河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

ウリ式市場経済に向かう北朝鮮社会

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 北朝鮮が金剛山開発に釈迦力になっている。
 『証言北ビジネス裏外交』に詳しいように、同事業は金正日総書記が後継者時代から力を入れてきた国策事業であるが、行きつ戻りつで行き詰まり状態になっている。

 直接の原因は08年7月に韓国人観光客が統制地域に紛れ込んで射殺された事件であるが、より根本的な原因は北側が韓国側との協約を遵守しないことにある。
 北は金剛山開発に韓国の現代グループと50年間の事業独占契約を結び、1998年からホテル、ゴルフ場、インフラ整備などに3億2千万ドルが投じられてきたが、北側は昨年、韓国政府資産の没収を通告し、今年に入って現代の独占権剥奪と資産没収を通告した。
 こうしたことは在日企業が長年経験し、「北に投資するとすべてをなくす」と言われてきたが、同じことが繰り返されつつあるわけである。
 
 これでは北朝鮮に投資する物好きな企業は現れまい。
 朝中投資協定と中国政府のバックに守られた中国企業が進出し、いいように買い叩くだけである。 

 金剛山問題は北朝鮮が国際投資を呼び込めるかどうかの試金石になる。
 金総書記は本気で国際投資を呼び込もうとするなら、謙虚に国際法の基本から学ぶ必要がある。
 金総書記や後継者の気分に左右されるようでは法治国家とは言えない。国内はともかく、外国との取り決めは何があっても遵守するとの姿勢を示さなければ外資誘致など絵に描いた餅である。
 特に紛争が起きたときにそれが試されるが、北にはそれがまだ理解できない。

 韓国との関係も法的に明確にする必要があろう。
 同族だからと甘えず、相互の協約は国際ルールにしたがって遵守しなければならない。
 そのためには南北が法主体となること、つまり国交樹立が分かりやすい。

 北は韓国に野党政権が誕生すれば自分たちの要求が通りやすくなると考えているふしがあるが、勘違いである。北の実情を知った韓国民の対北意識は大きく変化している。
 民主化の伝統を受け継ぐ野党政権が再登場すれば、これまでの経験を生かし、人権、民主化でより厳しい条件を付けてくる事が予想される。
 その意味では朴正煕独裁政権の流れを受け継ぐ与党政権の方が話しやすいという指摘にも一理ある。

 8月30日、李明博大統領は対北朝鮮強硬派の玄仁澤統一相を新設の大統領統一政策特別補佐官にし、後任として南北秘密接触にかかわってきた柳佑益(リュ・ウイク)前駐中大使(61)を内定した。任期切れまで1年半、北朝鮮との対話に舵を切る可能性がある。
 金総書記もいよいよ最終決断をする正念場である。

 金正日外交の久方ぶりの成果と言って良かろう。
 食糧支援獲得という背に腹は代えられない事情があったとはいえ、実利主義のロシアを引き込んで韓国に対話圧力をかけ、外交の幅を広げたことは評価できる。
 今後とも実利優先からぶれず、自己の経済的地勢学的メリットを最大限踏まえ、周辺国との地道な交渉を重ねれば、資源大国・北朝鮮の未来は自ずと開けてこよう。

 24日のメドベージェフとの会談で金総書記は、ロシアから北朝鮮を経て韓国に30年にわたり天然ガスを供給するパイプライン建設に合意した。メドベージェフ大統領は首脳会談後、「ガス協力に関しては成果が出た」と胸を張った。
 一見、ロシアが押しきった形だが、北朝鮮側が得るメリットは計り知れない。通過料だけで毎年1億ドルが転がり込んでくるだけでなく、韓国は言うに及ばず、中国、日本のエネルギー需給にも少なからぬ影響を与え、北朝鮮の存在感は否応なく高まるからである。

 レアメタルなど豊富な地下資源開発を絡めれば、北朝鮮が東アジアの成長エネルギーを自国の経済開発に取り入れることが十分に可能となる。
 110億ドルの対ロ債務も現実的な解決の道が開ける。

 ウラン濃縮作業の即時中止など非核化で具体的な行動を求めて南北対話にブレーキを掛けている韓国の李明博政権は今回の朝ロ合意に否定的な見方を示すが、李大統領の任期は残り1年余。雑音は一切無視して、2015年開通のパイプライン建設に向けて粛々と進めば良い。
 海上輸送の3分の1という輸送コストは韓国にも魅力的である。次期与野党大統領候補はともに南北対話再開に積極的であり、自ずと合理的な選択をしてこよう。

