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習近平総書記が北朝鮮に派遣した特使は事実上の最後通諜と前回書いたが、それを裏付けるように、幕裏では熾烈な神経戦が繰り広げられていたと北京から伝わってくる。
金正恩委員長は特使に会うかどうか、終始悩んでいた。核開発停止と引き換えに制裁緩和と経済支援を求めようと考えていた。そこで、労働党組織指導部長に就任し、ナンバー2の地位を固めた崔龍海党副委員長が会談し、中国側の譲歩を迫った。だが、習総書記がトランプ大統領から核開発放棄を絶対的前提条件とするように求められていたことから、特使は応じない、というよりも、応じる権限がない。結局、思うような返答を得られず、金正恩との会見は流れ、習の体面を傷つける結果となった。 金正恩にとっては大誤算であった。言葉では経済制裁に屈しないと強がるが、経済的打撃は大きく、国民生活は破綻している。核、ミサイル実験を2ヶ月以上中断して中国に秋波を送った目論見は失敗し、逆に習を怒らせてしまったからである。 中国は一段と制裁を強化し、北朝鮮の命綱の石油も例外ではなくなる。すでにピョンヤンではガソリンスタンドが営業を停止し、木炭車が走っている。北朝鮮の年間石油消費量は70万トン程度と推定され、一部無償の中国からの供給で何とかやりくりしている。それが止まれば備蓄している100万トンを放出するしかないが、せいぜい持って1年だろう。 板門店からの脱北兵、日本海岸への相次ぐ北朝鮮漁船の漂流と経済崩壊、体制崩壊の兆候が顕著になってきた。党と軍上層部との確執も表面化し、ジンバブエ化もありうる。 金正恩にとっては前門の虎、後門の狼となった。中国特使の説得が不調に終わったと判断したトランプ大統領は20日の閣議冒頭、北朝鮮を「殺人国家」と非難し、テロ支援国家に再指定した。 核実験をテロ行為と定義し、核保有を前提とした対話の芽を完全に摘み取った。その意義はけっして小さくない。日韓の一部には北朝鮮問題のどさくさに紛れて核開発を企む勢力が蠢いているが、それへの重大な警告となるからである。 また、金日成が唯一愛した男孫であり、金正恩の異母兄となる金正男をVXで殺害したことを直接の理由に挙げたことは、北朝鮮国民に衝撃を及ぼし、金日成に忠誠を誓ってきた中核層に深刻な動揺を引き起こすだろう。 今回の再指定は今月上旬の日韓中訪問時に各国首脳に事前通告していた。習主席の特使が帰国した直後での発表に特別な意味を込めたと読める。圧力を最大限強めて金正恩を核廃棄を約束する対話の場に引き出し、最後の手段として軍事オプションもやむを得ないとのメッセージを込めたのであろう。テイラーソン国務長官は北朝鮮上層部とパイプがあることを示唆しており、北朝鮮政変も視野に入れているとみられる。 米財務省は米独自の制裁を強化することになるが、香港に登録している16企業が焦点となろう。核兵器開発と関わっている北朝鮮の銀行と繋がりのある明正国際貿易、2年前に制裁対象となった丹東鴻祥実業発展の幹部が関わる企業などが知られている。トランプ大統領は今月上旬、中国の丹東銀行を制裁対象にしたが、米国企業との金融取引を遮断することで間接的に北朝鮮を締め付ける作戦である。金正恩が海外に保有する金融資産も洗い出され、凍結されよう。 Xデーは刻々近づいている。 金正恩は9月21日の声明で「史上最高の超強硬措置」に言及し、国連に出席中の李容浩外相が「太平洋上での水爆実験」を示唆した。韓国に亡命したテ・ヨンホ前駐英公使は金正恩が今年中に米本土を射程に入れた核搭載ICBMの完成を指示したと証言しており、火星14号の改良型の開発を完了したとの観測もある。 それらの実験をトランプは座視しないだろう。米韓空軍合同演習が12月4日から8日まで行われる。定例だが、米軍1万2千人にステルス戦闘機のF22、F35が参加し、原子力空母や爆撃機など核攻撃を想定した戦略兵器の巡回配備も強化されるなど過去最大規模となる。金正恩が核開発を進めるほど軍事的圧力は強まっていくだろう。 開戦となると膨大な被害が日韓にも及ぶとの見方があるが、米朝の圧倒的な軍事力の差から推して、一瞬にして終わるだろう。 繰り返し言うが、金正恩の核抑止論は幻想であり、北朝鮮被爆のリスクを高めるだけである。広島、長崎の惨事を招いた日本軍国主義者の轍を踏んではならない。 |
