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朝米首脳会談が近付くにつれ取り残され感が高じ、日朝首脳会談の必要性が与野党から叫ばれる最中、朝鮮中央通信論評(5月12日)は「拉致問題は解決済」と従来の主張を繰り返した。その上で「日本はひねくれている。縁談に葬式の話を持ち出している」と非難し、「朝日関係は本質的に被害者と加害者の関係」であるとして過去の植民地支配への謝罪と賠償を求めた。
金正恩国務委員長の意向を反映したものであることは言うまでもない。 それをどう読み解くか、今後の展開を占うキーポイントになろう。 金正恩のカウンターパートナーとなる安倍首相はというと、14日の衆院予算委員会で岸田総務会長が「対話が欠かせないのではないか?」と質問したことに、「日朝首脳会談は(拉致問題解決に)繋がるものでなければならない」と、これもまたここ十年一日のごとき見解を繰り返すのみであった。「トランプ大統領から直接話を聞きたい」と他力本願なのは、当人も打つ手を考えあぐねていることを物語る。 金正恩委員長が「拉致問題は解決済」とするのは、「(横田めぐみさんら)8人死亡、5人不明」と02年の日朝初の首脳会談で金正日委員長が小泉首相に通告した内容が不動であることを示している。 当時、金正日委員長は小泉首相に拉致を認めて謝罪し、蓮池薫氏ら5人を送還することを約した。北朝鮮としては異例の対応であり、日本との関係正常化と賠償獲得のために、もはや隠す必要はなくなったとの判断に基づく。 その認識は金正恩委員長にも引き継がれている。 ところが、拉致問題で名を売って首相の座に駆け上がった安倍氏は「全員生存全員奪還」を公約に掲げ、交渉に前提条件を付けて自ら選択肢を狭め、10年が徒労となった。 生存説に科学的、客観的な根拠があるわけではない。日本のマスコミが連日競って大きく報じた安明進元北朝鮮工作員らの曖昧な情報が全てであったが、安自身が後に「生きていると言えば、飛び付いてきた。捏造した情報を売った」と証言している。 昨今はテレビの若いキャスターが「生存」と何の疑問もなく枕詞のように口にする。だが、冷静に見れば、拉致問題では明白な加害者である北朝鮮が「死んだ」と自白しているのに、「生きている」と被害者側が言い張るのがいかに奇っ怪な光景であるかが分かろう。 加害者を庇い、免罪しているも同然である。あるいは、北朝鮮はそこまで悪でない、生かしてくれていると幻想でも抱いているのであろうか。 私も裏方で少々手助けした08年の日朝接触(14年のストックホルム合意の伏線となる)が大きな転機になるはずであったが、福田首相退陣もあってこれも頓挫した。 安倍首相は「北朝鮮は再調査の約束を反故にした」と主張し、日本のマスコミも追随してきたが、事実に反する忖度報道である。北朝鮮側は再調査結果を出したが、「8人死亡5人不明」の内容であったため、日本側が受け取りを拒否したのが真相である。 私は日朝文化の衝突と呼んでいるが、日本には骨を見ないと死んだと認めない葬送文化があり、横田夫妻ら被害者家族に同情が集まっている。 安倍首相も下手に扱うと公約違反と非難され、支持率急落を招くと動きが取れなくなっている。悲しいかな、せいぜいトランプ大統領に抱きついて何かしているアリバイ作りで交わすしかないのが偽らざる実情である。 しかし、米国も韓国首脳も安倍首相が「全員生存」と言うほど何か根拠はあるのかと首をかしげる。さらに、核問題解決に支障を来すのではないかと敬遠され、孤立するだけである。 安倍首相としては、拉致問題を掲げて被害者の立場を主張している限り、北朝鮮からの歴史修正主義非難を交わし、コアの支持層である保守右翼層を繋ぎ止められるとの計算もあるであろうが、それも限界である。 果たして「全員生存全員奪還」に呪縛されたままで良いのだろうか? 「鬼畜米英」で突き進んだ先の戦争の教訓が示すように、安全保障問題が感情問題で揺れるのは国が誤る危険な兆候である。 北朝鮮情勢は急速に動いている。自ら手足を縛らず選択肢を広げて対応する冷静沈着な判断が待たれる。 |
日朝関係
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韓国、中国など周辺国との関係が歴史認識で緊張し、1月訪米の目論見まで崩れ、外交が行き詰まっている安倍政権に、北朝鮮から千載一遇のエールが送られてきた。
