河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

朝米和解のプロセス

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 前回、「北朝鮮は金日成主席が『核は持たない』と約束したことがあり、核を持たざるを得ない状況さえ改善されれば、北が核を放棄することも十分にありえる。そのための合理的な提案ができるか、オバマ政権の外交能力が問われている」と書いたが、オバマ政権はまだ逡巡しているようだ。
 結論から言えば、オバマ政権は北朝鮮政権についてその成立から現在に至る情報が決定的に不足し、従って的確な分析が出来ていないようである。

 表面的な現象に目を奪われて、「体制は不安定」「暴発、崩壊の可能性もある」と場当たり的な診断をしている。
 「予測不可能」に至っては「予測できない」と自己の能力不足を認めたも同様である。

 米国のデービース北朝鮮担当特別代表は「若干の進展」「画期的な進展には程遠い」と述べるにとどまり、協議の内容は明らかにしなかったが、米国が要求するウラン濃縮活動の停止と北朝鮮が求める食糧支援の間で妥協が成立しなかったと見るのが妥当であろう。
 次回の日程は決まらなかったが、ニューヨークチャンネルでの再調整を経て仕切り直しということになろう。

 デービース特別代表は「金正恩新体制下でも、北朝鮮の交渉スタイルなどに大きな変化はないことは確認できた」と述べた。
 私は「金正恩新体制は集団指導制であり、合理的な政策へと動いている。オバマ政権がそれを理解できるかが鍵」と指摘したが、まだ時間が必要なようである。
 
 日本のマスコミはと言うと、米側に偏り、北の状況がやはり良く分かっていない。
 例えば、産経新聞社説は「協議の最終目的は、核兵器の放棄こそが賢明な選択肢と北朝鮮に悟らせることだ。金正日総書記の死からわずか2カ月後に協議に応じた背景には北朝鮮の切羽詰まった事情がある。深刻な食糧不足」云々と、破綻した従来の域を出ない。
 「前のめりの支援が北の核兵器開発を進行させ、独裁体制の延命を後押しした」云々といった認識では、これまでがそうであったように、今後も、事態が悪化すれこそすれ、進展は望めない。
 産経の主張は「北朝鮮脅威論」を煽り、日本の軍拡を進める稚拙な時代錯誤論である。

 それとはやや異なり、毎日社説は「北朝鮮は過渡期にある。盤石の体制とは思えない」としつつ、「北朝鮮が米国の核専門家に見せつけた寧辺のウラン濃縮施設以外に、同様の施設がおそらく複数、稼働している可能性が極めて高い」と早急な対応が必要と訴えている。
 これは北朝鮮の硬軟両様の外交戦略をそれなりに見ている。

 毎日新聞が25日付夕刊トップで報じた朝鮮労働党の内部文書、今年1月6日付けで党幹部に配布された「強盛国家建設における朝鮮労働党の経済路線と任務」は、「黄金島50年間貸し出しは我が国の利益に合致しない。我が国の実情に合う方法を提案し、着手すべき」「(南浦港や羅津港拡張工事については)中国政府から経済的利益を得る立場を堅持」と対中経済協力の見直しと、「北南経済協力委員会の活動正常化」「日本の民間団体との経済協力推進」と韓国、日本との経済協力を強調している。
 だが、それをもって北朝鮮経済が苦境にあるとするのは一面的で、為にする論である。

 それはむしろ、私が金新体制発足直後から指摘している経済の合理的運営化の流れを確認するものであり、ある意味で当然と言えよう。
 韓国貿易協会調査によると、2011年の朝中貿易額は前年対比で60%以上増の56億3000ドル(約4300億円)となり、昨年はさらに増えている。鉱物資源、衣料製品などの対中輸出が107%増、輸入39%増と収支構造も大幅に改善されている。
 経済全般は上り坂だが、対中依存度が高まり、韓国、日本との交易拡大でバランスを取りたいところであろう。

 北朝鮮も米国も、合理的に考えれば着地点は意外と近い。
 狭い国益を超えた共通の合理主義が鍵である。

 米朝協議が23日、24日と北京で行われている。
 北朝鮮代表の金桂寛・第1外務次官は5時間半にわたる23日の会議終了後、「真摯な話し合いができた」、米国代表のグリン・デービース北朝鮮問題特別代表は「実質的で真剣だった。多くの問題を話し合った」とそれぞれ語り、今後の協議に期待感を示した。

