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日本人は米国人よりも米国好きらしい。ブッシュ大統領に対して好感を持つ人の割合が米国よりもかなり高いから、あながちジョークとばかり笑っていられない。
ハリウッド映画、それにブッシュ大統領が横田めぐみの母親に会い、優しい言葉をかけたことなどが自由と人権を守る豊かな国の指導者というイメージを植えつけたと思われるが、実像とはかけ離れているのかもしれない。
それを思わせるのが、米国の囚人数219万3798人という衝撃的な数字だ。
ロンドン大学国際刑務所研究センターの統計だが、米国の人口は3億人強であるから、0・7%、1000人に7人が米全土の刑務所に収監されていることになる。
人口比で欧州主要国の7〜8倍になる。米国がしばしば人権が侵害されていると批判している中国の150万人、ロシアの87万人より絶対数でかなり上回り、人口比でははるかに多い。
果たしてこれで、自由と人権を守る豊かな国と言えるのだろうか。
人権には、労働する権利、最低限度の文化的生活を受ける権利など生存権が含まれる。
ニューヨークのライシャーズ刑務所は囚人の90%が黒人、ラテン系と言われ、膨大な囚人数には人種差別の臭いが漂う。
そうした規準からすれば、米国は失格である。
米国では、豪壮な屋敷に住み、腹いっぱい好きなものを食べている人々がいる反面で、公園や道路などで寝泊まりしているホームレスが推計で75万4000人にも上る。あすにもホームレス化する予備軍はさらに一桁多い。
ホームレスがすべて犯罪に走るわけではないが、全く無関係とは言えまい。囚人の多くは貧しい人々で、生活が苦しくて物を盗んだりするからだ。
聖書にも殺すな、盗むなとあるように犯罪は許されないが、その犯罪が増えるのを知りながら手をこまねいているのも道義的に問題がある。政治的には怠慢、無能と言うべきであろう。
米国の病理を物語るのは1990年代以降、囚人数が倍増していることだ。
市場原理至上主義がはびこり、マネーゲームに長けた詐欺師まがいの人物らに富が集中し、社会格差が拡大していることが背景にある。それとともに、道徳が崩壊し、社会秩序が乱れている。
イラクおよびアフガニスタンの退役軍人が推定1万人、ホームレス化しているのも象徴的だ。彼らは米帝国主義の海外進出の先兵となり、使い捨てられたのであろう。
資本主義はカネオンリーで非人間的な社会システムだが、1917年のロシア革命後、それに対抗する形でドイツのワイマール憲法に生存権規定が現れ、英米などの資本主義国に伝播した。
労働者など勤労大衆を引き付けるための防衛策であったのだが、1991年のソ連崩壊にともなう社会主義の退潮で、資本家階級はもう生存権は必要なくなったと判断したのであろう。
米国をはじめとする資本主義諸国では生存権は次第に形骸化し、国際競争力強化の名目で企業はリオトラ、賃金カットなどを競っている。
日本も他人事ではない。
小泉=安倍政権になって市場原理が社会全体を覆い、ワーキングプアが再現し、ホームレスは約2万5300人と年々増え、自殺者が年3万人を超え、大企業でも偽装請負・ピンはねなどが公然と行われ、社会の倫理・道徳は乱れている。
そろそろ米国幻想から覚め、それを反面教師とする智恵が必要な時に来ているのではないだろうか。
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