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核問題に人権問題が加わり、金正恩政権の国際的な孤立は一段と深刻化し、体制をいつになく不安定化させている。
国連総会第3委員会の北朝鮮人権非難決議採択に国防委員会声明で米、韓、日、EUなどに核攻撃をちらつかせた「未曾有の超強硬対応」を予告して反発したのも、前回指摘したように、内なる敵、北朝鮮内部の動揺を抑えることに第1の狙いがあった。 それを裏付けるように、国防委声明を受けて各道単位で党、政、軍、治安部隊総出で「総爆弾精神で最高尊厳固守」を絶叫する群衆大会を開催している。 北朝鮮社会内部では長年の失政に対する不満と反体制感情がマグマのように溜まっており、建国以来の危機に直面していると言っても過言ではない。脱北者団体のビラ風船に向かって38度線越えに対空射撃を加えるのも、マグマ噴出を恐れる危機意識の表れにほかならない。 中国は金体制の危機的な状況を熟知しており、邱国洪駐韓中国大使が26日、「内部要因」による崩壊を示唆する発言をしたが、中国は北朝鮮危機管理を本格的に検討していると読める。 金正恩体制の最大の弱点は食糧などの戦略物資を自給できず、耐乏生活が限界に達していることにある。 最大の交易相手である中国との貿易は今年1〜10月まで輸出23・9億ドル、輸入28・8億ドルで、4・9億ドルの赤字であった。同盟関係が生きていた時代は援助、友好価格で補填出来たが、中国は徐々にそれを廃して通常の取引に移行し、特に、中国との合弁企業などに意欲的であった張成沢国防委副委員長が粛清された昨年12月以降は全廃した。 中国からの原油輸出が同期間ゼロとなった統計に韓国でも様々な説が飛び交っているが、援助、友好価格が廃された事を意味する。ガソリン、軽油などの輸入が増えているのは、現金決済で取引しているからである。 外貨がなければ必要な物資を調達出来ない。外貨が金正恩政権の命綱と言えるが、国連人権決議に神経質になる隠れた理由もそこにある。 韓国のアサン政策研究院の報告によると、昨年、北朝鮮の人力輸出はロシア2万、中国1・9万、クウエート5千など16ヵ国に5万余人で、賃金総額は12〜23億ドルに達する。 問題は、12時間を超える労働賃金の9割が上納され、本人に残されるのは食べるにやっとの事実上の強制労働状態にあることである。朴正煕政権時代にも人力輸出があったが、賃金は全て本人の収入となり、本国への送金で外貨を調達していた。 つまり、この強制労働が人権侵害と認定され、外貨が枯渇することを恐れているのである。 崔龍海書記が急遽、ロシアを訪問したのも、中国に代わるスポンサー探しという窮余の策であったが、ロシアのガルシカ極東開発相が27日に訪韓し、韓国側と協議している。 緊張する欧州部から急成長する極東にシフトしているロシアの戦略で、米中とのバランス外交で存在感を高めている韓国との連携は軸の一つであり、北朝鮮に対する鉄道近代化協力事業も経済大国・韓国を念頭に置いている。 OECDによると、今年の韓国の経済成長率は3・5%、来年は3・8%である。アベノミクスが失速した日本がそれぞれ0・4%、0・8%であるから、勢いの差は一目瞭然である。 私は韓国、中国、ロシアを繋ぐ経済圏が形成され、その中に北朝鮮を組み込んで軟着陸させる構図が作られつつあると考えている。 注目すべきは、中国大使もロシア極東開発相も前提条件なしの6ヵ国協議開催を韓国に求め、北朝鮮に配慮を見せている。 北朝鮮を必要以上に追い込んで政権を不安定化させ、ウクライナや中東のような政治的混乱を招くのは得策でないとの判断とみられる。 北朝鮮の核廃棄が必要条件であることは言うまでもないが、中国大使は「6ヵ国協議中に北朝鮮が核開発を進めれば圧力を加える」と強調している。 朴槿恵政権も考え時である。韓国政府関係者が既に訪朝し、ハサンー羅津鉄道事業を視察しており、あるいは水面下では動いているのかもしれない。 私はかねてから、金正恩政権がかつてのように中国、ロシアから安全保障を得て核を放棄し、韓国などの経済協力をえながら合理的な開発独裁に向かうことを提唱してきた。 金正恩第1書記は決断の時である。 崔龍海書記が党常務委員に復帰した意味についての分析は次回に譲る。 |
