河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

朝米和解のプロセス

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(上)で指摘したように、やはり史上初の米朝首脳会談は米中の力学に大きく影響され、陰の主役は習近平主席であった。
トランプ大統領が金正恩委員長に米韓合同軍事演習の中止を示唆したと米メデイアが報じ、韓日に大きな衝撃を引き起こしているが、仕掛人が習近平であることが明らかになったのである。

十分に予測されたことであるが、朝日新聞(17日付)が北京外交筋の話として、「米韓演習中止 習氏が提案」と報じた。大連で5月7、8日に電撃的な第二回朝中首脳会談が開かれ、習が金正恩に「行動対行動の原則に基づくなら、先に動くことに利がある」とし、米韓軍事演習の中止を求めるよう勧めたという。金正恩はそれに乗ったわけであるが、ここに北朝鮮、ひいては朝鮮半島を取り巻く国際政治の厳しい現実がある。

金正恩としては力強い後ろ楯を得たことになる。
首脳会談のキャンセルと軍事行使を示唆したトランプの書簡に怯え、恭順の意を表したが、押されっぱなしでは体制保証は覚束ない。そこで中国に再び駆け込んだのであるが、習のバックアップでいくぶん強きが戻ったのが真相であろう。
習としては貿易戦争に突入しつつあるトランプを揺さぶる北朝鮮カードを得たことになる。
長く懸案となっている韓国配備のTHAADの脅威を除去するためにも、米軍の地域のプレゼンスを極力削がねばならないところだ。

米朝首脳会談に対する日本の世論調査は、歓迎するが北朝鮮の非核化は期待できない、が多数派を占める矛盾した反応を見せている。
とりあえず戦争だけは回避し、対話による解決の道が開けたと判断しているのであろう。

共同声明には「トランプ氏は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、金正恩氏は朝鮮半島の完全な非核化に向けた確固とした揺るぎない責務を再確認した」とあるだけで、具体的な方策と時期はそっくり抜けている。
私は派手なショーの生中継を全て観させてもらったが、敵対してきた両者が会って相互理解をある程度深めた以上の意義を見つけることが出来なかった。認識不足や誤解した部分があるやもしれず、米朝関係は依然として不安定である。
共同声明に「相互の信頼醸成」を強調し、「首脳会談の結果を実行するため、ポンペオ国務長官と北朝鮮高官による今後の追加交渉を出来る限り早く開く」とあるように、今後の追加交渉次第で戦争局面にコロリと変わる可能性がある。

今後の展開を占う指標は制裁の継続如何である。
北朝鮮の核戦力は当面、事実上塩漬けとなるが、その間にも制裁が続けば疲弊した北朝鮮経済は遠からず崩壊し、内部は大混乱となろう。
米国が制裁を続け、中国も国連安保理決議に従って制裁を続けるか、あるいは朝中国境に抜け穴を作るか、が注目点だ。
米中の力比べが今後熾烈化していくが、貿易戦争との絡みで予断を許さない。

米朝共同声明が板門店宣言を再確認し、一つのモデルとしているように、韓国の文在寅政権の役割が否応なしに高まろう。ソン・キムら韓国系米国人を多数登用している事実は、トランプ大統領が文在寅大統領の豊富な対北情報に頼らざるを得ない実情を物語る。
韓国の国益を踏まえた主体的、現実的な外交が試される。明日にでも統一が出来るかのように受かれているようでは足をすくわれよう。

安倍首相はトランプ大統領にも邪険にされ、いよいよ自力で日朝対話に道を切り開かねばならないが、拉致問題がネックとなる。
従来のような「全員生存、返還」を対話の前提としているようでは一歩も前に進まない。
金正恩政権は拉致問題は解決済と繰り返し、生存者はいないとの立場である。相手任せにせず、生存者情報を握っているなら明らかにするしかない。それが出来ないようなら、思い込みを捨てて冷静に、まず対話、その過程で真相解明と段階を踏まえるしかない。

