河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

南北関係・統一論

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卓球世界団体選手権での南北統一チームと日本との女子準決勝戦は色々な意味で楽しめた。
ストックホルムで南北統一チームが急造されたところに、南北首脳会談後の熱気の一端がうかがわれる。ソウルでは統一を期待する気の早い声まで飛び交っている。
しかし、1972年に金日成主席と朴正煕大統領との間で電撃的に発表された南北共同声明後の熱気ほどではない。明日にも南北統一かと、ソウルもピョンヤンも在日社会も燃え上がった。だが、その熱気も1、2年後には急速に冷え込み、以前にもまして敵対意識が強まった。代が変わり、分断は事実上固定化されて今日に至る。
非核化を南北首脳が約した板門点宣言は一定の成果ではあるが、無闇に熱くなることはない。同じ過ちを繰り返さないために、過去からしかるべき教訓を汲み出す冷静さと叡知が求められる。

南北共同声明当時は南北が「民族内部の問題」と勝手に燃え上がり、勝手に冷え込み、国際社会の関心は今一つであった。
だが、今回は韓国が一方的に燃え上がり、南北共同宣言では主導権を握っていた北朝鮮は一転、異様なほど静かである。労働新聞も朝鮮中央テレビも完全な非核化を約した板門店宣言をほとんど報じていない。下手に報じると、核武装を喧伝してきた金正恩国務委員長の権威が失墜し、政治不安を引き起こしかねないからである。
さらに、ノーベル平和賞候補に文と金正恩が挙がるなど、南北よりも米中欧日など国際社会の方が熱くなっている面がある。アジア・太平洋地域の安全保障に死活的な影響をおよぼす核問題が焦点となっているからである。

従って今回は南北だけの問題にとどまらない。
特に北朝鮮は対応を誤ると、政権のみならず国家そのものが存亡の危機に陥ることになろう。金正恩の責任は重大であり、厳しい舵取りを迫られる。

とはいえ、矢は放たれた。南北首脳会談後、韓国、北朝鮮、米国、中国の動きが慌ただしくなってきた。底流には、私が以前から「北朝鮮核問題は本質的には東西冷戦の殘滓であり、G2、すなわち米中新型大国関係の各論として決着をみるしかない」と指摘した流れがある(『二人のプリンスと中国共産党』参照)。
その大枠の中で南北がどこまで主体性を発揮できるか、それに尽きる。

一方の主役である金正恩は3日、急遽訪朝した王毅中国外相と会談し、「『朝鮮半島の非核化実現は我が国の揺るぎない立場だ』と改めて述べた」(中国外務省)。王はそれを支持し、経済協力推進を表明した。
しかし、本音と建前が微妙に交錯している。王は金正恩が先月20日に核実験とICBM発射実験停止を表明し、「経済建設に総力を集中する」としたことを“路線転換”と理解しているが、朝鮮中央通信は李容浩・王の朝中外相会談について「両国の親善、協力関係を新たな高い段階に発展」と報じるのみで、非核化への言及はない。北朝鮮の労働党内では核・経済並進路線は「結束」と総括され、“路線転換”とは認識されていない。
金正恩が発表した核・ICBM実験停止と核実験場閉鎖は客観的には現状維持のレベルであり、廃棄に踏み込んだものではない。凍結と段階的非核化という核隠しで批判を交わし、制裁緩和と経済協力を得ようとするのが秘めた狙いであろう。

ただ、中国との金日成・毛沢東時代の血盟のよりを戻し、米国に対抗する後ろ楯を得たい金正恩の本音は透けて見える。
反対解釈すれば、対中依存度を高めたことになる。北朝鮮核問題の比重が南北もしくは米朝から米中の力関係に移行していることを如実に物語るものである。

直近のコラムで北朝鮮権力内部では核放棄で自身と体制の保証を優先したい金正恩と、金日成以来の武力統一路線に固執する保守派の葛藤が生じていると書いたが、米朝首脳会談が近付くにつれ、一層熾烈化し、金正恩の統率力が問われることになろう。
こうした指摘は現時点で私以外、見当たらないが、日本、韓国には真の意味での北朝鮮専門家が存在しないからである。普通は欧米専門家なら当該国の大学に留学し、現地で研修し、知見や人脈を蓄えるが、日本の専門家にはそうした人物が一人もいない。北朝鮮の内情を知るよしもなく、臆測や推測でしゃべるからコロコロと一貫性がない。

他方の主役である文在寅大統領はというと、現時点では合格点である。就任前はTHAADに反対するなど反朴槿恵ポピュリズムにドップリ浸かっていたが、大統領に就任すると、THAADをあっさり受け入れ、韓米同盟重視を明確にし、親北派と一線を画す現実主義的な政治家に豹変した。
南北首脳会談でも北朝鮮側に最大限の配慮を示しながらも、金正恩を45分の二人だけの徒歩会談に連れ出し、金正恩の本音を入念に探った。
その中継映像を興味深く観ていたが、金正恩は倍ほども歳が離れた文に礼節をもって対し、悩める一青年指導者の素顔を覗かせていた。文が金正恩の本音や置かれた立場、人柄まで相当に踏み込んだ観察をしたことがうかがえる。