朝米和解のプロセス
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グアム周辺に4発の火星12号を同時発射すると豪語していた金正恩委員長が一転、「米国の様子をもう少し見守る」と軟化姿勢を見せ、その真意を巡って憶測が飛び交っている。
トランプ大統領がグアム攻撃に対して大規模報復を公言し、米朝開戦かとニューヨークや東京の株式市場も株価が乱高下するなど国際的な注目事となっているが、金正恩が一歩引いたことで事態は小康状態となった。 金正恩が旧日本軍のように対米戦へと暴発する可能性がゼロではないが、外交的な解決へと急展開する局面も見えてきた。 これまで何度も指摘しているように、大胆なようで臆病な金正恩の行動には、決まったパターンがある。 グアム攻撃について言えば、過去にも似たことがあった。2013年3月の韓米合同軍事演習に反発し、グアムや日本などの米軍基地を攻撃する「火力打撃計画」に署名するデモを行い、東海(日本海)にムスダンをこれ見よがしに展開したが、結局、見送っている。 今回も同じパターンであるが、米国という敵と実際に対峙する過程で、その強大な軍事力を思い知り、予想以上に手強いと学習しているのが読み取れる。労働新聞に韓米情報機関が「最高尊厳の暗殺を狙っている」と批判するのも、金正恩が身辺の危険を感じて極度に警戒していることを端的に物語る。 金正恩が気にする米国の出方だが、トランプ大統領の「見たこともない炎と怒りを受ける」の言葉に集約できる。マテイス国防長官とテイラーソン国務長官が14日に連名でウオールストリート紙に寄稿し、「どんな核兵器の使用も効果的かつ圧倒的に反撃されるだろう」と核使用に公式に言及した。 あってはならないことだが、金正恩が米国への核攻撃を公言している以上、ピョンヤンへの核爆弾投下もありうるということである。 トランプの基本姿勢は北朝鮮が核弾頭を運搬できるミサイルを完成する前に、軍事的手段を用いてでもその能力を完全に除去するということである。 そのタイムリミットの範囲内で制裁圧力を最高度に高め、金正恩が進んで核を廃棄する交渉の場に出ざるを得ない状況まで追い詰めることに尽きる。北朝鮮侵攻や体制転換を目指していないと秋波を送るのも、窮鼠猫を噛む事態を避ける意味がある。 中国に対して通商法301条発動をちらつかせ、制裁強化を迫るのもその一環である。 習近平主席が石炭、鉄鉱石など石油以外の対北朝鮮禁輸を決めたのも、トランプのシナリオに歩調を合わせたことを物語る。人民日報系の環球時報が12日社説で「米朝間で衝突が起きても中国は中立を維持すべきだ」と主張し、金日成時代の朝中軍事同盟の無効を宣言したのも中央政府の意向を反映したものにほかならない。 金正恩がもう少し見守るべきは、そうした四面楚歌の絶望的状況である。軍事的には圧倒的に不利で、中国の支援も期待できず、戦端が開かれれば瞬時に北朝鮮は壊滅的な損害を受ける。 合理的な判断が出来れば、結論は自ずと明らかである。 ただ、権威も実績も乏しい金正恩は、戦前の日本軍部が鬼畜米英で国民の戦意を高揚させ、求心力を保ったように、核武装を声高に叫ぶ反米の旗が政権維持には不可欠であると考えている。 しかし、どうであろう。無条件降伏を呑んだ日本は天皇制存続を認められ、経済再建に国民一丸となった。 核を廃棄し、その代償に巨額の経済援助を手にして経済再建、国民生活向上に努めれば、金正恩の立つ瀬も出てくる。 それを金正恩が理解し、理解させることが重要である。在日の母親故に国内で疎外され、スイスで青少年時代を過ごした金正恩は渇いており、利にさとく、旧来のイデオロギーへのこだわりは口ほどにはない。説得はそれほど難しくはなかろう。 |
