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江戸の建具商「萬屋」の若旦那の外胤として生まれた“ほう”は生まれたときから生き続けることを望まれず、それでも生き延びると阿呆の“ほう”と名づけられた。 大人の勝手で世話を受けないまま育ったほうは江戸から四国まで金比羅参りに行かされ、そこで置き去りにされる。 そして地元の医者の家である井上家にひろわれ、そこで生まれて初めて人の温かさに触れた。 しかし、やさしく面倒を見てくれた井上家の娘である琴江が急死する。 誰が殺したかを知っており、琴江の死に顔さえ見てしまったほうであったが、四国丸海藩の都合で病死と言いくるめられ、行き先を失ったが、今度は引き手見習いの“うさ”と出会い、彼女に慰められる。 それも束の間、今度は丸海藩が江戸から流刑に処せられた元勘定奉行の“加賀様”を預かることになり、謂れ多い屋敷に幽閉されることになったその屋敷に行かされてしまうのだ。 後半は急展開がある一方でほうの運命を左右する大きな出来事が起きる。 加賀様との出会いだ。見張りの中で幽閉されている加賀様の部屋に思わぬことから入り込んでしまう。その後、加賀様からお呼びがかかりほうと加賀様と二人だけの時間が訪れる。 藩の転覆や個人の利益や市中の人々の不安が増幅してゆく中でほうと加賀様との時間だけが穏やかに流れている気がする。 幼い頃から文字も言葉も人の考えも教えられてこなかったほうが一生懸命に自分なりに自分の境遇を受け入れ自分を哀れむことなく、できる限り姓いっぱいを尽くそうとする姿が痛ましくもあるが心を打つ。 女だてらに引き手をやっているうさも妹のようにほうのことを思い、藩で起きていることを聡く推理し、懸命に働く姿も凛としている。 彼女の正義心と勇気ある行動で人が救われてゆく。 そして渡部和馬という同心も気が短くて小心者のため、優しい言葉ひとつかけられない人物ながらほうやうさを思う気持ちが微笑ましい。 最後に彼が選んだ正義も彼ならではの行動だったのだろう。 “加賀様”の運命と共にほうの運命も変わり、邪念や噂に惑わされず一途に人を思うほうの姿に涙が溢れてきました。 そして“加賀様”が残してくれたほうへの褒美も美しくて心に残りました。 今でも政治によってどのような立場にあっても人生が変わることもあるでしょう。 それでもやはり今と比べると当時の身分の違いや藩政によって翻弄される人々は多かったのだろうと思います。庶民は庶民の生活といっても一度“お上”から声がかかれば庶民の声など無きに等しいものです。それが当たり前の生活だったのでしょうがが、それにしてもほうのたった数年間の人生は実に波乱に飛んでいますね。 感動の長編。未読の方ぜひお読みくださいね。
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本屋さんでちょっと気になっていたのです。
読んでみたいと思います。
2009/2/14(土) 午後 0:20
みるくさん、ぜひ読んでください。最後のほうは本当に涙ながらに読みました。
2009/2/15(日) 午前 11:45
後半の盛り上がりはすごかったですね。号泣しました。
ほうのけな気さと宇佐の芯の強さが心に残りました。
加賀様とほうとの静かな心の触れ合いに緊張がほぐされますね。
トラバさせていただきます♪
2009/2/16(月) 午前 7:52
メロディさん、トラバありがとうございます。
後半の盛り上がりは前半のいろいろな伏線があってこそですが、本当にドキドキハラハラ、そして感動の涙でした。
ほうの人生が穏やかであることを願ってやみません。
2009/2/16(月) 午前 11:38