにきめ細かく整っていないからである。 北朝鮮は拉致問題を解決し、日本との国交正常化、経済協力を対日外交の最優先順位に置いている。再調査を受け入れたのもそのためで、今さら隠すものは何もない。 安倍首相は「全員生存、全員奪還」を政権の支持率を高める政治スローガンとしており、せっかくの再調査報告を受け取ろうとしない。解決すると言いながら、今後ともあれこれ前提条件をつけてズルズルと引き延ばして行こうとするだろう。 安保法案反対世論のように日本の世論が目覚め、冷静に問題の解決を求める声が高まった時、事態は一気に動き出そう。 第三者を交え、例えば国連の場を借りて再調査報告をするのも一考する価値がある。 |
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拉致被害者らの再調査をめぐり訪朝した日本政府代表団を28日、徐大河・特別調査委員会委員長ら幹部が勢揃いして出迎え、五時間半にわたって会談が行われた。
出迎える様子は海外メデイアに公開され、日本の新聞・テレビは「異例の対応」と声を揃え、期待値を高めるが、パフォーマンス以上の意味はなかろう。 北朝鮮側が「誠意」を示そうとしていることは事実であるが、以前から指摘しているように、内容的にはこれまでと変わらないし、変わりようもない。 拉致問題の解決を真に望むならば、先入観から特別なことを期待し、たとえ事実でもそれに反することを受け入れようとしない情緒こそ、冷静に、客観的に振り返る必要がある。 これ以上、不毛の時間を費消し、悪戯に拉致被害者家族の精神的な苦痛を加重させるのは酷というものである。また、拉致問題で感情化し、歪んだ日本の政治を正常化するためにも不可欠である。 徐大河は例の張成沢粛清の主役を担った国家安全保衛部副部長を務め、国防委員会安全担当参事とされる。徐と共に顔を揃えた副委員長の金明哲は国家安全保衛部参事、朴永植は人民保安部局長、拉致被害者分科会責任者の姜成男は国家安全保衛部局長の任にあり、いずれも公の場に姿を現すのは初めてである。 その意味では画期的であり、北朝鮮側の意欲を示していると言えるが、日本側が期待する「拉致被害者に対する特別な情報を知る立場にある」は全くの買い被りであり、為にするフィクションでしかない。 2002年の金正日国防委員長と小泉純一郎首相との会談をセットし、拉致問題解決の道を開いた柳敬も国家安全保衛部副部長であり、金委員長の最側近として、現在の徐大河以上の権限を有していたのである。 因みに、柳は田中審議官のカウンターパートナーとされる「ミスターX」と呼ばれ、公の場に現れることはなかったが、金委員長死亡直前に粛清されている。理由は定かでないが、金委員長が拉致問題を認め、公式謝罪までしたのに、事態がこじれ、日本の経済協力を引き出すことに失敗した責任を問われたと思われる。 北朝鮮の拉致被害者に対する調査は金委員長の信頼厚かった柳敬時代に基本的に完了しており、小泉首相に正式通告された「五人生存、8人死亡、4人不明」の結果は事実として変えようがない。 可能性があるとしたら、「4人不明」の詳細を明らかにすることである。だが、拉致問題に決着をつけようと国家安全保衛部が総力を挙げて必死に調査したにも関わらず、現在に至るまで結果が出ていないのを見ると、残念ながらこれも絶望的とみなすしかない。 日本外務省の伊原純一アジア大洋州局長は「拉致被害者の調査が最優先」との安倍首相の意向を踏まえ、今日29日の協議でも再度提起するとされるが、9月に中国瀋陽で行われた外務省局長級協議で内示された結果以上のものは期待できないだろう。 隠しているわけではない。徐委員長が属する国家安全保衛部の立場も過度の粛清への労働党側の反発から微妙になっており、何とか結果を出そうと必死であるが、無い袖は振れないのである。 調査していると誠意を示し、他の3つの分科会、すなわち、行方不明者、日本人遺骨問題、残留日本人・日本人配偶者問題で成果を出し、日本側に納得してもらうしかないと腐心している。 ところが、日本の世論は、特別調査委員会を立ち上げたことへの期待と、また騙されるのではとの不安が交錯し、揺れている。 拉致被害者家族会が調査団のピョンヤン派遣に反対したのは、不安の方が強かったからであり、一般世論は概ね家族会に同情的である。 「異例の対応」にマスコミが挙って一喜一憂しているのも、もしや、との期待があるからであるが、実は、このもしやもしやが曲者なのである。 家族会は「12人は生きている」と感情論で訴え、マスコミもかつて被害者の声を無視した贖罪意識から無批判に伝える。 生きているとしたら何故出てこないのかと誰しも不思議に思うところであるが、この疑問は、「重要な秘密を握っているので、北朝鮮は出せない。隠している」との根拠なき暗黙の了解で封殺され、事実上のタブーとなっている。 もはや客観的な認識ではなく、浪花節的な文化の世界である。和を重視して異論を排する日本人的な情緒の問題と言うしかない。 それに反するものは村八分に遭い、マスコミからも排除され、自浄作用は期待薄である。 地域の平和と安定、国益という大局に立って、それを打破するのが政治の役目であるが、安倍政権にそれを期待するのは難しそうである。 迷走は当分、続くだろう。 |


