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あるとき、ばあやのつかいが、ユタをよびにきました。
ユタが小さいころ、いつもおせわをしてくれたばあやは、いまでは、ベッドによこになっていることがおおいのです。
ユタが、ばあやのへやにいくと、ばあやはベッドの上におきあがり、
「よく、いらしてくださいましたね」
とうれしそうにいいました。
そして、ユタに、ほそながいつつみをわたしました。
「それは、ぼっちゃまのおかあさまから、あずかっていたものです」
ユタがおどろいてつつみをひらくと、女の人が、かたかけをとめるためにつかうピンがでてきました。
「それは、ふたつひとくみでつかうものです。もうひとつは、おかあさまがもっていらっしゃいます。
ぼっちゃまが、おかあさまをこいしくおもううちは、それをわたすことができませんでした。けれど、もう、わたすことができます。
どうして、あえないのか。
それはぼっちゃまが、おとなになったら、わかるでしょう。
けれど、おかあさまが、いつもぼっちゃまのことをおもっていらっしゃるということは、わすれないでください」
ユタはしばらく、ピンをみつめていました。
やがて、かおをあげて、ばあやにいいました。
「ぼくには、ぼくのことをおもってくれるばあやや、おにいさまや、がっこうの先生や、ともだちがいる。
そのうえ、おかあさまが、どこかでぼくのことをおもってくれているなら、こんなにしあわせなことはないよね」
それをきいて、ばあやはうれしそうにいいました。
「ぼっちゃまは、ほんとうに、大きくなられましたね」
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ユタのへやのそとには、カントゥータの木がしげっています。
むかし、はなうりのおばあさんにもらったひとえだを、へやのそとのじめんにさしていたのですが、それがねをはやし、どんどんのびていったのです。
ユタがへやにもどろうとすると、赤い花をたくさんつけたえだのかげから、赤いふくをきた女の子が、こちらをみているのにきづきました。
ユタは、女の子にはなしかけました。
「やあ。お山の上のくらしは、どう? チャスカ」
すると女の子は、いたずらっぽい目をして、こたえました。
「まあまあってとこね」
やがて、わらいごえをのこして、女の子のまぼろしは、青い空のなかにきえていってしまいました。
(おわり)
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絵本・童画
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おにいさまも、けがをしていたおとうさまも、たくさんのへいしたちも、ぶじにもどってきました。
北の、火をふいた山も、だんだんとおさまり、つぶれてしまった村のあとに、またあたらしい村がつくられました。
まちには、まえよりもたくさんの人がすむようになりましたが、けんかをする人も、どろぼうもいなくなり、にぎやかで、あかるいまちになりました。
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7さいになると、ユタはがっこうにはいりました。
チャスカやおにいさまにちかったことをまもろうと、ユタは、おののけいこにも、べんきょうにも、いっしょけんめいです。
10さいになるころには、おののうでまえも、べんきょうも、ユタがいちばんになっていました。
それでも、たくさんの人をたすけられるように、もっとつよくならなくてはいけないと、ユタはひっしです。
そんなユタに、先生は、おのの勝負(しょうぶ)をしようといいました。
がっこうの先生は、むかし、きゅうでんの大ひろまから、ユタをたすけだしてくれたあの男の人です。
もちろん、ユタは先生にかないません。
先生はユタにいいました。
「あせって力をつけても、それはほんとうの力にはならないんだよ。あせらなくても、きみはいずれ、大きな力をつけることができるだろう。あきらめずに、れんしゅうをつづけるのだよ」
ユタは、おもいました。
「ぼくがおとなになるまで、お山の上のチャスカは、みまもっていてくれるかな」
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カパコチャのおまつりから、しばらくたって、おにいさまがユタを、金の絵のへやによびました。
おにいさまは、あのせんしと花の絵のまえで、ユタにききました。
「もんだいのこたえは、みつかったか? ユタ」
ユタは、もう、こたえをみつけていました。
だから、まよわず、こたえました。
「はい。
お山にいくピウラを、ぼくはとめることはできませんでした。
カパコチャのおまつりで、ほんとうにたくさんの人が、ピウラたちに、たすけてほしいとさけんでいたのを、みたからです。
お山にいかないでとぼくがたのんでも、ピウラは、その人たちをすくうために、ぜったいにいくといったでしょう。
