河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

朝米和解のプロセス

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索
ケリー国務長官が3日、日米安保協議委員会後の共同記者会見で「北朝鮮が非核化すれば、6カ国協議参加国は対話に応じ、不可侵条約を締結することも出来る。米国は北朝鮮の政権交替は考えていない」と述べた。
前日、金寛鎮・ヘーゲル韓米国防長官が北朝鮮に対する核先制攻撃を含めた新抑止戦略で合意したのを受けてのことであり、飴と鞭で金正恩政権に核廃棄を求めるオバマ政権の意図を具体化したと読める。

それに対して、金永南最高人民会議常任委員長が、米国の敵視政策の放棄を要求しながら、金正恩第1書記が経済に注力していることを強調した。
朝米はベルリン、ロンドンなどで非公式接触を続けながら主張のすり合わせをしており、金委員長はケリー長官の発言を意識しているとみられる。
先核放棄か先対話か、朝米の交渉が山場に来ていることは間違いあるまい。

韓国、日本と歩調を合わせているオバマ政権は基本的には、北朝鮮の変化を待つ姿勢を崩していない。
対米核戦争を公言していた北朝鮮が突然、対話路線に転換したことにバイデン副大統領は「危機を煽り、見返りを求めるやり方には応じない」とし、全核施設へのIAEA による査察などを対話の条件として挙げている。

米国としては、北朝鮮の要求に屈するような形で対話に応じることは、その威信と信頼性を傷付けることになり、応じることはないだろう。
事が核に関わるだけになおさらである。北朝鮮の核武装容認は世界的な核拡散を招き、とりわけ、韓国、日本の核武装を誘発する危険性が高い。

金正恩第1書記はその辺りの事情がよく見えていない。
オバマ政権との直接接触にあらゆる外交努力を傾け、その動きは相変わらず慌ただしい。
金正恩政権が核保有にこだわるほど、国際的な締め付けは強まり、期待する外資は入らず、真綿で首を絞められて行くだろう。
結論から言えば、核隠しの戦術的なレベルの‘’対話攻勢‘’は見抜かれており、核廃棄の戦略的な対話へと軌道修正するしかない。

以前、シリア問題が北朝鮮核問題に影響すると書いたが、国連安保理は27日、来年半ば迄にシリア政府に化学兵器の完全廃棄を義務付ける決議案を全会一致で採択した。
決議違反には国連憲章7章に基づく強制措置を取ることも含まれるが、シリア政府は受け入れを表明した。
米単独主義から国際社会による大量破壊破壊兵器廃棄の道を開く画期的な決議である。

その影響はイラン核問題に及び、国連総会に参加したロウハニ・イラン大統領にオバマ大統領が同日、1979年の国交断絶以来初めて電話し、イラン核問題の外交的解決で合意した。
すでに安保常任委とドイツによるイラン版6カ国協議が始動しており、シリア問題が後押しした結果となった。
イランは経済制裁で国民生活は疲弊し、対話による核兵器廃棄の国民世論が高まっており、それを追い風にして当選したロウハニ大統領としては、シリア方式は格好のモデルとなったとみられる。

この流れは、北朝鮮の核問題解決にも肯定的なインパクトを与えている。
習近平政権としては、シリア、イラン問題で仲介的な役割を果たしたプーチン政権に倣って、6カ国協議で議長国としての存在感を示したいと考えていよう。

事実、5月に訪中した崔総政治局長から6カ国協議復帰の言質を得てから、硬軟両様で金正恩第1書記を囲いこんできた。
先月25日から28日迄訪朝した李源朝中国国家副主席に、金第1書記は宿舎を訪ね、「これからは北東アジアで危険なことは一切起こさない」と述べ、「6カ国協議再開に向けて努力する中国を支持する」と約束している。
金第1外務次官が北京での国際セミナーに参加し、北朝鮮外務省などが「二度と死んでも参加しない」と繰り返し表明した6カ国協議復帰を公式に表明したのはそれを受けての事に他ならない。

その直後のベルリンでの李容浩外務次官とボズワース前米特別代表との非公式接触が中国の計らいで持たれたことは二言するまでもないが、朝米間にはまだ距離がある。
オバマ政権は6カ国協議9・19共同声明や2・29朝米合意を先に履行しない限り、北朝鮮とは公式の交渉の場を持つことはないと明らかにしている。
中国の王毅外相からは「北朝鮮は核廃棄の意思がある」と聞かされても、援助を引き出すための方便と疑っているのである。

