河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

北朝鮮のIT

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 北朝鮮で昨年末から第三世代の高速携帯電話サービスを開始したエジプトの通信会社大手のオラスコムが、先月末に発表した今年1月〜3月の1分期実績報告書で、三月末の総加入者数が1万9208名に達し、31万ドルの営業収益を挙げたと明らかにした。
 数字そのものはまだ微々たなものだが、予想以上に加入者数が増えたことから、同社は今後の営業に自信を深めている。

 オラスコムは出資比率75対25で北朝鮮との合弁会社・高麗リンクを設立し、昨年12月15日にピョンヤンで高速携帯電話サービスを開始したが、北朝鮮としては斬新な宣伝活動が耳目を集めた。
 高麗リンクは3月中旬から2週間にわたって特別販売活動を行い、通話料金引下げ、無料通話サービス時間設定、端末機の価格引下げなどで市民の関心を呼び起こし、一箇所しかなかった代理店をピョンヤン中心部に新設するなどして、前月比138%の顧客増という成果を挙げた。
 
 総売上は445万9000ドルで、税金、金利、減価償却などを除去した営業利益は31万2000ドルとまだ少ないが、一人当たり売上高は24ドル70セントとオラスコムが同事業を展開しているアルジェリア、パキスタン、バングラデッシュなどに比べて2〜8倍に達する。一ヶ月間の平均通話時間が146分なので、かなり割高だ。
 このことから、新サービス加入者が高所得者層に偏っていることがうかがわれる。

 顧客層の開拓が課題だが、注目されるのは、コールセンター設置や、主要新聞、ラジオへの広告、屋外広告など、以前の北朝鮮では見られなかったコマーシャル宣伝を行い、庶民の中に確実に浸透していることである。
 サイリス・オラスコム会長は先週ソウルで開催された世界移動通信事業者連合体理事会に参加し、北朝鮮の携帯電話利用者数が旧世代を含めて4万人、今年中には10万人を超えると予想し、さらなる事業展開に意欲を示した。

 日本メディアの北朝鮮報道は「経済崩壊寸前」「食糧不足」云々とネガティブキャンペーンに偏り、北朝鮮の素顔から離れてしまっている。
 オラスコムの高速携帯電話サービス拡大を報じるのも当ブログが初であろうが、そこから見えてくるのは、開放・改革の風が日常の市民生活に確実に広がっている光景である。

 北朝鮮が潜在的なIT大国であり、優秀な人材を集中育成していることは専門家の間では常識的な認識に属し、軍事関係者は2000年代初めからサイバー戦に神経を尖らせてきた。
 インターネットによる各国間の情報戦が熾烈化している近年、北朝鮮はサイバー部隊を拡大し、韓国や米国に対する情報収集・撹乱線を積極的に仕掛けている。

 韓国情報当局が4日、明らかにしたところによると、北朝鮮は朝鮮人民軍総参謀部偵察傘下のサイバー部隊「技術偵察組」を拡大し、ピョンヤン自動化大学などを卒業したコンピューター専門家100人余が活動している。
 韓国や米国の軍事関連施設のコンピュータ網に入りこみ、時にはウイルスを送り込んで麻痺させている、と言う。

 また、北朝鮮サイバー部隊はこれまで、有事における米軍事力に関する情報収集やインターネットを用いた米軍の先端C41(指揮統制)撹乱を主としていたが、最近は、サイバー戦遂行と軍情報化体系確立にウェートを移している。
 米国防総省もこの数年間、米軍のインターネット照会国の逆追跡で、北朝鮮からの接続が最も多かったことを確認しているという。
 http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2009/05/05/0300000000AJP20090505000300882.HTML

 北朝鮮のソフトウエア開発力の高さは、知る人ぞ知ることである。一部は将棋ソフトなどの形で日本にも入っている。全国から優秀な学生を選抜・教育する十八番の英才教育の結果、優秀な人材が毎年確実に成長し、中国などにも進出している。
 背景には光ファイバー網の整備があり、国内で製造した光ファイバーを軍事施設を中心に広げ、南北に細長い日本よりも普及度は高いとみられる。

