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前にも指摘したが、米国に核戦争を挑むような常軌を逸した行動は北朝鮮強硬派が主導したものであり、勇み足をしてしまった崔竜海軍総政治局長(書記)の更迭なくしては収まりそうもない。
あまりに独善的であったため、唯一の同盟国である中国にも背を向けられ、四面楚歌となってしまった。 その端的な例が、朝鮮休戦協定を一方的に破棄したことである。 国連スポークスマンが一方的な破棄は無効と表明したように、国連を脱退するならいざ知らず、加盟国の一員として許されないことであった。 北朝鮮としては米国との直接協議に持ち込んで、休戦協定に代わる平和協定を結びたいところだが、これも法理に反する。 休戦協定には金日成北朝鮮軍総司令官、澎徳懐中国人民志願軍司令官、クラーク国連軍司令官が調印した。 国連軍の中心は米軍と韓国軍であったから、実質的には北朝鮮、中国、米国、韓国が当事者となる。 従って、北朝鮮が単独で破棄できる性質のものではない。 北朝鮮は朝鮮戦争を米軍を南朝鮮から追い出す祖国解放戦争と定義していることから、直接の当事者は北朝鮮と米国とするが、それは反帝反米闘争のイデオロギーであり、国際法とは異次元のことである。 北朝鮮は1991年に国連に加盟しており、当然、自己のイデオロギーよりも国際法を遵守する義務がある。 北朝鮮が休戦協定を平和協定に変えることを真に望むならば、韓国にまず呼び掛け、米国、中国の賛同を得るのが筋となろう。 それが実体法的にも、また国際政治の現実にも則している。 北朝鮮強硬派は韓国の頭越しに米国と話し合い、米軍撤退に結び付けて韓国を孤立させ、北朝鮮主導で南北統一を達成する所謂革命統一を考えている。 だが、南北の政治経済状況、国際状況は激変しており(所謂三大革命力量の衰退)、北朝鮮社会を"地上の楽園"とする根本的な改革が先行しない限り、見果てぬ夢と知るべきである。 |
南北関係・統一論
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「人は自分の望みを勝手に信じてしまう」
古代ローマの英雄シーザーの警句だが、北朝鮮の若き指導者金正恩第1書記は願望と現実の境界が曖昧になっているように見える。 北朝鮮が開発中の核・ミサイルは客観的には米国が1960年代に開発したレベルでしかないのだが、金正恩は米国と同等以上と信じ、ワシントンを火の海にすると核超大国の米国に対して核戦争を挑もうとしている。 これは北朝鮮国民を核の犠牲にしかねない極めて危険な賭け事である。不信感が高じ、偶発的な衝突から核戦争へと拡大しかねない。 現に、米国、韓国の一角には初期の段階で北朝鮮の核開発能力を除去した方が得策との強硬意見が出ている。 核廃絶を訴えてノーベル平和賞を授賞したオバマ大統領としては第二のヒロシマ、ナガサキは本意ではなかろうが、北朝鮮が強硬路線に傾斜し続けると、そうした悲劇がないとは誰も断言できない。 北朝鮮も米国との戦争は本意ではない。 金正恩は先代の金正日が得意とした瀬戸際外交を踏襲しているのだが、若さと経験不足はいかんともしがたく、落としどころを打算しながら仲介役の中国に伝えていた父親の狡智が見られない。 北京もワシントンもソウルも、一体何を考えているのかと訝しがっている。 北朝鮮メディアは、米国との直接協議、平和協定締結などを求めている。 しかし、核保有の一線を越えてしまった以上、金正恩がいくら望んでも実現できることには限界がある。 オバマ大統領が核脅迫に屈して交渉に応じ、見返りを与える前例を作ることは考えられない。米世論の動向によっては強硬手段に傾いていくだろう。 金正恩に願望と現実の垣根を曖昧にさせてしまった要因は、怒りの感情であろう。 人工衛星打ち上げ成功に小躍りし、それをもって自己の権威を高めようとしていた金正恩には、国連安保理の制裁決議は自分を否定するに等しい耐えがたいものであった。 それは、金正恩を担いで国内の統一団結を図っていた労働党最高位層共通の危機意識と読める。 その背景には、人民保安相が頻繁に交代しているように、長引く経済停滞に対する国民の不満の高まりと治安の悪化が極限に達していることがある。 そうした状況を整理すれば、今回の北朝鮮危機を平和的に解決する手順も自ずと明らかになる。 人工衛星開発を許容する代わりに、核廃棄を確約させることが必要最低条件となる。 同時に北朝鮮経済開発と人民生活向上に必要な経済支援である。 しかし、それは苦境にある北朝鮮同胞を思いやる韓国国民の幅広い理解と協力なくしては難しい。 |