南北関係・統一論
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今日の労働新聞一面に金正恩国防委員会第1委員長が満面笑みを浮かべて軍事演習を指導する姿が掲載されているが、内心は不安で仕方がないであろう。
護衛部隊と化した軍に囲まれていないと安心できないのである。「572連合部隊と630連合部隊の連合訓練を自ら発起し、任意の時刻に不意の状況を与え訓練を組織指導した」と労働新聞は伝えており、さながら私兵である。 金第1委員長の本心は、前日に発表された、極端に興奮した国防委員会声明にある。 「人権騒動を決して許さない」と題した声明は18日に国連総会第3委員会で北朝鮮人権非難決議案が採択されたことを「共和国の自主権と生存権を否定する謀略的な宣戦布告」に等しいと反発し、米国、EU、日本、韓国に対する報復的な「未曾有の超強硬対応戦に突入する」と予告している。 「核戦争が起きれば、青瓦台が安全だと思うのか」、「聖戦が開始されれば、日本は焦土化されねばならなくなる」と核攻撃を予告する無軌道ぶりである。 20日の北朝鮮の外務省声明は「核抑止力強化の自制を困難にしている」と核実験を示唆しており、北朝鮮国家の総力を挙げて対抗手段を講じる意思を明確にしているが、その狙いは「最高尊厳の固守」である。 「最高尊厳」とは金国防委第1委員長自身のことであり、要するに、自分の権威を守ろうと必死になっているのである。 国連総会での北朝鮮人権非難決議案採択は2005年から始まり、今年で10回目となる。 一見、今さらの観がなきにしもあらずであるが、今年の特徴は、政治犯収容所などでの広範な人権侵害に対して「人道に反する罪」で金正恩第1委員長ら北朝鮮最高指導部の責任を明確にし、国際刑事裁判所(ICC)に付託して断罪する内容を含んでいる。 以前も指摘したように、北朝鮮はその阻止に総力を挙げた外交戦に乗り出し、金正恩委員長をジュネーブ留学時代から後見してきたリ・スヨン外相が北朝鮮外相として15年ぶりに国連総会に参加するなど各国への根回しを行ってきた。 しかし、18日の採決では賛成111、反対19、棄権55と圧倒的な大差で可決された。国防委声明は国連解体まで主張しており、北朝鮮の衝撃の大きさがうかがい知れる。 来月には国連総会全体会議で採決に付される。ICC付託には国連安全保障理事会の同意が必要であるが、金第1委員長としては、関係が疎遠化している中国、ロシアが拒否権を行使してくれるか心許ない。 18日の採択では反対票を投じたが、票差がここまで開くと反対しにくい。 崔龍海書記が国連総会第3委員会採決直前の17日に急遽、モクスワへと飛んだ第1の理由はそこにあった。 飛行機はエンジントラブルで一日遅れたが、崔書記はプーチン大統領と会談して金第1委員会の親書を手渡した。 朝鮮中央通信はごく簡単に「来年、朝ロの親善協調関係はより高い段階に発展する」とだけ報じたが、ロシア側からは朝ロ首脳会談、6ヵ国協議再開、経済協力関係強化、最新戦闘機の供与などが議題に上がっていると伝わってくる。 金第1委員長としては、ロシアから拒否権行使の言質を得たい。 最大の後ろ楯であった中国との関係が張成沢国防委副委員長粛清で険悪化し、頼れるのは、経済問題も含めてプーチン大統領だけという訳である。 外交上手のプーチン大統領は北朝鮮の足元を見て、様々な思惑を巡らす。 ウクライナ問題で制裁を課している欧米に対抗する北朝鮮カードを手にする。6ヵ国協議で存在感を高めることもできる。さらに、鉄道近代化と抱き合わせで北朝鮮資源開発権を独占し、極東開発に弾みを付ける狙いもある。 旧ソ連の北朝鮮への影響力は、“核の傘”提供を含め圧倒的なものがあった。それが部分的に復活する可能性がある。 |
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韓米連合軍司令部の有事作戦統制権が2020年半ばまで10年間延期されることが決まり、韓国内でも野党から異論が出されているが、政治的な打算や地域開発利害ではなく、朝鮮半島と地域の安全保障を見据えた冷静な議論が必要である。
