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予測した通りに北朝鮮が締切日の15日に仁川アジア大会へのエントリーを行った。アジアオリンピック評議会の事務局を通して迂回的に行ったが、面子にこだわる北朝鮮式の変則的なやり方である。
韓国が呼び掛けた第2回南北高官級会議への返答はまだないが、条件闘争を強めており、19日からずれ込んでもいずれ変則的に応じてこよう。 ミサイル、ロケット演習を繰り返して自称「超精密誘導弾」を誇示するなど、一見して北朝鮮は強気である。 17日には北朝鮮軍総参謀部報道管声明で、18日から始まる韓米合同軍事演習「乙支フリーダムガーデイアン」の中止を求め、「我々に宣戦布告した以上、任意の時刻に先制攻撃が開始される」といつもながらの極端な主張をしているが、これも一種の条件闘争である。 いくら唯我独尊的な北朝鮮でも、圧倒的な核戦力の米国相手に核戦争を挑んで生き残れると妄想するほど、愚かではない。 昨年よりも過激になっているのは、昨年3月に採択した核・経済建設並進路線が全面否定されていることを自覚しているからである。核先制攻撃を狙う「合わせ型抑止戦略」と非難しているように、核照準がピョンヤンに合わされている事に危機感を強めている。怯えていると言っても過言ではない。 核攻撃を公言したことが逆に米国の核戦力を韓国に引き入れ、圧迫されている結果に、軍内部に動揺が広がり、一部パニック状態に陥っている。 臨戦態勢を強調しながら、肝心の一線軍指揮官クラスを白頭山の革命戦跡地探査行軍に動員し、金正恩国防第1委員長への忠誠を誓わせる矛盾した行為は、内部の動揺を抑えるのに苦慮していることを物語る。 朴槿恵大統領が光復節で南北信頼プロセスやドレスデン構想に基づいて南北の協力と和解を呼び掛けた。 これに対して労働党傘下の「ウリ民族キリ」が「根本問題から解かねばならない」として6・15宣言、10・4宣言の全面履行を求めたが、北朝鮮の本音がよく見える。 韓国の経済協力を得て、深刻な経済難を打開しようということである。本質は経済大国韓国による経済支援である。 しかし、核問題は避けて通れない。 金大中大統領、ノ・ムヒョン大統領が金正日国防委員長と交わした一連の経済協力は太陽政策の一環であり、北朝鮮の非核化を前提にしている事は言うまでもない。 その履行を求めるのなら、並進路線を廃棄し、真正性を示すのが筋である。 朴槿恵大統領の一連の統一構想も詰まるところは太陽政策の延長線上にあることを、金正恩第1書記は明確に認識する必要がある。 北朝鮮は米国との直接交渉で韓国を出し抜く淡い願望をまだ捨てきれていない。「戦略的忍耐は失敗した」とオバマ政権が直接対話に応じることを求めたのもそのためだが、幻想でしかない。 そもそもアメリカは脅されて交渉に出てくる国ではない。リバランスを進める米国の対アジア戦略の枠内で弄ばれているに過ぎない。 次期政権に期待するのも甘すぎる。2016年の大統領選の最有力候補であるヒラリー・クリントン前国務長官は、オバマ大統領以上の強硬派である。 当時指摘したが、延坪島砲撃事件後に米核空母を西海の北朝鮮沖合に派遣しようとして中国軍部の反発を招いた。最近も雑誌のインタビューで「シリアの穏健な反政府勢力への武器供与を主張したが、政権内で受け入れられなかった」と述べている。 北朝鮮と中国との関係が悪化しているだけに、クリントン大統領が実現すれば、米国の対北圧力は「忍耐」からより能動的な形で強まろう。 最近、中国で摘発された脱北者11人が韓国政府の抗議で北朝鮮への送還を免れる注目すべき出来事があった。 中国公安を牛耳っていた親朝派の周永康逮捕で流れが変わったと見られるが、仮に朝中国境が開放されると、ハンガリー国境開放で東独市民が雪崩をうって西独に迂回的に流れ込み、東独崩壊に繋がった事態の再現もありうる。 日本に期待したところで時間の無駄である。 安部政権には拉致問題で支持率アップを図る野心しかない。 とは言え、北朝鮮崩壊で地域が不安定化するのは好ましくない。 半島の平和と繁栄のために、南北は虚飾を取り払い、本音で話し合う時期に来ている。 内政外交行き詰まった金正恩政権が生存戦略を描くとするなら、朴槿恵政権に頼るしかない。 南北対話の原点である7・4共同声明は朴正煕・金日成の間で結ばれた。その娘と孫があいまみえるのも何かの引き合わせである。 核を放棄し、開発独裁に専念した朴正煕モデルを受容し、協力を求める時期に来ている。 来る南北高官級協議がその第一歩になるとき、現実的で歴史的な意味を持とう。 |