文は「トランプ大統領の圧力政策が北朝鮮を対話のテーブルにつかせた」とトランプとの電話協議で確認しあったが、単なる外交儀礼ではあるまい。金正恩との間で休戦協定を年内に平和協定に変え、秋にはピョンヤンを訪問すると合意したが、その直後、核廃棄まで制裁は継続する、平和協定と在韓米軍撤退問題は無関係と原則的立場を再確認している。
今やトランプ・文は強固な盟友関係となり、トランプ・安倍晋三の個人的信頼関係を凌駕するが、鄭義溶大統領府安保室長ら知米派の役割が大きい。英語に堪能な鄭は訪朝の結果をトランプに報告し、その席で米朝会談を決意させる離れ業を演じた。その後もポンペオ新国務長官、ボルトン大統領安保担当補佐官候補と随時、会談を重ねて細部を詰め、今月22日の米韓首脳会談をセットした。その脈絡から、板門店が米朝首脳会談の候補地として急浮上した。

米朝首脳会談ではトランプは文のアドバイスを元に単刀直入に金正恩に核廃棄の意思を尋ね、即答を求めるだろう。
トランプが求めるように2021年までの任期内廃棄へと劇的に進展するか、決裂、軍事オプション選択へと急展開するか予断は許さないが、舞台と役者は揃った。

舞台裏では貿易摩擦も絡んだ米中の確執が複雑化している。双方ともに北朝鮮核問題をカードにしており、米朝会談の行方にも少なからぬ影響を与えるだろう。
板門店宣言では南北米中4者会談も明記されており、南北の主体性がより厳しく問われることにもなる。
北朝鮮が核廃棄と改革開放を断行し、50倍のGNPを有する韓国が全面支援する方向に持ち込めれば、主体性度は合格点である。

他方、蚊帳の外に置かれたのが安倍晋三首相であるが、懸案の拉致問題も自力解決しか方途がない。
それについては次回に譲る。
18日のパラリンピック閉幕式は先月25日のオリンピック閉幕式とは別の感動があった。身体にハンデイーを負う社会的弱者の大会興隆に韓国が1988年のソウルオリンピック以降一貫してファン・ヨンデ女史らが中心になって力を入れ、パラリンピックのロゴの元に韓国国旗がなっている事を初めて知ったからである。
朝鮮ではピンシンという言葉があるように障害者への差別が酷かった。私が1980年代にピョンヤンに3ヶ月滞在しているときも、市内で一人も障害者を見なかった。首都の景観を汚すと地方に排除されていたのである。
史上最大規模の華麗なピョンチャン・パラリンピックは障害者差別を一掃する大きな契機になった、との熱い実感が込み上げてきた。同時に、韓国がそれだけの事を成し遂げる国力を有したことを再認識した。

それを痛感させられたのが北朝鮮代表団であり、特使の妹の口を通して金正恩委員長も同じ感慨を持ったに違いない。
返礼に訪れた韓国特使を丁重に迎え、非核化の意思を伝えて一挙に南北首脳会談、米朝首脳会談へと舵を切った内的要因は、韓国との決定的な国力の差を思い知ったことにあったと読める。
GNPで50〜60分の1以下に離された経済力の差は、もはや核などで覆すことが出来ないことを心底、悟ったに違いない。南に送った代表団や応援団の費用まで全額韓国に頼らざるを得なかった現実に忸怩たるものを感じたことだろう。

無論、本コラムで何回も指摘しているように、金正恩に非核化を口にさせた決定的な要因は、米韓による強烈な軍事的経済的圧力である。
それなくしてはもはや体制の維持も自身の安全も覚束なくなったとの深刻な危機意識がある。核を含む大規模戦略兵器が眼前に展開されるのを見て、蟻が象に戦いを挑む無謀さを知ったということである。

そうした認識を共有したのが文在寅大統領とトランプ大統領である。両者は適時、頻繁に電話で協議し、対北朝鮮政策を擦り合わせてきた。こと対北朝鮮政策に限って言えば、緊密な盟友の関係にある。安倍首相は全て事後通達され、事実上、蚊帳の外に置かれている有り様である。

育ちも思想的な背景も異なる二人の意思疏通には相当な苦労が伴うと予想していた私も少なからず驚かされたが、過日、文大統領に近い筋の話を聞いて、なるほどと納得した。
それによると、文大統領は「うまくいけば、あなたはノーベル平和賞だ」とトランプ大統領を徹底的に持ち上げ、その気にさせたという。現実的理想主義者の面目躍如と言うべきか。
デイールが得意なトランプも悪い気はしない。「ハッピーな事が起きるかもしれない」とツイッターで呟いたように、金正恩の改心に賭ける気になったという訳である。