こうした認識は韓国も共有している。
ユン・ビョンセ外相とケリー国務長官は27日の会談で「北朝鮮が核廃棄の意思を具体的な行動で示さない限り、支援はしない」と申し合わせている。
それは、6カ国協議と並行して北朝鮮非核化を進めようと考えている中国の思惑とも微妙な温度差がある。

相互に首脳会談を重ねてきた朴槿恵大統領、習主席、オバマ大統領は北朝鮮非核化において戦略的な認識を共有していると読めるが、各論に入るとやはり齟齬が生じる。
まさに北朝鮮はそこに隙を見て、揺さぶろうとしている。

北朝鮮の誤算は、朴槿恵政権が想定以上に原則的であることである。
開城工団再開問題、離散家族再会で大幅に譲歩し、観光収入が見込める金剛山観光再開に繋げようと算盤を弾いていたが、朴槿恵政権は非核化進展が対北経済支援の条件とする姿勢を変えようとしない。
家族再会を一方的に中止したのは北朝鮮の焦りを物語る。

金剛山観光再開問題はある意味で金正恩政権の命運を左右しかねない。
金第1書記の鶴の一声で、その権威をかけて始まった馬息嶺スキー場は金剛山に隣接し、金剛山観光と連動しない限り、採算はとれない。
外貨を落とさない国内客や、レジャーとしてのスキーが普及していない中国客相手では、北朝鮮の総力を挙げた莫大な投資を回収することはできない。
北朝鮮が離散家族再会と強引に金剛山観光再開を絡ませる理由がそこにある。

しかも、朝鮮戦争勝利60周年の7月27日をめざした馬息嶺スキー場完工は大幅に遅れ、第2の柳京ホテルになりかねない。
未だに完工していない柳京ホテルは北朝鮮経済凋落の一因となったが、北朝鮮経済が疲弊しきった現在、馬息嶺スキー場失敗は致命傷になりかねない。

朴槿恵政権は開城工団交渉の過程でその事を見抜いている。
金剛山再開問題で先非核化後支援の原則を崩さないのはその事を物語る。

しかし、朴槿恵政権は米国と異なり、金正恩政権の崩壊を望んでいない。
その点では北朝鮮の安定を望む中国と思惑が一致する。
先交渉の中国と先非核化の米国の間で韓国がいかなるイニシアティブを発揮するか。
それは金正恩政権が非核化を戦略的なレベルで策定し、朴槿恵政権の理解を得ることに掛かっている。

米国一国主義が崩壊しつつあるなか、北朝鮮が対米直接交渉に過度の期待をかけるのは無理がある。
6カ国協議再開の流れを作った中国の存在感は否応なく高まっているが、同時に、開城工団、離散家族再会、金剛山観光問題などを通して北朝鮮とのギリギリの交渉をしながら米国、中国を繋ぐ韓国の役割からも目が離せない。
18日に北京で中国政府が主宰した国際セミナーに参加した李容浩(リ・ヨンホ)外務次官兼6カ国協議北朝鮮首席代表がその足でベルリンに飛び、ボズワース前特別代表らと秘密接触した。
接触後にテレビカメラに撮られた李次官の表情は北京よりも険しく、一言も発しなかった。ボズワース前代表らも報道陣を避けた。
過去の秘密接触とは趣がかなり異なる。

過去の秘密接触は会うことに意味があった。
朝米が韓国、中国などの頭越しに何事か協議しているとの政治的なインパクトを与えたからである。

しかし、今回は北京での国際セミナーの流れの中で持たれた。
つまり、中国が仲介し、事実上、裏で仕切っているのである。
韓国が冷静なのは、事前に全て知らされているからとみられる。

前回も指摘したように、その中心的な人物は王毅中国外相である。
王外相はセミナーで金桂冠第1外務次官から6カ国協議復帰の発言を引き出し、直後に訪米して米国側に北朝鮮は6カ国協議9・19共同声明に沿って核廃棄する意思があると伝えた。