 そうしたシナリオは『証言北ビジネス裏外交』ですでに指摘したが、問題は金総書記とその後継者がぶれず、ロシアとの実務ベースの合意を最後まで遵守できるかにある。
 それを政治外交的に利用しようと性急に走り、金剛山開発事業のように外部との合意を一方的に破棄するようでは逆に信用を失い、全ては水泡に帰する。国際社会との協約、合意を守れるか、それが改めて問われる。

 前回指摘したように、金総書記が当初、韓国へのガスパイプライン敷設に消極的であったのは、ロシアが自国を韓国への通過点としか見ていないことにプライドを痛く傷つけられたからである。ロシアとしてみれば、北朝鮮の最大37倍規模の韓国市場がなければパイプライン敷設のメリットがない。
 今回、金総書記は事実上、彼我の経済格差を認め、実利を優先した。北朝鮮経済は韓国と一体となってはじめて付加価値がつくということを理解したとみられる。
 そうした現実を踏まえた実利主義的な経済外交のみが北朝鮮経済を蘇らせる。

 日本もうかうかしていられない。北朝鮮経由の天然ガスパイプラインを無視すればコスト面でエネルギー安定供給は大きな打撃を受け、日本経済は国際競争力を失う。
 北朝鮮との関係改善は日本経済再生の必須条件となってきたと言えよう。 
 
 

金正日訪ロを読む

 韓国の聯合ニュースは金正日総書記を乗せたとみられる特別列車が20日、ロシアのハサンに到着したと報じた。ロシア紙イズベスチヤも19日、「メドベージェフ大統領と金総書記が来週、東シベリアのウランウデで会談する見通し」と伝えた。
 金総書記の訪ロは9年ぶりとなるが、狙いは比較的はっきりしている。
 訪ロは当初6月末に予定されたが、ロシア側が事前協議で天然ガスパイプラインを北朝鮮経由で韓国と結ぶ問題で折り合わず、延期されたとロシア側が明らかにしている。その問題で折り合い、相互の利害が一致したということである。

 金総書記はロシア国境に近い北東北部に滞在しながら訪ロの機会をうかがっていた。
 ゴーサインは朝鮮中央通信の19日報道である。ロシア政府が北朝鮮に食糧5万トン(小麦粉10億円相当)を無償で提供することを決め、最初の運搬船が同日、咸鏡南道の興南港に到着した。ロシア政府は世界食糧計画(WFP)を通じ500万ドル相当の食糧も提供しているとし、「両国の伝統的な友好・協力関係の表れだ」と伝えた。
 金総書記にとっては、水害で一段と緊迫化する食糧支援獲得が喫緊の課題である。

 私が以前から指摘している食糧獲得外交はいよいよ佳境に入ってきた、と読める。
 北朝鮮は韓国民間団体による支援食糧配給状況のモニタリングに応じ、米兵遺骨発掘問題でも米側の協議提案を受け入れるなど、軟化姿勢を顕著に示している。食糧不足問題が体制問題のアキレス腱となっており、金総書記はロシアがさらなる食糧支援を約束すれば、ロシア側に大幅に歩み寄る可能性がある。

 インタファクス通信は19日、過去最大の総量5万トンに及ぶロシアの食糧支援はメドベージェフ大統領が決断したと伝えており、最初のハードルを越えた両者の会談では相当に突っ込んだ現実主義的な話し合いがもたれることは間違いあるまい。
 会談ではロシア・北朝鮮・韓国を結ぶ天然ガスパイプラインの建設問題で一定の方向性が出てこよう。ロシアはすでに韓国と2015年から天然ガス約750万トンを輸入することで基本合意しており、ロシアの試算ではガス通過料など北朝鮮の収入は年間1億ドル以上になるという。

 韓国の李明博大統領の姿勢はまだはっきりしないが、任期は一年余りである。
 与党の次期有力大統領候補の 朴槿惠(パク・クネ)前ハンナラ党代表は米国の外交専門紙フォーリン アフェアーズ最新号に寄稿し、「南北間信頼を再建する方案を模索しなければならない」と主張し、北朝鮮との対話に消極的な李大統領とは距離を置いた。
 野党の有力候補・孫学鶴(ソン・ハッキュ)民主党代表も南北対話再開に意欲的である。
 朝ロ会談の結果次第で李政権が歩み寄る可能性がある。
 