 焦点はウラン濃縮活動停止と食糧支援のリンケージの方法論であり、その限りでは深刻な対立はない。金正日総書記死去直後から北朝鮮はニューヨークチャンネルを通して米国と非公式協議を重ねており、詰めの段階といっても良かろう。
 27日から始まる米韓合同軍事演習問題で対立しているとの指摘もあるが、織り込み済みのことであり、ことさら問題とは成るまい。

 私が以前から指摘しているように、ウラン濃縮問題は一昨年暮に北朝鮮が米科学者を招請して実験施設を公開してから表面化した。
 北は交渉カードとして手の内を明らかにしたのであり、論理的には、米側の対応次第でいくらでも解決できる。
 北の食糧事情が厳しいことが背景の一つにあるが、それ以上に看過してはならないのが金正恩新体制の姿勢である。

 労働新聞などを分析すると、新体制は金正恩を統合の象徴とした集団指導制の方向で動き出し、政策全般に合理性が復活していることが読み取れる。
 対外政策も例外ではなく、米側が北朝鮮の体制安全と経済開発に資する合理的な提案をすれば、協議は進展するだろう。

 米側が非合理な強圧的なしせいにこだわるようだと、北は全く異なるオプションを選択するかもしれない。
 イランとの連携を深め、二面から米国を揺さぶる作戦である。
 
 北朝鮮は金日成主席が「核は持たない」と約束したことがあり、核を持たざるを得ない状況さえ改善されれば、北が核を放棄することも十分にありえる。
 そのための合理的な提案ができるか、オバマ政権の外交能力が問われている。

 ヌーロンド米国務省報道官が19日(現地時間)の定例ブリーフィングで、「昨日、北朝鮮と食糧支援問題に関連する実務レベル(technical - level)の議論をニューヨークチャンネルを通じて行った」と明らかにしたが、金正日委員長逝去後に行われた朝米政府間公式接触であるだけに注目される。
 金正恩新体制は金委員長の生前の方針通りに対米交渉を早期に進めていくと読める。
 並行して、対中関係でも大胆な行動を起こすと見られる。

 ヌーロンド報道官は「北朝鮮が喪の期間にあるため、年内に対北栄養サポートの問題が決定されることは難しい。まだ解決しなければならない多くの問題があり、引き続き議論すべきだ」と述べ、北朝鮮次第との立場を示した。
 クリントン国務長官は金委員長逝去に弔意を表明した。夫のクリントン大統領が金日成逝去に「哀悼」の意を表明したことに比べると控え目だが、「朝鮮半島の平和と安定維持が重要」と強調し、中国と歩調を合わせる姿勢を明らかにしている。

 存在感を高めている中国は胡錦涛国家主席が習近平副主席と共に北京の北朝鮮大使館を丁重に弔問し、金正恩新体制を支えていく意思を内外に明確にした。
 韓国政府も南北関係の安定維持を重視している。

 その意味では北朝鮮新体制を取り巻く国際情勢はソ連崩壊後の混乱最中であった1994年の金正日体制発足時よりも有利な条件にある。
 問題は当時に比べて低下した国力の回復、食糧問題をはじめとする経済再建であるが、実はそれほど難しいことではない。中国式の改革開放政策を採用すれば済むことである。

 昨年5月から4度も訪中しながら最後まで躊躇っていた父親に代わり、金正恩が張成沢国防副委員長らの助言を得ながらゴーサインを出せるか、いきなりリーダーシップが問われる。
 金正恩の資質は今後具体的に問われるが、『金正恩氏デビューで北朝鮮の改革開放が始まった』(エコノミスト11・9)で指摘したように、スイスで合理主義的な教育を受けた開明的で改革志向の人物であることは間違いない。
 例の料理人も「正恩氏が17歳の頃、地方からピョンヤンに向かう列車の中で5,6時間二人だけで話した。『何で我が国の食料品店には品物がないのか。中国のような政策をとらないとダメだ』と嘆いていた」と回顧している。
 重石がとれて資質を全開できるか、いよいよ真価発揮の時である。
 
 偉大すぎる父親の影を引きずりながら孤軍奮闘し、倒れた金委員長の逝去は残念なことである。
 だが、新指導者が危機をチャンスに変え、旧時代に捕らわれない新思考の内外政策を展開することを期待したい。 