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金正恩が米国を核攻撃すると過激発言を繰り返している。
当人は米国を恫喝し、交渉のテーブルに引き出そうと考えているのだが、客観的には、北朝鮮国民が核攻撃を受ける危険性を高めている。 現にトランプ大統領は8日、「世界がこれまで目にしたことがないような炎と怒りに直面するだろう」と記者団に述べ、金正恩委員長に警告している。さすがに核ボタンを押すのは躊躇われるが、相手が核攻撃を公言している以上、軍事戦略的に選択肢に入れざるを得ないとの考えである。 政治的にも、米国世論が急速に軍事力行使を求める方向に傾いており、世論に敏感なトランプがゴーサインを出すタイムリミットが刻々近づいていると読める。 国際的にも、米国の自衛権行使として黙認する国が大多数である。 金正恩は北朝鮮国民を楯にして米国に喧嘩を売ってきたことになるが、そろそろ限界である。 火星14号の発射に対して国連安保理で新たな制裁決議が採決され、中国も石油以外の輸出入を大幅に禁止することに同意した。北朝鮮経済は大混乱に陥り、疲弊しきった国民生活は一段と深刻化する。 金正恩が「対米決戦」に総動員体制をかける主因は、国民の動揺と反発を押さえることにある。婦女子に竹槍を持たせて「聖戦貫徹」、「一億玉砕」を叫んだ戦前の日本軍国主義と似ている。 日本軍国主義者は核兵器開発に最後の望みを託し、北朝鮮で産出したウランを用いて科学者たちに発破をかけたが、皮肉にも、金正恩は同じ事を繰り返している。 ただ、金正恩は核実験に成功し、それを弾頭に搭載するICBMの完成間近まで迫っている。ワシントン・ポストは「米国防情報局の分析で、北朝鮮は60の核爆弾を保有し、一部はICBMに搭載可能」と報じた。 金正恩は狂人か天才かとそれぞれの思惑絡みで論じられているが、少なくとも狂人ではない。合理的とまでは言えないが、機を見るに敏なところはある。だが、知見、経験に欠け、誇大妄想的な思い込みが激しい。 その端的な例が、9日に北朝鮮の金洛謙戦略軍司令官が「火星12号4発をグアム周辺に同時に発射する作戦計画を最終完成させた後、8月中旬までに金正恩最高司令官に報告し、発射待機姿勢で命令を待つ」との声明を発表したことである。 回りくどい言い方は、そう言うように仕向けた金正恩の個性そのものである。一見、大胆なようだが、用心深く、臆病ですらある。北朝鮮国民の手前、極力強ぶらなければならないが、その実、米軍による斬首作戦や空爆を恐れているのである。 金正恩は、押せるところまで押せば、トランプが対話へと下りてくると自分なりに算盤を弾いている。 「日本を焦土化する」と脅すのも、日本が恐れおののいて米国に軍事行動を思い止まり、対話に応じるよう働きかけさせる心理作戦である。 しかし、金正恩は米国がよく分かっていない。脅されて交渉のテーブルに就く国ではないし、そうしたことは一度もない。日本との開戦も「パールハーバーを忘れるな」と大義名分を得るまでじっと待っていた。 老練なトランプも、じっと待っている。9日にツイッターで「米核戦力はかつてないほど強力だ。使わないことを望む」と意味深長なことを呟いている。中国やロシアすらやむを得なかったと納得する状況まで見極めようとしている。 客観的には、初期段階の北朝鮮の核戦力と米国のそれとは象と蟻以上の差がある。かつてクリントン大統領は「水爆3発で方がつく」と述べ、韓国大統領の猛反発で撤回した。 だが、現在、トランプを押し止める者は見当たらない。軍事行使に踏み切れば、北朝鮮の反撃を抑え、韓国、日本の損害を防ごうと大規模なものになろう。 金正恩は米国を挑発すればするほど、北朝鮮国民が第2の広島、長崎の惨害を被るリスクが高まっていることを知らねばならない。 核開発は安全ではなく、危険を増大させている。国民を無駄死にさせないためにも、早く核廃棄に応じ、改革開放に舵を切るべきである。残された時間はそう多くない。 |
