河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

ウリ式市場経済に向かう北朝鮮社会

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 中国の北朝鮮消息筋によると、北朝鮮は10月30日午前11時を期して金融改革を断行し、午後2時から交換比率100対1で1000ウォンが10ウォンに交換された。
 北朝鮮の金融改革は1992年以来17年ぶりのことで、その背景が注目される。

 中国の北朝鮮消息筋の間では2ヶ月ほど前から「大々的な経済改革が行われる」との噂が流れていた。
 現在知られているところでは、交換額は1人当たりの最高10万ウォンという。
 電撃的な金融改革にピョンヤン市民はパニック状態に陥り、闇市場には元やドルに変える人々が殺到し、元やドルが暴騰している。

 今回の電撃的な金融改革の直接の狙いは、インフレ抑制とみられる。

 北朝鮮では02年7月1日の経済管理改善措置で賃金と物価が実勢に合わせて見直され、市場が事実上公認された。
 貨幣も従来の1ウォン、5ウォン、10ウォン、100ウォンに加え、200ウォン、500ウォン、1000ウォン、5000ウォン、1万ウォンが発行された。
 その結果、市場取引が活発化し、個人商が増え、経済はある程度活性化された。

 だが、その一方でインフレが激しくなり、政府の財政政策の足枷となっている。
 2012年を目標に経済再建を進める北当局としては、インフレ抑制は焦眉の課題となっていた。

 

 韓国統一部は国政監査資料で北朝鮮の鉱物資源の潜在価値を6984兆ウォン(08年基準、約534兆日本円)と見積もり、当面、東南部の端川(タンチョン)地域を対象に企業連合形態の民間投資を中心に開発を進める方針を明らかにした。
 韓国と北朝鮮の間にはすでに金大中元大統領、盧武鉉前大統領と金正日総書記との会談で資源の共同開発で合意を見ていたが、それがいよいよ具体的に動き出す。

 李明博大統領はこれまで北朝鮮との経済協力に消極的であったが、訪米中の先月21日、米国外交問題評議会(CFR)、コリア・ソサエティー(KS)、アジア・ソサエティー(AS)共催昼食会で「次世代韓米同盟のビジョンと課題」と題して演説し、「北核開発計画の中核部分を廃棄すると同時に、確実な安全保障を提供し国際支援を本格化するグランド・バーゲンを進める必要がある」と、積極姿勢に転じた。
 玄仁沢(ヒョン・インテク)統一部長官もそれを受け、6日の国政監査で李大統領が提示した「朝鮮半島の新たな平和構想」に基づき、「実質かつ根本的な南北関係の発展を模索する方針」を示している。

 李政権には「北(北朝鮮)米協議が頭越しに進められかねない」との危機感があり、韓国のイニシアチブ回復には一歩先を行く必要があるとの問題意識が生じている。
 北朝鮮からはすでに関係修復のボールが投げられており、温家宝訪朝で事態の急進展もありうる中、韓国もじっとしてはいられないところだ。金大中、盧武鉉両政権時代に下均しは終わっており(参照:『証言』第四章「潜在的な資源大国」と「資本・技術大国」の依存関係)、動き出せば早かろう。

 統一部が5日までに韓国鉱物資源公社のデータを用いてまとめ、民主党議員に提出した国政監査資料によると、北朝鮮に存在する約200種類の鉱物資源のうち、経済性のあるものは20種類余りに達し、主要鉱物の潜在価値は6984兆ウォン(2008年基準、約534兆円)と見積もられる。
 韓国は07年に北朝鮮が開発協力を希望した端川地域の3鉱山について3回の現地調査を行っているが、15の専門機関が昨年、事業妥当性を評価した結果、品位、採鉱条件などに優れた検徳(コムドク)の鉛・亜鉛鉱山、大興(テフン)のマグネサイト鉱山は十分に経済性があると判断された。他方で、鉱山のインフラ施設が老朽化し、改修・補修が必要とされる。
 統一部は今後、端川地域の鉱山開発を優先的に進め、端川資源開発協力特区の指定を推進すると説明した。
 http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2009/10/05/0300000000AJP20091005002100882.HTML

 韓国経済は現在、金融危機から順調に回復し、今年第1四半期は0.1%であったが、第2四半期は2.6%と、G20メンバー中でもトルコ6.4、メキシコ4.7、日本3.9、ドイツ3.8ポイント、南アフリカ共和国3.4ポイントに次ぐ。
 外貨準備も9月末現在で2542億5000万ドル。5月に142億9000万ドルと月間増加幅で史上最大を記録するなど、年内に過去最大だった08年3月末の2642億5000万ドルを超える見通しとなっている。
 国際通貨基金(IMF)は1日、韓国の来年の経済成長率見通しを2カ月前の2.5%から、日本などの主要国を上回る3.6%に上方修正した。
 