それならピウラは、どうしたらうれしいのだろうとかんがえました。
それはきっと、ピウラのいのりがとどいて、たくさんの人がしあわせになることなんだとおもいました。
お山にいるピウラのいのりで、かなしんでいる人や、つらいめにあっている人がへったら、こんどは、まちにいるぼくたちが力をかして、もっとたくさんの人がしあわせになるようにすることが、ピウラのよろこぶことなんだとおもいます。
ぼくはこれから、たくさんけいこをして、つよくなります。
たくさんべんきょうして、いろいろなことをしろうとおもいます。
そして、ピウラのいのりに、すこしでも力をかせるような、おとなになりたいとおもいます。
ほんの小さな力かもしれないけれど、そうすることが、ピウラもすくって、それから、くるしんでいる人をたすけるほうほうなんだとおもいます」
それをきくと、おにいさまは、ユタのかたに手をおいて、いいました。
「いっしょけんめい、こたえをさがしたのだな。
そのこたえがただしいかどうか、それは、おまえがおとなになるまで、わからないだろう。
そのこたえが、ただしかったといえるような、おとなになるのだ、ユタ。そのこたえを、けっしてわすれるでないぞ」
ユタは、おおきくうなずきました。
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それからまもなく、おにいさまと、たくさんのへいしが、戦争にいきました。
おおぜいのへいしをみおくる人びとは、カントゥータの花をにぎりしめて、みんな、ぶじにかえってきますようにと、いのっていました。
ユタはこのときも、ピウラたちのやくめのたいせつさを、しったのです。
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ユタはいそいで、ピウラのこしをおいかけました。
けれど、人ごみがじゃまをして、まえにすすめません。
そこで、人だかりのそとがわをまわって、こしのすすんでいくほうへと、はしりました。
ようやく、こしがみえたときには、こしは、まちのそとへでていくところでした。
ユタは木によじのぼり、まちをかこむ、たかいかべの上にたちました。
そして、さけびました。
「ピウラー。ピウラー」
けれど、こしのすがたは、どんどん小さくなっていきます。
ユタは、こんどは、ピウラのほんとうのなまえをよんで、さけびました。
「チャスカー。チャスカー」
ピウラのほんとうのなまえは、あの金の絵にかかれていた花とおなじなまえなのです。
「チャスカー。
ぼくは、たくさんけいこをして、たくさんべんきょうして、つよくてかしこい、おとなになる。チャスカがお山の上で、みんなのしあわせをいのってくれるなら、ぼくは、この手で、みんなをたすけられるような、おとなになる。
だから、お山の上で、ずっと、みまもっていてよー」
すると、さいごのこしにのっているかげが、まっすぐに手をあげるのがみえました。
チャスカが、ユタにへんじをするように、手をあげたのです。
「ありがとう、チャスカー。
ずっと、ともだちだよー。
ぜったい、わすれないよー」
チャスカのかげが、こんどは、りょうてをあげて、大きくふりました。
そして、おかのむこうへと、きえていってしまいました。
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ユタは、カントゥータの花に、なにをねがっていいのか、わかりませんでした。やがて、花はすべて、えだからおちてしまいました。
ユタがなにもできないでいるうちに、とうとう、カパコチャのおまつりの日がやってきました。
その日、ユタもあたらしいふくをきせてもらって、カパコチャをみおくるために、まちのひろばにいきました。
ひろばにつくられた、大きなぶたいの上に、やがて、ピウラとクワンチャイとオマのにいさんが、すがたをあらわしました。
三人とも、りっぱなふくをきて、たくさんのかざりをみにつけています。
ならんだ三人のまえに、王さまがすすみでると、ふかくふかく、あたまをさげました。
この国でいちばんえらいはずの王さまが、あたまをさげるのをみて、ユタは、ピウラたちが、神さまになってしまったのだと、おもいました。
あいさつをおえて、三人は、花でかざられたこしに、それぞれのりこみました。
たくさんの男の人にかつがれたこしが、人びとのあいだをすすんでいきます。
クワンチャイは、みおくるユタのすがたにきづいて、にっこりわらって、手をふりました。ユタも、せのびをして、大きく手をふりかえしました。
たくさんの人のこえにけされて、クワンチャイのこえはきこえませんが、その口は、ユタにこうよびかけていました。
『ずっと、わすれないでね』
そのあと、オマのにいさんのこしと、ピウラのこしが、とおりすぎていきました。
ユタは、ピウラのこしに、いっしょけんめい手をふっていましたが、ピウラはとうとう、いちどもふりかえらずに、とおりすぎていってしまったのです。
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