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金桂冠外務第1次官の基調演説について、北朝鮮の非核化に否定的な姿勢を示したと報じる日本のマスコミもあるが、表面的な見方である。
金次官は「6カ国協議の船を出港させ、先に乗って待っている」と述べ、むしろ積極的な姿勢を示した。 「9・19合意を我々に一方的に押し付け、国交正常化対話、エネルギー支援などを一部の国が怠った」と批判していることと併せ、その狙いが透けて見える。 非核化はやむを得ないが、より良い条件で交渉を進めたいということであろう。 セミナーを主宰した中国政府からは王毅外相が参加して挨拶したが、「朝鮮半島の非核化原則に反する私益追求は容認しない」とやんわりと北朝鮮に釘をさしている。 先に訪中した崔龍海総政治局長から6カ国協議復帰の言質をとり、ようやく協議が動き出す段階まで持ち込んだ中国としては、ここまで来て後退することはあってはならない。 問題は、北朝鮮が無条件の6カ国協議再開を要求しているのに対して、米国が韓国、日本と共に6カ国協議再開の条件として北朝鮮が昨年の2・26合意などを具体的な行動で示すことを求めていることである。 セミナーにも北朝鮮が金第1次官以外に李容浩・6カ国協議首席代表兼外務次官らが参加したにも関わらず、三国は参事官クラスにとどめ、一切接触しようとはしなかった。 核保有を既成事実化して交渉に臨みたい北朝鮮と、それを否定する韓米日の思惑が衝突しているのである。 こじれたパズルを解く鍵は、シリア方式にある。 サリンによる民間人攻撃を機にオバマ大統領がアサド政権軍への空爆を進めようとしたが、プーチン大統領が押し止め、結局、アサド大統領が大量破壊兵器の国際管理に同意した。 プーチン大統領の存在感は一躍高まったが、先のオバマ大統領との会談で北朝鮮非核化で合意し、新しい大国関係を強調した習近平主席としては、北朝鮮問題が試金石となろう。 シリアに倣って、北朝鮮の核を国際管理に移行する方式を強力に進める可能性が高い。 北朝鮮は米国との直接協議にこだわるが、米国一国主義が崩れつつある中、それはもはや北朝鮮が望むような意味はなくなっている。 北朝鮮は米国をよく知らない。 米国はかつて自国に脅威を及ぼした国と和解したことはない。軍国日本、ソ連共に崩壊した。 米本土への核攻撃を公言した金正恩政権との和解はあり得ないことであり、その除去の機会をうかがっていよう。 北朝鮮の核能力についても、まだ米本土を攻撃する能力がないと判断しているから黙っているが、現実的な脅威と判断したら軍事オプションも十分にありうる。 北朝鮮は古い冷戦時代の発想から脱し、自己の位置、立場を冷静に再定立する必要があろう。 核にこだわるのは南北統一への執着から来る側面もあるが、次第に、体制への不安、自身の立場への不安が主要な動機になりつつある。 その不安を払拭するのが、北朝鮮に伝統的に理解のある中国、ロシアが積極的に関わる核の国際管理である。 そのための第一歩が、韓国との関係安定化である。 旧ドイツのように南北が暫定的に別個の国家として承認しあい、不可侵、内政不干渉、相互協力の関係を結ぶことである。 そうすれば米日との関係正常化もすんなりと進み、国際社会との無用な摩擦もなくなるだろう。 かつては二国家は分断固定化と言われたが、南北があまりにも異なる制度、価値観を持つに至った現在はむしろ、内戦や紛争を予防し、平和的、民主的な統一への基盤整備の積極的な意味を有する。 それは、軍事偏重から韓国に経済的社会的に大きく立ち後れた北朝鮮が再生する時間を得ることが出来る唯一の道でもある。 |
南北関係・統一論
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12日からピョンヤンで開催されていたアジア重量挙げ大会に韓国選手がいくつか金メダルをとり、韓国国旗が掲揚され、韓国国歌が演奏された。