かくして南北首脳会談が4月、米朝首脳会談が5月に開かれることになり、あまりの急展開に日韓マスコミには連日、ああでもない、こうでもないと甲論乙駁の記事が溢れているが、どれも疑心暗鬼の域を出ない。その影響であろう、直近の朝日新聞の世論調査を見ても、米朝会談が核廃棄に繋がると思うかの質問に63%が「繋がらない」と懐疑的に答えている。
「北朝鮮の微笑み外交に韓国は騙されている」との皮相的な見方が少なくないのは、従軍慰安婦問題で対立する感情的な当て付けもあるとみられる。

この点が重要であるにも関わらずしばしば見逃されているが、北朝鮮の政治は金正恩一人で動くものではない。
内部には権力闘争絡みの複雑な動きがあり、時間稼ぎをして核開発を完成させ、しかる上で米国との核軍縮に持ち込もうとの動きが根強くあり、金正恩もそれを無視できないのもまた厳然たる事実である。
2つの首脳会談を挟んで、最後までギリギリの折衝が続くことになろう。

パラリンピック閉会式の余韻漂う20日、韓国国防部は韓米国防長官の合意事項として、オリンピックで延期された韓米合同軍事演習を4月1日から「例年の規模で実施する」と発表した。
ステルス爆撃機F35Bが離発着する大型強襲艦などによる上陸演習を含む実戦形式のトクスリ(フォーイーグル)は4月1日から4週間となる。さらに、5月中旬から2週間にわたってコンピューターを用いた指揮所訓練のキーリゾルブが行われる。
その間に同時進行で行われる南北、米朝首脳会談に配慮し、トクスリは2ヶ月続いた昨年よりも期間を短縮し、空母や原子力潜水艦、B1B爆撃機は参加しない。「韓米軍事演習が行われても構わない」と譲歩した金正恩委員長への配慮であるが、国防部は「追加的な演習もあり得る」と圧力自体を緩める気はない。

トランプ大統領も首脳会談が不調に終わった場合の軍事オプションの準備を怠らない。13日に対話重視派のテイラーソン国務長官を得意のツイッター人事で電撃更迭し、後任に「思考回路」が似ているとして陸士出身の超強硬派として知られるポンペオCIA長官を任命した。これはトランプの不退転の決意を物語る。
と言うのも、金正恩が「新年の辞」でピョンチャン・オリンピック参加と南北対話の意思を表明してから事態が急進展したと一般的には理解されているが、そのプロセスに裏で一貫して関わってきたのが、ポンペオにほかならない。「最も重要なのは(核)能力から(核使用の)意図を持つものを分離することだ」と金正恩排除まで公言している最強硬派でもある。

まさに戦争か平和かのギリギリの交渉がこれから始まるが、そこで決定的重要な課題として浮かんでくるのが、南北対立、米朝対立の根本的な原因を解くことである。核問題もそこから派生した。
その問題を解決できるかどうかに、ピョンチャン・オリンピックが真に平和の祭典として歴史に刻まれるかが掛かっている。
日本の新聞、テレビは慰安婦問題の後遺症で文在寅大統領を色目で見ているのか、僻んでいるのか、ピョンチャン・オリンピックを機に盛り上がる一連の誘惑ムードを「北朝鮮主導」としきりに喧伝している。
そのため事態の本質が見えず、金正恩委員長が妹を特使に派遣し、文大統領の訪朝を要請したことに驚き、ペンス副大統領と北朝鮮代表団の秘密会談が予定されていた事が明らかにされると驚愕狼狽している。
しかし、私が繰り返し指摘したように、南北+米の接触はオリンピックの幕裏で昨年暮頃から練られていたシナリオに沿ったものであり、脚本、演出は文政権である。冷静に考えれば当たり前のことで、文政権の同意がなければ、外来者の金正恩政権もトランプ政権もソウルやピョンチャンで政治的な動きをすることは一切許されない。

ペンス副大統領がワシントン・ポスト紙とのインタビューで明かし、ホワイトハウスも追認したように、ペンスはオリンピック開会式翌日の10日に大統領府で北朝鮮代表団と極秘会談する予定であった。しかし、2時間前に北朝鮮がキャンセルした。
同日、金与正らは文大統領と会談したが、どこかギクシャクしていたのは予定されていたペンス副大統領との会談を突然キャンセルし、後ろめたいものがあったからであろう。
文大統領はそれでも妊娠7ヶ月の身重で兄の親書を携えてソウルまで来た与正を慰労し、笑顔を崩すことはなかった。遠来の賓客への礼儀であり、同時に、次回を期す深謀遠慮でもあったろう。金正恩政権に虎の子の核を手放させるのは一筋縄ではいかないと、腹を括っているのである。

