河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

日朝関係

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 北朝鮮への一般外国人観光客(韓国除外)が昨年、4500人を超えた。
 多いか少ないかは見方によって異なるが、北朝鮮としては急増であり、閉鎖国家という国際的なイメージが変化しつつあることは間違いない。怖いもの見たさののぞき趣味もあろうが、ビジネスチャンスを求めるビジネスマンも少なくない。

 遺憾なことに、その中に外務省、マスコミ関係者を含めて日本人は数えるほどしかいない。
 ブッシュ政権前期の強硬策に歩調を合わせ、北朝鮮との交流の門を自ら閉ざす制裁措置をいまだに課したままだからだ。
 それだけ生きた北朝鮮情報が不足し、実情認識も観念的で心もとないということで、日本の対北朝鮮政策の根本的な欠陥=実態に即していない弱点を象徴している。

 そのことを昨日の国会衆議院代表質問で麻生首相に突きつけたのが、民主党・無所属クラブの田中真紀子元外相である。
 「拉致被害者の早期帰国が前提、とのフレーズを安倍、福田麻生内閣と3代にわたって繰り返してきているが、・・・。金正日総書記は『もう拉致問題は終わった』と折につれ発言するが、『拉致問題の解決がなければ』とのわが国の主張との整合性がとれていない。6か国協議でわが国が積極的かつ主体的な言動をしている証拠を示してほしい」

 これに対して麻生首相は、まともに答えることができなかった。
 「すべての拉致被害者の一刻も早い帰国の実現に向け、北朝鮮に早期に全面的な調査のやり直しを始めるよう具体的な行動を強く求めていく」と、前日の施政方針演説で述べたことを繰り返したが、事実上、逃げたも同然である。

 それは、安倍政権時代のフレーズと一言も変わらない。
 空疎な言葉を繰り返し、時間を浪費してきたことを如実に示しているが、自民党政権が続く限りこの状況は変わらないだろう。 
 
 

 拉致問題の解決は、合意事項をそのまま履行することに尽きる。
 北朝鮮が再調査委員会を立ち上げた時点で、日本は制裁一部解除をすることが確約された以上、守るべきは当然である。

 ところが、マスコミ報道には、その基本的取り決めを否定するかのような「自民党有力者」のコメントや論調が溢れている。
 合意に水を差し、拉致問題解決を妨げる軽率な行為と言わねばならない。いつまで安倍前政権時代の愚を繰り返すつもりなのか。

 協議を自分の都合で10時間以上も中断し、ようやく合意に至ったことにあれやこれや勝手な注文をつける。
 外交慣例上非礼極まるものであるが、日本はいつから礼儀をわきまえないルーズな国家になってしまったのか。
 
 これでは合意が実現できるか、今から危ぶまれる。
 協議後、宋日昊日朝国交正常化担当大使が「今回の合意を約束通り(履行)しないなら、われわれも仕方なく必要な措置を取ることになる」と述べたのは無理からぬことである。
 合意については6か国協議参加国はすべてが歓迎している。その期待を踏みにじるような独り善がりの行為をいつまでも続けると、日本は国際社会の厳しい批判に遭うことになろう。

 日本側の混乱の一因は、公私を混同して国家の外交を論じていることにある。
 その端的な例が、私的団体に過ぎない家族会、その支援団体を称する「救う会」「特定失踪者問題調査会」に外交結果を報告し、その承認を得るかのようにおもねているところに見られる。
 普通の国家ではありえない異常な光景と指摘せざるを得ない。

 「救う会」「特定失踪者問題調査会」が公然と北朝鮮の体制転覆や、拉致被害者救出を口実に北朝鮮への自衛隊派遣を主張してきたことは周知のことである。
 このような偏向団体に外交を諮問するようでは、そもそも外交の体を成していないと言わねばならない。

 さらに言えば、「特定失踪者問題調査会」は、行方不明者をやたら北朝鮮の拉致に結びつける出鱈目な行為を繰り返し、反北朝鮮感情、在日迫害感情を煽ってきた。
 最近も「公開の失踪者1名所在確認」などとこっそり発表したようだが、散々「拉致の疑い濃厚」と北朝鮮と在日を誹謗中傷してきた責任はどうなるのか。
 このようないかがわしい団体と結びついた挑発的な外交が、はたしてまともな外交の名に値するであろうか。

 今回の実務協議の本質は、日本側が協議を10時間以上も中断させ、13日未明になってようやく合意に至ったことに象徴的に表れている。
 斎木日本代表が、再調査着手と同時に制裁一部解除に応じる合意案を受け入れてよいのかと、本国に確認したのである。