ソウルでは以前から北朝鮮国旗、国歌に対して同様の礼遇がされており、相互主義からすれば遅いくらいだ。 南北は国連にも同時加盟しており、北朝鮮もようやく国際基準に沿って動き始めたということになる。 韓国では、政治社会システム、価値観が異なる北朝鮮を別個の国家と見なすのがほぼ常識化している。 それに比して、閉鎖的な社会である北朝鮮国民の反応は複雑である。韓国国旗国歌に対して観客は起立しているが、困惑している様子がありありと分かる。 それは北朝鮮政府の姿勢がまだ定まらないことの反映である。 朝鮮中央通信や労働新聞は韓国選手を「南朝鮮」と表記し、朝鮮中央テレビは韓国国歌は流さず、国旗も避けて紹介している。 とは言え、これまで韓国国旗国歌を拒否し、ピョンヤンでのワールドカップサッカー南北戦をキャンセルしてきた北朝鮮としては画期的なことである。 国際社会の現実を踏まえた合理的な政策判断へと舵を切りつつあると読める。 その兆候は開城工団操業再開問題で韓国側の求めに応じ、工団運営を国際基準に基づいて発展的に正常化させることで合意したことに具体的に表れている。 また、北朝鮮は「死んでも二度と参加しない」と外務省声明で拒否していた6カ国協議参加に同意し、18日に北京で開催された6カ国協議セミナーで金桂冠外務第1次官が基調演説で正式に参加表明した。 一連の動きは北朝鮮を国際社会の一員として復帰させる流れに沿ったものである。 北朝鮮もその流れに抗っては生きていけないと判断したということである。 最大の懸念である北朝鮮の非核化問題も、そうした枠組みの中ではじめて穏便な着地点を見つけることができよう。 |
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シリアのアサド大統領は12日、ロシア国営テレビのインタビューで「ロシアの提案を受け、化学兵器禁止条約に加盟する書簡を国連などに送り、署名1ヶ月後に化学兵器を国際的な監視下に移行する」と言明した。
大量破壊兵器問題解決のモデルケースとなりうるものであり、特に、北朝鮮の核問題にも大きなインパクトを与えずには置かないであろう。 自画自賛するわけではないが、前回指摘したように、その具体的な条件は熟しつつある。 国連の存在感が高まっているのが、北朝鮮核問題解決の国際的な条件を決定的に良くしている。 オバマ大統領はさる10日の米国民向けテレビ演説で「アメリカはもう世界の警察官ではない」と述べ、シリア空爆を延期し、国連、ロシアなどと協力して問題解決にあたる姿勢を明確にした。 米国一極集中的な世界秩序の終焉を意味するものであり、歴史的な出来事と評価できよう。 北朝鮮はアメリカの脅威を核開発・保有の名分にしてきたが、アサド大統領のように中国、ロシアなどの保障を得ればその必要はなくなる。 北朝鮮は核を放棄すると丸裸になり、米国に攻撃されると主張するが、中国、ロシアが保障する限り、その恐怖感も除去できる。 一国主義を放棄したオバマ政権に、もはや米国単独で北朝鮮と交渉する意思も能力もないとみて間違いあるまい。 中国、ロシア、とりわけ、韓国の意向抜きには何も決まらなくなっている。 北朝鮮は依然として、朝米直接交渉に望みをかけ、朝米平和条約締結で主導権を奪い返す狙いを捨てていないが、現実性はない。 開城工団操業再開交渉が象徴するように、朴槿恵政権は経済協力をちらつかせながら、金正恩政権を改革開放へと誘導し、同時に核廃棄を自ら決断するように促している。 それが北朝鮮の現実主義的な改革派を後押ししている。イデオロギー重視の守旧派の抵抗が一定程度高まるのは避けられないが、逼迫した北朝鮮経済の窮状がそれを許さないのである。 問題は具体的である。 現在北朝鮮とロシア間の鉄道連結が進んでいる。十数年前から取り沙汰されていただけに今更の観がなくもないが、逆に見れば、北朝鮮は待ったなしの状況に追い込まれているともみれる。 落ちるところまで落ちた北朝鮮経済再建には、羅津港や金剛山などがある東海岸開発が喫緊の課題である。 ロシアのシベリア鉄道と繋ぐ東海岸の鉄道は日本植民地時代と大差ない単線であり、外資による整備が不可欠である。韓国の鉄道との連結が急浮上している理由もそこにある。 ところが、この鉄道は北朝鮮が三度にわたって核実験した豊渓里の近くを通過する。 まだ誰も指摘していないが、鉄道沿線に核実験場が存在するなどあり得ない。 その撤去や環境改善、核施設の管理が問題にならざるを得ないが、韓国、ロシアの資金的技術的な支援を仰ぐしかあるまい。 このように、韓国との経済協力が各論へと具体化するほど、閉鎖的な体制に守られていた北朝鮮各地の核・ミサイル場の管理が浮上してくる。 何よりも北朝鮮自身がそれへの主体的な対処法を持たねばならないが、現在の経済的技術的なレベルでは自ずと限界がある。 日本の福島原発事故が示すように、核施設は造るよりも、管理・廃棄の方が遥かに難しい。 国連など国際社会の力を借り、核施設を国際管理に移しながら解決するしかあるまい。 金正恩政権が経済再建に成功するとしたら、朴槿恵政権から経済支援と共に、国際基準に沿った経営方法なども学ばねばならないだろう。 外資導入輸出振興を柱に、より合理化された朴正煕型開発独裁である。 