(今から一週間の予定で韓国に出発する。)
二転三転した米朝首脳会談がいよいよ明日午前9時(日本時間10時)からシンガポールで開催されるが、激しい前哨戦は既に始まっている。
トランプ大統領はG7など眼中にないかのように共同宣言発表前にカナダを発ち、昨晩8時すぎに現地のパヤレバ空軍基地に着いた。機中から「エキサイテイングな一日になる。金正恩は今までやったことがないような何かをするだろう。この一回限りの会談が無駄にならないと感じている」とツイッターし、北朝鮮核問題を最優先している姿勢を露にした。

他方の金正恩委員長も同日午後2時半、習近平主席が利用する中国国際航空のボーイング747をチャーターし、中国領空を飛行してチャンギ空港に到着した。中国が全面的にバックアップしている証左であり、米朝首脳会談の帰趨の要因がG2として事実上世界新秩序を仕切っている米中関係にあることを改めて見せ付けた。
金正恩の本音は、中国の関与をなるべく強め、トランプからの体制保証の約束を担保する後見人的な役割を果たしてもらいたいということであろう。

完全で検証可能かつ不可逆的な北朝鮮非核化(CVID)を求める米側と、体制保証や経済支援を得ながらの段階的な非核化を主張する北朝鮮側との溝はまだ埋まっていない。
実際、この時点でもソン・キム前駐韓大使と崔善姫北朝鮮外務次官との実務協議が続けられているとみられる。

しかし、今日一日現地で逐次状況報告を受けたトランプ大統領は明確に時間を切った。
先ほど米側が発表したところによると、米朝会談は明日予定通りに9時から通訳だけを交えた単独会談が行われ、ついで拡大会談、昼食会と続く。その後、トランプ大統領は記者会見し、午後8時に米国へと飛び立つ。それまでに北朝鮮側から非核化の具体的な回答を求める作戦と読める。
トランプは今日午後、文在寅大統領、ついで安倍晋三首相に国際電話をかけて協議したが、北朝鮮側が煮え切らない態度を取り続けると会談決裂もありうるとの決意を韓日首脳に伝え、予防線を張ったのであろう。

トランプ大統領は一回の会談で北朝鮮非核化の具体的な成果を得ようとしているが、可能であろうか?
答えはイエスである。

北朝鮮非核化には15年掛かるとか、北朝鮮ペースで進んでいるとか、といった悲観論も飛び交っているが、北朝鮮非核化問題の本質が見えていない。
すなわち、北朝鮮非核化とは核一般ではなく、実戦段階直前の北朝鮮の核戦力を除去することである。具体的には12個以上あると推定される核弾頭と主要な中長距離ミサイルを引き渡せば足りる。

金正恩は昨年11月に「核戦力完成」を宣言したが、実際はミサイルに搭載する核小型化やミサイルの大気圏再突入技術は未完成と見られている。
対話に転換したのも、核の実戦化前に米韓の攻撃を受けることを恐れたからに他ならない。一部に核に自信を持ったから対話路線に転換したと述べるものがいるが、北朝鮮の宣伝に乗せられているに等しい。

従って、実戦化直前の核能力を除去すれば事実上、北朝鮮核問題は軍事的脅威ではなくなる。
その他のプルトニウムや濃縮ウランの回収、実験施設の撤収などの付帯措置は時間を掛けて進めれば済む事である。