 6か国協議再開問題問題なども話し合われようが、あくまでも付随的な議題にとどまるだろう。

 金総書記は食糧問題をはじめとする経済再建には市場経済の大幅な導入しかないとの判断に傾いているとみられる。だが、2002年7月にもそうした判断を示しながら、後退し、国内経済を混乱させた経緯がある。
 今回は最後のチャンスとなろう。

 北朝鮮の食糧事情について北当局は統計を隠しているため推測するしかないが、政治的な思惑絡みの謬見がけっこう蔓延っている。
 米国などは北を追い詰める戦術的な思惑から「食糧難の地域があるが、全般的な食糧危機の状況ではない」と援助を小出しにしているが、絶対量が不足していると見るのが妥当であろう。
 皮肉なことだが、「北にコメはある。食糧不足ではない」は北の敵のスローガンとなっていることを知らねばならない。
 世界食糧計画は北当局の協力を得た現地調査を元に43万トンの緊急支援を求める報告書を作成したが、それが実態に近いだろう。
 
 配給制度がピョンヤンなど一部を除き崩壊したのは、絶対量が不足したからである。
 それを補って発展したのが市場であり、米などが山積みされているが、需給の極端なインバランスのため価格が高騰し、勤労者層にはなかなか手が及ばない。

 こうした問題は餓死者が続出した1990年代から表面化し、北当局も2002年の7・1経済改善措置以来、市場を事実上公認して急場をしのいできた。同措置は北経済社会の崩壊を食い止めたばかりか、1997年を底に北経済の微成長を支えてきた。
 私はそうした実証的な検証から内外で初めて、『金正日の後継者は「在日」の息子―日本のメディアが報じない北朝鮮高度成長論 (講談社)、『証言「北」ビジネス裏外交--金正日と稲山嘉寛、小泉、金丸をつなぐもの』で、「ウリ式市場経済化が北朝鮮経済再生の鍵」と指摘してきた。

 しかし、遺憾ながら2009年12月2日の電撃的なデノミネーションでその芽を摘んでしまった。直接の責任者である朴南基・労働党計画財政部長は更迭されたが、一部長の独断で出来るものではない。この愚策の背景についてはさらなる検証が必要である。
 いずれにしても、金正日総書記が市場経済化について一貫せず、するかしないかと行きつ戻りつしていることが問題を必要以上に深刻化させている。
 http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/43015425.html

 食糧不足問題は社会不安の最大要因となり、治安要員を増やして監視を強めざるを得ない悪循環に陥っている。
 2012年が迫っているが、北全土に3万5千ある金日成像に人々が食糧不足の原因を見たとき、暴動が頻発し、北社会は危機的な状況に陥るだろう。漁船に乗って韓国に逃れる例が頻発しているが、大量の漁船が南に向かうか、大量の難民が中国国境に押し寄せる事態もありうる。
 
 そうして事態を想定してか、北当局はヘルメット、盾など中国から武装警察隊用の装備を大量輸入しているが、治安強化では問題は解決しない。
 危機からの脱出の第一歩は、危機から顔を背けず、直視することである。そこからしかるべき対策が出て来る。

 市場経済化に向けた一貫性ある政策が必要であり、事態は緊急を要する。
 「コメは社会主義だ」と述べたのは金日成だが、米をはじめとする食糧問題の解決なくして北の未来はない。

 諸データーを冷静に分析すれば、北朝鮮経済再建の道筋は自ずと見えてくる。
 南北経済協力の結晶である開城(ケソン)工業団地の3月生産額は3472万ドル(約28億1440万円)と過去最高の伸びを示している。北朝鮮関連の経済指数でこれほど好調な数字はない。
 それを一般化することである。

 韓国統一部が5月18日に明らかにしたところによると、開城工業団地の昨年の貿易規模は14億4285万ドルで、前年(9億4055万ドル)比53.4%増加した。生産額も同26.1%増え、3億2332万ドルを記録した。入居企業は122社から123社と横ばいだが、入居希望企業が増えている。
 今年になってからも増加傾向は続き、統一部によると、開城工団に入居する韓国企業の1月の総生産額は3105万ドル(約25億200万円)を記録し、昨年12月比6.7%増加した。月間生産額が3000万ドルを超えたのは韓国海軍哨戒艦沈没事件が発生した昨年3月(3078万ドル)以来。3月は3472万ドルと過去最高を記録した。