南北関係・統一論
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韓国政府は11日、金圭顕・大統領府安保室第1次長名義の通知文を北朝鮮側に送り、第2回高官級協議を19日に開催することを提案した。
南北離散家族再会や金剛山観光再開問題などを議題として提案する一方で、「特定の議題を排除しない」として、北朝鮮側が提案する議題も受容するとした。 つまり、何でも話し合うということである。 この種の会談は対話のシステム構築に重点が置かれる事が多い。 大統領安保室第1次長が首席代表を勤めるということは、北朝鮮側のカウンターパートナーとして国防委員会幹部を想定していることになる。 前回2月は労働党統一戦線部副部長が首席代表となったが、実力者の張成沢労働党行政部長の粛清で労働党が動揺しており、時宜を得た選択と評価できる。 変則的な政府対党ではなく、本来の政府対政府の関係に乗せることで、国際法的な裏付けを得た責任ある対話が可能となる。 過去の南北対話には不透明な部分が多く、事実、その内容が漏れて物議を醸してきた。 南北対話は一握りの執権者の独断で決まるものではなく、その是非を最終的に判断するのは主権者である南北の国民である。 これを機に馴れ合いや裏取引を排して透明性を高め、国民に可能な限り情報を開示して理解を求める民主的な南北対話へと脱皮する第一歩となることを期待したい。 これまでのところ北朝鮮からの正式な回答はないが、労働新聞が12日付で金正恩国防委員会第1委員長が「第17回アジア大会に参加する女子代表チームの検閲競技を指導」と報じている。 北朝鮮チーム・応援団の参加問題についての南北協議は決裂したままであり、時間はあまり残されていない。 北朝鮮が韓国の呼びかけ翌日に再度、参加の意思を明らかにした事は、事実上、南北高官級協議に応じるとの間接的な意思表示と読める。 北朝鮮として問題は、17日から始まる韓米軍事演習「乙支フリーダム・ガーデイアン」に反対してきたこととの整合性である。 7月27日に黄ビョンソ軍総政治局長が軍集会での演説で「(演習を中止しないと)ホワイトハウス、ペンタゴン、海外の米軍基地、米大都市に核弾頭ミサイルを発射する」とまで発言している。その後も労働新聞には同種の論評が連日、掲載されている。 無論、北朝鮮にそれほどの核戦力はない。現実の脅威があると判断したら、米国が放っておくはずがない。昨年10月に韓国と合意している「新抑止戦略」に基づいて核先制攻撃を加えていたことであろう。 金正恩第1書記はいい加減に、その種の無責任な発言が自国民に大惨事を招きかねないことを自覚すべきである。 米国による対北朝鮮「戦略的忍耐」の基本的な狙いは、「北朝鮮の脅威」を利用して日本、韓国にMDを配置し、中国を牽制することにある。 小国北朝鮮は直接の対象ではなく、アジア回帰のリバランス政策の出汁でしかない。 北朝鮮指導部もそれを承知で、過激な発言を弄している節がある。 深刻化する経済難や人身事故続出で動揺する国内を引き締めるために、意図的に強硬姿勢をとっているわけである。 そうした意味では、韓国側の高官級協議呼び掛けは渡りに船の面がある。 アジア大会問題にとどまらず、北朝鮮側から本音の、大胆な南北和解案が飛び出してくる可能性もある。 |
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今日の労働新聞に金正恩第1書記が航空反航空軍447部隊を視察する写真が掲載されているが、異例にも、金第1書記後方のチョ・ギョンチョル保衛司令官の腰に拳銃が写っている。
