ライフ・イン京都植物図鑑

ライフ・イン京都に咲く今日の花

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ギシギシ(タデ科ギシギシ属)羊蹄 古名 之(し)壱師(いちし)伊知旨 之布岐 羊蹄(しのね) 志乃禰 之乃禰 渋草(しぶくさ) 志夫久佐 之布久佐 之不久佐 須須弥奈(すすみな) 別名 牛草(うしぐさ)牛舌(うしのした)牛額(うしのひたい) 和大黄(わだいおう) 大黄(だいおう)羊蹄根大根(しのねだいこん)羊蹄大根 蚤の船 らいおん らいおんぐさ いぬすいば しい しのは しのべ しんざい すいじ

日本全国に分布するタデ科の多年草。茎の上部に淡緑色で柄のある小さな花を輪生する。花弁はなく雄しべは6個。茎は、高さ60cmから100cmで上部で枝分かれする。根生葉は、長い柄があり、長楕円形。茎に付く葉は、細長くそれぞれ縁が波打つ。
ギシギシは京都で使われていた呼び名で擦れ合う音を擬音化したものとされる。

万葉集にある柿本人麻呂の歌 
道の辺のいちしの花のいちしろく人皆知りぬ我が恋妻は 巻十一・二四八四
この歌にあるいちしの花、この花の正体について古くから意見が分かれている。いちしは、壱師と漢字表記され、タデ科の植物ギシギシの古名の一つである。この事から、ギシギシも有力な候補とされているが、花の色は淡緑色であり、「いちしの花いちしろく」と白い花を詠んだこの歌にはそぐわない。その為、この歌にある壱師が何であるか推論され、歌から受ける白い花の印象からクサイチゴ、エゴノキ、山法師、イタドリ説など多岐に分かれた。灼然と漢字表記されるいちしろくを燃え上がる赤い色と解釈した彼岸花説もある。ただこの彼岸花には、謎が多く万葉の時代、普通に山野に存在していたのか疑問が残る。(2014年9月20日彼岸花の項参照)
この「いちし」については、鎌倉時代も現在と同様それが何であるか曖昧となっていた様である。
「いたづらに逢うよしをなみ陸奥のいちしの何は聞けども」藤原家良 1243年 新撰六帖
葦の穂波に映像を重ね、いちしが何であるか聞いた事があると穂波からギシギシの穂を推定している。この頃すでに曖昧な表現が見られる。
鎌倉前期、順徳天皇の著した「八雲抄」には、「羊蹄 いちしのはなみちしばといえり」とあり、いちしがギシギシである事を示している。
これらの事から壱師と呼ばれた植物は、羊蹄と表記されたギシギシであったことがわかる。
ところが、壱師がギシギシであるとすると「いちしのはないちしろく」と詠まれた白い花を強調した万葉集の「いちし」は、別の植物を表わしていると考えざるを得ない。
「いちしろく」は、著しいとか際立つとかの意であるが、万葉集の中では白を強調する用い方がされている歌が多くある。
青山を横切る雲のいちしろくわれと笑まして人に知らゆな 六八九
窺狙ふ跡見山雪の灼然(いちしろく)恋ひば妹が名人知らむかも
天霧らし雪も降らぬか灼然(いちしろく)このいつ柴に降らまくを見む 一五〇二 若桜部君足
隠沼の下ゆ恋ひ余り白波の伊知之路(いちしろ)く出でぬ人の知るべく 三〇二三
雲、雪、白波といずれも白をいちしろくと強調している。
こいまろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出じ朝顔の花
朝顔はムクゲの古名で白いムクゲの花を強調している。

ここからは、多少強引ではあるが、白い花を推理して見る。
初夏の山あいの道を歩くと大振りで赤い実のクサイチゴが良く目立つ。口に入れると甘い。野鳥も好物と見えヒヨドリ、メジロなどが啄ばむ姿を良く見かける。まだ寒い季節、この場所には、大きく際立って白いクサイチゴの花が咲いていた。思わず足を止めた記憶がある。万葉集にある柿本人麻呂の「道の辺のいちしのはないちしろく」の歌に出くわす以前の事である。