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北朝鮮は何が何でも米国との直接協議に持ち込み、在韓米軍さえ撤退させれば有利な新局面が開かれると考えてきたし、今も考えているが、時代錯誤の徒労であることを知るべきである。
米軍が撤退しても韓国軍が厳然と存在し、イージス艦や巡航ミサイルなど最新鋭兵器を装備した韓国軍は旧式兵器の北朝鮮軍よりもかなり強力だ。 その最高司令官は韓国大統領である。 北朝鮮は韓国軍の統帥権が在韓米軍司令官にあることを問題視するが、これも認識不足である。 確かに、戦時統帥権返還は北朝鮮核問題との関連で2015年に延長された。 しかし、三年前の延坪島砲撃事件を契機に自衛権行使は韓国軍固有の権利であることが明確となり、実質的に韓国大統領が最高司令官であることが確認された。 昨日、合同参謀本部が北朝鮮の挑発に指揮命令系統も含めて報復破壊するとしたが、大統領が最終決定権を有していることは言うまでもない。 韓国が朴正煕政権時代から在韓米軍撤退に反対してきたのは、北朝鮮の同盟国であるソ連、中国を意識していたことが大きい。 だが、ソ連は消滅し、経済関係強化で対中警戒感は減少した。朴槿恵大統領は「米国、中国、日本」と、歴史認識の異なる日本以上に中国重視の姿勢を露にしている。 韓国にとって在韓米軍の存在意義は今日、北朝鮮の核保有に対抗する以上のものではなくなっている。 従って、北朝鮮が核保有にこだわる限り、在韓米軍は必要とされる。 あるいは、少なくとも韓国の核武装後に撤退ということになる。 こうしてみると、皮肉なことであるが、在韓米軍の撤退を妨げ、事態を複雑にしているのは北朝鮮に他ならないという構図が浮かんでくる。 北朝鮮が本当に在韓米軍の撤退を望むならば、韓国大統領と話し合うのが実情に合っている。 米国でも最近、朴槿恵イニシアチブが注目されつつあるが、北朝鮮も不測の事態が起きる前にそのことに気付く必要がある。 |
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北朝鮮軍の金英哲偵察総局長が5日、最高司令部報道官声明を発表し、朝鮮休戦協定の白紙化と板門店代表部活動中断を朝鮮中央テレビなどを通して発表した。
11日から予定されている米韓合同軍事演習に反発したものであるが、国連安保理で貨物検査の一部義務化や金融制裁強化を含めた制裁決議案が採択されることへの焦りもあろう。 米国との全面核戦争まで公言する正面突破戦術で米国を対話の場に誘う思惑が狂い、ますます過激化しているが、自分の立場を苦しくするだけである。 ケリー国務長官は対話の必要性を強調しているが、軍事的オプションを排除していない。オバマ大統領が初めて米国への脅威と言及した以上、軍事的な対応を検討していることは明らかであり、偶発的な軍事衝突が核攻撃に一挙に発展する危険性もある。 北朝鮮為政者は昂らず、冷静さを取り戻すべきである。 核超大国の米国に比して圧倒的に劣勢な核戦力でしかない客観的な現実を直視し、自国民の生存を脅かしかねない言動を厳に慎むべきであろう。 北朝鮮は米国との直接交渉で安保問題を解決し、南北経済協力や統一問題で韓国に対して優位に立とうとしてきた。 韓国を傀儡、植民地と呼ぶのはその表れであるが、旧態依然とした情勢認識では世界の流れから取り残され、孤立するだけである。 