金第1書記が求めたものであるが、周囲を信じられず、治安に極度に不安感を覚えているからと読める。 そうした現象はソ連・東欧社会主義圏崩壊過程でみられた。 ハンガリー共産党機関紙記者からハーバード大教授に転じたコルナイ・ヤーノシュが「体制への信頼の崩壊が限界を超えると、指導層の内部から別の方向をめざす動きが出てくる」(朝日新聞5・14)と述べているが、昨年暮の張成沢粛清事件はそれを象徴する事件と言えよう。 ヤーノシュは1985年に訪中し、趙紫陽首相に「指令経済の清算」を説き、中国の市場経済派の理論的支柱とされるが、八方塞がりの北朝鮮経済の再生にも多くの示唆を与える。 今日の労働新聞論評は「わが国の核打撃手段の主な標的は米国」と再度強調した。敵視政策の転換を求めてのことであるが、全くの逆効果である。 こうした無謀な主張が北朝鮮国民を核の惨禍にさらす危険性について、北朝鮮指導部は冷静に考える時期に来ている。 核は非人道的な武器とされ、使用に網が被せられているが、韓米日への核攻撃を公言する北朝鮮は事実上、例外とされる。昨年、北朝鮮が核・経済の並進路線を公表した直後の韓米国防長官会談で北朝鮮への核先制攻撃を含む新抑止戦略が合意された。 北朝鮮メデイアも「いつ核戦争が起きても不思議でない危険な合わせ型核戦略」と危機感を再三表明しているが、自業自得の面がある。 純軍事的には、天地の差がある米国の核戦力に北朝鮮が勝てる可能性はゼロである。自国を焦土にする結果しか残らない。 北朝鮮は自己の核戦力を誇張して米国の譲歩を引き出そうとしているが、逆に利用されるだけ利用され、自分の首を絞めている。 安倍政権が釈迦力になっている集団的自衛権も「北朝鮮の脅威」が最大の口実にされている。韓国、日本の一部には北朝鮮に対抗して核武装すべきだとの過激な主張まで台頭している。 北朝鮮はいい加減、東アジアの軍拡競争の出汁にされていることを知らねばならない。経済大国の韓国、日本を巻き込んだ本格的な軍拡に火がつけば、地域は一段と不安定になり、経済小国の北朝鮮など吹き飛んでしまうだろう。 北朝鮮建国の目標である富国強兵は理解できるが、残念なことに新旧並進路線により本末転倒の強兵富国に変質してしまったのが北朝鮮の現状である。 無謀な強兵は経済を疲弊させるだけ疲弊させ、北朝鮮国民の窮状は言語に絶するものがある。 朝鮮中央通信が30年来の干魃と報じた北朝鮮各地で田植が始まったが、「不利な気候」「一滴の水も無駄にしない」と苦闘している様子がうかがわれる。相当の食糧を輸入しないと飢餓が蔓延するが、貿易赤字と外貨不足でままならない。 金第1書記は新年辞で「農業を主打撃戦線とし、国民の食べる問題を解決する」と公約しているだけに、政治問題化することは必至である。 社会不安と治安悪化が拡散し、金第1書記の身辺警護が異常に強化されている。金日成は大衆の中によく入っていったが、今の指導者は怖くてそうした真似が出来ない。 北朝鮮が韓国、米国に対して異常なほど攻撃的になっているのは、国民の不満を外に向けるためであるが、それも限界である。 北朝鮮が生き残るには一にも二にも経済再建しかないが、ここに至ってまだ可能であろうか? 期待を込めて、可能としておく。 本エントリー(上)で引用した現代研究院報告書は、北朝鮮の社会経済レベルを「所得水準、産業構造は1970年代の韓国」と結論付けた。GNPに加え、農業人口が産業人口の3分の1、貿易量、セメント、化学肥料、発電量、鉄道・道路など社会インフラ全てが合致すると指摘するが、概ね私が指摘してきたことと一致する。 そうした事実は、韓国経済成長の出発点である朴正煕政権時代の開発モデルを適用する条件に合っていることを物語る。 政治形態も、独裁体制の金正恩政権は私が『朴正煕・韓国を強国に変えた男』で提唱した朴正煕型の開発独裁モデルを応用しやすい。 幸いにして朴槿恵大統領は朴正煕時代に精通しており、支援を惜しまないだろう。父親の朴正煕大統領は「先建設後統一」と金日成主席に体制競争を呼び掛けたが、第2ラウンドと言うべき新局面が巡ってきたということである。ドレスデン宣言にはそうしたメッセージが込められている。 問題は金第1書記とブレーンたちがそれを受け入れ、核放棄と経済改革を決断できるかである。 核にこだわるのは、米国を韓国から撤退させ、武力で革命統一を成し遂げる宿願を捨てきれないからだが、今や真夏の見果てぬ夢と知らねばならない。 北朝鮮は巨大な韓国経済に吸収統一されることを恐れるが、全くチャンスがないわけではない。 経済大国化した韓国は資本主義に宿命的な格差拡大に苦しんでいる。北朝鮮が経済再建を果たし、なおかつ平等な社会を維持できれば、南北の平和的民主的な体制競争で主導権を取り戻す道も開ける。 ベトナムへの日本企業の進出ラッシュが始まっているが、北朝鮮が非核改革開放に舵を切れば、豊富な人材と資源を求めて韓国、日本などから外資が殺到し、「大同江の奇跡」を起こすことも十分に可能である。 それがおそらく、スイスで市場経済を体験した金第1書記が父親に出来なかった実績を挙げる唯一の方法である。 |