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デービス米国防総省報道官は28日、「北朝鮮が慈江道の舞坪里から同日午後2時45分に弾道ミサイルを発射した」と発表し、「予想通り、ICBMだったと分析している」と断定した。
これに対してロシア国防省は「中距離弾道ミサイル」と発表した。同一の飛翔体に米国はICBMと過大評価し、ロシアがIRBMと過小評価する奇妙な食い違いを見せているのは、政策的な理由がある。 それについては後述することにするが、猪突猛進の金正恩委員長の深夜のミサイル発射に最も衝撃を受けているのは、ほかならぬ安倍政権である。 稲田防衛相がシビリアンコントロールを乱した責任を問われて辞任を発表した直後というタイミングでのミサイル発射は、情実人事で揺れる安倍政権の外交防衛政策を直撃し、支持率が20%台に急落している安倍首相はさらに厳しい状況に追い込まれた。 朝鮮中央通信が今日伝えるところによると、「火星14号」発射には金正恩が立ち会い、「米本土全域が我々の射程圏内にあることが立証された。ICBMを奇襲発射できる能力が誇示された」と述べたという。 米国が怖じ気付き、交渉のテーブルに出てくると捕らぬ狸の皮算用をしているのであるが、北朝鮮国民にとっては危険極まりない思い違いである。 米国が自国への攻撃を公言している金正恩政権とまともに話し合うわけがなく、ましてや、核ミサイルの実戦化を手をこまねいて見ている訳がない。 そうした外交・軍事戦略の基礎に疎い金正恩は核保有プロセスが進展していることを示すことで圧力をかけた気になっているが、実際は攻撃を受けるリスクを高めているのである。 北朝鮮「火星14号」の実験は4日にも成功しているが、それを受けて米当局は「今後1、2年内に北朝鮮が米本土を攻撃できる核ミサイルを保有する可能性がある」と従来の見解を修正したが、事実上のタイムリミットである。 実際、デービス報道官はICBM発射について「予想通り」と述べ、対応マニュアルが出来上がっていることを示唆している。 トランプ大統領は28日の声明で「米本土の安全を確保し、同盟国を守る必要な全ての措置を取る」と軍事オプションを再度示唆した。 ただ、軍事オプションについては党大会を秋に控える習近平中国主席が消極的である。 ロシアも米国の軍事的影響力が東アジアで高まるのを望まず、今回の実験について米国がICBMとするのは危機を誇張するものであるとし、実際はIRBMと異論を唱えている。 トランプ大統領も中ロの意向をある程度尊重してきたが、自ずと限界がある。ロシアゲート疑惑で支持率が急落している中、アフガン、イラク攻撃で高支持率を獲得したブッシュ政権に倣わない保証はない。 ハワイ州政府が北朝鮮ミサイル警報を出すなど北朝鮮問題への関心が高まっており、トランプ大統領が自国の安全第一と北朝鮮攻撃に踏み切る可能性は高い。 それと関連して、ポンペオCIA長官の発言が注目される。 ワシントン・ポストとのインタビュー(26日付)で北朝鮮が核戦力部隊を実戦配備したときが「本当に危険だ」と述べ、「トランプ大統領はそのような事態は認めないと明確に述べてきた」と強調した。その上で「北朝鮮に対する秘密工作や国防総省を支援する情報作戦を準備している」と付け加えた。 同氏は20日の安全保障会合で「金正恩体制を核システムから切り離すことは出来る。北朝鮮国民も望んでいるはずだ」と金正恩排除工作に言及している。テイラーソン国務長官は「北朝鮮の体制転換を求めない」と述べていたが、トランプ政権が強硬策に傾いていることは間違いない。 粛清への反発から高級幹部の脱北が相次ぎ、北朝鮮政権内ももはや一枚岩ではない。 外部の強攻手段を待たず、自浄作用を発揮できるか、真の主体性が試される。ここ1、2年が勝負の時となる。 |