 最終的には福田の決断で決まったが、その一事で10時間以上も政府トップがかんかんがくがくせざるを得ないのが、日本の実情である。
 散々待たされた北朝鮮代表が「わけがわからん」と怒るのも無理がない。
 つまり、拉致問題は、外交問題というよりも、日本の政局であり、国内問題なのである。

 再調査による真相究明は、至極当然のことである。
 北朝鮮もこの問題に早く決着を付け、本題の国交正常化交渉に入りたいから、異論はない。

 ところが、被害者家族会はそれに反対し、「被害者全員が戻らない再調査は受け入れられない」と注文を付けている。
 被害者の感情的反発はどの国にもあるが、日本が特異なのは、それが一般国民に拡散したことである。
 その主因は、いわゆる強硬派の安部前首相が、横田めぐみの偽遺骨説などを流し、北朝鮮への反感を煽り、拉致問題を政権浮揚に利用してきたことにある。

 しかし、出発から無理のあった安倍氏はやはり、一年足らずで行き詰まり、政権を投げ出す。
 代わって福田政権が誕生して拉致政局は終幕を迎え、日朝協議も動き出したが、まだまだ官製偽遺骨説の残滓が清算しきれていないのが現状である。

 今回の再調査に関しても、マスコミ各紙記事は、旧安倍拉致対策本部体制のような「全員奪還」路線が抜け切らず、労働党対外情報調査部とか35号室といった訳知り顔の言葉が躍り、調査委員会が設置されても権限が及ばないと言ったストーリーがまことしやかに流されている。
 北朝鮮のことを半分知っているが、肝心なことが見えていないか、見ようとしないのである。
 
 色眼鏡をはずし、あらゆる可能性を踏まえ、事実を直視しなければ、日朝関係は前進しようがない。
 対外情報調査部であれ35号室であれ、先軍政治の下では、金正日総書記が指示を出せば、すべて決着である。
 最高指導者の指示で通告された8人死亡の調査結果が基本的に覆る可能性は、ゼロに近い。
 死亡診断書など一連の書類は、日本の基準からすれば出鱈目だが、行政システムの整備されていない北朝鮮では珍しくない。そもそも日本のような死亡診断書などは存在ないのである。
 被害者が出てくるとしても、8人以外の、調査漏れ程度の可能性しかあるまい。

 実は、こうしたことは対北朝鮮交渉に関わる日本政府関係者は、北朝鮮側の事情説明で承知している。
 それだけに、世論とのギャップに苦慮し、本国に長々と問い合わせて指示を仰いだのである。
 それを知ってか知らずか、マスコミ世論が「全員生存以外は認めない」といった調子の家族会寄りの偏向報道を続け、北朝鮮との不毛の対立を煽ることに何の意味があるのであろうか。
 
 04年の第二次小泉訪朝に際しても、家族会とマスコミ世論は猛反発したが、国民は結果を出した小泉首相を評価した。
 今国民は事実に目を向け始め、拉致政局をいぶかり、閉塞状況を破ることを期待している。
 福田首相はぶれることはない。

 瀋陽での日朝実務者協議は13日未明、ようやく前回6月の協議で双方が約束した拉致被害者の再調査と制裁一部解除を同時履行的に行う具体的な手続きで合意した。
 米国によるテロ支援国家指定解除が予定された11日から先送りされる状況下での合意は、日朝がギリギリで歩み寄った妥協の産物であった。
 不確実要素もあるが、方向性としては日朝双方の棘を抜き、本来の国交正常化交渉へと歩みだしたと評価できる。

 ただ、協議内容は秘密にされ、合意のすべてが明らかにされているわけではない。
 例の如く、背後では双方の思惑を秘めた情報戦が展開されており、各メディアの報じ方も微妙に異なる。
 それを踏まえて、まず状況を整理してみよう。

 読売新聞が13日付で「拉致被害者の再調」、日朝が合意」と報じた内容は以下の通り。
 「北朝鮮が拉致被害者の再調査について、可能な限り今年秋までに終えることで合意した。調査内容の確認のため、北朝鮮は日本側と関係者の接触などを認める。
 日本政府は再調査と同時に、対北朝鮮制裁のうち人的往来の規制などを段階的に解除する。 
 北朝鮮が拉致被害者の調査に取り組むのは2004年以来で、新たな局面を迎える」という。

 大筋ではその通りであろうが、当面の核心的問題は、北朝鮮側が再調査のための調査委員会を設置し、同時に、日本側が人的往来とチャーター航空便の乗り入れ禁止を解除するかである。
 今回はそれが明確に約束されたわけであるが、これまでの経緯を見ると、北朝鮮が調査委員会を設置しても、日本側がじりじりと制裁一部解除を遅らせる可能性がある。
 北朝鮮側には再調査をしない理由は何もないが、日本側には家族会の感情的反発やそれに影響される世論の動向と言った不確実要素があるからである。

