河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日朝関係

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 北朝鮮の人口衛星打上を巡って日本の一部ではパニックが起き、「迎撃」などと迷走している。
 韓国では「銀河3号の追跡」はあっても、「迎撃」などという極端な言葉はない。

 メディアが「テポドン」などと米軍コードネームで銀河3号を呼んで危機を煽っているのは日本だけの特殊現象であるが、裏を返せば、北朝鮮の情報が正確に伝わらず、バタバタと場当たり的に騒いでいることを物語る。
 福島原発爆発問題で露呈した弱点がそのまま対北朝鮮外交で出ているのは危険極まりない。国民に十分に情報が開始されず、原発安全神話のような偽情報が飛び交っているのも憂慮される。

 日朝の国交正常化を急ぐべきである。国交がある米国、イランがにらみ合っている状態であるから、国交正常化されたといって直ちにどうこうということはないが、話し合いと情報交換はできる。
 北朝鮮は日本などよりも格安の人口衛星打上で外貨を稼ぐ宇宙ビジネスに進出する意図もあり、今後とも類似のケースが出て来る。大使館があれば事前に飛行進路や残骸物処理を調整することができる。
 
 国交正常化は当たり前のことで、それに反対する連中は邪な野心があるということであろう。
 例えば、北朝鮮の銀河3号を「迎撃」などと騒いでいる産経、自民党右派などは、「テポドン」などと米軍コードネームで呼び、自衛隊出動を画策しているが、本音は、憲法9条の骨抜きであろう。
脱原発の動きを麻痺させる狙いもあるとみられる。

 邪なデマゴーグたちは「テポドンは日本を狙っている」と言い立てて国民を不安に陥れているが、嘘八百である。
 銀河3号は残骸物処理を公海上で行うために大平洋の方向を目指しているに過ぎない。日本はたまたまその方向にあるので上空通過となったが、過去二回とも大気圏外を通過し、日本領空は侵していない。
 今回はさらに神経を使って沖縄の島の間通過に設定している。「迎撃」などは為にする悪宣伝でしかない。

 安倍元首相や産経などに代表される反北朝鮮勢力は、北朝鮮を「ソ連の脅威」に代わる新脅威に仕立てあげ、日本の軍拡に利用しようとしてきた。
 拉致問題で安明進・元工作員の捏造情報を垂れ流して反北朝鮮、反朝鮮総連感情を煽ったのもそのためである。
 日本の左翼・リベラルも少なからずそうした策動に乗せられて衰退してしまった。日本の政治が右翼だけの片肺飛行で混迷を深めている原因の一つがそこにある。

 日朝が無益に争うのは双方に不幸である。
 国交正常化を急ぎ、全ての問題を対話のテーブルに載せて解決していくべきである。

 菅首相の意向を受けて中井元拉致問題担当相が北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使と中国長春で極秘接触を行ったとの昨日の報道に対して「女と遊びに行っただけ」と否定する声もあるが、概ね事実であったことが確認された。
 内閣官房の拉致問題対策本部事務局は26日の自民党外交部会で「21〜23日にたまたま休暇を取得し、中国に渡航した職員がいた」と説明し、事実上、職員の同行を認めた。

 中野拉致問題担当相は25日夜に中井氏に電話で真意を確認し、26日の記者会見で「中井氏は『生まれ故郷の長春を訪れた。北朝鮮との接触はない』と答えた。職員を海外に出張させたことはない」と語っていた。首相も26日の衆院東日本大震災復興特別委員会で中井氏の行動について「全く承知していない」と否定し、自らの訪朝も「そうした予定や準備を進めていることは全くない」と強調したが、相手がある外交の世界ではよくある答弁であり、必要悪として黙認されている。
 
 菅首相の電撃訪朝計画が存在することは間違いあるまい。
 遅ればせながら毎日新聞も今朝、「政府は26日、北朝鮮の拉致問題や核問題などの早期解決を図るため、8月中に日朝協議を行う方向で検討に入った」と報じている。

 日朝政府間対話は08年8月の実務者協議以来中断し、拉致被害者家族会が6月、9月までに再調査実施や対話再開を政府に要請し、菅首相は直後の拉致問題対策本部で関係閣僚に検討するように指示していた。
 23日にバリでの日米韓3カ国外相会談で、南北対話の進展→米朝や日朝協議再開→6カ国協議再開のシナリオを確認しており、菅首相は機が熟したと動き出したのであろう。