経済力において北朝鮮をはるかに凌駕し、米国、中国、日本などの主要貿易国となった韓国を米国はもはや無視できず、その意向に反することを北朝鮮との頭越しに決めることはできない。 北朝鮮は在韓米軍の撤退を強く求めているが、万が一それに応じるとしても、韓国の核保有との抱き合わせになろう。 場当たり的な政策から北朝鮮の核保有を阻止できなかった米国には、韓国が北朝鮮への対抗上核保有することを止める名分も力もない。 韓米原子力協定が改定期を迎え、若干ギクシャクしている。韓国が再処理施設の保有を禁じた条項の削除を求めているためであり、核保有が視野に入っていることは言うまでもない。 オバマ政権は米国の歴史的なジレンマ解消のために、朴槿恵大統領の良識とイニシアチブに期待して北朝鮮問題を解決する方向に舵を切ることになろう。 北朝鮮核問題は韓国の核保有問題と連動し始めた。 日本の核保有もその後に続くことになろう。 東アジアに危険かつ不毛な核拡散競争を起こさないためには、南北関係が実質的に今後の最重要課題となる。南北協議→朝米協議→南北中米協議→6カ国協議への流れとなることが現実的であり、望ましい。 |
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米国が北朝鮮攻撃を自制している最大の要因の一つは、北朝鮮の同盟国である中国の参戦を恐れていることにある。
しかし、北朝鮮が第三次核実験を強行し、対米核戦争まで公言するに至って、この構図が揺らいでいる。 中国は朝中同盟条約の自動参戦条項で米国との核戦争に巻き込まれる危険性に敏感に反応している。 未熟な北朝鮮指導部のように対米核戦争で勝利できるなどとは思っていないだけに、当然なことである。 習近平総書記に近い中国共産党中央党学校幹部から北朝鮮切り捨て論が公然と流れているのは、決して偶然ではない。 北朝鮮指導部の強硬派は、強引に朝米交渉に持ち込み、在韓米軍撤退に繋げれば中国も追認するに違いないと算盤を弾いたのであるが、状況判断が甘きにすぎた。 2010年の延坪島南北砲撃事件では、北朝鮮空爆に飛び立った韓国軍機を米軍が寸前で押し止め、北朝鮮西海沖合いに展開しようとした米空母を中国が烏山沖合の線で食い止めた。 この事実は、朝鮮半島の基本矛盾が南北対立と中米対立に移っていることを如実に示した。 北朝鮮強硬派が従来の朝米対立の構図で捉えるのは、時代錯誤と言うべきである。 無謀な核保有はソ連崩壊後に事実上、核の傘を提供してきた中国からも見放され、安全保障の根幹を危うくするだけである。 韓国では北朝鮮の第三次核実験後、それに対抗して韓国も核武装すべきであるとの世論が7割前後に達している。 もし在韓米軍撤退が机上に上り、米国の核の傘に頼れなくなることが分かったら、父親の朴正煕元大統領がそうしたように、朴槿恵大統領は一挙に核保有へと舵を切るに違いない。 米国にはもはやそれを押し止める力はないし、黙認する可能性すらある。 そうなればインド、パキスタンの不毛の核競争が半島で再現されるが、四面楚歌で国力の劣る北朝鮮には全く展望がなくなる。 中国も、在韓米軍撤退との抱き合わせで、朝鮮半島が緩衝地帯であることが保証されれば韓国の核武装に格別反対する名分がない。 経済関係を対外関係の重点に置き、経済的に立ち後れた北朝鮮よりも、主要貿易国である韓国重視に傾いている。 トウ小平が朴正煕の開発独裁からヒントを得て改革開放に踏み切ったことは知る人ぞ知ることであり、事実、中国における朴正煕評価は一般に知られている以上に高い。 朴槿恵大統領はいち早く中国特使と得意の中国語で会談し、就任演説では「米国、中国、日本・・」と初めて日本の先に中国を挙げた。 他方の金正恩第1書記は中国との意志疎通が上手くいっていない。 中国指導部内でも、米国と中国双方に対してバランスある距離を保つ韓国主導の統一の方が半島と地域の安定に有益であるとの見方が強まっていこう。 南北首脳会談はこうした状況を踏まえて行われることになろうが、そこで議論されるべきことは自ずと明らかである。 |