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国際社会からほとんど無視されているが、北朝鮮で今、深刻な事態が進行している。
朝鮮中央通信が5月2日付で、今年2月から4月にかけ北朝鮮全域が平均降雨量23・5ミリ、例年の35%にしかならない30数年ぶりの干魃に襲われ、大麦、小麦、ジャガイモが被害を受けたと伝えた。 「収穫量は極めて少なくなる見通し」と異例の形で窮状を訴えたのは、暗に国際社会の支援を求めての事である。 しかし、国際社会から支援の声は遅々として上がらない。 冷淡と言えばその通りだが、北朝鮮政府にも大いに問題がある。 通例だと韓国社会で救援活動が活発化するところであるが、北朝鮮国営メデイアが朴槿恵大統領の対北人道支援策を個人的な中傷を交えて口汚く攻撃するため、全く冷えきっている。 中国、米国、日本なども第4次核実験をちらつかせる金正恩政権に苛立ち、むしろ制裁強化へと動いている。 北朝鮮が自力で干魃を克服するのは、朝鮮中央通信も暗に認めるように極めて難しい。 北朝鮮は慢性的な食糧危機に苦しんでいるが、特に秋の収穫が底を尽く春先は云わば春窮期で、ジャガイモなどが不作になると飢饉が発生しやすい。 餓死者が続出するような事態にでもなれば、張成沢粛清の余震が一向に収まらないだけに、政情不安が一気に噴出しないとも限らない。 金正恩政権は強気を崩さず、労働新聞が連日、農民の奮起を求めて檄を飛ばしているが、精神論に偏った従来の方式は限界と言っても過言ではない。 今日の労働新聞社説「経済扇動の掛け声高く、全ての戦線で大飛躍を起こそう」が「1970年代のように全国が奮起し、強隆国家建設の最後の勝利を目指そう」と書いたのは、いみじくも北朝鮮の今を象徴している。 確かに、1970年代は北朝鮮の絶頂期であった。 金日成主席は1975年の工業熱誠者大会での報告で「我が国の1人当GNPは1000ドル、先進国の入口に立った」と高らかに述べた事が、今も私の記憶に刻まれている。当時の韓国のそれは590ドルであるから、人口比を計算すると南北の経済力は拮抗していた。 しかし、40年経た今はどうか。 韓国の現代研究院の報告書(3月16日)によると、2013年末の北朝鮮の一人当GDPは854ドルで、韓国23,838ドルの3・6%でしかない。北朝鮮のGDPは韓国の60分の1程度でしかない。 その間に韓国は世界有数の経済大国に成長したが、北朝鮮は逆に後退し、中国は言うに及ばず、ベトナム、ラオスの後塵まで拝している。 その主因は、金日成が1962年に採択した並進路線にある。キューバ危機に刺激され、人民軍の幹部化・現代化、全人民武装化、全国要塞化を進めるというもので、名目は軍事と経済建設並進だが、実態は軍事優先、経済の軍事化である。 事実、経済が次第に疲弊し、第3次7ヶ年計画は1993年を最後に頓挫し、国家経済統計が消え、経済計画も立てられなくなった。 そうした中、食糧危機が深刻化していく。 WFPによると昨年の北朝鮮の穀物生産量は503万トンというが、1977年の850万トンの3分の2にもならない。 衰退する工業の支援を失った農業は肥料、機械、電気もままならず、治山治水に失敗し、毎年のように洪水、干魃に苦しんでいる。 その二番煎じが昨年3月の新並進路線であるが、核増強が唯一の同盟国であり、食糧・石油など戦略物資の多くを依存する中国を怒らせた。 中国との関係修復に動いていた張成沢国防副委員長粛清は、金正恩政権の致命傷となりかねない。 ワシントンへの核攻撃までちらつかせて米国から譲歩を勝ち取ろうとした無謀な新並進路線は、逆に韓米の先制核攻撃を含む新抑止戦略により封殺されてしまった。 原油を止めるなど、中国の制裁強化は北朝鮮経済を窒息させつつある。 ただ、韓国も中国も米国も金正恩政権が瓦解し、北朝鮮に権力の空白が生じて無用な混乱を引き起こすことは望んでいない。 地域の安定のために、金政権が進んで核放棄と改革開放に向かうのがベターと判断している。 新並進路線樹立と張粛清を主導した崔龍海総政治局長更迭は軌道修正の動きと見れないこともないが、金正恩政権にその余力が残されているか、予断を許さない。 新並進路線は2015年に予定されていた韓国軍に対する米軍の戦時作戦統制権返還を見越した冒険的な側面があった。強硬派がクリミア情勢を模倣し、核実験、対韓軍事挑発へと暴走する可能性も否定できない。 経験不足の若い指導者には荷が重すぎる状況であり、どちらに振れるか、予測が難しい。 |