と言うのも、それを招いた最大の要因は、昨年3月に金正恩政権が核と経済建設を同時に進める並進路線を決定したことにある。 金第1書記は連日のように北朝鮮メデイアを通して核戦力をこれ見よがしにデモし、在韓米軍が無力化したかのように喧伝し、米軍撤退を迫ったのはまだ記憶に新しい。 私は無謀な路線であり、米国の圧倒的な核戦力のターゲットに北朝鮮を入れてしまう愚策であると繰り返し指摘したが、その通りになった。 昨年10月の第45回韓米安保定例会議で新抑止戦略が合意され、北朝鮮の核・ミサイル発射の兆候を察知し、先制攻撃する「キルチェーン」が策定され、逆に、地下に潜るだけで防衛網が脆弱な北朝鮮の核・ミサイルが事実上、無力化されてしまった。 今年春からの一連の韓米合同軍事演習では新抑止戦略が実戦演習に移され、労働新聞など北朝鮮メデイアは「核戦争を引き起こす合わせ型抑止戦略」と連日、脅えるように非難したが、自らの軽挙妄動が招いた事態であると知らねばならない。 今月23日の第46回韓米安保定例会議での有事作戦統制権移管延長はその延長線上にあり、十分に予想されたことであった。 同声明には「米軍主導の韓米連合軍司令部から韓国軍主導の有事作戦統制権移管は韓国が提案した『条件に基づいた作戦統制権の転換』推進で合意し、韓国と同盟国が十分な軍事力を備え、安保環境が安定的に移管できる時期に移管」と記されている。 さらに、「核・ミサイルを含む北朝鮮の脅威を察知、防衛、攪乱、破壊するために同盟国の包括的ミサイル対応観念、原則の制定を通じ、脅威を抑止し、対応する能力の強化を再確認した。韓国国防長官はキルチェーンと韓国ミサイル防衛(KAMD)を2020年半ばまでに発展させることを再確認した」とする。 慎重な表現は、北朝鮮を無用に刺激せず、同時に中国に配慮したからである。 中国は有事作戦統制権移管延長はやむを得ないにしても、米国が計画している高高度防衛システム(THAAD)に対しては中国主要部が探知されるとして警戒している。 米国と中国の間でバランス外交を進める朴槿恵政権は、対北朝鮮包囲網に中国の協力は欠かせないとして米国を説得したと読める。 それを裏付けるように、ヘーゲル国防長官は「THAADについては何も決定されていない」と述べ、中国の懸念を払拭した。 並進路線は封殺されたも同然である。 金第1書記は核保有宣言で平和が保たれ、経済建設に専念できると豪語したが、現実は正反対である。労働新聞論評などに頻繁に「状況は戦争前夜にある」といった言辞が登場するように、北朝鮮も事実上、誤算を認めざるをえなくなった。 他方で、頼みの外資誘致は全く止まり、中国からの原油輸入が1月から9月までストップするなど、国家経済は年間計画も立てられず、事実上の破綻状況にある。 労働新聞論評などに「2015年に向けて、祖国統一大戦最終勝利」との文言が踊っているのは、単なる煽動的なレトリックを超え、有事作戦統制権返還→米軍撤退を見越して第二次朝鮮戦争を仕掛ける冒険的な動きと解釈できないこともないが、その野望も完全に雲散霧消した。 ここまで来ると、もはや金政権が頼りとするのは朴槿恵政権しかない。それを最もよく知っているのは、他でもない北朝鮮指導部である。 私が予測した南北高官級協議に変則的に応じてきたのもそのためである。 その高官級協議は30日に迫るが、北朝鮮は態度を明かにしていない。 26日に国防委員会書記室名義の通知文を大統領府安保室宛に送ってきたが、その内容たるや、脱北者が25日に飛ばした対北朝鮮宣伝ビラの中止を重ねて求めるものであった。 たかがビラ散布に「宣戦布告」と極度に神経質になるところに、金政権の窮状がそのまま投影されている。 配給制が1990年代半ばに崩れてから悪化する一方の食料事情、電気水道も止まった劣悪な住宅事情などで北朝鮮国民の不満は暴発寸前にある。 治安機関が四六時中、目を光らせて統制しているが、「独裁者の悲惨な最後」なる扇情的なビラが飛んでくることが脅威と意識されているのが実情である。 