米国などは金正恩政権の世襲独裁、人権弾圧、政治犯収容所などを問題視しており、政治の民主化を求めるのは必定である。 皮肉なことであるが、それを過渡的としてある程度目をつぶることが出来るのが、朴正煕大統領の側で政治を観ていた朴槿恵大統領なのである。 朴槿恵大統領の支持率は直近の現代ギャロップによると64%にはねあがっているが、毅然とした対北朝鮮政策が第1の理由になっている。 注目されるのは、従来、進歩的で野党性向が強かった20代の支持率が67%に急上昇していることである。李石基内乱陰謀事件が青年層の反北・保守化をもたらしたとの見方が一般的である。 朴槿恵大統領は国民的な支持をテコに今後とも硬軟あわせた対北政策=信頼プロセスを進めていくことであろう。 頑固さには定評がある。 金正恩第1書記は自ら核廃棄に乗り出せば、望むだけの経済協力を得ることが出来よう。 逆に下手に核を隠し、信頼を裏切ると、李明博前政権以上の厳しいしっぺ返しにあうことになる。 いよいよ正念場である。 |
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シリアでの毒ガス使用問題はシリア政府が保有するサリンなどの管理を国際機関に移譲するとのロシア案にアメリカが歩み寄り、平和的な方法で解決する方向で動き出した。
オバマ大統領は空爆を主張したが、民間人虐殺がアサド政権の犯行である証拠がない以上、早とちりの謗りは免れない。 反体制武装勢力には「イラク、シリアのイスラム国」などアルカイダに繋がるグループが存在し、自爆テロに類似した過激行為に走った可能性も否定できないから、尚更である。 オバマ大統領やヘーゲル国防長官は繰り返し「アサド政権を放置すれば、イラン、北朝鮮に誤った判断を与える」と訴えた。シリア問題が北朝鮮核問題と微妙に関連していることをうかがわせるが、大量破壊兵器の国際管理の方向でソフトランディングしつつあることは北朝鮮問題にも貴重な教訓を残した。 国際管理による北朝鮮非核化の道である。 北朝鮮は現在、二つの道への分岐点にいる。 一つは改革開放への道である。4月の核戦争を標榜した過激路線が国際的な孤立を決定的にし、石油、食糧などの戦略物資を海外に依存する経済は破綻に直面している。そうした中、危機感に駆られて改革開放派が急台頭している。
それを象徴的に示すのが、開城工団再開問題における一方的な譲歩である。 今日11日未明、南北共同委員会第2回会議で16日に工団の操業を試運転再開することで合意し、北朝鮮が操業中断で損害を与えた韓国企業に、今年度の税金を免除することで賠償することが決められた。 その他、電子認証による自由出入りなど韓国側の主張を北朝鮮側は丸呑みした。 特に注目されるのは、一般の外国人投資家に門戸を開放するために国際基準に沿った規則を定めることに同意したことである。 北朝鮮は前回取り交わされた合意書第1項で、政治的な思惑によって入境を制限したり、労働者引き揚げをすることは二度としないと事実上の政経分離を確約した。 今回の合意はそれをさらに進めて国際法や国際商慣例を遵守するとした。羅先特区にもないことであり、北朝鮮としては画期的なことである。 北朝鮮は改革開放へと踏み出したと評価できる内容である。 無論、南北合意はまだ文書の上でのことであり、実行できるかどうかは今後の課題である。 北朝鮮指導部内には体制を危うくするとして、それを快く思わない守旧勢力が頑として存在する。
この守旧派は核へのこだわりが異常に強い。その狙いは、既得権益固守である。韓国軍に比して通常兵力で劣勢なため、核がないと安心できない。さらに、核で米軍の介入を阻止しながら、韓国に電撃的に侵入し、統一を成し遂げようとの冒険的野望も捨てていない。
金正恩政権は両派の上に乗っている。
状況を十分に掌握しきれていない金第1書記自身は折衷的である。いわゆる対話攻勢で核を隠し、韓国の経済協力を引き出しながら経済再建を図ろうと考えているとみられる。 米国の元プロバスケット選手を招くなど、米国との直接対話に微かな望みをかけているのも、先代の影から抜け出せないためである。
しかし、合意文書が履行段階、各論に入れば否応でも重大な決断を迫られることになる。 朴槿恵政権は信頼プロセスの一環として、金政権を改革開放へと誘っているが、北朝鮮核廃棄の原則を捨てたわけではない。 北朝鮮が喉から手が出るほど欲しがっている具体的な経済協力は、あくまでも核廃棄への具体的な行動を前提としている。 核を放棄するというのはどういうことか、遠からずそれが問われることになる。