北朝鮮側もそれは十分承知しているため、段階的非核化を口実に完成間近の核戦力を何とか隠そうとしているとみられるが、タイムリミットは刻々近付いている。
北朝鮮国内メデイアは今日米朝首脳会談を大々的に伝え、核よりも生活向上を求める国民の声は高まっている。
金正恩としては後戻り出来ないところまで追い詰められている。自身の保身ではなく、北朝鮮国民のために決断できるか、その時がいよいよ来る。
米朝会談を巡る動きが慌ただしくなってきた。24日午前(日本時間同日夜)、ホワイトハウスはトランプ大統領が金正恩委員長に宛てた書簡を公表したが、そこでトランプ大統領は「残念ながらあなたが直近に出した声明では強い憤りと敵意が剥き出しになっていた。会談を開催することは不可能だと考えている」として、6月12日に予定されていたシンガポールでの米朝首脳会談中止を通告した。
その8時間後、北朝鮮の金柱冠第1外務次官が声明を発表し、「予想外であり、極めて遺憾」としながらも、「トランプ大統領は歴代のどの大統領も出来なかった勇断を下した。内心高く評価している」と持ち上げ、トランプ大統領の不興を買った一連の発言は「個人的なもの」と事実上、謝罪した。「委任によって」としており、金正恩委員長の意思を代弁したものである事は二言を要しない。

北朝鮮が反発するとの見方もあったが、私は当初から指摘しているように金正恩には選択の余地がない、折れてくるだろうと予測していた。
トランプも金正恩の軟化を読んでいたと思われる。昨晩10時過ぎ(日本時間)に「北朝鮮から前向きで建設的な回答が来た。北朝鮮がやりたがっている。どうなるかみてみよう」と発表し、ツイッターにも書き込んだ。北朝鮮側が実務協議に応じてきたとも明かし、一転、米朝首脳会談は予定通りに開催される雲行きとなってきた。

トランプが突然、会談中止をぶち挙げたのは中国の動きを警戒したからにほかならない。
文在寅大統領との共同記者会見(22日)で「大連での中朝会談後、北朝鮮の態度が変わった」と不快感を表明し、文に「どう思うか」とふった。異例の対応だが、それだけ中国の動きを警戒している証である。その後の非公開会談で、文からは満足な回答を得られなかったのであろう。

この点が本質的に重要であるが、北朝鮮核問題は今や米中の力学的な関係を基本に動いているのである。(『二人のプリンスと中国共産党』参照)。
トランプが再度米朝首脳会談開催に前向きになったのは、金正恩の謝罪に加え、習近平主席からも北朝鮮非核化で引き続き協力するとのシグナルが送られてきたからと読める。

さて、本題の金正恩をすくませたトランプの一言だが、書簡にある「我々の核能力は大規模かつ強大であり、使わなければならないときが来ないように神に祈る」である。
金正恩が対話に舵を切り、韓国の仲介で米朝首脳会談に応じたのも、米韓合同軍事演習で斬首作戦や核先制攻撃を想定した実践的な演習が繰り返されたことに恐怖感を抱いた事が主因である。
崔善姫外務次官は24日に即事核廃棄を強硬に主張するペンス副大統領を実名を挙げて攻撃し、「会談場で会うのか、核対核の対決場で会うのかは、全て米国の決心に掛かっている」と挑発、トランプを怒らせた。

金正恩の戦略的な大失敗は、無謀にも対米核攻撃を公然と主張し、トランプに対北核攻撃の名分を与えてしまったことにある。
中国、ロシアさえも上回り、北朝鮮とは象と蟻以上の差のある米国の核戦力を敵に回してしまった事は決定的な誤りであった。

金正恩は段階的な核廃棄で見返りを得ようとしているが、調子に乗りすぎ、状況は一段と厳しくなった。
イデオロギーとはもともと遠い金正恩の本音は核廃棄の代償に体制保証、改革開放の為の経済支援を得ることにあると読めるが、足元は外から見るほど磐石ではない。
シンガポールでトランプに大きな譲歩を迫られる事は必定であるが、北朝鮮内部の金日成以来の保守強硬派をまとめきれるか、課題は尽きない。
昨日9日の南北閣僚級会談は2回の首席会談、4回の陪席代表団会談をまじえ延々11時間に及び、3項目の共同報道文を採択した。1平昌オリンピックに北朝鮮は高位級代表団、選手団、応援団を派遣し、費用は韓国が負担する、2南北軍事当局者会談開催、3南北閣僚級会談随時開催が骨子であるが、出だしとしてはまずまずの出来である。
今後、南北首脳会談などより上級の南北対話に発展し、北朝鮮核問題の平和的解決の可能性が出てきたと評価できる。
話し合いの場が出来た以上、韓国側がどれだけ交渉力を発揮し、北朝鮮側を厳しい現実を踏まえた合理的な判断に誘導できるかに掛かっている。