米国との極秘会談を求めたのは北朝鮮側であった。制裁&軍事圧力に耐えかねてのことであるが、あわよくば無条件対話に持ち込み、事実上の核軍縮対話としたい狙いがあった。
しかし、ペンスはそれを読み取り、核廃棄がなければ制裁をさらに強化し、オリンピック後の米韓合同軍事演習も予定通りに進めるとソウルでも繰り返し、厳命し、事実上、対話にハードルを設けて牽制した。その上で北朝鮮とニアミスを繰り返しながら、いつ応じてくるかと、素知らぬふりで目を凝らしていた。

金正恩もピョンヤンで逡巡していたであろうが、国民の前で勢いよく挙げた拳を下ろすのは簡単ではない。強硬派から突き上げられたり、国民の不満が爆発するリスクもある。
とりあえずペンスとの会談は見送り、状況を再度確かめるしかなかった。
ピョンヤンに戻ってきた金永南最高人民会議委員長や妹らから韓国の状況について報告を受け、ある種の決断に至った。労働新聞が報じた南北対話に関する「綱領的方針」である。

それからしばらくして、トランプ大統領の娘のイヴァンカ大統領補佐官がオリンピック閉会式に参加するため三泊四日の予定で訪韓すると発表された。
そして今日、韓国統一部は金英哲労働党委員長・統一戦線部長を団長とする北朝鮮代表団が閉会式に参加すると発表した。
北朝鮮の意図について例のごとく、日本のメデイアはああでもないこうでもないと群盲象をなでる報道をしているが、北の狙いはズバリ、前回流れた米朝極秘会談、イヴァンカとの会談である。最強硬派の金英哲を送り込んできたところに金正恩の本気度が読める。

無論、全ては文政権が仕切っている。「南北対話を米北対話につなげる」との文大統領の戦略によるものである。
現時点まではその戦略は功を奏していると評価できる。

今後の展望であるが、一直線には行かないだろう。しかし、朝鮮半島周辺に集結する米軍の巨大な軍事力を日に日に感じている金正恩も、象に歯向かう蟻の愚は避けるであろう。
体制保証や経済支援など核放棄の条件次第と言っておく。

なお、残念ながら安倍首相は文大統領との個人的な信頼関係の欠如から、一連の経過を全く知らされず、事実上、蚊帳の外である。裏方の労を取る韓国に配慮する米国からも詳しいことは知らされていまい。

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1 戦争か平和か

前回予測したとおり、平和の祭典の幕裏では南北の熾烈な外交戦が戦われているが、相互接触の過程で相互理解を深める一定の前進が認められ、序盤としてはまずまずの出来と評価できる。
「韓国、『米朝対話』に失敗」、「微笑み外交に揺さぶられた」と性急に報じる新聞、テレビもあるが、本質的な部分がよく見えていないようだ。

平和か戦争かの狭間で始まったオリンピックは、序盤が終わったばかりである。
世界初の5Gを駆使し、無数のドローンで鳩をきらびやかに黒天に浮かばせるなど最先端のIT技術を駆使した開会式は世界50億人の目を引き付けた。
日本でも視聴率がソチの2倍強の30%近くを記録し、ジャンプやスピードスケートなどメダルが出る度にヒートアップし、ピョンチャンの冷気に負けない盛り上がりようである。
その幕裏で繰り広げられている南北+米国の外交戦、心理戦はこれから本格化していく。もともとオリンピックは戦乱の古代ギリシャで矛先をしばし収めて競技を楽しんだ故事から始まった。その意味でもピョンチャン・オリンピックは本旨に沿った大会と言える。
世界中が熱く注視する中で南北対話がしかるべき結果を出せば、世界史に特記されよう。

2 金正恩の焦り

この点が今後の展開を探る上で本質的に重要であるが、平和の祭典に便乗したのは北朝鮮の金正恩国務委員長である。
年頭の「新年の辞」でオリンピック参加を表明したのは衆知の事であるが、韓国側が核廃棄を対話の絶対条件としている事を承知で申し込んだ以上、それなりの覚悟があってのことであろう。文在寅大統領が諸手を挙げて歓迎したのも宜なるかなである。

無論、金正恩の本音は核開発完成にある。オリンピックを利用して南北融和を図り、制裁に風穴を開け、核開発の時間を稼ぎ、核保有国として米国との対話に臨むのが狙いであろうと、誰もが疑いの目を向けている。
重要なことは、金正恩にそれが妄想に過ぎないことを知らしめ、現実的、合理的な判断へと誘導することである。そして、それは決して不可能ではなく、試してみる価値が十分にある。

前回も指摘したとおり、金正恩がオリンピック参加を言い出したのは、止むに止まれぬ事情があったからである。制裁により国内経済は破綻の度合いを日増しに深め、劣悪な衣食住環境に苦しむ国民の間では不満が高まっている。一見して強気な金正恩も米軍の鼻血作戦を恐れ、ピンポイント攻撃に怯えて所在を隠している。
その圧力と恐怖から一時的であれ逃れる術がオリンピック参加表明であった。韓国側に快く受け入れられ、この機にあわよくばと手の込んだことを仕掛けるであろうが、ソフトランデイングさせることは十分に可能である。