 ジュネーブで2日間持たれた第2回米朝高官協議が25日終了した。
 7時間余の協議の内容は明らかにされていないが、北朝鮮の金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官は「朝米関係を改善する信頼構築問題を集中的に議論した」と述べ、進展があったことを強調しながらも、「一部の問題でまだ意見が食い違っている」と、年内の第3回協議開催に期待した。ボズワース米国北朝鮮政策特別代表氏も「いくつかの点で接近したが、6者協議再開合意に達するにはさらに時間が必要だとの結論に至った」と語った。
 
 今回の協議で北朝鮮が核実験やミサイル試験中断、IAEA視察団員復帰などを受け入れたとの観測が出ているが、米国が6者協議再開の核心条件とするUEP(ウラン濃縮)中止問題に対しては見解が分かれた。
 このUEP問題が北一流のくせ球である。

 金正日国防委員長は協議直前に訪朝した中国の李克強・副総理と会見し、無条件での6者協議開催で合意している。
 日本のマスメディアは「日米韓が結束してUEP(ウラン濃縮)中止など5項目を開催条件として北に突きつけて追い詰めている」と伝えるが、甘い。
 UEP(ウラン濃縮)問題は米国を交渉の場に引き出す撒き餌と考えた方が良かろう。

 そもそもUEP(ウラン濃縮)問題は北がイッシュウ化したものである。
 昨年11月に訪朝したヘッカー米スタンフォード大教授が戻ってから、スタンフォード大のホームページに同月20日付で報告書を掲載して明らかになった。それによると、ヘッカー氏らは同月12日に寧辺の核関連施設を訪れ、北朝鮮の原子力総局の担当者らから、軽水炉の建設現場と「最近完成したばかりの近代的なウラン濃縮施設」に案内された。北朝鮮側は「遠心分離器が2千基」「燃料用低濃縮ウランを製造している」と説明。設備はすべて国産で、遠心分離器は青森県六ケ所村とオランダ・アルメロの濃縮施設を「モデルにした」とも主張した。
 施設はかつて燃料棒製造棟があった場所で、直径20センチ、高さ1.8メートルほどの遠心分離器を整然と配置。「近代的で清潔」で「衝撃を受けた」と記した。北朝鮮側の説明では昨年4月に着工し、同氏の訪問の数日前に稼働できるようになったという。
 施設の幹部は同氏に「我々は、生き残るために独自の軽水炉建設を決めた。6者協議は喜んで進めたいが、前向きな合意を待つことはできない。(寧辺の施設を)軽水炉と試験的な濃縮施設に転換する」と語ったという。
 ロスアラモス国立研究所長を務めたヘッカー氏は、施設が実際に稼働しているかの独自の検証はできなかったとした。高濃縮ウランの製造能力を尋ねると、「制御室のモニターを見れば、低濃縮ウラン用に設定されていることが誰にでもわかる」との回答があったと指摘したうえで、条件さえそろえば同施設で年に低濃縮ウラン2トン、または高濃縮ウラン40キロが生産可能と指摘した。
 http://www.asahi.com/special/08001/TKY201011210234.html
 
 ウラン濃縮はプルトニウムの再処理と違って大規模な施設は必要なく、衛星などでの追跡・監視は難しい。プルトニウム型に比べて兵器化が容易であり、テロリストの手にも渡りやすい。
 米政府は驚き、ボズワース北朝鮮政策特別代表らを韓国、日本などに派遣して善後策を協議している。
 つまり、北朝鮮のショック療法に乗せられたのである。過去2回の協議で北が余裕を見せているのは主導権が自己にあると自覚しているからに他ならない。

 中国、ロシアはその辺を見抜いている。ヘッカー報告書についても「専門家の個人的意見」としている。
 朝米はニューヨークチャネルなどを通して、北朝鮮ペースで今後の協議を練っていくことになろう。

 だが、北にも決め手があるわけでもない。シリア、リビアの政変で「闇市場」は急速に縮小し、北の恫喝にも限界がある。
 北が望む韓国頭越しの朝米関係正常化は難しい。
 せいぜい食糧支援引き出しのカードに使うしかなかろう。