 そうして、外国と遮断された高速イントラネット(Intranet)が軍事施設や研究機関などだけでなく、家庭にも普及している。中国などからデスクトップ以外にもノートパソコンが大量に輸入され、小中高生の間で人気があるのはそのためである。
 IT立国に向けた先行投資が確実に進展しているわけだが、先軍政治の下、その人材の一部がサイバー部隊に登用されているというわけである。

 エジプトの通信大手「オラスコム・テレコム」が総額4億ドルを投じた3G携帯電話通信サービスは今年4月から開始される予定だったが、ようやく遅れを取り戻し、開業にこぎつけた。
 北朝鮮側の期待を物語るように、15日付の朝鮮中央通信は「第3世代携帯電話通信サービス開始と関連した行事がピョンヤンで行われた」と、詳細にその模様を伝えた。

 それによると、オープンセレモニーには、北朝鮮側から盧斗哲副首相、柳英燮逓信相、朴明哲・朝鮮逓信会社社長ら、エジプト側からはサウィリス会長を団長とするオラスコム代表団、駐朝エジプト特命全権大使らが参加し、各国の外交官、国際機関関係者が招待された。
 朴明哲・朝鮮逓信会社社長は挨拶で「第3世代携帯電話通信サービス開始により、情報産業時代の要求に沿って我が国の通信を発展させる重要な契機となる」と強調した。
 サウィリス会長も「両国は親善的で協調的な伝統を有している」と挨拶した。
 セレモニーを終えた後、参加者たちは第3世代携帯電話通信加入者サービスセンターなどを視察した。 http://www.kcna.co.jp/calendar/2008/12/12-16/2008-1215-017.html

 AP通信などが伝えたが、日本のマスコミの動きは相変わらず鈍い。
 北朝鮮に特派員を送れず、第三者を通して伝えるから、どうしてもピントがずれてしまうお寒い状況だが、唯一ピョンヤンに支局を置く共同通信は、現地から、「15日にピョンヤン入りしたオラスコムのサウィリス会長は、まずピョンヤン市内の約12万6000人を対象に運用を開始し、漸次、北朝鮮全土にサービス網を拡大すると語った」と伝えた。
 http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008121501000774.html

 オラスコムは今年1月に朝鮮逓信会社と合弁企業を設立し、4月開業を目標に第3世代携帯電話サービスの整備を進めていた。
 だが、米朝関係の雲行きがおかしくなり、米国によるテロ支援国家指定解除が大幅に遅れたことなどから、事業はずれこんだ。9月9日の建国記念日を境に金正日総書記の健康不安説が西側から流され、情報統制のために北朝鮮当局が幹部らの携帯まで没収するようになり、状況はさらに厳しくなった。

 しかし、遅ればせながらテロ指定解除が行われたことで、国際的な投資環境は改善された。
 また、金総書記の執務も通常に戻ったことから、事業展開に障害がなくなったと見られる。

 通話可能地域は当面、ピョンヤンなど主要部にとどまるが、北朝鮮当局も新サービス導入には積極的であり、地方に拡大されるのは時間の問題である。
 第二世代までのサービス網はすでに全国に基地局が建設されており、新サービス用の通信インフラの整備にはそれほどの困難はない。

 北朝鮮が第3世代携帯電話通信サービスに踏み切った背景には、ピョンヤンに年毎に増えている欧米からのビジネスマンへのサービスなど外資誘致の投資環境を整える狙いがある。
 ピョンヤンに吹く新ビジネスの風については『証言』に詳しいが、オラスコムはサンウォンのセメント工場拡大にも1億1000万ドルを投じ、フランス資本のラファージュと組んで105階建ての柳京ホテルにもやはり総額5億ドルを投資し、4月から技術者を派遣して工事を再開している。

 余談だが、件のフランス資本ラファージュは麻生首相一族の麻生ラファージュセメント株式会社にも資本参加している。 
  

 韓国で最近話題になっているのが、韓国に負けない北朝鮮でのコンピューター教育熱だ。
 北朝鮮では今年9月から小学校3学年(日本の小5に該当)から英語科コンピューター教育を開始した。従来は中学校に入ってから教えていたが、米国のテロ支援国家指定解除などで対外交流が活発化するのを見越し、二学年早めた。北朝鮮の小学校は4年制である。