北朝鮮軍の南進に呼応して決起することを訴えた李石基・内乱陰謀事件は韓国内に衝撃を与え、対北朝鮮感情はいつになく悪化している。
北朝鮮に大々的な経済協力を約した6・15宣言,10・4宣言を結んだ民主党も北朝鮮に距離を置き始めた。
核を不問にして経済協力を進めることはもはや難しい状況にある。
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逮捕された統合進歩党の李石基議員の内乱陰謀容疑は内部告発によるものであり、李議員が70分にわたって、北朝鮮に呼応して平沢市などの通信・石油施設を破壊する事を呼びかけた講演の録音テープが証拠として提出されている。
問題発言の存在は疑いの余地がなく、北朝鮮との関連が裁判の焦点となる。資金の流れを解明するのはそれほど難しいことではなく、遠からず全容が明らかになろう。 一切の予見を排し、事実関係を明確にする必要がある。 朝鮮半島を取り巻く内外情勢がいつにもまして流動化、複雑化している中、何よりも南北関係の現状と問題点を、正確に把握しておく必要性がある。 狭い党派性は捨て、事実のみに基づき、大局から半島の安定と平和の道を模索しなければならない。 北朝鮮の祖国平和統一委員会書記局は6日の報道で、「我々と無理に結びつけようとしている」と李議員らと無関係であると強調し、南北関係に悪影響を及ぼさせないように求めている。 その真偽はあくまでも今後の裁判で明らかになることであるが、李議員ら韓国の過激派と距離を置こうとしている意図は読める。 清濁合わせ飲むのが政治である以上、それを新たな動きと評価することも十分に可能である。 事実、金正恩政権は核戦力を前面に押し出した今年3月以来の超過激路線が何の成果も挙げられなかったばかりか、中国の金融制裁を受けるなど、そのしわ寄せで経済が破綻状況にある。 開城工団再開で自己の非を認めて一方的に譲歩したように、韓国の経済支援なくしては立ち行かない。 加えて、米国からの締め付けはいつになく厳しさを増している。 オバマ大統領はシリア政府軍への懲罰攻撃に前のめりになっているが、その理由の一つに「北朝鮮に誤った判断を与えるおそれがある」事をあげている。 北朝鮮の核施設などへの空爆も想定しての事と思われる。 金正恩第1書記は韓国頭越しの米国との平和協定締結に一縷の望みをかけているが、その可能性は100%ないと知るべきである。 対照的に、状況を比較的よく把握しているとみられるのが、国際政治のど真ん中にいる朴槿恵大統領である。 サンクトベルクでのG20でもオバマ大統領のシリア攻撃支持要請に中立姿勢を崩さなかった。中国、ロシアに配慮したこともあるが、北朝鮮空爆論に繋がる危険性も憂慮したとみられる。 それを裏付けるように、プーチン大統領との会談で「釜山からシベリア鉄道で欧州を訪れるのが夢だ」と語っている。プーチン大統領の年内訪韓を招請したと伝えられており、北朝鮮次第で南北鉄道連結問題が大きく動く可能性がある。 同じ頃、金第1書記は米国の元プロバスケット選手一行と試合を観戦していたが、南北は経済力のみならず、外交力の差も天と地ほども離れてしまった現実を象徴している。 金第1書記は内外の客観的な状況を踏まえて南北関係を再定立しないと、政権維持も難しくなろう。 核一つでどうこうなるものではなく、逆に、その核が自分の首を閉めていることに早く気づくべきである。 その意味で注目すべき動きもある。 今月12日から17日までアジアウエイトリフティング協会主宰の国際重量挙げ大会がピョンヤンで開催され、韓国チームが参加するが、北朝鮮は韓国国旗掲揚と国歌演奏を認めると韓国側に伝えてきた。 国際的には当然のことであるが、北朝鮮としては画期的なことである。 私はかねてから、南北は東西ドイツのように国家として相互承認して関係を安定化させ、経済・文化交流を活発化させながら同一性を高め、統一に向かうべきだと主張している。 そうすれば、韓国は過大な統一費用を負わなくて済み、北朝鮮も体制建て直しの時間を得ることが出来るので、双方にメリットがある。 何よりも、無用な混乱を避け、双方の国民のためになる。 金正恩政権内部にも遅ればせながら、そうした問題意識が出てきているように見える。 韓国の新世代は金日成の名さえろくに知らないし、三代世襲には違和感を抱いている。 それを背景に李石基内乱陰謀容疑が韓国世論の憤激を呼び起こしており、金正恩政権への反発が6・15宣言を結んだ民主党内部にも高まっている現実を直視しなければならない。 内乱陰謀事件を機に、禍をもって福となす知恵を働かす必要がある。 |