韓国側は27日に「民間団体の活動は規制できない」と返信したようだが、妥当である。 朴槿恵政権が法を破って金政権に露骨に肩入れするような南北対話は禍根を残す。 金正恩政権も過度に朴槿恵政権に頼るのではなく、脱北者をなくす社会の再生に向けて第一歩を記すべきである。 北朝鮮がいくら「核は民族の宝剣」などと強弁しても、ほとんどの韓国人は脅威としか考えていない。 自縄自縛の並進路線を廃棄し、韓国に対する核の脅威を除き、しかる後に6・25なり10・4宣言で定めた経済支援を受ける。 それが筋であり、それしか生き残る道はない。 |
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金正恩第1書記が14日、40日ぶりに北朝鮮メデイアに登場したが、左手に杖を持っての痛々しい様子であった。
衛星科学者用の住宅建設現場を指導したとされる。警護上の理由から翌日報道するのが通例であるが、労働新聞には10月10日の労働党創建69周年までに完了するように指導したとあるから、それ以前とみられるが、チグハグさが目につく。朝鮮中央テレビも杖で体を支える静止画のみを流しており、歩ける状態ではないのであろう。 健在ぶりをアピール、にはほど遠く、長期不在から来る北朝鮮国民の動揺を鎮めるために、急遽、危機感を強めた周囲が演出した可能性がある。 それだけ体制が不安定化しているということである。 外交は内政の延長と言われるが、対話と恫喝の狭間で激しく揺れる金正恩政権の対南政策は、不安定な内政そのものと言える。 インチョン・アジア大会閉幕式に黄炳瑞軍総政治局長ら実勢3人を電撃的に派遣し、変則的に第2回南北高官級協議に応じた。 ところが、その数日後にNLL越境で南北警備艇が銃撃戦を交えた。はては、脱北者団体の反体制宣伝風船ビラに銃撃を加える無軌道ぶりである。 激しいギャップから透けて見えるのは、第1に、反体制ビラに「宣戦布告同然」と過剰に反応する内情である。 現体制への北朝鮮国民の不満は爆発寸前にあるのであろう。 それと関連するが、第2に、韓国の経済支援なくしては維持できなくなった経済的困窮である。 今日の労働新聞の情勢論解説も「北南関係の唯一の打開策は6・25宣言、10・4宣言履行」と訴えるが、中国との関係悪化で外資が入ってこなくなり、韓国の経済協力に頼るしかなくなっているのである。 これに対して、朴槿恵大統領は13日、「南北高官級協議を南北関係改善の機会にすべきだ」と応じている。2度も無謀な銃撃戦を挑まれれば、関係断絶、責任追求が通常の国家の対応である。 そうしないのは、同族に対する温情があるからにほかならない。 核や人権侵害で孤立する国際社会で、金正恩政権にここまで寄り添うのは韓国しかない。金第1書記とそれを担ぐ実勢は、その意味を真剣に考える時期に来ている。 ただ、朴槿恵大統領は北朝鮮が求める5・24措置解除について「責任ある姿勢」を北側に求めている。 6・25、10・4宣言履行に関しては明確に核放棄を条件にしている。 金正恩政権に厳しい目を向けつつある韓国世論を考えれば当然とも言えるが、北朝鮮はそれが気に入らず、強行手段で揺さぶり、韓国側の譲歩を引き出そうと仕掛ける。一種の条件闘争である。 金正恩第1書記がこれ以上、核にしがみつく意味があるであろうか。 核・経済を同時に建設する並進路線は破綻したも同然である。北朝鮮が「宝剣」とする核兵器も、韓米が昨年10月に策定した新抑止戦略で事実上、無力化された。金第1書記は圧倒的な米国の核戦力のターゲットとされた恐怖を感じていることであろう。 金正日前政権が核開発に突き進んだのは、ソ連崩壊で失った核の傘を自前で作り、体制保障が得たかったからにほかならない。 それが保障されるならば、金正恩政権がいつまでも核にこだわる理由はない。 それについて話し合える唯一の相手が朴槿恵大統領であることを、金第1書記は知る時期に来ている。 朴槿恵政権は北朝鮮の混乱を望んでいない。 1970年代で時間が止まった北朝鮮経済再建には、朴正煕型の合理的な開発独裁が有効であることも知っている。 金融委員会や計画財政部、統一部等が「統一金融青写真」を準備しているが、それによると、GNIが韓国の38・2分の1の297億ドル、1人当たりが18・7分の1の1216ドルの北朝鮮国民所得を1万ドル台に引き上げるには、5000億ドルの投資と20年の歳月が必要という。 その鍵を握るのは、北朝鮮の政治的安定と合理的な経済運営である。 第2回南北高官級協議では、将来を見据えた戦略的な対話を望みたい。 |