 問題は、菅首相がぶれないことである。都合が悪くなると他に責任を転嫁する悪癖を出すと全ては流れてしまう。政治主導を徹底できるか、今度こそ最後の正念場だ。
 自民党などは中井氏の行動を「二元外交だ」と批判しているが、外交の何たるかを知らない愚論である。また、石原自民党幹事長は「自らの延命や支持率回復のために外交を利用するならば、国益を著しく損ねる」と非難したが、これこそ二枚舌である。小泉、安倍元首相らが拉致問題を散々政治的に利用してきたことを忘れたわけではあるまい。

 菅首相は雑音に惑わされず、腹をくくって進める必要がある。
 それが、安明進らの偽情報に踊らされ、迷走を重ねた拉致問題に辟易している一般国民の望むことであり、国益である。

 菅首相が粘り越しを発揮している。何か秘策を巡らせていると思ってはいたが、電撃訪朝とは隅に置けない。
 以前にもその可能性を指摘したことがあるが、辞任を表明した後にそのカードを持ち出したのはなかなか・・・。ようやく腹をくくったようだ。

 南北外相会談に続いて、クリントン米国務長官が北朝鮮の金桂寛第1外務次官をニューヨークに招き、6か国協議再開に向けた予備交渉を開くことを正式に表明するなど、対北朝鮮外交は新たなステージに入りつつある。
 ある意味で02年の小泉訪朝時と状況が似ている。この期を逃さず日本外交が独自の役割と存在感を示すのは、外交センスが有る者なら誰しも考えることである。

 23、24両日の産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査によると、菅内閣の支持率は16・3%まで落ち込んだが、対抗馬となるはずの自民党の支持率も18・9%と下落した。
 ポスト菅が与野党に不在なことが菅首相の最大の強みであり、電撃訪朝で結果を出せば、小泉元首相が支持率低下を電撃訪朝で挽回し、長期政権の基盤を築いた夢の再現も十分にありえる。脱原発路線にも弾みが付こう。

 産経によると、「菅首相の意向を受けた中井洽元拉致問題担当相が21、22の両日、中国・長春で宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使と極秘に接触。日朝関係筋によると、中井、宋両氏は今春から、数回にわたり第三国で極秘交渉を行っている。日本側は拉致問題の具体的進展を求め、最終的には『日朝国交正常化と日朝首脳会談実現を目標』に協議しているとされる。これに対し北朝鮮側は『拉致問題は解決済み』との従来の主張を繰り返し、可能なのは『日本人妻の帰国とよど号犯引き渡し』であることを示唆しているという。21、22両日の協議では、交渉の継続では一致したが、北朝鮮側は何らかの『見返り』を要求し、拉致問題の具体的進展は見られなかったもようだ。首相は、自らへの退陣圧力が強まると予想される8月上旬を目標に、北朝鮮側との合意を目指している。電撃訪朝による拉致被害者の一部帰還も視野に入れている」という。
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110726/plc11072601310001-n1.htm

 『証言 北ビジネス裏外交』で紹介したように、宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使は証言者の吉田猛氏と極めて近い。
 またぞろ小泉訪朝を裏方でセットした吉田氏の出番が回ってきたのかもしれない。

しかし、二匹目のドジョウは簡単ではない。
 安倍元政権が掲げた非現実的な「全員生存、全員奪還」路線にしがみつくと、袋小路に陥って政権を放り出した安倍元首相の二の舞となろう。
 北朝鮮側とすでに同意している「再調査」を優先させ、幻想ではなく、事実に基く解決に徹底できるか、それが鍵となる。

 日本側は幻想を持って交渉に臨むと逆に傷を負うおそれがある。
 北朝鮮側が死亡と公式通告している横田めぐみさんら拉致被害者の生死の真相究明を優先させ、「絶対生きている」といった感情論に惑わされてはならない。
 過去の日朝協議は福田政権時代の08年8月に北朝鮮による拉致問題調査再開、日本による対北制裁緩和で合意したが、日本側が国内世論を理由に制裁緩和をしぶり、中断している。北朝鮮側が再調査を反故にしたとの一部報道は為にするもので、事実ではない。
 横田めぐみさんの遺骨のDNA鑑定の非科学性、政治性については英科学誌ネイチャーでも再三批判されており、第三国での遺骨の再鑑定も視野に入れるべきである。