 韓国哨戒艦沈没事件を受け韓国政府は昨年5月24日に対北朝鮮制裁措置を発表し、開城工団への新規投資が禁じられたが、実質的な影響はなかった。
 韓国側は入居企業に影響が及ばないように努め、北朝鮮も低廉良質な労働力提供に怠りはなかった。事実、北朝鮮労働者は昨年1月の4万2397人からことし1月末現在4万6194人、今年3月末現在、4万6302人と着実に増加し、生産増を支えている。
 北朝鮮による延坪島砲撃事件後、シャープ在韓米軍司令官が開城工団から韓国人をすべて撤退させるようにと韓国政府に圧力を掛けていただけに、開城工団を守り通した現場の南北当局者の努力は後世、大いに評価されることだろう。

 それは開城工団の維持発展で、南北の利害関係が完全に一致していることを端的に物語る。
 同団地は北朝鮮には労働者の賃金という形で正当に外貨を得る最大の窓口になっている。また、開城工団で勤務する労働者は安定した所得収入と衣食住環境で北朝鮮労働者の中でも恵まれた条件にある。
 他方の韓国企業も中国よりも低廉優秀な労働力を確保し、生産性が高く、収益を大幅に伸ばしている。

 それを継続的に発展拡大させる先に、北朝鮮経済再建の道筋が見えてくる。北朝鮮の豊富な労働力、地下資源、東アジアの臍という地理的な条件を韓国の技術資本と結合させれば、南北ともに経済的な相乗効果は計り知れないものがあろう。
 開城工団の成功は北朝鮮の改革開放、市場経済導入こそ北の未来を開くものであることを教訓的に示している。
 
 問題はその教訓を南北の為政者がどの程度認識し、具体的な政策に反映させることが出来るかにある。
 南北首脳会談一つ開けない昨今の南北の不毛な対立を見ていると、金正日総書記、李明博大統領ともに意固地になって国民の期待に応えているとは思えない。自分は絶対正しい、相手に非があると主張して譲らないのは李朝時代以来の朝鮮民族の党派主義的な宿痾か。
 
 それによって漁夫の利を得るのはいつも外国である。
 朝中国境の鴨緑江河口に浮かぶ北朝鮮領の黄金坪島と威化島の開発権を中国が取得し、工業団地などを建設する朝中経済協力事業着工式が8日、黄金坪島で開かれた。
 それに先立つ6日、北朝鮮最高人民会議常任委員会は政令「黄金坪・威化島経済地帯の設置」を決定し、「伝統的な朝中友好をさらに強化し、対外関係を拡大し、発展させる」として黄金坪島から開発を始めることを明らかにした。

 開城工団をモデルケースにしたとみられるが、50年間の使用権を5億ドルで中国に与えたと伝えられ、開城工団よりも条件はかなり悪く、買い叩かれた観がないでもない。
 韓国からの経済支援が途絶えた北朝鮮としては、背に腹は変えられなくなったということであろう。「強盛大国の大門を開く」と公約した2012年が迫り、中国資本の導入しか経済再建の手立てがないのである。

 後手に回る対応に、北朝鮮指導層内部でも不協和音が出始めた。6日、労働党政治局拡大会議が開かれ、金正日総書記の5月訪中について議論され、高く評価したと北メディアは伝えるが、額面どおりに受け取る事はできない。
 1981年12月に金日成主席が主催して以来、30年ぶりに開催された会議の目的は政治局常務委員、局員、局員候補30人の意思の統一を図ることにある。逆に言えば、意思の統一に亀裂が生じていることを意味する。
 昨年9月の党代表者会で失脚した朴南基党計画財政部長の後任に選ばれ、経済の指令塔役を期待されたばかりの洪錫亨書記・党計画財政部長が解任されたのは、そのことを示唆する。

 金正日総書記は江蘇省揚州に直行し、江沢民前国家主席との会談を求めた。その支援で胡錦涛主席から大規模経済協力を引き出そうとしたようだが、成功しなかった。国営新華社が「胡主席は経済支援ではなく、市場原理に基く投資を金総書記に求めた」などと会談内容をリークするなど、北の改革開放を求める中国の圧力が高まっている。
 延期されていた黄金坪島と威化島の朝中経済協力事業着工式が一転して行われたのは、北が中国に押し切られたことを意味する。
 http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/42955084.html
 
 市場を事実上公認した2002年の7・1経済改善措置以来、金総書記は市場経済化をするかしないかと行きつ戻りつしているが、時間はそれほど残されていない。
 ここは腹をくくって前へ進むしかあるまい。


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