焦点は二言するまでもなく、北朝鮮の核廃棄問題である。オリンピックを真に平和の祭典にするには避けて通れない喫緊の課題である。
趙明均統一部長官は非公開の冒頭発言で北朝鮮が核を廃棄することが半島と地域の平和と安定に不可欠と求めた。李善権祖国平和平和統一委員長はそれをじっと聞いていた。しかし、後半になって、核・ミサイルの戦略武器保有は米国に対する抑止力であり、南北関係とは無関係であると声高に主張した。会談場と直通で繋がっているピョンヤンの指示を受けての発言であった。そうした対応は十分に予想できた事であり、少しも驚くことではない。

金正恩委員長が依然として核に固執していることは衆知のことであり、それが不可能であることを思い知らせることが重要である。
北朝鮮のオリンピック参加の狙いは、核開発の時間稼ぎであり、あわよくば韓国を抱き込んで国際制裁に穴を開けることである。

しかしー前回も指摘したようにこの点が本質的に重要であるが、韓国の助けを借りねば米国の軍事行使を止められないという切迫した窮状が背後にある。
核放棄さえすれば体制保証が得られ、喉から手が出るほど欲しがっている経済支援も得られると理解させることが、パンドラの箱を開ける鍵となる。
今後の南北閣僚級会談にはナンバー2に伸しあがった崔龍海党副委員長・組織指導部長も参加すると予想され、韓国側の交渉力が具体的に問われる。

若干憂慮されるのは、文政権の一部親北派から米韓軍事演習の縮小・中止を求める浮わついた声が聞こえることである。順序を間違えると、結果的に北朝鮮に核開発の時間と資金を与えてしまった金大中、盧武鉉政権の二の舞になってしまう。
北朝鮮は伝統的に力関係にシビアであり、米韓軍事演習云々はあくまでも北朝鮮が核廃棄を約束、実行した後としなければ、交渉のカードとして機能しない。

その辺りを鋭く嗅ぎ取っているのがトランプ大統領である。6日、文との電話協議について記者団に「大きな始まりだ。もし私が関与しなければオリンピックについて話し合うこともなかっただろう。文大統領も感謝していた」と述べ、強力な制裁と軍事圧力が金正恩を対話に向かわせているとの認識を示している。
さらに、南北閣僚級会談にも期待感を表明し、「オリンピック以外も議論してほしい。適切な時期に我々も加わる」と語り、金正恩との電話協議について「問題ない」と積極姿勢を示した。

トランプは金正恩が「新年の辞」で「核のボタン」をひけらかすと、すぐさまツイッターで「私の核のボタンの方がロケットマンよりもはるかに強力だ。しかも、私のボタンは稼働する」と応じた。リアルに使うことができるとの意味である。金正恩の「核のボタン」は見せ掛けのブラフと見抜いているのである。
暴露本を巡ってトランプはバカか天才かと真っ二つに評価が割れているが、少なくとも対北朝鮮政策では、不動産業で成功し、人気テレビ司会者を長く務めた勝負勘が冴えている。相手の弱味を鋭く突くデイールは、後手後手であったクリントン、ブッシュ、オバマよりも上手である。