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クサイチゴは柿本人麻呂が生きていた時代には、イチビコあるいはイチヒコと呼ばれていた。
イチゴと呼ばれるようになったのは、平安中期の頃のようである。和名抄(931年〜938年)に「伊知古・覆盆子(イチゴ)」とある。このクサイチゴを「いちし」と推定するとイチゴの花が壱師の花となる。だがイチゴでは、赤い実が連想され、際立つ白を表現出来ない。イチゴから白い花を想起させるには、呼び名をそれなりに変える必要がある。イチゴの古名、イチビコ、あるいはイチヒコ。少なくとも万葉の時代にはそう呼ばれていた。イチヒコの「ヒコ」は成人男性を表す「彦」であり、擬人化した名前の説がある。成熟したイチゴは、赤の色を連想させることから白い花を想像起させる為ヒコ「彦」を赤い実から種を表すシ(子)に置き換えクサイチゴの白い花を強調したのではないかと推測する。又、ヒは「緋」であり赤い色を表す説もある。同様に白を強調する為、ヒを隠し「いちしろく」に掛ける言葉として遊び心から「コ」を「シ」と置き換えた。そして柿本人麻呂は、イチヒコをイチシとした。
シ「子」は又、コ「子」であり、それが基となり、鎌倉前期に至る迄の二百年余りの間に徐々に浸透し、伊知古、覆盆子(イチゴ)へと名前の転訛が起きたのではないかと推測する。
この頃には、すでにギシギシの呼び名「壱師」は失われ、曖昧となっていたようである。

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オニユリ(ユリ科ユリ属)鬼百合 別名 天蓋百合(てんがいゆり) 料理百合(りょうりゆり) 犬百合 巻丹(けんたん)

北海道から九州の人里近くの山野に自生する多年草で、何時の時代か不明だが相当古い時代に中国より伝わったと考えられている。
日本に自生するユリでは草丈が1〜1.5mにもなる大型の百合。花期は、7月下旬で径10cmほどの花を1本の茎に10〜30個ほど付ける。花は下向きとなり、オレンジ色に褐色の斑点が入った花びらは丸く反り返る。3倍体であり、種子は出来ず葉の付け根に多数のムカゴを付け地面に落ちると根を出し、これにより増殖する。

別名の天蓋百合は花の様子を仏具の天蓋に例え、球根は、食用となることから料理百合の名前があり、券丹はオニユリの漢名がそのまま用いられています。

昨年までは、あまり見かけなかったのですが、今年に入り、裏山斜面に点在していました。種子を作らない代わりに、葉の付け根に暗紫色のムカゴを数多く付けていることから、このムカゴによって次々と増えて行ったと思われます。

大型の百合で殺風景な斜面にオレンジ色の花が良く目立っています。

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サルスベリ(サルスベリ科サルスベリ属)猿滑 紫薇 紫薇花 別名 百日紅(ひゃくじつこう) 猿滑(さるなめり)猿日紅(さるじつこう) 千日花(せんにちばな) 盆花(ぼんばな) 笑木(わらいのき) くすぐりのき 

中国南部が原産で日本には、江戸時代(元禄)以前に伝わったとされる。樹高10mにもなる落葉中高木。花期は、7月から9月で、春に伸びた枝先に房状の白、ピンク紅色、紅紫色の花を咲かせる。花びらは6枚で基部に柄があり、波打つ特徴を持つ。中央に雄しべが多数見えるが6本の特に長い雄しべが目立つ。短命の花ではあるが、次々と咲き続けることから長期に亘り咲いているように見える。
葉は、2対互生し、倒卵状楕円形で全縁。樹皮は、なめらかで古い皮が薄くはげ、猿滑の名の通り幹の表面が滑らかとなり、猿が滑る事から名前がつけられている。果実は、球形の?懿果で熟すと弾けて翼のある種を飛ばす事から結構、幼木が芽生えているのを見かける。

猿滑の名前は樹皮が滑らかで猿さえも滑り落ちることに由来します。この木以外にもナツツバキ、ネジキ、ヒメシャラ、ヤマコウバシ、リョウブ、オガタマノキなど、いずれも樹皮が滑らかなことから通称、別称としてサルスベリの呼び名があります。

花が次々と百日の間、長期にわたり咲き続けることから百日紅、さらには千日花の名も付けられています。又、花の咲く様子が笑っているように見えることから笑木、くすぐりのきなどの呼び名もあります。花色も豊富で、赤、桃色、白、紫色のものが移植されており、特に青い空に映える紫色の花は美しく、この季節を代表する花となっています。秋の紅葉も際立ち黄葉の季節を彩る樹木でもあります。
生育環境の違いでしょうか、花期にばらつきがあり、未だに蕾の木もあります。これからの季節が見どころでしょう。