 実は、日本側は、前回の実務協議開催の条件として制裁一部解除を北朝鮮側に約束していながら、「世論の理解が得られない」として今日まで履行していない。
 北朝鮮はまた同じことが繰り返されるのではと警戒し、宋日昊日朝国交正常化担当大使は13日、合意に従い、拉致問題の再調査着手に合わせ日本側が制裁を一部解除するよう重ねて求め、「今回の合意を約束通り(履行)しないなら、われわれも仕方なく必要な措置を取ることになる」と述べている。
 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008081300673

 この問題を解決するには、メディアが客観報道に立ち戻り、真実を報道することが不可欠であるが、いまだに偏向報道まがいのものが見える。
 一例を挙げれば、13日付の毎日新聞記事「拉致再調査実効性 権限カギに 日本も検証能力試され」だが、「02年と04年に行われた過去2回の再調査は、北朝鮮が横田めぐみさんのものとした遺骨が別人のものと判明するなど成果は上がっていない」と、いまだに基本的な事実誤認を繰り返し、世論の感情を刺激している。
 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080813dde007030056000c.html

 横田めぐみの遺骨については「科学的には偽物とは言えない」と吉井鑑定人が英科学誌のネイチャーに語っており、安倍拉致対策本部長(当時)が関与した官製偽遺骨説である可能性が高いことはかなり知られてきた。
 だが、担当記者が過去の記事を無批判的に踏襲し、誤りに気付かなかったのか、過去の煽り記事が復活しているのは遺憾なことである。

 その意味で、拉致問題はメディア問題でもある。 

 日本政府は9日、瀋陽で11日から始まる北朝鮮との公式実務者協議に関する対処方針を固めた。
 北朝鮮が再調査に着手した段階で、人的往来の規制を解除する。調査が進展すれば航空チャーター便も容認する。北朝鮮籍船の入港容認は「納得いく再調査が終了」と「よど号犯引き渡しが終了」の二つの条件がそろった場合に実行する。
 一方、再調査の検証も重視し、途中経過の報告や関係者からの聞き取りなどを認めるよう北朝鮮に働きかける、という。
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080809-OYT1T00739.htm

 11日からブッシュ政権はテロ指定国家指定解除の発効手続きに着手する方針であり、日本政府も、それに歩調を合わせるということになる。
 北朝鮮は日本は米国が動けば動く、動かなければ動かないと判断し、じっと日本側の行動を見守っていた。

 6月の前回協議では、北朝鮮が再調査とよど号関連者引き渡し、日本が制裁一部解除(人的往来の規制解除、北朝鮮からの航空チャーター便の乗り入れ禁止解除、北朝鮮籍船の入港容認)を、行動対行動で行うことで合意した。
 北朝鮮側の理解は、前回協議に応じた時点で日本側が制裁一部解除を行い、全面解除は再調査とよど号関連者引き渡しとともに行うというものであった。
 日本のメディアは北朝鮮が約束を破って再調査に応じないと非難するのが目に付いたが、北朝鮮側は全く反対に理解していた。

 第三者的に判断して、日本側に履行遅滞の疑いがある。
 政権基盤が弱体な福田政権としては、「再調査の実行に着手していない段階では難しい」(高村外相)と北朝鮮に振り、世論の動向を見極めながら慎重に対応するしかないのである。
 北朝鮮側もその辺りは理解しているので、労働新聞などがことさら取り上げて非難することもなく、やがて動くだろうと静観していたのである。

 このように書くと、北朝鮮寄りだ、北朝鮮を有利にすると噛みつく向きがあるが、それは事態をいたずらに複雑にし、結局は拉致問題の解決を妨害するだけである。
 安倍前政権時代はそうした情報統制が行われ、結局は当人が行き詰まって政権を投げ出す無様な結果に終わった。同じ愚を繰り返すことはあるまい。
 拉致問題を現代版忠臣蔵に見立てることも可能かもしれないが、ここは情にほだされず、理に徹するべきである。

 日本側としては今回の協議で、再調査の時期や方法を詰め、日本の世論を納得させる形を作ることが重要となる。
 日本から人員を派遣して徹底的な共同調査をするのが理想的だが、それが叶わなくとも、第三者の目から見て納得できる科学的な検証は最低限必要であろう。

 拉致問題の政治的利用など無益な争いに終止符を打つため、北朝鮮側にも柔軟に対応することを望みたい。


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