心配なのは、安倍政権の勇み足である。
日本では韓国が北朝鮮に譲り、日米韓連携の枠組みが揺らぐと警戒する声が強いが、文政権への不信感が影響している。従軍慰安婦問題で対立していることが冷静な判断を妨げていると見られる。
北朝鮮を口実にした軍拡は中国を警戒させており、日韓、日中の不要な対立は金正恩の野心に火をつけるようなものである。

つまるところ、北朝鮮核問題はトランプ大統領と習近平主席の関係性に左右される。習が石油禁輸など北朝鮮制裁に腰が引けていたのは、金正恩政権崩壊後に米国の影響力が北朝鮮に及ぶのを恐れてのことである。
実際、双方ともにそれを意識し、激しい鍔迫り合いを演じてきた。昨年4月6日、習近平はフロリダ州パームビーチにあるトランプの別荘に招かれて歓待されたが、晩餐会でデザートのチョコレートケーキを食べている最中、トランプからシリアに空爆を命じたと聞かされた。
59発のトマホークが発射されたが、習は10秒ほど沈黙し、通訳に再度通訳を求めてから、「化学兵器を使ったのだから仕方ない」と事実上、容認した。トランプから試されていると感じたであろう。
だが、10月に共産党大会を控えており、その場は穏便におさめた。トランプへの答えは半年後に持ち越される。

習は共産党大会で過去5年間の経済、外交的な成果を誇り、社会主義現代強国を築く自身の思想を党規約に盛り込んで足元を磐石にした。その上で一帯一路など積極的に対外政策を進めると表明した。
冷戦以来、初めて米国に強力なライバルが誕生したのである。ソ連は経済的な脆弱性を露呈して自滅したが、中国は改革開放政策が奏功して、今後10年内にGDPは米国をも追い抜くであろう。
自信を深めた習は11月に訪中したトランプを故宮での京劇でもてなし、上機嫌にさせた。さらに、29兆円もの対米投資や米製品買付の商談を持ちかけ、貿易不均衡に関するトランプの不満を吹き飛ばした。目先の利害調整に忙殺されるトランプと10年以上先を睨んだ習との勝負は自ずと見えてくる。

「米中新型大国関係」は私が『二人のプリンスと中国共産党』で予測した方向で今後も進んでいくだろう。
大きく見れば、北朝鮮核問題はその各論である。
金正恩委員長は1日に発表した恒例の「新年の辞」で、「米本土全域が我々の核攻撃の射程圏内にある。核のボタンが私の事務所の机の上に常に置かれているが、これは威嚇ではなく、現実である」と吠えた。その上で、2月のピョンチャン冬季オリンピックについて「成功を心から願う」とし、「軍事的緊張緩和と平和的な環境作りのために共同で努力すべき」と代表団派遣に前向きな姿勢を示した。
米国への核攻撃を露骨に口にし、恫喝する一方、韓国に対話攻勢をかける極端な硬軟両様の戦術に幻惑される向きが少なくない。しかし、自慢の「核のボタン」はバーチャルであり、下手なハッタリ劇である。

私は前回、金正恩はピョンチャン・オリンピックカードで米韓軍事演習中止を狙ってくると書いたが、やはり金正恩は相当に焦っている。より正確に言えば、金正恩は米国の軍事行使に怯えている。それを裏付けるように、「新年の辞」では米韓合同軍事演習の中止と米軍の戦略爆撃機の韓国派遣取り止めを強く求めているが、核先制攻撃を受ける恐怖感が滲み出ている。
今回の対話攻勢の本質もそこにあると見てよかろう。核に自信を持ったので対話攻勢に乗り出したとの見方が日韓のマスコミに散見されるが、皮相的と言うしかない。