出生の秘密を抱えた幼児期からの疎外感から猜疑心の強い金正恩には、自分の目となり耳となる心許せる側近は妹の金与正労働党宣伝扇動部第1副部長しかいない。
その妹を満を持して敵陣と見なすソウルに特使として送り込んだことに、焦りがうかがえる。

3 韓国側は特使を事前に知っていた

韓国側もその辺の事情は先刻承知であった。
金与正は10日に大統領府に招かれた際、文大統領に兄の特使で来たと告げ、金正恩の親書を手渡し、口頭で北訪問を歓迎すると述べたと、巷間伝えられているが、実際はやや異なる。
文大統領が「金正恩委員長の特使として来たのか?」と尋ね、それに答える形で与正が親書を手渡し、兄の意向であると口頭で文大統領に訪北を招請したのが真相である。つまり、文大統領は当初から特使であることを承知で受け入れたのである。
韓国のテレビ放送を食い入るように見つめているであろう金正恩の顔を立てるため、大統領府報道官は当たり障りのない範囲内で報道陣に伝えていた。しかし、報道陣がシャットアウトされた現場では本音の混じったシビアなやり取りが交わされていたのである。

大統領府報道官は北朝鮮代表団との対話で核問題は取り上げられなかったと素っ気なく述べているが、オリンピックがどうのこうのと浮かれた儀礼的な話だけで送り返せる状況にはない。
文大統領は外交官出身の金永南最高人民会議常任委員長らを交えた北側代表団と3日間顔を付き合わせているが、金正恩が最も知りたがっている制裁や一時延期された韓米合同軍事演習などについて説明し、核放棄が事態を打開する唯一の道であると説いたはずである。体制保証や経済支援など核廃棄の代償についても踏み込んで提示した可能性がある。

そして、ペンス副大統領にも逐次その内容は伝えられていたと読める。ペンスが帰国の機中で「北が望むなら、無条件対話してもよい」と予備的対話の用意があることを明かしたと12日付けのワシントンポストが報じたが、金正恩を現実路線に誘導しながら南北対話を米朝対話に繋げていく文政権の戦略に、それなりの手応えを感じたからであろう。
ペンスも手練手管の老練な政治家である。オリンピック後に米韓軍事演習と強烈な制裁を実行するとソウルで繰り返し公言し、米軍基地を訪れて対北軍事オプションをこれ見よがしにデモした。
与正らとニアミスを繰り返しながら、目も合わさず、一言も交わさなかったのも意図的であろう。核放棄が対話の前提とのトランプ大統領の強硬方針を身近に感じさせ、暗に譲歩を促す高等作戦である。無視するようで、その実、抜け目なく北側の反応を探っていた。

象徴的なのが、冒頭の写真だ。文大統領と共に開会式を見守る前列のペンス、後列の与正、金永南が写っているが、南北+米国の微妙な距離感がよく出ている。
ペンスは北側が声をかければ応じる構えだが、与正はそれを横目でうかがいながら、声をかけるかかけまいかと思案している。つんとすまし気丈に振る舞おうとするが、痛いほど神経を尖らせているのが分かる。頬が落ちた30歳の風貌には気苦労が滲み、スイス留学時代のふっくらとした面影はすっかり消えている。
ペンスが呼び掛けた予備的対話は、兄の意向を受けて勝手知らぬ相手の懐に飛び込んできた健気な与正へのプレゼントと考えて差し支えあるまい。

金正恩が文大統領の訪朝を仕掛けたのは韓米を離間させる狙いが込められているが、遠からず淡い期待でしかないことを思い知らされよう。国内でちやほやされ、外交経験に乏しい金正恩は、恫喝に対して逆に攻撃的になる米国というものが全く分かっていない。
核超大国の米国への核口撃で恫喝した気になっているのも相手が見えていないからである。真珠湾攻撃前の日本軍部と似たり寄ったりである。客観的には、蟻が象に立ち向かうに等しい暴挙であり、広島、長崎のような災難を自国民に強いかねない愚挙である。
唯一信頼する妹を通して韓国や米国の反応を知り、対話の取っ掛かりを作ったことは、現実的な路線に切り替える事実上、最後のチャンスとなろう。

そのことを知ってか知らずでか、金正恩は韓国や米国の動きに目を凝らしていた。13日の朝鮮中央通信によると、11日深夜に帰国した妹らから翌12日に報告を受け、「南北関係の改善発展方向を具体的に提示し、該当部門に実務的な対策を立てることと関連した綱領的な指示をした」という。
北朝鮮では「綱領的」という言葉に重みを置き戦略的な意味を込める。文訪朝に向けた準備に入るというものであろう。

