|
従軍慰安婦に対して日本政府に公式謝罪と補償を求める決議が米下院で採決され、改めて日本の個人賠償責任問題が浮上している。
未解決の対北朝鮮への賠償問題にも影響することが予想されるが、日韓条約ではどう扱われたのか、韓国政府が公開した韓日協定関連文書を通して改めて検証する。
盧武鉉政権の過去史究明によって、40年以上の歳月のかなたから蘇った韓日協定関連文書が語るのは、日韓両国が請求権に関する表現をめぐり、鋭く対立していた事実である。
当時の朴正熙(パク・チョンヒ)政権は「請求権」という言葉を明記するように求めたが、日本側は「経済協力資金」いう表現にこだわった。
1965年5月14日に日本外務省で行われた「請求権及び経済協力委員会・第6次会議」で日本の西山代表は、「我々が提供するものは、あくまでも賠償のように義務によって与えられるのではなく、経済協力である。一種の政治的協力という意味で提供されるものと考えており、日本の一方的な義務によって提供することになっては困る」と主張した。
これに対して韓国のキム・ボン代表は、「(日本に)まったく義務がないと言うのは話にならない。韓国国内の一般国民の感情は請求権を受け入れるということであり、請求権という表現が変われば重大な問題が起こるだろう」と反論した。
こうしたやりとりは、すでに1962年末の第6次談から争点となり、翌年1月、日本外務省で開かれた第23回会議で韓国側は「日本側が提示した協定要綱案第1の『無償経済協力として』という表現と、第2の『有償経済協力として』という表現は到底受諾することができない」と述べている。
日本側は日韓交渉では一貫して「請求権」ではなく、「経済協力」を主張していたことになる。日本側が当時の資料公開に消極的であったのは、戦後補償に対して矛盾する姿勢を取っていたと批判されるのを恐れたためと思われる。
日本政府は強制連行の被害者たちが起こした一連の対日戦後補償訴訟で「1965年の請求権協定で、個人請求権問題は完全に解決された」と主張しているが、公開された文書は「二枚舌」を語っている。
他方では、足元を見られ、曖昧な形で譲歩した朴正熙政権の責任を指摘する声もある。
太平洋戦争犠牲者遺族会は04年9月、韓国国会での記者会見で「第5回韓日会談予備会談会議録(一般請求権小委員会第12、13回会議録)」を公開し、ヤン・スンイム会長が「1961年の韓日会談で、韓国政府が日本政府の韓国人犠牲者に対する直接補償の提案を拒否し、国が補償金を受け取って支給する方法を選んだ」と批判した。
会議録によると、韓国政府は労務者、軍人・軍属ら国外に動員された被徴用韓国人の生存者、負傷者、死亡者、行方不明者などの肉体的・精神的苦痛に対する補償金の支給を請求した。しかし、日本政府が韓国人犠牲者に対して直接補償する案は拒否し、韓国側が補償金を受け取って支給する方法を選んだ。
「しかし、朴正熙政権は65年の韓日協定締結後に受け取った5億ドルの対日請求権資金から、被徴用韓国人に対する補償を実施すべきだったにもかかわらず、浦項製鉄と京釜高速道路の建設に投入し、70年代に軍人・軍属の死亡者8000人に限って補償をした」という。
それに対して盧武鉉大統領は政府の責任を認め、太平洋戦争前後の国外への強制連行で死亡もしくは行方不明になった犠牲者について、1人当たり2000万ウォンの慰労金を遺族に支払い、生存者に対しては毎年1人当たり50万ウォンの医療支援金を支払うことを決めた。
それに基づいて先月3日に「太平洋戦争前後の強制動員犠牲者支援法案」が国会で可決され、一件落着するはずであった。
ところが、同案に、生存者に医療支援金に加え1人500万ウォンの慰労金を支払うことが修正追加されたため、今月2日、盧大統領は信義違反と批判し、他の過去史関連法案などとの均衡や財政負担増を理由に拒否権を行使した。
国会で再度、出席議員の3分の2以上の賛成で可決されない限り、廃案となる。
韓国には強制連行問題に対して、日本が経済協力にこだわり、十分な謝罪をしなかったことに道義的な責任を求める声が強い。
個別請求すべきだとの声もあるが、政府の立場は、日韓条約で決着した問題であり、個人補償は政府が責任を負うとする。世界最貧国であった当時、朴正熙政権は経済開発資金ほしさに譲歩、個人補償分まで投資に回し、禍根を残した。豊かになった今、それに対しては基本的に国が責任を負うというものである。
しかし、従軍慰安婦問題は当時全く提起されておらず、審議の対象外であった。法的には個人が対日請求権を行使できる余地が有るとみられる。
麻生外相が関わる麻生炭鉱など日本企業による賃金未払い問題なども同様だ。
また、未解決の北朝鮮との賠償問題では、そうした問題点を踏まえた新たな視点からの交渉が不可欠と見られる。
日朝ピョンヤン宣言は日韓方式を真似た「経済協力」で決着を図るかのような記述になっているが、事実上死文化しており、一から、北朝鮮に現在も生存する従軍慰安婦らへの謝罪・補償などもきちんと議論し、後顧の憂いをなくすべきであろう。
くれぐれも、仏作って魂入らずにしてはならない。
|