|
たたき上げの学者出身で、石を投げれば世襲議員に当たる永田町の劣化現象に歯止めをかけるかと注目していた。一匹狼的な歯に衣着せぬ舌鋒は、90年代初めの「改革派のホープ」であった新井将敬に重なる部分もある。
舛添要一厚生労働相のことであるが、「ないものはない」はいただけない。責任感の欠如を自ら吐露したようなものではないか。
「宙に浮く年金記録約5000万件」について安倍前首相が「名寄せ(照合)を3月末に完了する」と豪語したのは、拉致問題で毎度お馴染みの選挙用宣伝コピーであることはすでに指摘したとおりで、当初から不可能であったことは知る人ぞ知ることであった。
公約締め切りが近づき、これ以上隠すのは無理と判断した厚生労働省=社会保険庁は、持ち主の特定が難しい記録が全体の約39%、1975万件に達し、社保庁の入力ミスによる945万件は特定困難との調査結果をようやく明らかにした。
デタラメなことをしておきながら、他人事のように責任を取らないで逃げようとするのは、薬害C型肝炎問題にも通底する保身的な役人体質、いい加減見飽きた光景だ。
それを受けて舛添厚労相が11日午後、記者会見した。さぞかし怒り心頭、「社会保険庁は市町村より信用ならない」と担当者の更迭をぶち上げると思いきや、「他の方が大臣になっても結果は同じ。ないものはないんだから」と身内を庇い、「3月末までにすべてを片づけると言った覚えはない。5000万件の名寄せをやらなかったら公約違反」と、開き直った。
確かに、公約そのものが非現実的なものであったのだから、自民党政権である限り、誰が大臣になっても結果は同じだろう。当人は嘘の上塗りがばれる前に“安部した”、つまり、病院に駆け込んでしまい、すべてが舛添さんの責任ではない。
しかし、「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と、市町村窓口での年金着服を告発してやんやの喝采を浴びた経緯があるだけに、「強気を助け、弱気を挫く」ではないかと、舛添氏の信義や正義感が問われるのは当然であろう。
少なくとも、歴代担当者の告発くらいはしないと、国民の怒りは収まるまい。霞ヶ関には職務の結果に責任を問われないと言う内規が明治以来の「官尊民卑」の伝統としてあるらしいが、そろそろ官僚以外の第三者による監視機関の設置を真剣に考えてもよいのではないか。
治安機関でもあった旧内務省の流れを受け継ぐ厚労省の闇は、深い。C型肝炎ウイルスに汚染された血液製剤の製造販売を放置した薬害C型肝炎問題も、国民の生活・健康よりも管理に重点を置く体質に根がある。
感染の疑いがある患者リスト418人をいまだに隠蔽し、庇っている田辺三菱製薬株式会社の前身・ミドリ十字は、多数の捕虜を「マルタ」と称して生体実験に用いた“悪魔の部隊”関東軍731部隊の生き残りが作った製薬会社である。
ミドリ十字は薬害エイズ事件にも関わっていたが、松村明仁元厚生省課長、ミドリ十字歴代三社長とともに業務上過失致死罪で起訴された安部帝京大副学長らは731部隊で生体実験を実施した日本のメンゲルであった。GHQにより実験情報提供の交換に731部隊の罪が歴史の闇に封印される中、ぬけぬけと各大学、研究機関にもぐりこんだが、その背後にいたのが旧厚生省であった。
彼らは、マルタであろうと自国民であろうと、自己の欲望のためなら平気で犠牲にする魔性の持ち主たちである。
C型肝炎訴訟の原告団は全感染者の救済を求めて福田首相に会見を求め、拒否された後、涙ながらに「この内閣に期待できない」と訴えたが、安部前内閣のお古の福田内閣ではやはり限界があるようだ。
自民党の創党者である岸信介元首相がA級戦犯赦免の交換にCIAのスパイとなったことは明らかになっているが、自ら戦前を引きずった自民党政権に厚労省の闇を暴くのを期待するのは余りにお人好しと言わねばならない。
なお、朝鮮人強制連行の記録や従軍慰安婦関連文書なども内務省は責任追及を恐れて敗戦直前に焼却処分したことが知られているが、一部はまだ旧厚生省の倉庫に眠っているとの情報もある。
彼らが朝鮮人強制連行や従軍慰安婦を否定したがるのも同根であり、厚労省の闇はとてつもなく深い。
|