 中国、インドなど新興国への輸出増が韓国経済の牽引力となっているが、製造業の長期的な国際競争力強化には、コスト面などから北朝鮮の資源確保が絶対的な条件となる。
 李政権誕生後の南北関係停滞で先を越された中国に追いつき、追い越し、後を追いかけてくるであろう米国、日本などに決定的な差を付けるためにも、いつまでももたもたしていられないということであろう。

 金正日総書記が4月の憲法改正で「共産主義」を削除したことと関連し「共産主義は把握できない。社会主義はわたしがやってみせる」と発言したと、先月28日に金剛山で行われた離散家族再会行事で北朝鮮関係者が韓国報道陣に明らかにした。
 工業復調を受けて強気になっているように思えるが、「コメは社会主義だ」の公約を自力で実現するのは至難の業である。
 http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2009/09/28/0300000000AJP20090928001300882.HTML

 「150日間戦闘」総括でも「農業勤労者の献身的な闘争と全国、全民の支援で田植えやとうもろこし作付け、草取りなどが適時に立派に行われ、豊かな秋を迎えた」とあるだけである。最重要課題に掲げていただけに、満足すべき成果を挙げることができなかったと読むべきであろう。
 特に、肥料不足や日照りなどでトウモロコシの作況が悪かった。

 潘基文(パン・ギムン)事務総長は1日、「北朝鮮人口の70%が公共食糧配給システムに依存しているが、政府官吏らが配給量を低くし、1日に必要なエネルギー量の3分の1水準にも及ばない。人口の3分の1以上が飢えに苦しんでいる」と、国連総会に提出した報告書を通じて明らかにし、各国に食糧支援を訴えた。
 昨年12月に発表された国連世界食糧計画(WFP)と食糧農業機関(FAO)の共同報告書が今年北朝鮮人口のうち900万人が飢饉にあえぐと警告したことを追認したことになる。FAOは170万〜180万トンの食糧が不足と指摘している。

 北朝鮮の食糧生産額は一時増大したが、韓国に李明博政権が誕生したことで年間50万トンの肥料支援が中断され、再び後退もしくは停滞状態に入った。
 山岳地帯が多く、耕地が限られている北朝鮮では、食糧問題は建国以来の課題であった。工業が成長していた時代は、工業が農業を支援する機械化、化学化、電気化、水利化政策で収穫高は伸びたが、それでも人口増をまかなうのがやっとであった。肉類、魚類などの蛋白源は慢性的に不足し、韓国との平均身長で大きな差が付いてしまった。

 要するに、北朝鮮では構造的に食糧の自給は難しいのである。
 北当局は、自力更生もいいが、現実を踏まえた柔軟な対応が求められる。

 最近は北朝鮮も食糧事情の悪化を認め、朝鮮中央通信がロシア(9月25日)、ベトナム(28日)からの食糧支援を報じ始めた。
 北朝鮮赤十字会中央委員会の張在彦委員長は26日、南北離散家族再会行事のため金剛山を訪れた柳宗夏・大韓赤十字社総裁に対し、間接的にコメ・肥料支援を求めた。

 この状況をどう判断し、対応するかが重要である。
 それ次第で、北朝鮮と国際社会の溝を埋めることが可能となろう。
 
 苦しんでいるのは、北朝鮮の社会的な弱者であり、それに即した対応が求められる。
 国民に責任を負う北朝鮮当局とすれば、もっと国際社会に協調的な姿勢をとり、国際社会の支援の中で食糧問題解決に尽力すべきである。
 他方の国際社会は、北の食糧不足を弱点と付け入るのではなく、人道的な立場から支援に踏み切るべきであろう。
 そこから接点を広げ、核問題解決などにつなげていくのが英知と言うべきものではないだろうか。

 隣国の日本も見てみぬ振りをせず、早期に北朝鮮食糧支援の輪に加わるべきである。
 一部には北朝鮮の食糧不足を鬼の首でも取ったかのように喜ぶ風潮があるが、極めて憂うべき反人道的な現象であり、将来に禍根を残すことになりかねない。

 朝鮮中央通信社報道が「150日間戦闘」総括で「全国的な戦闘計画が112%達成」「工業生産は前年同期比1.2倍成長」と発表した数字については、検討する余地が多分にあることは言うまでもない。出所や数値が曖昧であり、これまでそうであったように、政治的な思惑から成果を水増しした可能性がある。
 以前から指摘していることだが、国際社会からの投資を誘致しようとするなら、北朝鮮も正確な経済統計公表が不可欠の条件であることを知らねばならない。

 そうした課題は残るが、全体としてみるならば、工業部門が上昇軌道に乗っていることは間違いない。
 当然と言えば当然である。鉄鉱石、無煙炭、金、銀、マグネサイトやタングステンなど世界有数の埋蔵量を誇るレアメタルなど、中国をはじめとする諸外国が喉から手が出るほど欲しがっている地下資源が豊富であり、北朝鮮も開発に力を入れているからだ。