習近平政権は崔総政治局長から得た言質
を何がなんでも守らせようと釈迦力になっている。
半信半疑の米側には、北朝鮮への核・ミサイル関連物資の禁輸措置を公表して、中国の強い意志を示している。
オバマ政権はそれを確かめるためにボズワース前代表らを派遣し、直接、北朝鮮の真意を確かめたと読める。

李次官は、重い宿題を持ってピョンヤンに帰ることになった。
米国が北朝鮮の非核化を交渉の絶対条件としていること、さらに、以前のように北朝鮮を直接相手にせず、中国、韓国と歩調を合わせて動いていることを知らされたのであろう。

北朝鮮が米国を交渉テーブルに引き出そうと必死の努力をしていることは知られている。
寧辺の実験用黒鉛減速炉のある発電用タービンから水蒸気が上がっていることが衛星で確認され、キセノンも検出された。
ウラン濃縮に用いるローターに必要なマレージング鋼を自力生産し、ウラン濃縮施設を拡充しているとの情報も流れている。
いずれも制裁は無力であり、自力で核戦力を強化出来ると誇示しているのである。

しかし、それは3月以来の核・経済並進の強硬路線が思うような成果を挙げられないでいる北朝鮮の焦りを示している。
後先ない核外交に振り回され、経済は破綻状況に直面している。
並進ではなく、極端なハ行となっているのである。

李次官は北京でのセミナーで金正恩第1書記が現地指導の90%を経済指導に注いでいると述べ、注目されたが、窮状を自ら明かすようなものである。
金第1書記は朝鮮戦争勝利60周年の7月27日に合わせて馬息嶺スキー場を建設することを唐突に打ち上げ、父親にあやかった馬息嶺速度を経済建設のスローガンにしたが、思い付き的な無計画性と洪水被害で頓挫し、年内完工のめどすら立っていない。
開城工団では一方的に労働者を引き上げておきながら、外貨に逼迫し、韓国側の要求通りに再発防止を約し、操業再開に応じるドタバタまで演じた。

一事が万事で、北朝鮮経済は瀕死状態に直面している。
今や外交の軸が経済支援を得るところに置かざるを得なくなっており、自ずと落ちるところに落ちるしかない。
北朝鮮核保有に刺激され、石原慎太郎維新の会共同代表や田母神前航空自衛隊幕僚長ら日本の保守層に核武装論が急台頭しているが、その真の狙いが、歴史認識や領土問題で対立する中国、韓国であることは公然の秘密である。
パウエル国務長官の核不要論はそれへの警告でもあった。

パウエル氏の指摘を待つまでもなく、核保有を強国の証とみなすのは時代錯誤の幻想である。
北朝鮮の現実は逆に、国際情勢を無用に緊張させ、経済を破綻させる事を如実に示している。

韓国側の統計によると、北朝鮮の昨年の経済成長率はプラス1・3%と二年連続で微成長を記録した。
その最大要因は中国との交易が倍増したことであるが、韓国との合同事業である開城公団が順調に売上を伸ばしたことも預かっている。
開城公団は北朝鮮に年間1億ドル近い外貨収入をもたらすばかりでなく、53000人の北朝鮮労働者と家族の生活を支え、北朝鮮が合理的な経営を学ぶまたとない実験場でもあった。

金正恩政権が2月の核実験に続いて3月に打ち出した核開発と経済建設の並進路線、4月の無謀な核戦争対決政策は国際緊張を極度に高め、その2つを自ら失わせてしまった。
とりわけ、4月末に開城公団労働者を一方的に引き揚げ、事実上の封鎖に追い込んでしまった事は、戦略性に欠ける政策の稚拙性を露呈する致命的な誤りであった。

場当たり的な政治に翻弄された経済はたちまち混乱状態に陥った。
外部に依存する戦略物資が激減し、外貨収入も先細る中、金正恩政権もようやくその重大性に気付く。

中国に崔龍海軍総政治局長を特使として派遣し、緊急支援を求めたが、逆に、核放棄が前提とだめ押しされ、6ヶ月協議復帰の言質を取られてしまった。
遅ればせながら、金正恩第1書記の訪中が持ち上がっている。
北朝鮮としては朝鮮半島全体の非核化にふって核保有を既成事実化したいところであろうが、習近平主席からより厳しい指摘が出されることは覚悟せねばならず、いよいよ正念場となろう。