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ムクゲ(アオイ科フヨウ属)槿 木槿 無窮花 別名・古名 木槿(もくき)木槿(もんき)唐桑(からくわ)夕影草(ゆうかげくさ)夕影草(ゆうかげぐさ)夕蔭草(ゆうかげぐさ)夕陰草(ゆうかげくさ) 鏡草(かがみぐさ)垣椿(かきつばき) きばち はちす ばんじい ほこ ほでんくわ むくで もくで 木槿(もくげ) 蕣(きはちす) 木槿(きはちす)木波知須(きはちす) 岐波智須(きはちす) 

インド・中国が原産で日本には奈良・平安時代に伝わったとされる帰化植物。
樹高3〜4mで新しい枝が次と分枝し良く茂る。
花期は7月から10月で数多くの園芸品種があり白、紫、赤と豊富な色合いの美しい花を咲かせる。八重咲き品種もある。
朝花を開き夕方にはしぼみ2〜3日花を咲かせ花を落とす。数多くの蕾が次々と開花し花期は、長期にわたる。

ムクゲの名前は、中国名の木槿( モクキン)あるいは、朝鮮名、無窮花(ムグンファ)に由来しているようです。古くは「あさがほ」と呼ばれていました。

同種の芙蓉の花が一日花であるのに対し、ムクゲは、2〜3日花を付けています。朝咲いて日中は、ややしおれたようになり、夕方には再び元気になり、夜間には花を閉じるサイクルです。

万葉集には「あさがほ」として5首が詠まれています。この「あさがほ」は万葉集の中で初めて使われた名前です。そのうちの1首にムクゲと思われる歌があります。

あさがほは朝露負いて咲くといへど 夕影にこそ咲きまさりけれ 巻十一・二一〇四 作者不詳

現在、朝顔と呼ぶつる性の草本が伝わったのは、ムクゲより少し後で万葉時代には無かった花です。それまではムクゲを含めた朝に咲く美しい花を総じて「あさがほ」と呼んでいたようです。この歌にある「あさがほ」についても朝に咲くキキョウ説が定説となっています。ただこの歌に限っては、「夕影にこそ咲きまさりけれ」とあるように夕方に色の冴えるムクゲを詠んだ歌ではないでしょうか。

同じ「あさがほ」でもキキョウと思われる歌が次の歌です。

芽子(はぎ)の花尾花葛花瞿麦(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし)また藤袴(ふじばかま)朝貌の花 巻八・一五三八 山上憶良

ムクゲは、人気のある花で、白、桃、赤、紫の花と随所に植えられています。種を落とし根付いた幼木もかなり見られます。


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シュロ(ヤシ科シュロ属)棕櫚 棕梠 別名・古名 和棕櫚 へい櫚(へいりょ) こけかま 棕櫚(すろ)須呂乃岐(すろのき)

九州南部原産で関東地方南部以西、四国、九州の暖地の山野に自生し、広く植栽されている樹高3〜10mの常緑高木。雌雄異株で花期は5〜6月、葉の間から肉穂花序を下向きに出し、黄白色の小花を多数咲かせる。下部には黄色いさや形の包葉があり花被片は、6枚。
茎は円柱形で越年した多くの暗褐色繊維に覆われている。葉は頭頂部に叢生し、長い葉柄があり、扇状に深裂する。裂片は、線形で2浅裂、内側に折れて垂れ下がる。
果実は液果でゆがんだ球形、9〜11月に藍黒色に熟す。

シュロの和名は漢名の棕櫚の日本読みに由来する。又、古名の須呂の転訛説もある。
古名があるように古くから知られていて日本原産(九州)とされている。

シュロの種は、数多く出来、野鳥により運ばれることから生存域を拡大しています。
通常シュロは、寒さに弱く小さな株は、越冬出来ないとされて来ましたが温暖化の影響でしょうか越冬する確率が増えていて敷地内・近隣にも自然木と思われる多くの株が根付いています。近隣に親株と思われる古木があり、花を咲かせ種を付けていますが、どうも野鳥がこの古木の種を運んだようです。
近隣を注意して見てみると以外と数多くの個体を見かけます。現在は、あまり問題とされていませんが、近い将来高木に育った棕櫚の木は、他の樹木の生存域を脅かす存在となりそうです。

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