 日本のマスコミが流布した拉致被害者生存説は大半が安明進・元北朝鮮工作員の捏造情報に基くものであったことは今や明らかである。
 当時の安は現役の韓国情報部員であり、日本のマスコミが連日大きく流した彼の捏造情報は、日朝交渉の進展を阻止しようとした韓国情報機関による情報操作であったとみられるのである。
 
 産経記事は「 日本単独の対北交渉には政府内にも慎重論が根強く、『拉致被害者が全員帰ってくるなら別だが、政治パフォーマンスなら世論や党内の理解は困難だ』(外交筋)との批判もある」と水を差すが、外交音痴の戯言である。
 その種の雑音が拉致問題の解決を妨げてきたが、想定内のことであり無視することである。

 前原外相が最近、「日朝間には拉致問題だけでなく、核、ミサイル問題もある。核問題は日本国民の安全に大きな影響を及ぼす」として、「核、拉致、ミサイル問題の包括的な解決を目指す」と発言した。
 至極まっとうな発言だが、安倍政権以来、日本のた北朝鮮外交は感情論に傾き、「横田めぐみが生きていることを前提に、全員奪還を目指す」と難癖を付けて日朝交渉を意図的に停滞させてきた。
 その意味で、前原氏の発言は、現実を冷静に見据えた合理性があり、注目される。
 
 金正日総書記は小泉首相に横田めぐみら8人の死亡を通告し、その上で日朝ピョンヤン宣言を締結した。
 これは動きようがなく、8人が生前している可能性はない。
 安明進元工作員らの生存情報は虚偽であることが判明している。横田めぐみの遺骨については細田官房長官が「本人のもではない」と発表したが、これは政治的な発言であり、吉井鑑定人が英科学誌「」ネーチャー」で述べているように、遺骨は本人のものである可能性が高い。死亡診断書など北朝鮮が提供した資料には不自然な部分が多いが、実務上の混乱からくるものであり、死亡そのものが動くことはなかろう。
 
 安倍元首相が北朝鮮に密使を派遣したことも判明しており、細田元官房長官らと組んで拉致問題を政権浮揚に利用した可能性が高い。 
 福田内閣時代の08年8月の日朝実務者協議で、拉致被害者の再調査に関する委員会設置を約束したが、9月の福田内閣退陣表明で北朝鮮は調査の「延期」を通告した。福田内閣が安倍政権の「全員奪還路線」にこだわったことがこじれる要因となった。
 
 前原氏の「白紙」発言がそうした弊害を断つものであるなら、評価できる。
 政権交代した以上、自民党政権時代の虚偽外交にメスをいれ、日朝交渉を軌道に載せることは当然の要求であり、日本の根本的な国益にも合致する。
 
 前原氏は1月11日の記者会見で、日朝協議の再開を目指す考えを明らかにし、再開条件について日朝ピョンヤン宣言を踏襲しつつ、「どのような形で議論に臨むかは白紙で臨みたい」と語っている。
 さらに、「日朝間には核のみならず拉致問題、ミサイル問題などもある。6カ国協議の開催の是非にとらわれずに日朝の話し合いは行われるべきだ」と述べた。
 
 前原氏は4日の記者会見でも、北朝鮮との直接対話に意欲を表明し、北朝鮮の朝鮮中央通信が8日付の論評をホームページに掲載し、「時代の流れと国家間の関係発展に合致する肯定的な動きに間違いない」と評価した。論評は10日、同社が昨年末に開設したホームページに掲載された。
 日本側の対応次第で、拉致問題の全面解決は十分に可能であり、核、ミサイル問題解決の国際環境醸成にもプラスに作用しよう。同時に、日本外交の選択肢も広がろう。
 
 前原氏は2月1日の衆議院予算委員会で過去に二度訪朝したと明らかにした知朝派でもある。
 父親は境港出身で、国会議員になる前の1992年に訪朝し、国会議員となった1999年にも地元京都の在日企業が中国の工場を北朝鮮に移転をした後、工場完成式典に参列している。
 対北朝鮮外交は無知と偏見に阻害され、停滞してきた。知朝派であることは対北朝鮮外交を担う重要視質の一つであり、その意味では前原氏は適格である。
 