だが、我田引水は通じない。もはや同一民族だからと甘えた、対話のための対話が許される段階ではない。核を放棄するのかしないのか、放棄するなら条件は何かと内容ある議論に一刻も早く踏み込まねばならない。
持ち時間は区切られ、せいぜいパラリンピックが終わる3月末までである。強烈な制裁強化と大規模な韓米合同軍事演習が迫っており、時間稼ぎなどと悠長なことを言っている場合ではない。

朝鮮中央通信によると、金正恩は「誠意を尽くして努力する様子が印象的だった」と語った。自身のテレビやスマホで韓国の反応を食い入るように確かめていたのであろう。
与正が「今回の訪問で把握した南側の意中や米国側の動向を詳しく報告した」ともある。実りある交渉には相手を正確に認識することが必要不可欠である。お仕着せの時代錯誤の唯我独尊の枠に入れられた兄に与正が正確な情報を与え、感じたままを直言できるか、そこに金正恩政権の命運が掛かっていよう。
労働新聞は一面大きく金正恩と代表団との記念写真を掲載したが、これも異例ずくめだ。金正恩は左側の金永南の手を固く握り、右側の与正は兄に寄り掛かるように左手を両手でぎゅっと抱えている。韓国では絶対に見せなかった甘えた表情を浮かべ、金正恩の顔もいつもの作り笑いでない一人の青年のそれである。孤独な兄妹が垣間見せた素顔である。

4 核廃棄の代償は?

日本のメデイアには「微笑み外交」にオリンピックが乗っ取られ、文在寅政権が金正恩のサプライズに取り込まれたかのように面白おかしく報じるものが目につくが、事がそれほど単純でないことは見た通りである。
確かに、青天の霹靂のロウソクデモで誕生した文大統領にはポピュリズム的な危うさがあった。しかし、THAADで現実路線を明確にし、韓米同盟を機軸とすることをトランプ大統領と確認し、対北姿勢も核廃棄を全面に出した。その枠内でイニシアチブを発揮しようとすることは至極当然のことである。

文は昨年5月の大統領就任宣誓で「条件が整えばピョンヤンに行く」と南北対話への意気込みを披歴していた。2007年10月の盧武鉉大統領訪朝時にはナンバー2の秘書室長として随行し、南北首脳会談に深く関わっている。盟友であった故盧武鉉と共に見た夢を実現させたいとの熱い思いがあろう。
文には個人的にも、幼少時の朝鮮戦争最中に両親に連れられて北朝鮮東部から韓国に移り住み、貧窮の中で苦学した“越南民”のDNAがある。叔母ら親戚が今も住んでいる故郷への忘れがたい思いもあろう。
しかし、文在寅の対北観は以前のそれではない。張成沢粛清や金正男暗殺以降激増した幹部クラスの脱北者情報から北の厳しい社会経済状況を把握しており、今回の北朝鮮代表団、選手団、応援団の滞在費用を全負担する協議の過程でも制裁で追い詰められた北の窮状を再確認していよう。

事実、南北関係は過去2回の南北首脳会談時とは様変わりしている。
韓国一般国民は北朝鮮に対して冷めた目で見ているのである。3万に達する脱北者を通して北朝鮮国民の困窮状況、劣悪な人権状況を具体的に知り、反発し、距離を置こうとしているのである。
金正恩が宣伝隊と送り込み、日本メデイアがセンセーショナルに報じる選手団、楽団、美女応援団は好奇の目で見られ、浮き上がっている。
何よりも、金正恩の独善的な核・ミサイル開発への反発や警戒心が各界各層に深く浸透し、一時的な平和ムードや民族感情で糊塗出来る状況ではなくなっているのである。

分断が長引き、世代交代が進んでいることも一因である。韓国の青年層は多くが、北朝鮮を異質な隣国と見なしている。教科書にも載らない金日成のことはほとんど知らず、その孫の金正恩には叔父、異母兄をも手にかけた残虐な世襲独裁者のイメージしかない。
北朝鮮では公主(王女)扱いされる与正も、自分に注がれる韓国人の目に白いものが混じっていることを感じたことであろう。金日成の血統が政治的権威を持つのは北朝鮮国内に限られることを身を以て知り、ピョンヤンに戻って垣間見た現実を兄に伝えるだけでも少なからぬ意味がある。

文在寅大統領は金正恩委員長のオリンピック参加表明を「制裁圧力の結果」と受け止め、トランプ大統領との数度の電話協議で「核問題解決が最優先」と確認している。
その上で「会うことに意味がある」と南北対話に前向きに応じたのは、制裁の手応えを感じた余裕である。懐に飛び込んできた窮鳥を迎える心情であろうが、それ自体は決して悪くない。むしろ、核問題を対話を通して平和的に解決する最後のビッグチャンスと考えるべきである。

オリンピックはもともと戦乱の最中のギリシャで休戦して持たれたいわれがある。
ピョンチャン・オリンピックが束の間でも平和と対話の時間をもたらし、焦眉の核問題を解決し、恒久的な平和と南北和解のきっかけになれば、歴史的な大会と記録されるであろう。