 ピョンヤン・ソンギョ区域に先月30日、韓国のアンドン・テマ紡績と北のセッピョル総会社の衣料品合弁会社であるピョンヤン・テマ紡績工場の竣工式が持たれた。
 韓国からはハンナラ党議員を含む参観団257人が先月29日から今月1日までの予定で大挙押し掛け、盛況であったが、相互交流で自然と漏れ伝わったのが北朝鮮の教育熱だ。

 「息子が4年だが、新規のコンピューター教育課程から取り残されないかと、心配だ」
 韓国参観団と交流するうちに親しくなり、北側関係者からついつい口をついて出たのがこの愚痴だ。
 「小学校4年の息子が勉強を放り出して、コンピューター・ゲームばかりしている。進学に支障が出ている。女房が出勤する前にパソコンのボードやマウスを隠すのだが、すぐに探し出す」とこぼす関係者もいたという。
 
 「女房の教育熱は半端じゃない。週末まで勉強、勉強と押し付けるので、たまに子供を遊びに連れ出す。すると、帰ってから、いやと言うほど小言を聞かされる」というのもあった。
 ピョンヤンでは第一中学が秀才校として人気が高く、受験生たちは授業を終えると、数学や国語の課外学習をチームを組んで行う。帰宅してからも夜明け近くまで勉強に打ち込む。

 そんな話を耳にした韓国側関係者は異口同音に「韓国と全く変わらない」と、妙なところで民族的共通性を再確認したという。
 http://news.kbs.co.kr/article/politics/200811/20081103/1662136.html

 北朝鮮が昨年末、オープンした公式経済情報サイト「千里馬」に、同国としては初のインターネット・ショッピングモール(http://www.dprk-economy.com /en/Shop/index.php)がお目見えした。
 機械、建築資材、自動車、産業資材、食料品、生活用品、切手、芸術作品、映画、薬品、コンピューター用ソフトウエアなど14項目にわたって100種類以上の商品が陳列され、韓国のネチズンの間で、意外と洗練されたデザインのヒッパラムなどの小型乗用車とともに、北朝鮮産のバイアグラ、通称“ネオ・バイアグラ”が注目を集めている。

 サイトのサーバーは中国の瀋陽に置かれ、北朝鮮側がコンテンツを提供する。中国側の会社が運営を任されているが、現場は北朝鮮から来たIT技術者が担っている。
 米国のVOAが昨年12月27日に、中国の人民日報の姉妹紙・環球時報が同29日に紹介し、中国国内ではそこそこ注目を集めているが、韓国からはアクセスはできたり切れたりし、日本からはできない。
 
 電子商店(eショップ)コーナー以外にも、北朝鮮の経済状況、貿易政策、国内ニュースなどがハングル、英語、中国語で詳しく紹介されている。
 クレジットカードでの支払いが可能で、顧客が注文ボタンをクリックしてメールアドレスを入力、クレジットカード番号の通知を受けて決済する。
 なお、国内では英国の金融会社・グローバルグループが05年6月に高麗銀行と合弁で高麗・グローバル信用銀行を設立し、スイスのクレジットカード会社なども進出している。

 北朝鮮の潜在的なIT能力は、数年前からロシアなどで高く評価されている。
 ソフトが得意分野で、最近も社会科学院が文学・芸術部門の1万4500余の見出し語、6800余点の各種の画像資料、780余点の音声資料を編集したマルチメディア電子辞典「文学・芸術大辞典」を、ピョンヤン情報センターが宇宙探険を疑似体験できる4次元のバーチャル・システムを制作している。

 北朝鮮は新年の共同社説で2012年を経済再建の大目標に定め、海外資本の投資誘致、対外貿易活性化の環境整備に力を入れているが、ITは外資と提供できる有力分野と言える。
 ネット・ショッピングモールのオープンに伴い、現在はまだ一部の例外を除き外部と遮断されている国内のイントラネットが、それと今後どう対応していくのか、目が離せない。

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