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藤城清治ファンのページ
藤城先生の美しい世界をご紹介しています。少々マニアックな内容ではありますが、お楽しみいただければ幸いです。

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今回は「南三陸町の防災庁舎」に描かれている"波"に至るまでの、
その表現の移り変わりに注目してみようと思います。
 
藤城先生は、これまで作品の中で"波"を、ある種のパターンで表現することが多かったようです。
それは写実的というよりもむしろ様式化された印象を受けるもので、
特徴としては、白抜きのみで描かれ、波がしらの部分が人の手のように枝分かれしています。
 
(もう少し突っ込んで言うと、アニミズムを感じさせる表現かもしれません。
アニミズムとは、生物・無機物のあらゆるものの中に霊魂や霊が宿っているという考え方で、
早い話が、"波"がまるで生き物のように見えるということです^^;
ちなみにアニメーションという単語も、アニミズムという言葉から生まれました。
生きていないはずの絵が動いて、生き物のように見えるからです。
そもそも藤城先生の影絵劇や人形劇も、アニミズムそのものですよね)
 
それではそんな文字通り生き生きとした"波"の作品を、いくつかご覧ください。
 
◆生きるよろこび
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◆光る海
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◆四季のよろこび
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◆ねずみの海賊船
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◆虹
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◆猫の相撲とり
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このような様式化された"波"の表現は、
先生のモダンな画風の中ではちょっと意表を突いていて、
江戸時代末期の浮世絵に、そのルーツがあるように見受けられます。
その頃に描かれた"波"も、様式化されつつも、まるで生き物であるかのように見えませんか?
 
◆葛飾北斎作品
"波"だけでなく、様々な描写にアニミズムを強く感じさせる作家です。
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◆歌川国芳作品
アニミズムは北斎ほどはっきりしていませんが、
それでもやはり、様式化の中にその影を見ることができます。
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◆一魁齋芳年(月岡芳年)作品
この作品の"波"にはアニミズムをほとんど感じません。
けれどその様式化のパターンには、藤城先生の作風との共通性を思わせるものがあります。
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そして、藤城先生が震災を描いた作品。
ここではこれまでの様式化され、生き物のように見える"波"は見当たりません。
まったく違った、新しい”波"が生まれたのです。
 
◆陸前高田の一本松
荒れ狂いながらも幻想的で、あたかも亡霊のような"波"。
津波を描くことは、半ば暗黙のうちにタブー視されている雰囲気さえありますが、
そこにあえて挑み、凄惨さよりも希望を描き抜くことに成功した藤城先生に、
芸術家としての計り知れぬ強靭さを感じます。
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◆南三陸町の防災庁舎
幻想的でありながらもいっそう激しさを増し、猛り狂う"波"。
只ならぬ描写は見る者に恐れを抱かせずにはおきません。
この"波"から、鬼気迫る藤城先生の思いがひしひしと伝わってきます。
(どうか画像をクリックして、拡大して見てみてください)
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藤城先生がこれまでの"波"を描かなかった理由は明らかでしょう。
津波という尋常ではない自然現象を描くにあたって、
より真に迫り、人々に強く訴えかける表現を求めたからではないでしょうか。
これまでのご自分のスタイルを封印してでも、震災への思いを描き切りたかったに違いありません。
 
この2作は、未曾有の大惨事から目をそむけることなく、渾身の思いと祈りを込めて描かれた作品として、
きっと人々の心にいつまでも残ってゆくことと思います。
 
 
 
※末筆ながら、今回の「南三陸町の防災庁舎」画像は、総小判さんから頂戴しました。
すばらしい作品の画像をいただき、本当にどうもありがとうございます。
 
 
 
 
 
 
 

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