|
統合進歩党の李石基議員が北朝鮮と連動した内乱陰謀容疑で拘束されたのを受け、韓国国会は圧倒的多数で同議員の不逮捕特権を剥奪する同意案を可決した。
韓国憲政史上初のことであり、今後の南北関係にも少なからぬ影響を与えよう。 李議員は容疑を全面否定しているが、与党だけでなく、野党の民主党や統合進歩党から別れた正義党も民主主義の根幹を揺るがす事件とし、真相の全面解明を求めて同意案に賛成した。 韓国世論も李議員への批判で沸騰し、開城工団再開打ち切りなど、北朝鮮への対抗措置を求める声まで出ている。 国情院によると、李議員は5月12日の統合進歩党員ら130人の秘密会合で、金正恩政権が休戦協定破棄を宣言したことを受け、南北は戦争状態にあるとの情勢認識を示した。 その上で、公共施設や石油施設の破壊活動の準備に入るように求めた。R O(革命組織)結成も指令したという。 にわかには信じがたいが、問題は李議員の説明が、当所否定していた秘密会合の存在を認め、問題発言にも単なる空想と言い換え、二転、三転している事である。 当時の緊迫した状況を考えれば、空想で誤魔化せる話ではあるまい。真相解明は裁判に待たねばならないが、李議員には重大な説明責任がある。 当時、つまり、今年の4月から金正恩政権は核先制攻撃を公然と宣言し、対米最終決戦、統一大戦を主張していた。 前年9月には戦時細則を改訂して、軍権を国防委員会から労働党中央軍事委員会に移譲し、韓国内部の自主統一勢力の支援要請があれば南進する事を決定していたとの情報もある。 李議員の発言はそれと符合しており、空想で済ませられる問題ではない。 裁判では北朝鮮からの資金援助を含めた関係如何が争点になると見られている。 現在のところ北朝鮮メディアは、朝鮮中央通信が、韓国の統合進歩党寄りの団体やメディアが国情院の陰謀と非難していると間接的に伝える。 開城工団再開に影響を及ぼさせまいと苦慮している様子がうかがわれる。 しかし、4月以来の金正恩政権の過激行動に不信感を強めている韓国世論は、北朝鮮の関与を疑う方向に傾いている。 裁判の推移次第では、北朝鮮への報復措置を求める声が高まることは避けられまい。 朴槿恵政権もそれを無視できなくなる。 南北関係は対話局面に向かいつつあるように見えるが、底流は不安定である。 シリア情勢が緊迫化していることもあり、南北関係が新たな局面を迎えていることは間違いない。 |
南北関係・統一論
[ リスト | 詳細 ]
|
北朝鮮経済が独り善がりな核負担で急速に沈んでおり、韓国の支援なくしては存続しえない状況になってきた。
核廃棄とセットの経済協力を得ることが出来れば、状況に変化もありうるが、金正恩政権の運命と深く関わっており、予断は許さない。 そこで、このまま北朝鮮経済が崩壊し、ズルズルと韓国経済に吸収されていくと仮定して、何が起きるかシュミレーションしてみよう。 第1に考えられるのは南北格差、特に賃金問題である。 現在、南北の所得格差は20倍開いており、賃金格差はそれとほぼ比例する。 それに国際競争力という厄介な問題が絡んでおり、統一すれば全て解決するというほど事は単純でない。 むしろ、悪化する事もありうる。 そこで参考になるのがドイツである。 東が西に吸収されたドイツが統一コストに苦しんで来たことは周知のことである。 2000年代までは欧州の病人と言われるほど厳しかった。 ドイツ人らしい勤勉実直さで競争力を回復し、失業率も2005年の11%から半減した。 しかし、実態は低賃金問題が噴き出し、かなり厳しいものがある。 一応最低賃金は9・15ユーロ(1208円)に設定されているが、労使交渉に委ねているため、実際には1・5ユーロ(198円)のケースもある。これでは食べていけないから、生活保護者か130万人と急増している。 低賃金労働者は792万人、全体の23%と10年前より20%増えたというから深刻である。 その多くは移民労働者であるが、主に旧東ドイツ地域で発生しているから、統一コストと無関係ではあるまい。 現状のままで南北が統一したら、朝鮮でも同じ問題が起きることは必定である。 ドイツの教訓を生かす知恵が必要であるが、考えられる最上の策はおそらく一つである。 統一前に南北の所得格差を最低でも5対1にまで接近させることである。 そのためには北朝鮮の底上げしかない。 さらに言えば、北朝鮮が経済を再建して貧困問題を克服し、建国の理念に基づく豊かで平等な社会モデル構築に成功すれば、繁栄の中の格差拡大に悩む韓国社会にも大きなインパクトを与えよう。 韓国社会にはそうした問題意識がある。 北朝鮮への支援を行う主要な動機もそこにある。 だが、金正恩政権にその意識がなければ絵に描いた餅でしかない。 金正恩第1書記に実情を踏まえた合理的な判断力があるか、さらに周囲にそれを受容する余裕と包容力があるか、問題はそこに帰着する。 |