5 水面下の第2ラウンドに注目

前回も強調したように、その成否はひとえに文大統領の外交力に掛かっているが、現時点ではまずまずの成果をあげていると評価できる。
交渉の入口に立った段階であり、近く韓国側から特使が送られ、交渉は第2ラウンドへと本格化する。どこかの段階で実力者の崔竜海副委員長・党組織指導部長が加わり、一挙に弾みがつくことも考えられる。
交渉が失敗すれば、一段と強烈な制裁地獄と軍事行使が待っている。成功すれば、金正恩政権は体制を保証され、莫大な経済援助を得て国民生活の再建と経済再生を図る事が可能となる。

オリンピックは熱戦が日々熱を帯び、日本の各テレビ中継も20%台、30%台といつにない高視聴率を叩き出し、注目度数が世界的に高まっている。
それを楽しみながら、水面下の第2ラウンドにも注意を払おう。

なお、女子アイスホッケーの南北合同チームの試合で北朝鮮応援団が一斉に若い青年の面を被り、青年時代の金日成ではないか、どうのこうのと話題を呼んでいるが、スイス留学時代の金正恩に似ている。韓国での不人気を挽回するためのサプライズではないか。
オリンピックが平和の祭典であるとはその通りであるが、来るピョンチャン冬季オリンピックは舞台裏で戦争か平和かと熾烈な外交が繰り広げられるという意味で前例がない。
まさに開戦前夜の熾烈な外交戦争、と言っても過言ではない。

「対話に幻想を抱いてはならない。南朝鮮(韓国)は刃物を懐に隠して、握手してくる。文在寅一味は吸収統一を狙い、我々の核を無くそうとしている。・・・最も完全な統一は武力統一だと語った金日成主席と金正日総書記の遺言を忘れてはならない。」
9日の南北閣僚級会談を前に、北朝鮮が党・軍・政の幹部たちを対象にした学習会で行った提講(学習資料)の内容である。補足すれば、北朝鮮では労働党員対象に週二回の政治学習が行われる決まりとなっている。
提講には「米国を対話に引きずり出すために、南朝鮮を利用せねばならない。北南対話で主導権を握り、米・南に楔を打ち込み、米南合同軍事演習を中止に追い込む。」と、韓国との対話の狙いが明確に記されている。

しかし、強気な提講とは裏腹に、金正恩は自分を標的にした米韓軍の斬首作戦を意識し、先制攻撃を極度に恐れている。「新年の辞」でも米国が核戦争を企んでいると繰り返し非難している。
ピャンチャン・オリンピック参加でそれを防ぎ、核ミサイル実戦化の時間を稼ぐ。と同時に、あわよくば韓国を抱き込んで軍事演習を中止させ、米国を対話のテーブルに引き出して核保有を認めさせるシナリオを描いている。その先にあるのは、核優位を全面に出した韓国の武力併合である。

他方の文在寅政権も負けてはいない。
いみじくも提講が見抜いているように、北朝鮮を内から軟化させ、自ら核を放棄するように誘導しようとしている。圧倒的な経済力に物言わせ、経済的な苦境にある北朝鮮に揺さぶりをかける作戦である。

すなわち、南北ともに相手の本音を百も承知の上で熾烈な外交戦に臨んでいるのである。
焦点は言うまでもなく北朝鮮核問題である。その平和的解決の道筋を拓く事が出来れば、ピョンチャン・オリンピックは真の平和の祭典であったと歴史に記録されよう。

統一旗や合同チーム結成、滞在費負担など北朝鮮の要求を概ね受け入れ、外野からは懐柔されたとか、「ピョンヤン・オリンピック」と揶揄される文大統領だが、22日の大統領府会議で「南北対話が米国と北朝鮮との対話に繋がるようにしなければならない」と基本スタンスを再確認している。北朝鮮非核化へのプロセスに関与し、存在感を高めたい。韓国外務省は南北対話を米朝間の予備的対話もしくは南北+米国の三者会談に発展させる案を練っている。
金剛山地域や馬息嶺スキー場などでの南北交流に対して北朝鮮ペースと批判する声がある。だが、南風を吹き込んで北朝鮮を内から変える金大中―盧武鉉政権の太陽政策を継承したもので、狙い自体は決して悪くない。

文政権の課題はひとえに、南北トップ級会談に繋げ、金正恩政権に核開発が自滅的結果を招くことを理解させ、核廃棄さえすれば体制保証も経済支援も得られると説得出来る交渉力の有無に掛かっている。
その鍵となるのが、制裁・圧力と対話の匙加減である。金正恩には核を放棄する気はない。重要なのは、核放棄しか生きる道はないと理解させる事である。金正恩がオリンピック参加を表明したのは、一部で指摘される自信などではなく、米軍の軍事オプションへの恐怖感である。その点を踏まえて包容できるか、高度な交渉力が問われる。