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「群山に配備された在韓米軍の最新鋭の長距離空対地ミサイルJASSM10余発が最近、戦力化された」との衝撃的な事実が明らかにされた。26日、連合ニュースが複数の軍事外交消息筋からの情報として伝えた。
それによると、全羅北道の群山空軍基地に展開するF16戦闘機がJASSMを搭載、発射する武装体制を整えた。射程370キロのJASSMはGPSを内蔵し、ピョンヤンなど金正恩指揮所を含む北朝鮮の軍事施設を誤差2メートルの範囲内で精密打撃する事ができる。 配備時期はTHAAD4基の搬入で文在寅新政権と米政権間に齟齬が生じた直後とされ、トランプ大統領の強い意志が反映されている。 衝撃的な軍事情報がこの時期に明らかにされたのは、無論、狙いがある。29、30日に予定された韓米首脳会談の前哨戦と言えよう。 つまり、トランプ大統領は文在寅新大統領の覚悟を試そうとしているのである。 朴槿恵大統領の弾劾、罷免というハプニングで急遽大統領に就任した文大統領の対北政策は、いまだに基本スタンスが定まらず、揺れている。 選挙戦の公約で「最初に金正恩委員長と会う」と述べていた文大統領は、大統領に就任後、ブリーフィングを受けて状況の厳しさを知らされ、韓米同盟を基本に北朝鮮に対峙すると軌道修正した。しかし、準備不足は否めず、特にTHAAD問題では発射台の追加搬入分4基に環境影響評価を実施するとし、早期完全配備を急ぐトランプ政権から不信感を持たれた。 文新大統領の対北認識は10年前のノ・ムヒョン政権時代の秘書室長時代のそれと大して違っていないように見える。韓国NGOが申請した北朝鮮結核患者治療薬搬出を許可したのは肯定できるが、ソウルでの国際会議に北朝鮮最高人民会議議長を招待したり、来年の平昌東京五輪の南北合同チーム結成や馬息嶺スキー場利用を呼び掛けたりと、情緒的な非現実的提案を繰り返している。 案の定、どれも北朝鮮側から「軍事的対決状態を解消するのが先だ」と、にべもなく拒絶されている。 文新大統領とブレーンたちの対北朝鮮認識は10年前の対北接触を引きずっている。 「制裁だけで核問題は解決できない」が文新大統領の信念であるが、北朝鮮の核開発阻止は時間との勝負になっている現実をまず再認識する必要がある。「凍結」を当面の目標とし、その次の段階で「完全廃棄」とする段階的・包括的アプローチを訴え、北朝鮮が核実験など追加挑発を中断すれば無条件対話に応じると提案しているが、牧歌的に過ぎ、事実上、金正恩政権に核開発の時間稼ぎに手を貸すことになりかねない。10年のブランクはあまりに大きい。 文大統領は独り善がりにならず、北朝鮮による核・ミサイルの実戦配備は「早ければ2、3年後」という韓米軍事当局の基本認識の重大性を早急に理解する必要があろう。 文政権の対話提案を嘲笑うように、労働新聞が「我々の自衛的な核抑止力はいかなる交渉の対象にもなり得ない」と繰り返すのは、金正恩政権が政権の命運をかけて核・ミサイルの実戦配備を最優先視している事を端的に物語る。甘い幻想が通じる相手ではないのである。 外交経験の乏しい文新大統領の最大の弱点は北朝鮮への制裁強化の切り札とも言うべきTHAAD問題であり、民主党議員団が媚中外交を演じて失笑を買うなど右往左往した野党時代の欠点をいまだに払拭できていない。 