シュミットGoogle会長らの訪朝に同行して7日から訪朝していたナムクン氏が11日、朝日新聞とのインタビューで、北朝鮮が安倍政権との対話に前向きであると述べた。 今時、安倍氏にラブレターを送ってくるのは、世界広しと言えども北朝鮮くらいである。 拉致被害者家族会に今年上半期までに結果を出すように期限を切られた安倍首相には好機である。 他方で、越えるべき障害は小さくなく、政権発足早々、見識と決断力が試される。 安倍首相は北朝鮮の人工衛星打ち上げと関連した制裁強化の意向を示していたが、肝心の国連の制裁決議はまとまりそうもない。 そもそも、北朝鮮の衛星ロケットをミサイルと伝えるのは世界でも日本だけ。日本が神経質になっているほど他国には危機意識がない。 中国や、国連非常任理事国の韓国とは領土問題や従軍慰安婦問題で対立して協力を求めることも出来ず、米国も本音は消極的である。 Google会長には、民主党大統領候補に立候補したこともある有力政治家のリチャードソン前アリゾナ州知事が同行し、朝米対話再開の機会をうかがっている。 韓国系米国人のナクソン氏はリチャードソン元州知事の政治顧問であり、一人で日本に立ち寄ったのは、対話再開の流れに安倍政権を誘うためであった。 安倍氏が特使を送ろうとすれば、北朝鮮は即座に受け入れるだろう。 北朝鮮が対話の窓を開いている以上、安倍氏が臆病風を吹かせていては格好がつくまい。 韓国の朴クネ次期大統領は北朝鮮との対話再開に意欲を示している。 それが朝米対話前進への呼び水になる可能性がある。 その流れに乗り遅れないためにも、安倍氏はここは腹をくくるときである。第一次安倍内閣は大局を見れず、自滅してしまったが、同じ愚を繰り返すようでは脳がない。 日朝間には前民主党政権時に、北朝鮮で亡くなった日本人の遺骨収集や墓参が部分的に実現した。 これは日朝対話の貴重なチャンネルであり、安倍政権は当然、その継承拡大を目指すべきである。 独自制裁などと言葉は勇ましくとも、効果は全く期待できない。 政治的なパフォーマンスにより、民主党政権が作った対話の小さな道まで塞ぎ、後退させるようになれば、批判は免れない。 安倍氏は拉致問題は自分の政権で解決すると述べたが、第一次安倍内閣から同じことを言い続け、6年以上が経った。 頑なになり、また解決をずるずると先伸ばしすることは、国民への重大な背信行為となる。 拉致問題を政権浮揚のために利用するなどという姑息な考えは金輪際捨て、電撃訪朝した小泉元首相のように、体をはって問題解決にあたる気概を見せるときである。 |
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北京で日朝協議が始まった。その一方で、清津会関係者五人が北朝鮮に入り、遺骨返還と墓参事業に着手している
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日本政府は14日、北朝鮮との政府間協議を今月29日に北京で開催すると発表した。
あくまでも本題は終戦以前に北朝鮮で死亡した日本人戦没者の遺骨返還、遺族らの墓参問題であり、拉致問題はそれと切り離し、別途協議とすべきである。
藤村修官房長官は14日の記者会見で「日朝政府間協議を近いうちに再開するべく、予備協議を29日に北京で開催する」と表明し、「できるだけ速やかに本協議を行いたい」と述べた。
議題については予備協議で詰めるとした上で、「当然、拉致問題も含まれると考えている」と述べた。また、諸懸案として、北朝鮮への帰還事業で渡航した日本人妻の帰国、よど号ハイジャック事件実行犯らの引き渡し、特定失踪者の問題も挙げた。 北朝鮮側も日本の植民地賠償問題など、言いたいことが山ほどある。
双方が相手の意向を無視して駄々をこねたら、交渉は行き詰まる。理性的な対応を望みたい。
今回の交渉は日朝赤十字が今月9、10日に北京で協議を行い、遺骨返還や遺族の墓参問題に関する政府間協議の開催に向け努力していくことで一致したことから始まっており、原点を忘れないことである。
双方が交渉を地道に積み上げていけば、おのずと誤解も解け、他の議題解決の道も開けて来よう。
日朝政府間協議は08年8月以来である。日本側は北が誠意をもって応えないから破綻したと非難し、北も日本側の不誠意をなじる。
そもそも横田めぐみさんら拉致被害者について北は死亡したと小泉首相に正式通告して以来、一貫して死亡と譲らず、日本側は「生きている。全員返せ!」と言い張って譲らない。
日本側が今回また、功を焦って拉致問題を持ち出せば、またもめることは必定である。
それにより本題の日本人戦没者の遺骨返還、遺族らの墓参問題まで霧散させるようではあまりに知恵がない。
清津会など多くの遺族が遺骨返還、墓参を待ちわびている。彼らの悲願を砕くようなことがあれば、轟轟たる非難をまぬかれまい。
拉致問題は感情化し、日朝だけでは解決不可能である。
横田めぐみさんの遺骨を第三国の研究機関で再鑑定するなど、第三者を入れて解決するしか方法があるまい。
特定失踪者の問題などは日本側が国内の無数の失踪者を強引に北朝鮮と関連付けている実情から、北朝鮮の努力だけではどうしようもない面がある。
日本政府には「金正恩新体制となり、拉致問題に対する北朝鮮の態度が軟化するのではないか」と期待しているようだが、そうした根拠なき認識が誤りの元となる。「めぐみさんが金ファミリーの家庭教師をし、重要な秘密を握っているので出せない」といったフィクションは捨てるべきである。
拉致問題は駆け引きの類ではなく、事実認識の問題であることを踏まえて交渉に臨む必要があろう。
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昨日公開のミサイルをNHKはICBMと報じたが、核ミサイル搭載との見方もある。 |