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予測した通り、北朝鮮は変則的に第2回高官級協議に応じてきた。
4日のインチョン・アジア大会閉幕式に黄炳瑞国防委員会副委員長・軍総政治局長、崔龍海書記、金養健対南担当書記が電撃的に参加し、金寛鎮大統領府安保室長らとの会談で「南側の望む時期」に第2回南北高官級協議を開催することに同意した。 前回指摘したように、第1回協議から時間が掛かったのは、協議を有利に運ぼうとする一種の条件闘争であり、折れてきたのはそれなりの理由がある。 北朝鮮の実勢3人の突然の訪韓の狙いについて憶測が乱れ飛んでいるが、私の見立では、3人で来たことに特別な意味がある。 北朝鮮の政治文化では、労働党細胞が3人から始まるように、3人は意思決定の最小単位である。 黄総政治局長は「北南対話が行き詰まっており、破格的な事件が必要だ」と述べたが、重要な事を示唆している。 3人での訪韓は韓国の政治的経済的な雰囲気を周到に探り、帰国後に重大な決断を下すのが目的であろう。 微妙なのは、9月3日以来、公の場に姿を現さない金正恩国防委第1委員長の立場である。 朝鮮中央テレビが同月25日に「体が不便」と伝え、健康不安を認めたが、一般論として言えば、政治家の健康問題は政治的立場の弱体化を意味する。 黄総政治局長が朴槿恵大統領礼訪を断ったのは、金委員長の親書を携えていなかったからであるが、逆に言えば、実勢3人の訪韓に金委員長が関わっていなかったとも読める。 3人帰国後のピョンヤンでも、金委員長の存在感は薄くなっている。 アジア大会で11個の金メダルを取った北朝鮮選手団を称える宴会が6日、労働党中央委と国防委共催で盛大に持たれたが、金委員長は参加していない。 金正日の党総書記就任17周年記念中央報告大会には党、政府、軍幹部が参加したが、そこにも顔を見せていない。 イデオロギー担当の金己男書記が例のごとく金正恩委員長を称えて見せたが、統一団結の象徴として祭り上げているとも解釈できる。 6日の朝中国交樹立65周年に恒例の金正恩委員長名義の祝電が送られていないのは、単に朝中関係冷却化以上の意味があるかもしれない。 根底にあるのは、経済破綻で完全に行き詰まった核・経済並進路線を巡る内部葛藤である。 実勢3人が訪韓し、南北高官級協議に応じたのは、並進路線を修正して核廃棄協議に応じ、見返りに経済協力を得る伏線である可能性がある。 その場合、並進路線を提唱した金正恩委員長の立場は苦しくなるが、北朝鮮内部の政治問題として処理されていこう。 無論、並進路線に忠実な軍強硬派が巻き返す事態もありうる。 実勢3人の訪韓3日後にNLLで北朝鮮警備艦が越南し、銃撃戦を繰り広げたのも、その類いの動きであろう。 労働新聞には「2015年を統一大戦完成の年」と檄を飛ばす論調が散見される。韓国軍への戦時作戦統制権が返還されるのを見越して、一挙に南侵→武力統一を図る過激路線である。 核により在韓米軍を無力化する事が大前提になっている。 しかし、昨年10月の韓米定例安保協議で、北朝鮮の挑発に対して核先制攻撃を含む新抑止戦略が策定され、逆に北朝鮮の核が無力化されてしまった。 それが、金正恩委員長の並進路線への懐疑と不信を北朝鮮指導部内に高める契機となったことは否定できない。 北朝鮮核問題の解決が朝鮮半島と東アジアの平和と安定に不可欠である。 10月下旬から11月上旬に開催されるとみられる第2回高官級協議では、北朝鮮側が経済協力の見返りに核廃棄に踏み切る重大な提案が出される可能性がある。 それを上手に引き出すことができるか、韓国の外交力も問われる。 |