 7月28日、29日にニューヨークの米国連代表部で朝米協議が1年7カ月ぶりに持たれた。共同報道文もなく、具体的な成果はなかったが、朝米代表は「建設的で実務的であった」と口をあわせ、対話の継続を確認しあった。
 今後解決すべき相互の対立点が明確になったことが、成果と言えるだろう。双方が原則論を述べ、相手の主張にジッと耳を傾け、相違点を再確認した。今後はその溝を越えるステージに移行するが、朝米代表はともに「事は実務的に解決できる」と手応えを感じたと読める。

 こうした結果はこれまでの流れから十分に予測できた。
 朝米間には巷間言われている“深刻”な対立点は、客観的にはすでに消滅しているからである。
 そうした認識さえ共有できれば、現存する溝は、主観的な不毛の争いを繰り返すことなく、対話と相互譲歩を積み重ねる中で十分に越えることが出来る性質のものである。

 クリントン政権末期、相互に高官が往来し、現職大統領の訪朝までタイムテーブルに載っていた朝米は、保守党のブッシュ政権の誕生で雲行きが変わり、“反テロ戦争”で一挙に対立局面に転換した。
 “反テロ戦争”なるものは、アルカイーダなる強迫観念に駆られた妄想に近い。それは本質的にアメリカの戦争、より具体的には、ネオコンなる特異な突然変異種に操られたキリスト教原理主義者(福音派)のジョージ・W・ブッシュの戦争であった。
 ブッシュが去り、その追随者であったブレア、小泉らが政治舞台から消えた今、反テロ戦争なるものは過去の厄介な遺物でしかない。
 
 事実、米英日など旧有志連合は膨大な直間接的戦費負担により財政破綻の危機に直面し、無駄な戦費削減に迫られ、アフガン・イラクからの撤退など、事実上、ポスト“反テロ戦争”へと大きく舵を切らざるを得なくなっている。
 それとともに“反テロ戦争”の前線拠点であった中東の親米独裁政権が次々と切り捨てられている。いわゆるジャスミン革命はそうした潮流の中で起きた政治現象である。
 現実的なテロの脅威も、ノルウェーでの無差別爆弾テロが示すように、その危険性は、以前はブッシュの同盟者であったキリスト教原理主義や極右の側から増している。

 アフガン、イラク戦争で頂点に達した“反テロ戦争”は事実上、終焉し、熱病に侵された世界を正常化するポスト“反テロ戦争”の新秩序作りが始まっている、と私は考えている。
 そうした世界認識はまだどのメディアにも見られないが、混沌とした世界情勢を統一的戦略敵に理解するにはそれしかあるまい。

 “反テロ戦争”の終焉と、それに伴う根本的な国際政治の変化は、朝米関係にも強い影響を及ぼさざるをえない。

 ブッシュ政権は北朝鮮をイラク、イランなどともに「ならず者国家」、要するに、国際テロ組織・アルカイーダの秘密協力者とみなし、公然と「核を含む先制攻撃」の攻撃対象として、圧迫した。
 それに対して北朝鮮が身構えるのは国家安全保障上、無理からぬところがある。二度の核実験と、米国が現在最も問題視するウラン濃縮問題もそうした中で起きた。
 中国が北朝鮮を擁護し、同盟関係を再確認したのも、軍を中心にそうした認識があったからである。

 無論、北朝鮮にも核開発を秘密裏に進めるなど、国際合意に背く点が多々見られる。
 しかし、日本の原発建設、特にプルサーマル計画の背後に、核燃料再処理によってプルトニウムを蓄え、いつでも核爆弾に転用できる態勢を整える秘密計画が正力松太郎・初代科学技術庁長官−中曽根首相ラインで進められてきた事実が最近、明らかにされているように、その種の動きは米国にも、日本にもあった。日本のマスコミは事あるごとに、北朝鮮は合意を破ってきたと枕詞のように繰り返すが、目糞鼻糞を笑うような面がある。

 “反テロ戦争”の悪夢から醒めつつある今、既存の主観的な対立を整理、止揚し、互いに歩み寄り妥協点を見い出す余地が無限に広がっている。
 朝米協議はその試金石となろう。
 朝米協議が失敗すると、朝鮮半島は新冷戦の舞台にされてしまう危険性がある。それはポスト“反テロ戦争”の最悪のシナリオである。
 http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/42301565.html 


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