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金正恩政権は重大な曲がり角に差し掛かっている。昨年3月に掲げた核増強・経済建設の並進路線は事実上、破綻しており、舵取りを間違えると収拾のつかない大混乱に陥るだろう。
金正恩第1書記は大きな決断を迫られている。 張成沢国防副委員長粛清の先頭に立ってナンバー2に伸し上がった崔龍海軍総政治局長が半年足らずで解任されたことが5月1日、明らかになった。 私はそれを予測していたが、それにしても動きが速い。発足間もない金政権の土台が激しく揺らいでいることをうかがわせる。 1週間前に「崔龍海総政治局長の対抗馬浮上」とエントリーし、ファン・ビョンソ(黄炳誓)次帥任命の意味を解析、崔の失脚を予測したが、数日後に金正淑ピョンヤン紡績工場労働者宿舎における5・1メーデー慶祝行事で黄が総政治局長の肩書で報じられ、確認された。 さらに5月3日の朝鮮中央通信は、前日の元山の松涛園国際少年団野営所竣工式で崔龍海書記が挨拶したと伝えた。 崔の序列は黄総政治局長、キム・ギナム書記、チェ・テボク書記の次となり、表面上は2012年4月に書記から軍総政治局長に抜擢された以前の状態に戻ったことになる。 一見して平穏な人事異動を繕っている。韓国では崔の健康不安を理由に挙げる見方が出されているが、無論、それほど単純な話ではない。 張成沢が粛清直前の昨年11月上旬、何もないように猪木参院議員と会談したが、似たような演出である。 崔はとりあえず古巣の青年団体など社会・勤労者団体を担当する書記とされたが、張同様にまず実権を奪われ、軍総政治局長時の繋がりが整理されていると読める。 それが北朝鮮独特の政治文化なのである。 崔の限界は、4月9日の最高人民会議での国防委員選出で第1副委員長就任に失敗し、軍長老の呉克烈、李勇武と同格の副委員長に止まったことである。 前日の党政治局会議で決まった人事であるが、崔に権力が過度に集中することが警戒されたとみられる。 軍総政治局長は先軍政治の要とされる。 前々任の趙明禄総政治局長は国防委第1副委員長を兼ね、金正日政権を支えてきた。晩年は病弱であったが、2010年まで終身その座に止まり、死去後も2年間その座は空席とされた。 崔は2012年4月に党書記から総政治局長に転身するが、気負いもあって強硬路線に傾斜し、経済状況を無視した並進路線確立に主導的な役割を果たす。 その結果、経済重視の張成沢と衝突し、金第1書記を味方につけ、粛清という強行手段に訴える。 崔の誤算は張成沢の妻であるキム・ギョンヒ書記の怒りを買ったことである。 キム・ギョンヒの立場も一時微妙になったが、金日成ファミリーの中核であることから長老らの同情を得て次第に盛り返し、逆に崔が孤立していく。 金日成の権威に依存する金第1書記もそれを無視できない。 先月26日の681軍部隊の砲兵区分隊の射撃訓練の現地指導報道記事に、「戦闘訓練がなっていないと政治委員を叱責した」との記述がみられる。異例のことであるが、政治委員を統括する崔龍海総政治局長を間接的に批判したと解釈すれば理解できる。 同日、党政治局拡大会議が持たれているが、その場で崔の解任が決定されたものと読める。 しかし、崔龍海の粛清には金正恩第1書記も慎重にならざるを得ない。 並進路線を否定し、自己の権威を傷付けることになりかねないからである。 労働新聞がここに来て連日のように団結と並進路線固守を神経質に叫んでいるのは、崔龍海の総政治局長解任が国内の動揺を引き起こし、政治問題化するのを防ぐために他ならない。 張成沢、崔龍海と金正恩政権のナンバー2がわずか半年の間に続けて失脚するのは、政権の不安定さをそのまま物語る。 建国以来最悪の経済状況がその背景にある。 |