ロイター通信との22日のインタビューでも来る習近平主席との首脳会談で「全ての報復を解除してほしいと要請する」と述べている。THAAD配備を手続き問題で遅らせる代わりに経済報復解除を求めるというもので、属国外交と批判されかねない卑屈な態度である。それを報じた連合ニュースは中国の協力で北朝鮮の挑発を封じる狙い、妙手と解釈しているが、THAAD問題の本質が全く見えていない。 後述のように、朴槿恵前大統領は北朝鮮への制裁、圧力を渋る習近平主席に「金正恩が核を放棄しさえすれば、THAADは配備しないし、配備しても撤去する」と直接に伝え、中国が渋々ではあるが制裁強化に踏み切った経緯がある。 金正恩政権への制裁強化が効果を発揮し、大きな山場に来ている時に文新大統領が前政権との違いを示そうとポピュリズム的なスタンドプレーに流れるようだと、韓国外交は大きく躓き、米中の間で弄ばれることになろう。 “不通”の女帝的な内政で足をすくわれた朴槿恵前大統領であるが、五か国語に通じた語学力を駆使したオバマ前大統領、習主席との首脳外交は世界10位圏の経済力をいかんなく発揮し、韓国外交史上秀逸のものがあった。それを痛感させられたのが、崖際まで追い詰められた金正恩委員長に他ならない。 それと関連して興味深いのが、「朴政権、正恩氏失脚を計画」と一面トップでセンセーショナルに報じた朝日新聞(6月26日)である。「朴政権の対北朝鮮政策に詳しい関係筋」の情報として、「朴大統領が2015年12月の南北当局者会談決裂を受けて北朝鮮のリーダーシップチェンジを目指す決裁書にサインし、金正恩の引退、亡命、暗殺が含まれていた」と伝えたが、私も当ブログで何回も指摘したことであり、少しも驚くことではない。 ただ、同記事は朴大統領が国情院に引きずられて対北強硬姿勢に傾いたかのように書いているが、朴外交の本質を見誤っている。 簡単に振り返ると、朴大統領は当初、「韓半島信頼プロセス」を提唱し、大胆な南北和解を呼び掛けたが、北との接触過程、さらに脱北した多くの北朝鮮高級幹部の証言から、金正恩の核開発の意思が強固であり、単なる対話で止められないものであることを知り、制裁・圧力重視へと舵を切っていく。 『二人のプリンスと中国共産党』でも触れたが、それが具体化するのは、2015年9月、北京での「抗日戦争勝利70周年」行事である。朴大統領は西側首脳として唯一、閲兵式に参列し、習主席に貸しを作った。その返礼が北朝鮮への制裁・圧力強化である。 さらにその1か月後にオバマ大統領との首脳会談に臨み、北朝鮮の核・ミサイル開発阻止と金正恩政権を改革開放へとソフトランデイングさせる戦略を盛り込んだ韓米外交史上初の画期的な共同声明を発表した。 その直後の韓米安保定例会議でいわゆる「斬首作戦」が採用され、韓米合同軍事演習に組み入れられた。朝日がスクープした決裁書はその後の事である。 習、オバマ両首脳との会談を重ねて個人的な信頼関係を築いた朴槿恵前大統領ならではの外交的な離れ業と言えよう。 すなわち、北朝鮮のリーダーシップチェンジは北朝鮮内部の権力構図、権力闘争まで踏まえ金正恩政権の交代も視野に入れてソフトランデイングを目指す周到な計画であり、基本的には米中首脳も了解している。 ちなみに、1968年に北朝鮮特殊部隊が青瓦台を奇襲するなど韓国大統領暗殺計画は北朝鮮ではとうの昔から策定されており、それが南北の厳しい現実でもある。 北朝鮮に拘留された米人学生の死亡で米世論が悪化しているのを受け、トランプ大統領は金正恩が核兵器を実戦化する前に物理的に除去する意向を固めている。 文大統領にもズバリ、北朝鮮核開発阻止への覚悟を尋ね、軍事オプションへの同意を求めることになろう。曖昧な態度を取ることは許されない。 来月初めのG20で予定される米中首脳会談の主題は「100日約束」の履行状況を点検する場になる。軍事オプションが具体的に論じられるが、文大統領も腹をくくらなければならない。 |