金正恩が2017年内の「国家核戦力の完成」を目指していた事は、韓国に亡命した太永浩前北朝鮮駐英公使が明らかにした通りである。当初から、ピョンチャン・オリンピック開催に国威をかける韓国を揺さぶる狙いであったろう。
そのため金正恩は昨年、国連安保理制裁決議が強化される中でもミサイル実験を繰り返し、第6回核実験(9月3日)を強行、新型ICBM火星15号発射(11月29日)で「国家核戦力完成」を一気に宣言した。
だが、一連の実験は逆に、核小型化、大気圏再突入技術の未確立などの弱点を露呈した。火星15号も大気圏再突入に失敗し、バラバラになって燃え落ちた事が現場空域を飛んだキャセイ航空など複数の航空会社のパイロットに目撃されている。

未完成品を完成と言い張るところに、金正恩の焦りと苦境が如実に現れている。昨年暮れには火星15号成功を記念する記念切手を発行し、ピョンヤンでは元旦から群衆大会を開催するなど全国でキャンペーンを張っているが、経済破綻と国民生活窮乏で麻にように乱れつつある国内の引き締めに必死なのである。
制裁は効いていないと見てきたようにコメントする「専門家」がまだいるが、北朝鮮の宣伝に乗せられ、実態が見えていないのである。

核で恫喝しながらの韓国への対話呼び掛けは、無謀な並進路線が行き詰まった金正恩最後の大博打である。
科学者、技術者を叱咤するものの、制裁で外部からの材料、部品調達が阻まれ、核開発が思うように進まない一方、米国の先制攻撃の圧力は日に日に高まる。異常な肥満体が物語るように、金正恩のストレスと恐怖感は募るばかりだ。
昨年10月の米韓軍事演習に際して軍や治安部隊に実弾を支給して備えさせた。演習が実戦に切り換えられ、自分を狙う斬首作戦が実行されることを恐れてのことであるが、私の見立てでは、この事実はある重要な内部状況を示唆する。金正恩は暗殺や反乱を恐れて実弾を支給しないでいたが、その不文律さえ守れなくなっているのである。

中国にもソッポを向かれた金正恩が現時点ですがれるのは、韓国の文在寅政権しかない。韓国は日本と共に米国の先制攻撃に対する一種の人質であるが、とりわけ南北対話に執心する文大統領は利用価値が高い。
金正恩が描くシナリオは以下のごとくであろう。ピョンチャン・オリンピック参加をカードにして同時期に実施予定の米韓軍事演習を延期させ、当面して最大の脅威である米軍の軍事行使を防ぎたい。あわよくば、米韓軍事演習そのものを縮小ないしは中止に追い込みたい。そうして時間を稼いで核戦力を完成させ、核保有国として改めて対米交渉を呼び掛ける。

金正恩がオリンピック参加の意向を示したことに文在寅が歓迎の意向を表すると、待っていたように3日、李善権・祖国平和統一委員会委員長が歓迎の談話を発表し、「文在寅大統領」と最大限に持ち上げた。それによると、金正恩が労働党統一戦線部、祖国平和統一委、国家体育指導委員会に実務的な対応策をまとめるように指示したという。かくして、板門店の南北通信チャンネルが再開され、2年ぶりに南北担当者が対話し、話はトントン拍子に進む。
韓国側が9日に南北閣僚級会談を開くようにと提案、文大統領が4日にトランプ大統領と電話協議し、北側の挑発がないことを条件に米韓軍事演習延期で合意したと発表すると、北側は翌5日、即座に応じ、互いに人選作業に入っている。

文大統領にとっては、体制保証と経済支援を見返りに、金正恩に核開発断念を説得する好機であるが、果たしてそれだけの交渉力があるであろうか。
文在寅はトランプとの電話協議で、とりあえずピョンチャンオリンピック(2月9日〜25日)・パラリンピック(3月9日〜18日)後に米韓軍事演習を延期する事で合意し、南北対話ではオリンピック以外の政治議題も積極的に取り上げる含みを持たせた。「南北対話が核問題解決に向けた米朝対話の雰囲気作りに役立つと確信する」とトランプに伝えたが、核廃棄の言質を金正恩から引き出せるか、成否はその一点に掛かっている。

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