|
北朝鮮が今年2月に核実験を強行し、それへの対抗措置として韓国が在韓米軍司令官による韓国軍への戦時指揮権である戦時作戦統制権の移管延期を5月に提案した。
一言で言えば、疑心暗鬼がもたらした負の連鎖である。 毎日新聞(7・15)によると、2月12日の核実験直後に労働党幹部が行った内部講演音声記録で核実験前に米韓連合軍が東海(日本海)で合同軍事演習を行ったことに対して「敵国は我々を破壊しようとしていた。元帥(金正恩第1書記)は『一歩退けば次は10歩、100歩引き下がることになる』と述べて核実験を成功に導いた」と紹介し、金第1書記の指導力を称えたという。 音声記録は事実とみられる。最近、生活難から高額で売れる内部記録が外部に持ち出されている。 なお、講演者は02年9月の日朝首脳会談で金正日国防委員長が小泉首相に「私が言うことをブッシュに伝えてほしい。我々は核兵器を持たないようにしているが、米国が執拗に持つようにしてくるので仕方なく持つのだ。米国のせいだ。生きていくためだ」と述べたとも明らかにした。 金第1書記は父親の遺訓を守ろうと強気に走ったとも解釈できる。 金第1書記の動機はそうしたものであったが、結果は全く逆となった。 米国、韓国は北朝鮮核実験によって退くどころか、一段と強硬姿勢に傾き、中国まで巻き込んで圧力を強めている。 北朝鮮が人工衛星打ち上げ成功でよしとし、一歩退いて核実験を自制していたら、状況は違う展開を見せた可能性があっただけに残念なことである。 韓国軍の戦時作戦統制権返還も北朝鮮の核実験がなければ、当初予定されていた15年12月に行われることであったろう。 『朴正煕・韓国を強国に変えた男』に詳しく書いたが、この指揮権は朝鮮戦争勃発直後の1950年に韓国深く進攻した北朝鮮軍に対抗するために国連軍司令官に移譲された曰く付きのものである。 78年に米韓連合軍司令官に移管され、戦時作戦統制権だけが残された。さらに、06年9月に自主国防を掲げたノ・ムヒョン大統領がブッシュ大統領に12年4月に完全移管させることで同意を取り付けた。 しかし、北朝鮮との関係が悪化した李明博大統領時代の10年6月に3年延期することとなった。 朴槿恵政権もそれを踏襲し、今年3月の韓米合同軍事演習は初めて韓国軍が演習指揮権を握って実施された。 ところが、金正恩政権が3月に核と経済建設の並進路線を採択し、4月に核全面戦争を公言するに至って、方針変更となった。 金第1書記の強硬対決路線が強烈な拒否反応を引き起こしたのである。 北朝鮮が進んで核放棄しなければ負の連鎖は続き、情勢は不安定化するだけである。 韓国の意図を読むのは難しくない。北朝鮮の核には核と言うことである。 すなわち、米軍による核の傘をより強固にする。戦作権移管延期はその一環にほかならない。 もしくは、自前の核開発となる。 つまり、北朝鮮の核放棄がない限り、戦作権移管は延々と延期される。 あるいは、ある時点で韓国の核武装ということになろう。 北朝鮮の核武装は半島と地域の安保を不安定にさせ、日本を含めた核拡散を招く危険性を秘めている。 核保有する限り、北朝鮮の安全と経済発展もない国際政治の現実を金第1書記は理解する必要がある。 負の連鎖を断ち切るには、前から言っているように、北朝鮮が核放棄して中国の核の傘に戻る。 その後に、南北が不可侵条約を結び、同時的に中国、米国の核の傘から離脱し、半島の非核化を実現するしかあるまい。 |
|
過激に言葉が行き交ったバーチャルな北朝鮮核戦争危機は膠着状態に入ったが、韓米日から期待した譲歩を得られない金正恩政権の被るダメージは決して小さくない。