金桂寛外務次官の訪中には金正恩訪中の事前調整もあったとみられるが、帰途に大連に向かった事が注目されていた。
開城公団閉鎖で職を失った53000人労働者の受け入れを打診したとの報道が流れているが、事実であろう。
気紛れ的な政治判断で労働者を引き揚げさせたものの、事後対策がないため突き上げを食らい、四苦八苦しているのである。

挙げ句の果てに、韓国側に再度開城公団再開を呼び掛けることになった。やはり思い付き中断で宙に浮いていた金剛山観光再開も抱き合わせて提案するドタバタの有り様である。
案の定、韓国側からは足元を見透かされ、責任問題と再発防止策の樹立が先と釘を刺されてしまった。
自ら提案しながら相手から注文を付けられると態度を豹変させるのが北朝鮮流交渉術だが、やはり返答を保留した。

同時に提起していた離散家族再会問題も保留した事にはさすがに韓国一般国民からも非難の声が高まっている。
15日に第三次実務会談が開かれるが、比較的北朝鮮に理解を示していた民主党からも不信の声が上がっており、対応が注目される。

金正恩核万能外交は明らかに限界である。
発足後しばらくは開放的な姿勢が歓迎され、経済も上向くかに見えたが、人工衛星打上成功で舞い上がり、核保有万能論へと脱線してしまった。
経験不足が露呈した結果となったが、これ以上傷口を広げると政権の根底が揺らぐ事になろう。

指導者に不可欠な修正能力と柔軟性が問われる。
日本の一部核亡者にも手本を示す必要がある。
米軍制服トップの統合参謀本部長から国務長官となり、米国の核戦略を担ってきたパウエル氏が今日の朝日新聞とのインタビユーで「核は酷い兵器であり、使えない。軍事的には無用な存在だ。北朝鮮の核には強力な通常兵力による抑止力で足りる」と述べている。
核を知り尽くした人物の核不要論は、核への恐怖から核保有に走る矛盾した傾向への警鐘である。

国家存亡の危機を核で交わそうとしている金正恩第1書記は、謙虚に耳を傾ける必要がある。
北朝鮮に対抗して核武装を進めようとの意見が急台頭している安倍自民党も例外ではない。

米国に劣らぬ核戦力を有したソ連が崩壊したのは何故か。
ソ連崩壊時に米軍制服トップにいたパウエル氏の言葉は実に教訓に満ちている。
核戦力に依存する軍事偏重に傾き、国内経済再生を怠った事がソ連崩壊の最大要因である。
外部の思想宣伝云々は副次的要因に過ぎないことは、当時、ソ連各地を訪れて私が直接確認したことでもある。
つまり、無用の長物の核に縛られて富国強兵の根本を忘れて強兵富国に倒錯し、自滅した恐竜がソ連であった。

しかるに、北朝鮮は核の幻想に憑かれ、強兵富国の迷路からまだ脱しきれていない。
さすがに最近は中国を含む国際社会の厳しい対応に6ヶ月協議復帰に同意するなど幾分トーンダウンしているものの、昨日の民主朝鮮の個人論評は核を「民族の財富」などと依然としてこだわりを見せている。
いわく「核放棄すれば武装解除され、体制崩壊に追い込まれる」は論理が飛躍し、一部、すり替えが見られる。

北朝鮮の通常兵力が兵器の旧式化に悩んでいるのは明らかである。新式戦車投入も見られるが一部に止まり、特に、空軍の弱体化は目を覆うばかりである。
ソ連からの武器供給が無くなり、経済力の弱体化で国産化もままならない。
核開発にはそれを補う目的があったが、国際社会との緊張を高め、逆効果となってしまった。

より本質的には、核開発と経済建設を並進させるとして、北朝鮮経済弱体化の根本原因である1960年代の経済軍事化路線を引き継いでしまったことは致命傷になりかねない。
言葉こそ並進路線だが、実質は社会と経済の軍事化、硬直化である。
長い停滞の時代が継続することになるが、金正恩新政権に対する国民の失望と不満が高まる中、いつまで現体制が存続するかは保証の限りでない。

.
河信基
河信基
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事