すでに虚々実々の駆け引きが始まっている。
冒頭の提講は「南朝鮮の進歩系は我々の路線に同調しているので勢いづくだろう」と韓国内部の対立、いわゆる南南葛藤を引き起こして文政権を囲い込む思惑を披靂しているが、全くの誤算であった。統一旗や南北合同チーム結成に青年層が強く反発し、韓国民の大多数が批判的であるとの韓国世論調査に北朝鮮側は出鼻を挫かれた。
22日にはソウル駅前の抗議集会で金正恩の写真が燃やされ、核開発を進める金正恩政権への反発が保守・進歩問わず予想以上に強いことに、金正恩は衝撃を受けたことであろう。
翌日、祖国平和統一委員会報道官が談話で「特大型の犯罪行為」と非難し、オリンピック参加撤回を示唆した。だが、同日夕方には三池淵管弦楽団の韓国公演の日程と、女子アイスホッケー選手を25日に訪韓させると伝えた。矛盾した対応は、不参加の選択肢はなく、条件闘争に絞らざるを得なくなっていることを如実に物語る。

同日の朝鮮中央通信が北朝鮮軍の創建記念日が2月8日に決定されたと発表したのも、金正恩の動揺と無関係ではない。
この点が見えないようでは北朝鮮への理解はまだまだと言うしかないが、それがピョンチャン・オリンピック開幕日の前日であることを百も承知で変更したのは、意表を突く金正恩式のデモである。記念行事との触れ込みで自称完成した火星5号などの新型ミサイルを誇示するつもりであろうが、米韓に譲歩を迫るいつもの恫喝作戦である。

他方、文政権の迎合的に映る対北姿勢に国内で批判が高まり、支持率が60%台に急落している。
しかし、文政権としては多少の譲歩をしても、トップ級の南北会談に繋げ、核問題の政治的決着の道筋をつけたいところだ。
文在寅は大統領職に就いてからTHAAD容認など基本的に朴槿恵前政権の外交政策を踏襲する現実路線に切り替えている。北朝鮮のオリンピック参加問題でも事前のトランプ大統領との電話協議で「強力な制裁圧力が北を軟化させた」との認識で一致している。脳裏には今回の南北対話が実を結ばないと、米国の軍事行使は防げない、やむを得ないとの認識があろう。

実際、一見して和やかなオリンピックモードに切り替わったソウルの雰囲気とは別に、軍事的な緊張は徐々に高まっている。米国による北朝鮮への先制攻撃が事実上、カウントダウンされているのである。
暴露本などで揺れるトランプ大統領だが、直近のツイッターで元海兵隊大将のケリー首席補佐官への信頼感を表明し、軍出身ブレーンへの依存度を強めている。19日には力優先の国家安全保障戦略を発表し、核使用条件緩和の核戦略見直し(NPR)に着手している。
その先頭に立つマテイス国防長官は15日のカナダでの多国間外相会合夕食会で「米国には作戦計画があり、準備も出来ている」と演説した。金正恩には恐怖のシナリオであるが、その作戦計画は北朝鮮を想定し、グアムに新たに配備した核搭載戦略爆撃機のB2A、B52Hと関連している。米太平洋軍HPには「B52Hは核兵器も世界的規模で展開できる」とわざわざ明示されている。

繰り返すが、文政権が金正恩政権内部の矛盾や葛藤を引き出す高度な交渉力で核廃棄合意に誘導できれば、次の段階は南北+米、もしくは米朝交渉へと進むだろう。
しかし、それに失敗した場合、米軍の北朝鮮軍事行使は時間の問題となろう。

事実、ポンペオ米中央情報局長官は24日、ワシントンでの講演で「北朝鮮が米本土を核攻撃する能力を保持するのは、数ヶ月先に迫っている」と述べた。マテイス国防長官の作戦行動との脈絡で解釈すると、北朝鮮が核攻撃能力を保持する前に軍事力を使ってでも除去するとなる。
北朝鮮の核開発の狙いを「抑止力のため」と額面通りに受け取る人は能天気すぎると強調しておく。ポンペオは「北朝鮮は北主導の南北統一に核を利用しようとしている」と核開発の狙いを的確に指摘している。提講などの北朝鮮内部資料を幹部クラスの多くの脱北者を情報源に得た韓国側の協力で逐次入手し、金正恩政権の一挙一投足を綿密にうかがっている事が分かる。
無償の平和はない。金正恩の核を容認することは将来により多くの禍根を残すことになることを知らねばならない。

蛇足だが、安倍首相はようやくピョンチャンに行く事を決めたが、行くかどうかと迷っている事が既に隣国での外交戦争の傍観者であることの証明である。どちらが被害者か転倒したような慰安婦問題の余波であるが、外交は感情論で動いてはならない。

@ 本稿は20日の新宿での講演で配ったレジュメに手を加えたものである。講演では、南北対話は北朝鮮の実力者に伸し上がった崔竜海労働党組織指導部長が出るかどうかが鍵になると強調した。

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