 『証言』で明らかにしたように、北朝鮮工業の原動力は、日本の植民地時代から開発した製鉄など冶金工業にある。
 戦後は在日系の企業の協力で精密機械工業を発達させ、部分的に世界的なレベルに達している。

 そうした伝統的な日朝の経済的関係について安倍政権以降、制裁・規制の対象にし、断絶状態に陥らせてしまったが、愚の骨頂と言うべきである。
 拉致問題処理などを巡る政治の不手際を、経済にしわ寄せさせてしまったからである。日本の製品・技術が核・ミサイル開発に転用されたとするのは、木を見て森を見ない愚者の言である。

 一事が万事。三流の政治が経済合理性を無視して一流の経済に干渉したことが、今日の日本経済衰退の一因となっている。
 北朝鮮地下資源開発を中国、韓国企業などに取って代わられた現状は今後、日本の国際競争力にマイナス要因として作用するだろう。

 北朝鮮は毎年春、秋に外国企業を招いて国際商品展覧会を開催するが、今年もピョンヤンの三大革命展示館で先月21日から24日まで第五次ピョンヤン秋季国際商品展覧会が開かれた。
 中国、オランダ、ドイツ、スウェーデン、英国、オーストリア、オーストラリア、イタリア、インドネシア、ベトナム、フランス、フィンランド、ポーランド、香港、台湾の企業が、工作機械、電気・電子設備、輪転機材、石油化学品、医薬品、日用品、食料品などを展示した。無論、北朝鮮側も自慢の工作機械などを売り込んでいる。
 今年は例年になく盛況であったのは、米朝関係改善を見通してのこととみられる。
 
 日本が蚊帳の外に置かれている観は否めない。
 歴史的にみれば、1965年5月に在日企業家の尽力によりピョンヤンで初の日本商品展示会が開催され、日朝貿易発展の転機を開いた。(『証言』P178〜参照)
 国際商品展覧会の魁であった日本の企業が今は北朝鮮で一つも見ることができないのは、歴史の皮肉であり、日朝双方にとって不幸なことである。

 鳩山新政権は安倍、福田、麻生政権の失敗を繰り返すことなく、東アジア共同体につながる経済戦略的な展望を併せ持って対北朝鮮外交に臨む必要があろう。 

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 北朝鮮が4月20日〜9月16日まで総力を挙げた国民総動員の増産運動「150日戦闘」の総括に北朝鮮経済の現状と問題点が透けて見える。
 工業生産が前年比1・2倍に成長したと総括していることから、工業部門では昨年プラス3・7%(韓国銀行推定)のGNP成長率を記録した勢いが持続している。その反面、農業は思うような成果が挙がらず、北朝鮮経済のアキレス腱として残ったと読める。

 朝鮮中央通信社は24日、「強盛大国建設で転換的局面を開いた誇らしき成果」との報道で、「全国的な戦闘計画が112%達成された」と総括した。12%増というわけだ。
 特に「工業生産は前年の同じ期間に比べ1.2倍成長し、数百の対象が操業したり、再建された」とされ、工業部門が健闘した。
 具体的な成果を数字でみると、「鋼鉄、圧延鋼材などの鉄生産が数倍に激増」「プッチョン火力発電所連合企業所電力生産1・4倍」「石炭生産1・5倍。1200余の予備採炭場新設」「貨物輸送計画18%」「工作機械26%」「発電機14%」「電動機22%」「変圧器20%」「セメント生産1・4倍」「1000余の工場、鉱山が年間計画を超過達成」などの成果が記録された。
 http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/09/09-25/2009-0925-003.html

 社会主義圏消滅で大打撃を受けた工業部門は、1997年を底に徐々に上向いている。
 近年は水力発電所の整備拡充や石炭増産による火力発電強化などでエネルギー事情が好転し、工場の稼働率が高まっている。「CNC工作機械工業は先端を突破」とあるように、工作機械のレベルも高い。

 「150日戦闘で得た誇らしき成果は、2012年に強盛大国の大門を開こうとする金正日同志の領導、革命の首脳部の周囲に一心団結したわが軍隊と人民の不屈の精神力が抱いてきた高貴な結実」と自画自賛するように、こと工業部門に限ってみれば、自信を回復しつつあるとみえる。
 高度成長を続ける中国が追い風になっていることは明らかである。

 もともと北朝鮮は地下資源、水力資源が豊富である。
 教育普及率が世界最高水準にあり、労働力の質量ともに申し分ないから、工業が発達しないほうが不思議である。
 米国による長期にわたる経済封鎖という悪条件を考えれば、キューバなどよりもかなり善戦している部類に属する。
 


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