外交は内政の延長と言われるが、内政との区別すらなくしてしまった一連の対外強硬発言は、中国とも溝を作って国際的な孤立を深めただけではなく、国内的にも政権の権威や正統性に影響しかねない。 この機に金政権を一気呵成に追い詰めよとの声も聞こえてくるが、無益な流血と地域の不安定化を招く危険性がある。 中長期的な戦略的視野から事態収拾を図るのが智恵というものである。 その間の超強硬な対外路線は金第1書記の求心力を高める上で一定の目的を達したが、対中貿易は萎み、開城工団からの現金収入が途絶え、戦時動員で国内生産も萎縮するなど北朝鮮が被った経済的なデメリットは甚大である。 とりわけ、春期の田植に支障が生ずれば、それでなくとも不足する食糧は秋には危機的な状況を迎えるであろう。 北朝鮮当局も兵士に対して軍事と共に田植支援にも力を入れるようにと呼び掛けているが、そろそろ潮時ではないか。 金政権のメンツを立てながら効率的に支援できるのは、その特殊状況を理解できる韓国、中国しかいまい。 奇遇と言うべきか、習近平総書記ら中国新指導部は飢餓に喘いだ文化大革命期に紅衛兵として過ごし、改革開放政策の恩恵に浴した世代である。過渡的な北朝鮮の状況を肌で知っている。 それ以上に、父親の朴正煕大統領の開発独裁を間近に見てきた朴槿恵大統領は、金第1書記の政治的な立場を体験的心情的に理解できる経倫を有している。 独自の信頼構築プロセスもそこから出ている。 金正恩第1書記に対しては世襲独裁政権との見方が海外では支配的であるが、それに正当性らしきものがあるとするなら、経済を再建する開発独裁であろう。 その道に進むならば、韓国、中国も己が歩んできた道であり、支援を惜しむまい。 私はそうした問題意識から、朴正煕と金日成を歴史的に対比しながら『朴正煕-韓国を強国に変えた男ーその知られざる思想と生涯』を著した。 既成の枠を超えて韓国近代化における朴正煕政権の役割と意義を明らかにすると同時に、北朝鮮が進むべき方向を示唆する狙いがあった。 それから十余年、機は熟して来ていると実感している。 トウ小平の改革開放政策は一部で日本から学んだと真しやかにささやかれるが、実は、「漢江の奇跡」と注目され、政体が近い朴正煕の開発独裁にヒントを得ている。 金正日国防委員長にもそうした問題意識があり、現代グループから資料を取り寄せていたが、未知の市場経済への恐怖心から躊躇してしまった。 幸いにして金正恩第1書記はスイスで市場経済を体験し、一定の合理性も身に付けている。 今からでも遅くない。無理な背伸びはいい加減にして、経済開発重点主義に切り替えるべきである。 付け加えるなら、市場経済導入=資本主義化ではなく、生産力発展に利用すればすむ。 北朝鮮建国の理念である自由で豊かな社会主義は、高い生産力の先にこそ見えてくる。 |
|
中国交通運輸省が前月21日付で、北朝鮮国境の税関や公共交通機関に国連制裁決議を厳格に執行するようにとの通知を送ったが、無論、中央政府の意向を反映している。
中国共産党中央党学校幹部が北朝鮮切り捨て論をフィナンシャルタイムズで公然と語り注目を集めたが、人民解放軍の羅援少将が環球時報への寄稿文で、日韓核武装や北朝鮮からの難民流入に懸念を示し、体制崩壊ギリギリの線まで制裁を強化することを主張した。 習近平総書記は顔も知らない金正恩第1書記にさしたる義理を感じていない。 対米協調を優先させ、北朝鮮の核放棄に向けて厳しい姿勢を取ると見られる。 中国を苛立たせているのは、米韓日への核攻撃を公然と口にする北朝鮮の過激行動が結果的に米国を利し、中国の核心的な利益を害していると判断しているからにほかならない。 事実、米国は北朝鮮の脅威に対抗するとして日本列島やアラスカにXバンドレーダーやMD 基地を増設しようとしているが、これは台湾を防衛網に組み入れ、中国に対する牽制になる。 唯我独尊的な金正恩には見えないことであるが、小国・北朝鮮の核開発問題は米中のパワーゲームの枠内にあり、現時点においては、米国に有利に作用している。 米国は北朝鮮の核ミサイルが米本土に与える脅威は低いと見なし、日韓を自己の軍事同盟下に繋ぎ止める格好の材料として利用している。 従って、北朝鮮がいくら対米直接交渉を求めても、ぬらりくらりと応じるだけで、その枠内から出ることはない。 北朝鮮は核保有の名分に米国の敵視政策を挙げるが、米国には北朝鮮を潰しても中国との関係悪化などデメリットの方が多い。 実は、この敵視政策なるものには北朝鮮が思いもつかないからくりが仕組まれている。 すなわち、北朝鮮を抹殺するのではなく、生かさず殺さずと言った方が正鵠を射ている。 確かに米国歴代政権の対北朝鮮政策には一貫性がなかった。 それを北朝鮮の核保有を防げなかった理由に挙げる見方もあるが、半世紀のスパンで見れば、北朝鮮は1970年代で経済成長が止まり、生かさず殺さずのままである。 北朝鮮の核が本当に脅威となれば米国は核先制攻撃で叩くであろうが、そうでない限り、今後とも北朝鮮を生かさず殺さずのまま弄ぼうとするだろう。 北朝鮮がこの袋小路から脱するためには、何よりも米国の敵視政策に過剰反応する世紀的な自縄自縛から解き放たれる必要がある。 |