 繰り返すように、北朝鮮の体制崩壊はないが、政権交代は在りうる。
 来る金正恩政権を改革・開放に誘導し、軟着陸させることが東アジアの平和と安定に不可欠であるとの戦略的な認識が必要である。
 ポスト金正恩には軍事政権が登場する可能性が高いが、その場合、核放棄は夢物語となり、地域は核ドミノに向かう危険性すらある。
 
 前原外相の訪朝説が永田町で飛び交っている。
 八方ふさがりの日本外交が活路を開くにはそれしかないが、前原氏にそれだけの見識と度量があるか、それが問われる。
 
 前原外相は今年になって2年半途絶えている日朝対話再開に意欲的な発言を繰り返している。
 4日の記者会見では「拉致、ミサイル、核といった問題で、2国間で話ができるような状況を作ることが大事だ」と述べた。
 11日にも「日朝間には核のみならず拉致問題、ミサイル問題など他の問題もある。6カ国協議の開催の是非にとらわれずに日朝の協議が再開されるが望ましい」とし、日朝ピョンヤン宣言を踏襲しつつ、「どのような形で今後議論に臨むかは白紙で臨みたい」と一歩踏み込んでいる。
 さらに、15日の韓国訪問で、金星煥外交通商相が「北(北朝鮮)日の前に南北対話があるべきだ」と注文を付けられたが、記者団に「(南北優先が)前提だが、何らかの(日朝の)接触はあり得るかもしれない」と語った。
 
 いずれも至極まっとうな発言である。
 北朝鮮の朝鮮中央通信も8日の論評で前原外相の4日の発言を「肯定的な動き」と評価した。中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表も「歓迎する」とコメントしている。
 
 特に、「白紙で臨みたい」との発言は注目される。
 安倍政権以来、不純な政局的思惑から拉致問題を全面に押し出し、それしかないかのように独善的に対したことが日朝協議破綻の最大の要因である。安倍政権は「横田めぐみらの生存を前提に、被害者全員の奪還を目指す」と、死者を生かして返せと言わんばかりの非常識な条件を北朝鮮に突きつけ、交渉を意図的に破綻させ、制裁に舵を切った。それが6か国協議にも悪影響を与え、北朝鮮の核実験へと最悪の結果を招いた。
 
 韓国、中国、ロシアに加え、米国もそうした日本の頑迷な姿勢に眉を潜めてきた。
 「横田めぐみ、有本恵子さんらは生きていない」裁判‏」でも指摘したように、今や日本国内でも田原総一郎氏が「外務省幹部も知っている」と横田めぐみ、有本恵子らの死亡事実をテレビで公言するなど、外交に個人的な遺族感情を持ち込むことを批判する声が高まっている。
 
 前原氏がそうした経緯を理解し、大局的戦略観から「白紙」と言うのなら、一つの見識と言うべきである。
 だが、安倍政権のように拉致にこだわるのなら、得るものは何もないことを知るべきである。
 前原氏にはネオコン的な発言が目に付き、尖閣問題での迷走、韓国紙の毎日経済との新年インタビューで「韓国と安全保障分野でも同盟関係を結ぶことを望む」と述べ、外務省国際報道官室が3日に「日韓同盟には言及していない」と訂正を申し入れるなど、思いつきからブレる傾向がある。今後の展開を注視したい。
 
 電撃訪朝は、小泉元首相の訪朝に勝るインパクトを与え、日本外交の幅を決定的に広げることは間違いない。
 南北対話が膠着状態にある中、それを側面的に促進する役割を果たし、結果的に半島と地域の緊張緩和と安定に寄与しよう。
 米国も南北対話を望むしかない状況にあり、黙認の形でも了解すると思われる。
 
 問題は、日本国内にそれを許容しない政治勢力が根強く存在することである。
 北朝鮮元工作員、実は韓国情報部員の安明進の誤情報の影響はまだ根強く残っており、その代表格の産経新聞は「拉致問題は日本にとって重大な人道、主権問題である。・・・不用意な発言では拉致問題の解決も、日米韓の結束も損なってしまう」と、何の反省もない旧態依然とした謬見を主張している。
 そうした障害を克服できるか、政治家としての度量と行動力が問われる。

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